頼んでもいないのに推薦で入学させてくれやがった憎き父親を見返すためにと僕と焦凍はひとつの誓を立てていた。それは「持てる力は全て使う」というものである。
焦凍は最初それに異を唱えたが僕の説得により納得した。「あれはあれ。僕達は僕達。あれが自分の力だと吹聴するようなことがあれば僕が大声で叫び返す。これはアンタのじゃなくて僕と焦凍の力だ!ってな」という無理矢理な説得によって、だ。これで納得しちゃう焦凍マジで可愛い。
それはともかく、学校の校門が開くと同時に入った僕達は教師のヒーロー達に早すぎやしねぇかと笑われながら1-Aの教室に入ったのであった。
こんなふうに早く登校する理由は一つ。父親と同じ空間に居たくないから、だ。二人で途中で買ったおにぎりを腹に入れながらだべっていたら予想外に時間が早く過ぎて続々と教室に人が入って来た。そのうちぎゃいぎゃいと喧嘩し始める奴がいて、これは好機か?と焦凍の手を引っ張ってそこに行く。
「よう、朝っぱらから元気だなお二人さん。特にそこの爆発頭君、大丈夫?カルシウム足りてる?」
「ああ!?」
「おーこわ。あ、僕は轟
「熱氷、なんでいきなり・・・」
「んー?愉快そうだろ?この二人」
「愉快そうってどういう意味だテメェ!!」
「そうか!ぼ・・・俺は飯田天哉。よろしく、熱氷くん、焦凍くん!」
よし、友好そうなやつゲット。ここから焦凍の友人増やしていこう!
決意を新たにしていたら扉が開いて、もさもさした緑っぽい髪の地味め男子が立っていた。飯田くんがスス・・・と寄って自己紹介をするが彼は聞いていたようだ。それに便乗して僕も話しかける。
「あ、ってことは僕の名前も聞いてた?一応もう一回言っとくけど僕は轟熱氷。で、双子の弟の焦凍。よろしく!」
「え、あ、うん、よろしく。・・・ねえ、轟って苗字もしかして・・・」
「ん?轟炎司?ああ、不本意ながら奴は父親だ。ほんっっっっっとうに不本意ながらな・・・あの野郎いつか訴えて勝つ・・・!!!」
「熱氷は親父のこと嫌いなんだ。俺も嫌いだけどな。まあ、よろしく。飯田、と・・・」
「あ!僕は緑谷出久!よろしくね、飯田くん、焦凍くん、熱氷くん!」
「ああ!」
「おう」
「あのクソ野郎・・・あ、よろしくな緑谷くん」
クソ親父への憎悪を燃え上がらせていたら自己紹介終わってた。そしてまたがらりと扉が開く。
「あ!そのモサモサ頭は!地味めの!!」
可愛らしい女の子だった。緑谷くんが真っ赤っかになってる。その女の子が嬉しそうに喋っていたらまたいきなり扉が開いた。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」
そこに居たのは黄色い芋虫・・・ではなく、寝袋に入った男性。成人してるということは多分教師。そしてこの時間に教室に来たということは恐らく担任。にしても。
「先生、
静かになった教室に僕の声が響く。しかし先生は無視してゼリー飲料を一瞬で空にし起き上がった。反射的に焦凍を後ろに庇ってしまったがこれはしょうがないと思う。
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」
静まりかえった教室にいる全員の心が一つになった。先生!?まじで!?みたいな雰囲気をひしひしと感じる。
「てことは・・・この人もプロヒーロー・・・?」
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
また全員の心が一つになった。担任!?まじで!?みたいな(ry
そして相澤先生が寝袋から取り出したのは体操着。いやどこから出してんだアンタ。
「早速だが、これ着てグラウンドに出ろ」
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場所は変わってグラウンドの上。
『個性把握・・・テストォ!?』
「入学式は!?ガイダンスは!?」
あーなんか女の子が僕の言いたいこと全部言ってくれてる・・・
「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ」
さいですか・・・
そしてまあいろいろあって。
「死ねえ!!!」
ヒーロー目指す者としてどうなんだ、その掛け声。でも気合い入りそうだね。
ほとんどの種目が終わり、残すところはボール投げのみだが緑谷くんはなかなか良い記録を出せずにいる。大丈夫かねえ。
「おい轟、の熱氷の方」
「最初っから熱氷って呼んでくださいセンセー」
ボールを投げ渡され、投げる準備をする。軽くぺしぺしと叩き、準備完了。
大きく振りかぶって、
「クソ親父(社会的に)くたばれ!!!」
投げたー!!!そして勢いがなくなってきたあたりで個性を発動。炎を勢いよく噴出させればうまい具合にロケットみたいに吹っ飛んでくれた。記録は701.4mだ。まあまあ行けたかな?
焦凍も当然問題なく吹っ飛ばした。でもやっぱり爆発頭君には及ばない。爆発頭君、結構いいライバルになりそうだ。
その後緑谷くんは先生&爆発頭君と一悶着あったし結構痛そうな怪我をしていたがそこまで大事にはならず終了した。やはり創造の個性が強いのか、八百万さんが一位で二位が僕。三位が焦凍で緑谷くんは最下位だった。そして相澤先生からの爆弾が投下される。
「ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
これを聞いた緑谷くんは人とは思えない動きと顔をしていた、とだけ言っておこう。
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できるだけ帰りたくなかったが仕方なく帰宅。したら、姉ちゃんが出迎えて食えた。
「おかえり熱氷、焦凍。晩御飯今から作るから待っててね」
我が姉ながらいい人である。他人だったら惚れてた。
「姉ちゃん、僕も手伝う」
「俺も」
「え!?いいの!?助かるわー!」
にっこり笑う姉ちゃんはこの家(焦凍は除く)唯一の癒しだ。台所で一緒にいるために料理まで覚えてしまった。
飯を作った後は三人で食べる。今日はクソ親父は仕事で遅くなるらしい。やったぜ。二人で姉ちゃんに今日あったことをぽつぽつと話しながら飯を食べた。
深夜に焦凍と二人揃って目が覚めて、台所に水を飲みに行ったらクソ親父が帰宅していた。一瞬身構えたが眠っているようで、起こさないように静かに水を飲んでこっそり戻った。明日も早朝に起きて出かけることにする。
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早朝。うとうとしている焦凍を起こして部屋を出る。支度をして台所に向かったらクソ親父が入ってきた。
「手前クソ親父それ以上近付いたら今までの暴力の記録弁護士事務所に持ち込むぞ」
流石に怯んだらしいクソ親父は廊下の奥に消えていった。
台所には小さなメモ用紙が置いてあった。姉ちゃんの字だ。
『今日も朝早いんでしょ?お米炊けてるからおにぎりでも作って持ってってね』
めっちゃいい姉ちゃんだ・・・後ろから覗き込んできた焦凍も顔を覆って天を仰いでいる。
お言葉に甘えて梅干しを入れたおにぎりを作って持っていくことにした。姉ちゃんほんと・・・大好き・・・
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また初日みたいに教室に入って一緒におにぎりを食べる。しばらくしてから飯田くんが入ってきた。
「おはよう!早いな!」
「おー、おはよう飯田くん」
「お、飯田。はよ」
同時に返事をして何言ってんのかわからない状態になってしまった。その後は飯田くんも交えて他愛ないお喋りをする。相澤先生が教室に来て、席に着いた。
午前中は普通の授業だ。驚くほど。プレゼント・マイクの授業はテンション高くて若干引いた。そして午後。
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!」
お、おう。
「オールマイトだ!すげえや本当に先生やってるんだな・・・!」
同感だ。
「
なんでわかるんだ・・・?
「すげー・・・画風違いすぎて鳥肌が・・・」
わかる。すげーよくわかる。
「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為様々な訓練を行う科目だ!」
ほうほう、なるほど。
「早速だが今日はコレ!!」
ばばん、とオールマイトが掲げたのは「BATTLE」のプレート。
「戦闘訓練!!!」
え、いきなり?
「そしてそいつに伴って・・・こちら!」
ガコン、と壁がせり出してくる。棚っぽいな。
「入学前に送ってもらった「個性届」と「要望」に沿って誂えた・・・
コスチューム!!!」
「おおお!!」
あーなるほどな。あれがコスチュームの棚か。高いとこにあったらどうしよ。届かねーじゃん。
「着替えたら各自グラウンド・Bに集まるんだ!」
「はーい!!」
うおおわくわくするー!!
ちなみに僕のコスチュームは下から二番目のところにあった。よかった。
デザインは腕まくりできるカーキ色の軍服で、靴はふくらはぎまである黒い編み上げブーツだ。動きやすさと耐火性を重視している。いざ着替えて、置いていかれないようにみんなのあとを追った。
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走ったら喉がゴロゴロしてきた。やべえ。今日調子悪いわ・・・
どうやらくじ引きをしてペアを作り、敵チームとヒーローチームに別れるらしい。ちなみに余った一人はなんと相澤先生と一対一。そして僕が引いたのはK・・・って相澤先生とやるやつじゃねーか!!!!
ズシャア!と膝をついた僕に焦凍が駆け寄って心配そうに覗き込んでくる。
「どうした?」
「ぼく相澤先生とやんなきゃいけない・・・」
「・・・それまずいんじゃねえか?今日調子悪いだろ」
「ふぐううううううううう」
「熱氷、」
「いやがんばる。頑張るよ・・・死ななきゃ安い・・・」
「無理はすんなよ」
「うん・・・」
頭をぽんぽん撫でられた。精神安定のために焦凍がやる時以外ずっとくっついていることにした。背中に額をつけて目を瞑る。戦略を考えていたらいつの間にか焦凍の番が来ていたようで、やんわり離される。
「すぐ終わらせる」
その言葉通り、焦凍は相手チームを建物ごと凍らせて戻ってきた。ぷるぷるしていた僕はすぐに焦凍に飛びついた。このメンタルは治さないとなぁ、と思いつつ戦略を練る。
「熱氷少年!熱氷少年?そろそろ準備・・・」
「はい」
僕は死地に赴くような気持ちで建物に向かった。
「お、おいあいつ大丈夫かよ・・・」
「顔真っ青だったな・・・」
「相澤先生と戦うなんて大変ね・・・」
クラスメイトは心配していた。
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さて、と。一階に到着した僕は氷と炎を同時に使って霧を発生させた。もうもうと霧は広がり、すぐに視界は悪くなる。次に僕が歩いているところから少し離れたところまで氷の塊を等間隔に落とし、足音を偽装する。このふたつを同時進行しながら登っていく。当然階を登る時は氷を階段の上に落としていく。僕が遠回りしたり氷を遠回りさせたりしながら目的の階にたどり着いた。ここからが正念場である。
氷と炎を増やし、霧を濃くさせる。僕は精密操作は得意だがパワーがあまりない。だからワンフロアは凍らせられてもビル全体は無理だ。
しかしここは目的の階。しかも霧のおかげで全体的に湿っている。不調ではあるが問題なく全て凍らせられるだろう。床に手を置いて個性を発動させる。
狙い通り、一瞬にしてワンフロアが凍りつく。これで相澤先生が止まってくれればいいんだが、そう上手くは行かないかもしれない。いつでも氷の壁を作れるように準備しておく。
コツコツと足音と氷が落ちる音を響かせながら部屋に向かう。途中で氷だけ進ませ靴を脱いだ。足元を溶かしながら歩いていく。氷を一旦ドアの前で止める。上手く本体だと思ってくれればいいんだけどな。
がちゃ、とできるだけ静かに扉を開けて氷だけ先行させる。僕は氷で盾を作ってそのしばらくあとに入る。
なんの前触れもなく、膝が折れた。同時に氷が溶け、盾が消える。霧はまだ出ているが時間の問題で消えるだろう。しかしそんなことを考えている余裕はなかった。
「げっほ、げほ、ひぅ」
目の前がちかちかする。咳をする音で気付かれたのだろう。捕縛武器が襲いかかってくる。間一髪で避け、なんとか個性を再発動させようとする。
落ち着こうとすればするほど、空気が吸えなくなっていく。それでも意地で、霧が出ている間に核兵器を触った。
「ヒーローチームWIN!!」
「かひゅ、けほ、ぅ、」
苦しい。
でも、勝った。後は呼吸を落ち着かせるだけ。苦しくて息を吸うのに全然楽にならなくて、生理的な涙が溢れた。
「おい、熱氷!大丈夫か?息を吐け。ゆっくりな」
ただでさえ苦しいのに吐けとはどういう了見だ、と思ったが大人しく従う。ふうふうと息を吐いて吸ったら一気に空気が入ってきて咳き込む。
「げっほ、げほ、ひゅ、ふー。あー、疲れたぁ・・・あ、先生。ありがとうございます・・・苦しかったぁ・・・」
「ああ・・・体調悪いなら言えよ」
「だって弱み見せたら潰されちゃう」
「野生動物か」
「そうやって生きてかないとあの家では生きてけない。僕は轟炎司を信用してない。僕がたまにこうなるの知ってるのは焦凍だけだった」
「そうかい」
「僕は先生が信頼できる人だと判断した。改めて、これからよろしくお願いします、相澤先生」
言い置いて目を閉じる。個性の使いすぎとさっきので死ぬほど疲れた。正直もう目を開けていられない。
まあ相澤先生なら連れてってくれるだろ。先生が何か言っているような気がしたが、聞き取れなかったから反応がないのは許して欲しい。
紅白ブラコンこと轟熱氷
個性 半氷半炎(はんひょうはんえん)
右から炎、左から氷を出す。一定間隔で氷を落として足音を偽装したり炎で剣を作ったりと精密操作は得意だがそのパワーは轟焦凍のものより数段劣る。
容姿 顔は色が左右反転した轟焦凍。前髪と横髪が赤く、後ろ髪が白い。髪を伸ばして項のあたりで括っている。
父親である轟炎司のことは視界に入っただけで盛大に舌打ちするほど嫌っているがヒーロー『エンデヴァー』としての手腕は認めている。体が強くないためたまに体調を崩すがそれを察知させないことに心血を注いでいるため父親には気付かれていない。知っているのは焦凍だけだったが今回相澤も知ることとなった。