夜8時半過ぎ、線路沿いにトボトボ歩きながら考えを巡らす。
あの黒い玉め、いや中の生白い全裸の男かな、巫山戯やがって!次回、凡そ1ヶ月後に15点以上取れだと?今回化け物を全滅させられずに何体倒しても私達6人一律に0点だったのだから、次回もあんな巨大海星みたいなヤツと殺し合って殺し切らないといけないのか。もし出来なかったら死ぬのか?一連の流れの悪趣味さだと、殺されそうだな。ていうかスグルの家族になんて言おう!この事態を漏らしたら死ぬって闘いの前に聞いたぞ。
B駅が奥に見える。曲がるか。
6人全員で90点以上必要だ。色々大丈夫なのか?ピリピリした雰囲気だったから、大丈夫じゃ無さそうだし命が掛かってるという推測は当たりっぽい。競争になるのか?味方同士の妨害は?次回初参加の人達には説明しない方が良いか?しかしクリア出来なかったら元も子もないしな。
………。
…ここだ。滝田家。着いてしまった。
よし、スグルは家出してしまい止められなかった、と説明しよう。目を合わさず謝ろう。
罪悪感に耐えながら、超人スーツの上から履いたズボンの左ポケットから靴下を取り出し、超人靴、いやブーツかも、を脱いで無事を祈りながら排水口近くに置いて履き替える。電柱からは離しとこう。長袖と半袖とシャツを捲り上げて首筋のスーツとそれについた白い丸いものを目立たないように引張り降ろす。超人手袋も外して左ポケットの奥に押し込む。
ゴチャゴチャやったが準備完了だ。上着とリュックと靴を回収する、私の家に遅くなったと電話してもらう、見送りは絶対に断り超人ブーツを持ち帰る、スグル君の家出を止められず申し訳ありません、よし。
深呼吸しながら呼び出しブザーを押す。また深呼吸。
大分眠い。が、さっきまでの悪夢を思えば頭をふかふかであっても枕に戻す気にはならない。
昨晩の酷い出来事がアレンジされて私の頭の中で上映されていたから、実際の出来事を思い起こす…うぇ、気持ち悪い…。
灯りを付ける。死んだ…いやころ…殺されたスグルと同じくクローゼットに隠した例の超人化服を取り出してベッドの上に広げる。あいつとは違いケースはあの奇妙な部屋に置いて来てここにはない。伸びる刀の兵器を太腿部分のベルトで留めて持って帰って来ていた。
トリガー2つを同時に押して一定の長さまで延びていく刀身を見る。重さが増す。ずっしりとしていて肩に力が入る。着込まないと体が強化されない黒い生地に白いボタンみたいなモノが沢山ついた兵器と違い、鈍く光る刀身は、悪夢とそう変わらない現実を突き付けてくる。
殺し合い。
次回は約1か月先のはず。前回戦闘前に聞いたのだから嘘ではないだろう。戦闘後、敵の殲滅に失敗して全員0点。生き残り同士の点の奪い合いの可能性がある。
闇討ちはされるだろうか。ない、と思いたいな…銃を持ち帰って来たかったな。リュックも上着もスグルの家に置いて来ていたから無理か。見られない様にこの服で透明化して、いや、これはもういい。外出を控えて顔をなるべく隠せばいい。まさか昨日尾けられていたり…それならもう私は死んでるか。
自室の扉が閉まっている事を確認する。窓もカーテンが閉まっている。
手持ちの武器の性能をしっかり把握して次回15点取ろう。死ぬのは御免だ。家は広いが家族もいるし、透明になろうともモノを破壊したりは出来ないから、別の場所、人がいない場所に行かないと…待てよ、道場で鍛えてくるのもありか。
服の強化は身体能力と強度を倍率で高めるのか、数値を足すのか、一定の水準まで引き上げるのか。強度の実験は危なそうだ、どんな曲芸が可能かだけ試そう。
刀はどこまで伸びるのか。というか、どこまでなら服の強化で振るえるか、を調べよう。大剣や長刀の使い方とか、師範代と師範に見せてもらえるかも。
銃は実演してくれそうな人居ないな。警察、自衛隊、米軍の施設に忍び込む?あの銃は後ろにターゲットのレントゲン図みたいなのが映る画面があるし、本かネットで使い方を探すだけにしよう。
全身が熱い。奇妙な冷たさも感じる。ふと呟いてみる。
「マスクしてフード被って、サングラスまで買ってかけたら怪しいよな…」