皆、動揺してるよな。闇が見通せるのは私だけだろうし。視界が強化される装甲服の入手には、百点を何度も取らないといけないし、2番を選び続けても大して死ににくくなる訳じゃないから、世界中でも殆ど誰も手に入れられてないだろう。兵器の一部からの発光だけでは暗いここを視難い。この部屋の明かりが付かないなんて誰からも聞いた事無いし、いつもよりももっと変なのだけれど、私達みたいに長くこのテストに参加していてそれが分かる人、多くないからなぁ。
というか、追加兵器の部屋で端末をちゃんと操作出来るのか?黒球の画面が乱れているが。
トヨカさんの警告もあるし、今回はあからさまに危険だ。おっと、黒球の両脇が飛び出て__星人の情報が全然解らないままなんだけど!乾いた笑い声が漏れる。
「なに笑ってんだオメーよぉ?!」
いや悪かった。変な反応だったな。
「ごめん。転送がそろそろ始まるから、武装して。開いた球の中に銃があるし、こっちの部屋に刀が床に転がっている」
「はあ!?」「んっ?」「えっと…」「?」
「おう」「ん」「りょ~」「はいっ」
追加兵器部屋の扉はいつも通り鍵があいていた_良かった。ちょっと不安だったんだよな。意識して装甲服の頭部内に映る映像を肉眼と同じに切り替える。こっちの部屋の方が暗い、か?視界を戻す。自分用の兵器選択端末に歩み寄る。足元に置いたルーズリーフノートに、転送で戻って来て今回の星人について書けるだろうか…。3番の代わりに2番を選び続けていたら、今より強い兵器も使えた筈なんだよなあ。1人じゃその全ては効率的に使いこなせないだろうけれども。それに、仲間内の殺し合いもあり得るから、怖いし嫌だから、判断は正しかったと思うのだけど。
「ねえ、なに知ってるの」
…湊は鋭いな。初参加組の武装を優先したけど、まあ私も特に詳しい状況を知っているわけじゃあない…
「よくは分からないけど、さっき例の人から警告を受けたのだが。世界中の私達と同じ立場の人達が、多分1箇所で戦っているらしい。数時間前から、かな」
「…」
「えーっラッキーそれ本当か?」「…ヤバいぜ」「どういうこと?」
あ。転送きた。
石造りに見える道と明るい壁の、レンガを積んだ家。部屋よりは開けた景色だが、足りない__透視すると、2階立てで地下室あり人影無しの家、がずらりと__浮いている、いや飛んでいるヤツラを発見。内臓と骨がある。普通の星人だな、多分。他は__そうそう、念の為に地図機能が動いているか見ておくか_
「ちょ、眩しいな…」
ん?視界を切り替える。明るい、昼__海外か。まあそうだよな。建物も異国情緒がある気がする。
「おおい、説明してくれるよな。周りに星人、ぱっと見いないし」
「どうなの、ラッキー」
湊まで…前回0点でペナルティが付いているんだから早く殺していかないといけないのは全員同じ筈だろ!
「15点以上取らないと拙いって分かってるのか?初参加組は兎も角、強い星人を、世界中の人とやらないといけない、程度の理解で十分だろう!」
私だって今回の戦いについて前情報は全然少ないし!いつも通りではあるけれど。
「それは分かってる!あんたが思わせぶりなコト言うからだろーが。何、知ってんだ?」
総意か。舌打ちが漏れる。なるたけ簡潔に繰り返すか。いや、はっきりしている事を伝えておくか。どうせいつも通り別行動だ_
「ここは外国で、今回の星人は小型で飛べる」
今兵器を持ったら殺し合いになるか?近くの星人は、と_透視機能を起動し、街並みを見透かしていく__
「訂正だ、羽の付いていない飛べなそうな星人も居るな」
噴水のある広場で、人と巨人が殺し合っていた。屋根の上では狙撃をしていたのであろう複数人が、翼の生えた小人にあっさり体を千切り取られている。屋根に上がっていく別の人、狭い小道を歩く巨人、これは、転がる残骸が多い、星人も人もかなり死んでる。
「もう数時間前に戦闘は始まってる。世界中の私達と同じ様な人が、ここに呼ばれて死んでいっているな」
星人は多くが人の2・3倍の大きさ、速さはそこそこ、銃が普通に効いてる__特に目立つ強そうな星人は見当たらない。
前回の生き残りの面々は動揺している様子だ。ライフル型の銃を周囲に向けて付属の画面を見ている奴がいる。
「転送前に別の事言ってなかったか?」
ああ、ええっとトヨカさんの話は、そうだ!
「星人は攻撃力が高めだ、強化スーツごと千切られていたし。それと、世界中の私達と似た人達が、苦戦してる。知っているのはこれ位だ。もういいよな?」
人を避けつつ、ガトリングガンを担ぎ、重力銃を拾い、ロケットランチャーも拾い、座席にまわしたバッグに突っ込んでから飛行バイクに乗り込む。
「湊、どうする、後ろに乗るか?」
「飛ぶのがいるなら乗らない方がいいでしょ」
そうかもしれないかな。
「分かった、じゃあみんな、私は先に行ってる」
飛ぶ前に装甲服の上から巻きつけた腰バッグに手をやり、透視して中身の重力爆弾と包帯と止血剤と刀の柄とハンドガン型のと三角銃を確認する。
透明化は、飛行バイクだと誤射されたら落ちるし、最初は無しか。強くなくても星人には通じない事もあるし、飛行バイクから星人に落とされでもしたらでいいか。人でも、こっちが重力銃以上の攻撃に巻き込まれたら拙いな。どうせ人に誤射しないよう縦方向に向けて光を撃つし、低空飛行で行くか。
屋根を越えない様に、巨人型に近い目線で高度を保って飛行バイクを道なりに進める。