会社に訪れてみれば分かるだろう。アポイント無し、そして複数箇所オフィスに行けば裏付けは取れる。午前中なら転送はされないし_
「準備できたよ。お待たせ」
「ああ湊。今回は下に強化スーツ着てるの?」
「ラッキー、君には言われたくない」
どうしてだ?
水色のワンピースが似合っている湊が首を横に振る。ん?下にデニム?ま、寒いか。
「いいわ。着てない。行きましょ」
呆れた様な変な反応だな。私は武装なんかしてないし、気になるけど…
「うん、行こう」
折角デートだし。
昨夜軽く口論になったし、2日連続で喧嘩みたいにはしたくないしな。
「…」
「…」
横に並んで歩くのは大通りでもやや気が引ける。誰かとすれ違う時に気になるけど、人通りが多い訳でも無いし、列になって歩くのもなあ。特に会話は無いのだけれど。
うわっ恭だよな。あの酒屋はパス、って避けるのも変か?あ。
「わー!雷木さん?」
駆け寄ってくんなよ!恭との話題なんて、スグルだろ…
「だれ?」
「んー」
どう言えば湊に伝えられるかな。人通りはあんまり多くないけど、ちょっとぼかして__
「被害者家族」
これで伝わるか?恭に聞こえても納得させられるし_
「わたし知ってるかしら?」
左目を隣に向けて__黒球に呼ばれた1人だと伝わったか__歪めて見せる。死人で、もう再生も止めたさ。
「馬鹿な兄の話、知り合い全員にしてるんですか?」
軽い口調だし笑顔だから彼女も本気じゃないな。でも否定はして見せるか。
「していない」
「こんにちは、滝田、恭です。はじめまして」
挨拶するのか。
「ども。わたしは新庄湊。バイト先で会った事あるかも」
「え、どこです?」
「色々。ここら辺」
「なるほど?雷木先輩も働いてるの?」
思わず湊の方を盗み見る__目は合わない。バイトはした事が無いが就職は直ぐするかもしれない__恭を接客する機会はいずれにせよ無いだろう。
「いや、私はやっていない。恭は__」
今、高校生か__話を広げたくない。スグルへの義理は果たしたと決めつけたが、兄を何度も死なせた上に妹を口説き落として仕舞いに振ったのは負い目だ。滝田一家への。
「何でもない。悪い、私達はもう行くよ。…またな…」
「ん、じゃ」
「うーん、はい、引き留めてすみませんでした、またお会いしましょう?新庄さん、先輩!」
あれ。思ったより私に含む所が無かったのか。
「おーい!」
う、誰、ああ、キンナいや、ヤマダさんか。今かよ。
「こんにちは…」
せめて恭が別れてからの方が良かった、いやでも2人は知り合いじゃないよな…あっ黙礼して立ち去ってくれようとしてる…。