テストかゲームか戦争か   作:シューズ

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マルチタスクは上級者の嗜み-2

 玄関から物音がする。トヨカさんが帰って鍵は締めたし、湊が帰宅したな。ソファから立ち上がり様子を見に行く。

 

 靴を脱ぐコートを着た女性の背中が見える。

「お帰り」

 肩越しに目を向けてくる。

「ただいまぁ」

「バイト?」

 顔を戻し、湊が此方に向き直って鞄を取り歩いてくる。

「うん、疲れた。ご飯…」

 しまった。

「あー、作ってない。食べに行くか?」

「えー」

 疲れてるか。

 トヨカさんから聞いた事、外では話さないべきだろうし__

「今から私が作るよ。他人に聞かれるとと拙い事も出来たし、ここで食べよう」

 湊が小首を傾げるが、立ち止まらない。

「先に着替えても?」

 えー、うん。

「勿論」

 振り返って彼女の背を見送る。

 

 キッチンに向かう。両手を洗う。

 どう湊に伝えよう。話の流れ通りで分かるかな。

 キッチンで火にかけたフライパンにオリーブオイルを注ぎ、傾けて油を延ばす。

 冷蔵庫から豚肉と、ほうれん草とトマト、ジャガイモを出し、包丁で大きさを整える。フライパンに左手を翳す。暖かい。素手で摘まんで豚肉を入れる。

 

 ジャガイモも。菜箸を取り、肉をひっくり返す。調整器をスライドさせ火を弱め、コンロ下の棚を開けて蓋を出し、被せる。菜箸を置く。

 食パンを4枚袋から出し、オーブンに入れて焼き始める。

 

 フライパンの蓋を開け、蒸気が少し出る、まな板を持ち上げて傾け、残りの野菜を流し込む。まな板を置き、蓋をする。

 

 食器は…箸でいいか。湊用にナイフも一応持って行くか。じゃあフォークも、でも洗い物…。

 湊の部屋に行くか。

 

 開いている入口を覗き込む。青っぽい長袖とジーンズを着た湊が床に座りベッドに凭れている。

「そろそろ、ご飯出来るよ。豚ロース、ナイフ使うか?」

「…うん。はなし、あるんでしょ。何?」

「今日さ、ある日本企業の役員が1人来た…」

 前提を話すか。

「黒球の所の、戦いに関する話なんだ」

「…?」

 湊の眉間に皺が寄っている。

 

「あれの、観戦者で、スポンサーの1つがそこの企業らしい」

 驚くよなぁ__一拍置く。

「カタストロフィに向けて、色んなスポンサーをやっているトコが戦力を集めてて、私を誘いに来たんだそうだ。入社試験にいつの間にか通ってた、みたいな感じかもしれない」

 睨んできてる?

「どういうこと…」

 彼女が目線を落とし深呼吸する。

「君は、そっちに行くの?あそこの殺し合いを認める、ううん積極的に促進したいの?」

 いや…違う…

「ちがっ」

「食べながら話そ」

 湊が滑らかに立ち上がり、私の方へ歩いてくる__目線が合う。微笑みかけられる。

 …。火、付けっ放しだしな、うん…。妙に気まずい…!

 

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