大宇宙これくしょん   作:ダルマ

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序章 望まぬ宇宙の片隅で

 ──無限に広がる大宇宙。

 それはまさに、静寂な光に満ち溢れた世界。

 死せる星もあれば、産声高く生まれくる星もある。

 

 まさに生命と同じ、この宇宙もまた、生きているのだ。

 

 母なる星、地球。この美しき星を輝き照らす太陽、そんな太陽を中心とする太陽系。

 太陽系を含んだ大銀河系もまた、生命の輝きと産声に満ち溢れているのだ。

 

 ──しかし、母なる星地球は今、その最後の時を刻一刻と迎えようとしていた。

 

 かつての青く輝く星の姿はなく、海は蒸発し、地上の生命は死滅する他なかった。

 人類は、僅かにその生存圏を求め地下へと潜った。だが、そこはかつて地上に築いた楽園とは程遠い、ほそぼそとした人類最後の箱庭であった。

 

 そんな地球の惨状を、嘲笑いながら冷酷に見ている目が、宇宙にある。

 

 我が銀河を隔てる事十四万八千光年、大マゼラン雲はサンザー恒星系。

 その第八番惑星こそ、今、地球を滅亡の淵へと追いやろうとしている悪魔の星であった。

 

 その(悪魔)の名を、ガミラスという。

 

 

 時に西暦二一九九年、地球は、ゆっくりとしかし確実に、死を迎えようとしていた。

 

 

 しかし、人類はこのまま座して星と共に死を待つつもりなど毛頭なかった。

 長年に渡るガミラスとの存亡をかけた戦いの中、地球は、起死回生の一手を遂に手に入れたのである。

 

 その名を、宇宙戦艦ヤマト。

 

 かつて同じ名を有した戦艦の残骸に偽装し、かつての戦艦を生み出した国の子孫たちによってこの世に生み出されたその宇宙戦艦。

 遥か彼方より届けられし最後のピースをはめ込むことにより命を宿したその(ふね)は、地球滅亡の危機を回避すべく使命を帯びて、選ばれし宇宙戦士達と共に、往復三三万六千光年の、人類がまだ経験したこともない未知なる航海へと旅立った。

 

 航海の途上、航海を阻まんとするガミラスとの戦いや、未知なる航海や使命遂行の成否への不安からくる乗員達の反乱。

 更に激しさを増すガミラスとの戦いや、ヤマトが目指したイスカンダルの真実。

 そして、仇敵たる筈のガミラスとの奇妙な共闘。

 

 様々な困難、決して少なくはない犠牲、その船体を傷つけながらも、ヤマトは、時に西暦二一九九年十二月八日。

 地球再生の為の鍵ともいえる"コスモリバースクリーナーDシステム"と共に、地球への帰還を果たした。

 

 

 

 ──はい、宇宙戦艦ヤマト、完。

 

 なんて、要所要所略して短く先の戦争の顛末を語った訳だが、これにて太陽系に再び平和が訪れた訳ではない。

 というか、太陽系に更なる悲劇と殺戮が訪れるのは、これからが本番であると言っても過言ではない。

 白色彗星帝国、暗黒星団帝国、ガルマン・ガミラス帝国、ボラー連邦、ディンギル帝国、大ウルップ星間国家連合軍を形成する各国。

 

 オリジナル・リメイク、或いはゲームや映画等々。ガミラス戦争後の太陽系は、それはもう事ある毎に殺人現場に遭遇する名探偵も真っ青なほど、存亡の危機に立たされまくっている。

 

 そんな状況下でも毎度の如くへ依然と生き残ってみせる宇宙戦艦ヤマトのクルーは、皆異能生存体なのではと思わずにはいられないが。

 そこは、主役たる(ふね)のクルーなのだから、生き残るのはお約束だ。という野暮な返しはさておき。

 

 逆を言えば、主役たる宇宙戦艦ヤマト以外の敵味方の存在は、極論彼らの引き立て役、ともいえる。

 

 そんな、宇宙戦艦ヤマトのクルーになれば、厳密にいえば配属部署による率の変動こそあれど、生き残る確率が高く、それ以外は極端に生き残る率が低くなる。

 まさにそんな世界、そんな世界を、世界の一員として実体験してみたいだろうか。

 否、断じて否。

 

 無論、個々人により答えは変わるだろうが、俺は断じて否だ。

 

 だがしかし、そんな否定も、今となっては空しいばかり。

 そう、俺は今や、この世界を画面を通して楽しむ"観戦者"から、世界の一員たる立派な"プレイヤー"となったからだ。

 

 俺はまさに、俗に言う、転生者というやつだ。

 

 

 果たして、俺は無事にこの先きのこ、じゃなかった。

 無事にこの先、次々に襲い来る脅威の中を生き残る事が出来るのだろうか。

 

 と、ここまで深刻に将来の事を思い詰めて考えている俺の姿に、違和感を覚える者もいるかもしれない。

 転生先は確かに死亡率が高い世界だ、しかし、この世界の未来事情を知識として知り得ているのならば、上手く立ち回ればなんら未来に対して怯える心配はないのでは。

 そう、俺も当初は、この世界が宇宙戦艦ヤマトの世界だと理解した時、己の持つ知識を総動員して楽に生き残れる。と、浅はかにも考えていた。

 

 だが、現実はそうではなかった。

 先に語ったガミラス戦争の顛末の中に、この世界がオリジナル、或いはリメイクのどちらとも断定できない世界観の証拠が登場していたのにお気づきであろうか。

 そう、オリジナルならば"コスモクリーナーD"、リメイクならば"コスモリバースシステム"。どちらもガミラスとの戦争で汚染された地球を再生させる為のシステムだ。

 

 所が、この世界においてその役割を果たしたシステムの名は、"コスモリバースクリーナーDシステム"。

 そう、オリジナルとリメイク、両作のシステムの名を組み合わせた名前の品物なのだ。

 これだけでも、俺が世界の一員として存在しているこの世界が、俺の知りうる宇宙戦艦ヤマトという作品の世界とは異なっているとの認識を得られるが。

 更に、この世界が作品内の世界観とは異なる世界であると認識させられる事象がいくつかある。

 

 先ず、世界の主人公たる宇宙戦艦ヤマトについて。

 ヤマトの全長はオリジナルシリーズでは二六十メートルから二八十メートル、リメイクでは三三三メートルだ。

 しかし、この世界のヤマトは全長五五五メートルを誇り。

 武装も、口径こそ同じながら主砲は五基、副砲は同数ながら、丸裸であった船体下部に高角速射光線砲塔、所謂パルスレーザー砲塔が追加されており。

 その姿はさながら、下部武装を削減されたグレートヤマトとでも形容できる。

 

 当然サイズアップした分、搭載能力も強化され、オリジナルやリメイク以上の艦載設備を誇り。当然ながら乗員も相応に大幅増加し四桁を突破している。

 なお、乗員が増えた事に呼応して、ヤマトの人事にも幾分変更等が加えられており。

 イスカンダル航海時、本来艦長と呼ばれる筈の沖田提督は艦長ではなく司令官の肩書を有し、代わりにどこかで聞いたことのある名前の人物が艦長を務め。

 また、オリジナルやリメイクでは見られなかった参謀の面々や文官たる外交官や、空間騎兵隊の部隊も乗艦しており。

 もうそれ、何処の超時空要塞だと言わんばかりの大容量だ。

 

 因みに、このようなサイズに至ったのは、ヤマト計画の前身たるイズモ計画時の名残らしい。

 曰く、脱出船としての能力を残しつつ、ガミラスとのあらゆる場面での戦闘を想定し、遥かなるイスカンダルへの航海を想定したらこうなった、との事。

 

 もはや俺の知る宇宙戦艦ヤマトの知識というものが、本当に役に立つのかどうか疑問符を付けずにはいられない。

 

 因みに、ガミラス戦後、そんな暫定グレートヤマトとも称せるヤマトは、休む間もなく大規模な近代化改修が施され。

 主砲も51cm砲にパワーアップし、更にはガミラスとの戦闘の戦訓を生かし、船体下部にも上部と遜色ない武装が設けられ。

 無事、グレートヤマトそのものと遜色ないものへと進化しました。

 

 やったね、進ちゃん!

 

 

 無論、オリジナルやリメイクの内容に沿った出来事というものは起こっており。

 国連の解体や地球連邦の発足、地球連邦防衛軍への組織改編。さらには民主化へと移行を図るかつての仇敵ガミラスとの和平締結等。

 

 完全に俺の知る宇宙戦艦ヤマトとは別物、という訳でもないようだ。

 ただし、この先の展開次第では、俺の持つ知識は全く役に立たない。

 そう、肝に銘じた矢先の事であった。

 

 ──完全に、俺の持つ知識が役に立たなくなったのは。

 

 

 

 西暦二二〇一年、それは、無限に広がる大宇宙の彼方からやって来た。

 それは、過去から訪れし怨念なのか、それとも、この無限に広がる大宇宙(大海原)の意思なのか。

 

 かつて、まだ人類が母なる星の中でその覇権を争っていた時代に、各国が威信をかけて建造し大海原へと送り出した鋼鉄(クロガネ)の城。

 そんな、かつての海の支配者達と同じ外観を有する(ふね)達は、突如、祖先たる我々人類に対して無差別に牙を向けたのだ。

 それのみならず、それらはガミラスにも牙を向け、自らの存在以外を全て敵と判断しているかのように、その牙を振りまく。

 

 この事態に、地球連邦とガミラスは互いに手を取り、事態への対処を行うと表明。

 

 この未知なる脅威、"深海棲艦"と総称された敵との生存競争を開始した。

 先のガミラス戦争から二年余り、地球は再び、否応なく戦火の中に身を投じられるのであった。

 

 

 ──もうね、この世界で生き残れる自信がなくなりそうです。

 

 大体なんなんだ、二十世紀前・中期、第二次世界大戦当時の軍艦、それも完全なる水上艦が波どころか水すらない宇宙空間を進むとは。

 最初にその映像を目にした時は、あまりの滑稽さに、つい人目をはばからず吹き出してしまうそうになった。

 しかし、映像を見続けると、滑稽に思えたその外見も、笑ってなどいられないものであると嫌でも理解する事となった。

 

 重厚な砲塔から放たれたのは、古臭い徹甲弾などではなく、青黒いビームの光線であった。

 同様に、重厚古風な機銃座などから放たれるのも、弾丸ではなく、同様の色をしたレーザーであった。

 古臭い魚雷発射管から放たれるのも、水中を走る魚雷ではなく、宇宙空間を突き進む空間魚雷。煙突から上るのは、黒煙ではなく、ヤマト宜しく煙突ミサイル。

 

 博物館級の外観とは裏腹に、その中身は、現在の戦闘艦技術となんら遜色ない。

 もうお前たちは何処のフォグ・フリートだと言わんばかりだ。

 

 因みに、水上艦時代に比べるとその大きさが二から三倍に拡大しているのは、防衛軍やガミラス軍の艦艇と対峙する為なのか。

 基となっているオリジナルの軍艦に比べると、一部艦級においては、その大きさは二・三倍となっている。

 

 なお、何故この敵性軍艦の総称を深海棲艦と称したのかは、現段階では定かではないが。

 オリジナルたるソーシャルゲームに登場する艦級分け同様、いろは順で命名されている。

 

 

 そして、当然敵である深海棲艦が登場したのだから、オリジナルのソーシャルゲーム同様、それと対する存在もまた、この世に生まれる事となる。

 加えて、それらの存在を指揮し、人類を勝利に導かん存在もまた、同じく誕生する事となる。

 

 その名を、提督。

 

 そして、悲しいかな、俺はまさに、そんな提督の肩書をこの世界で拝命する事となった。

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