「ああそうそう、トヨカだ。はじめまして」
見惚れる様な愛想笑いだ。体付きは、細い、ぴったりしたジャケット、下に強化スーツは、有るか解らないが、家まで来て話すなら、敵意は無いから着ていないのかも。いや、私なら用心で着る、か?今も、普段は着ていないからどうかな…。
「こっちの名前は本名も知っていると想像出来ますけど、雷木、太二です。はじめまして」
笑いかけてみる。
「入ります?どうぞ」
ブーツ、ヒールっぽいな。女性?
廊下を歩く。湊にどう伝えよう。今何処だろ__居間の扉を通る。お茶とか菓子は出しておこう。こっちを調べられる見知らぬ相手だし。
「お茶お出しします。そちらのソファーにお掛け下さい」
「お気遣いありがたく、でも気楽にもう喋らせてもらうよ」
ソファに座りこちらに笑いかけつつ足を組んで口を開く。
「今日アポを取らず訪ねたのは、カタストロフィに向けての、戦力の勧誘さぁ」
ふーん。
「トヨカさんは何処の部屋の人ですか?」
他の部屋との連携は、次回は私達には15点のノルマが課せられているから無理だろうけど、カタストロフィの残り時間の表示、その次のミッションくらいの時期だったっけ。確かにカタストロフィは名称からして大事だから、多数の部屋の人員を集めた100点星人数体との殺し合い、とか想定_
「あー違うよ、わたしは見てる側。星人を殺す側じゃなくてさー」
__敵、いや黒球を操作する側なら戦える相手じゃないか。どういうつもりなんだ。
「キミ等を殺し合わせてるのはわたしじゃないよ?娯楽として提供されるそれを見せられてる、ってだけ。止めてやる、なんて少しも思わないけども」
「…説明、して貰えるんですか?」
黒球の戦い前の【死人だから生き返らせた自分のモノとして好きに使う】なんて表示、私に対しては特にふざけた理屈ぐらいしか、事態の説明なんて無かった。想像と議論も、死が罰則のルールで秘匿させられて限られた人しか出来ないのに、事実が、分かる…嘘を、ああ、つく意味は?
「んー、知りたい事は?勧誘に前向きになって欲しいな」
「応じます」
こいつ以外にもいるだろう。目にもの見せたい__同じ立場に、殺し合いを強制、いや、半ば強制させられる立場から抜けたい。
ああ、前提として、本当の事を言っているとどう判断するか。
「そう?ふふっ、君に悪意は持ってないし、わたしと組むと得できると思うよ。今、あそこのぶっ飛んだ技術を使い込んだ人員の確保で大変なんだ。あの技術を使ってる、娯楽の、提供会社、聞いた事無いとおもーけど____って言うんだ」
何て言った?
「ドイツの、ってまあ多国籍企業ね。歴史はダミーかも知んないけど片田舎のコ会社が、突然さあ、君はお馴染みの電子光学情報技術、転送とか人体構築とか使って、殺し合いの見世物始めたのさ。20年前位に。で、それのスポンサーに、世界の大企業がなってるってわけ。わたしはスポンサーの中では小さ目のトコ」
…。……。え?商売なの?
「これ、名刺ね」
ジャケットの内ポケットから紙片が差し出され、ソファ前の机に置かれる。腰を軽く上げ尻ポケットからスマホ、いやずっと小さいな、新型機?
「ここの重役」
画面にはホームページ。読めってか。あ、これも机に置くのかよ。
「それにはさ、技術解析とかウチでやってみた結果とかも入ってるけど、まあさっぱりでね~~。何処の会社も大して変わんないんだけど最近提供元のトラブルが続いて、影響は君らも受けてるけど」
地図機能の不備とか時間、範囲制限の戦い真っ最中の変更の事かな。ああ__
「別の部屋との合流もトラブルなのか?」
「あーそれ、ゲーム主催の方はサプライズって取り繕ってたけどたぶんそうね。でぇ、すっごい技術なのに軍需産業とか輸送業とかに利用させてもらえなかったのが、変わりそーなの」
「__カタストロフィとかって向こうの企業も把握してないらしくて、それに近付くに連れてあの黒い球状の情報機器のコントロールが効かないって状態らしい」
それ、拙いのは分かるが、私達側からすると根本は変わらないよなあ。
「気に食わない大企業どもがー、スポンサーなのに小さかった会社に逆らえなかったのは愉しい見世物だったけど、ゲーム自体は悪趣味な見世物だし?主催者も参加者も嫌いなんだよ、付き合わないとやってけないけど。で、ここが重要なんだけど、技術の粋の黒い球体のコントロールを奪えそうになってる」
!!それって__
「で企業間の奪い合いになる見込み。今のところ、あそこの武器を使って粛清されないのはゲームの駒扱いの君らが主だから、不気味なカタストロフィとか、対、他企業向けに君を誘ってる訳。どう?改めて考えてね。ウチは比較的、弱小だからね?質問は受付ちゅー」
トヨカさんに性別を確認してもいいのかな。
もっと高い茶菓子を出しておきたいな。