大宇宙これくしょん   作:ダルマ

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第三話 そして彼らは宇宙(うみ)をゆく

 本格的な荷解きを行っていない事が幸いし、荷造りは、さほど時間がかかることなく終了した。

 そして午後になり、俺のもとに大澤宙将が使わせた案内の者達が訪れる。

 

「ご案内いたしますので、ご同行、お願いいたします」

 

 彼らにより運び出される荷造りされた荷物と共に、俺は、官民、航宙・水上問わず様々な艦艇が停泊している横須賀基地の埠頭へと足を運ぶ。

 そうして案内されたのは、第九バースであった。

 第九バースには、一隻の航宙艦が停泊していた。

 

 喫水下の為目にはできないが、標準塗装は水色と白色の為、眼前の航宙艦の紺色の塗装は、水色との二種類の組み合わせの筈だ。所謂、スコードロンリーダー塗装と呼ばれている。

 葉巻形のマッシブな外観は、かつて勤務していた英雄を彷彿とさせる。

 だが、かつて艦橋砲と呼ばれていた最上部の砲塔は、近代化改修が施される以前の、就役当時の姿を思わせる、電子機器や対空パルスレーザー砲塔を備えた艦橋構造物に変化していた。

 

 そして、現在唯一拝見できる三基の砲塔の内の一基は、無砲身の三連装高圧増幅光線砲ではなく、小口径化したものの射程・威力共に上回る25.4センチ三連装収束圧縮型衝撃波砲塔、所謂ショックカノンとなっている。

 無論、残りの二基についても同様だ。

 魚雷やミサイル等の誘導兵器類についても、新型に一新されている。

 

 これら一新された装備類を稼働させるエネルギーの源、艦の命ともいうべきエンジンは、タキオン式次元波動エンジンとなり。それに合わせてエンジンノズルを大口径の高効率型へと換装している。

 そのお陰で、ワープ航法や、ヤマトや次世代艦艇群程ではないものの、波動防壁の展開も可能となっている。

 また、喫水下の為見えないが、艦底部には外宇宙航行用補助推進装置と呼ばれるタンク状の構造物も設けられている。

 

 この様に、二一九十年代の近代化改修以来となる大規模な近代化改修が施されたこの(ふね)の名は、M-21741式金剛改二型級宇宙戦艦。

 現在宇宙軍で多数の同型艦が運用されている戦艦だ。

 ただし、戦艦と名はつけられているが、その実、タキオン式次元波動エンジンの搭載を前提とした次世代艦艇群の就役により、軍内では巡洋艦相当の位置づけとして認識されている。

 

 また、改二型と名が付く通り、この近代化改修型の他にも、近代化改修前の姿と殆ど外見の相違の無い近代化改修型も存在し。

 そちらは、M-21741式金剛改級宇宙戦艦と呼ばれている。

 この型は、ガミラス戦争中に計画され実際に試作された艦が基となっており。その為、搭載されているタキオン式次元波動エンジンも、改二型と比べると性能が劣り。

 故に同型は、搭載しているタキオン式次元波動エンジンの出力の関係上、ワープ航法を有する"甲型"と、波動防壁の展開能力を有する"乙型"の二種類のサブタイプに分かれている。

 

「おぉ、来たか、和泉!」

 

 個艦名の判らぬその艦の前には、俺の到着を待っていた大澤宙将の姿があった。

 

「どうだ、こいつが、今日からお前の指揮下に入る"神風"だ」

 

 そして、歩み寄った俺に向け、俺の荷物が積み込まれる眼前の(ふね)の個艦名を告げる。

 

「本当なら、型落ちじゃなくドレッドノート級(戦艦)クリーブランド級(巡洋艦)辺りをと思ってたんだが。すまんな、手配が間に合わず、結局こうなっちまった」

 

「いえ、ありがとうございます。型落ちと言えど、深海棲艦やその他の敵性艦とも渡り合えますから、不安はありません」

 

 確かに、基本設計は古いが、まだまだ戦える(ふね)だ。

 それに、空間護衛総隊の懐事情も理解している。あまりないものねだりしても仕方がないだろう。

 

 手持ちの戦力でも最善を尽くす、それも指揮官としての腕の見せ所の一つだ。

 

「周回軌道上で落ち合う手はずになっている他の(ふね)も型落ちだが、少しの辛抱と思ってくれ。なるべく早く、次世代型の(ふね)を手配して送ってやる」

 

「ありがとうございます」

 

 あ、そうか、この世界ではゲームのように自前で建造などを行えないので、戦力の管理なども重要になってくる訳か。

 そうなると、少し不安が。いや、大丈夫、なんとかなる。

 新戦力の手配もしてくれると言っているし、大丈夫だ。

 

 こうして今後の戦力の手配等を話し終えた大澤宙将は、俺を連れ、神風へと乗艦する。

 

「あぁ、和泉は英雄勤務だったから、特に案内も必要ないよな?」

 

「えぇ、英雄と多少変わってはいますが、基本的な部屋の配置などは同じですから」

 

 近代化改修によって変化したのは外観だけではない、艦内の様子も多少様変わりしていた。

 ただ、基本的な艦内設備の配置は変わっていないので、特に迷う心配はない。

 

 こうして足を運んだのは、神風の艦橋であった。

 

 艦橋こそ、近代化改修によって内外合わせて一番変化した場所と言っても過言ではないだろう。

 二段式となった艦橋には、一新された電子装備や射撃管制システム、更には操縦等の操作に必要な乗組員の為の座席やモニター等が設けられている。

 当然ながら、それら機材も、近代化改修以前の型落ちではなく、現行の最新型だ。

 

 そして、そんな艦橋の主にして、神風の主が座るべき座席、艦長席には、既に誰かが腰を下ろしていた。

 

「さて、それでは、和泉の初となる部下の艦娘を紹介しよう!」

 

 まるで目に入れても痛くない程愛らしい孫を紹介するかのような笑顔と共に、大澤宙将は艦長席に座っていた者を呼び寄せると、俺に紹介を始める。

 

「彼女が、この神風の艦娘である神風だ」

 

「はじめまして、和泉司令官! 私が神風よ。司令官の手足となる初の艦娘として推参です!」

 

 自らを艦娘神風と名乗った彼女の容姿は、まさにゲームと同様、大正ロマンの女学生を体現していた。

 瞳の色と同じく紅のロングストレート、アクセントの黄色いリボン。緋色の振袖に桜色の袴、そして焦げ茶色のハイヒールロングブーツ。

 

 綺麗な敬礼を行いながら自己紹介を終えた彼女の姿に、俺は少しばかり見とれていたが、刹那、我に返ると、慌てて返礼する。

 

「本日から、指揮官として指揮をとらせていただく和泉 弓弦二等宙佐です。指揮官としてはまだまだ若輩者ですが、ワルキューレの一員として恥じぬよう、職務に邁進していきます!!」

 

「おいおい、和泉、固い、固すぎるぞ。もっとフランクでいいんだよ……」

 

 と、自身の自己紹介を眺めていた大澤宙将から、客観的な一言が飛び出す。

 

「え? 固すぎましたか!?」

 

「まぁ、強制はしないが、俺はもう少し砕けてもいいと思うぞ」

 

「ど、努力します」

 

「そんじゃ、お互い自己紹介も終わった所で、今後もよろしくって事で、ほれ、握手」

 

「あ、はい。……今後とも、よろしく、神風君」

 

「呼び捨てで結構よ、司令官」

 

「それじゃ、改めて。今後とも、よろしく、神風!」

 

「こちらこそ、司令官!」

 

 互いに差し出した手を握り、固い握手を交わす。

 こうしてお互いに少しばかり打ち解けあった所で、大澤宙将が再び口を開いた。

 

「そんじゃ、次はお前を補佐する為の連中の紹介といこうか。おーい、入ってこい」

 

 と、大澤宙将が声をかけると、数人の男女が艦橋に入ってくる。

 その内の一人が、一歩前に出ると、自己紹介を始める。

 

「はじめまして! 和泉二佐、自分は、立花 智明(たちばな さとあき)一等宙尉であります! この度、和泉二佐の副官を務めさせていただきます」

 

 少々童顔な、士官用制服に身を包んだ男性は、どうやら今後俺の副官を務めるようになった人物らしい。

 彼の自己紹介を皮切りに、他の面々も自己紹介を始めてゆく。

 

 こうして数分後、とりあえず全員の自己紹介が終わったので、改めて一人一人の顔と名前と階級を整理し、記憶の棚に収納していく。

 

「司令長官、荷物の搬入完了しました。いつでも出発できます」

 

「お、そうか。……それじゃ、和泉。タウイタウイ泊地での活躍、期待してるぞ!」

 

「はい!」

 

「じゃ、頑張れよ」

 

 こうして、励ましの言葉を言い残し、大澤宙将は神風を下艦してゆく。

 

「それじゃ、司令官。惑星タウイタウイに向けて発進してもいいかしら?」

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

「了解」

 

 と、艦内に設けられた部屋に戻ってゆく立花一尉と入れ替わるように、複数の人影が艦橋内に入ってくる。

 その姿は、人型なれど、明らかに人間ではなかった。

 汎用アンドロイド、それが、人影の正体であった。

 

 ただ、艦橋に現れたそれは、見慣れた汎用アンドロイドとは、少しばかり違う箇所があった。

 それが、顔。具体的に言えば、何故か無機質な顔の上から、全員二頭身ぐらいの可愛い"妖精さん"のお面をつけているのである。

 

「あ、あの……」

 

「ン、ナンデスカ?」

 

 気にしなければいいのかもしれないが、俺は気になり、たまらず近くの一体に声をかける。

 すると、彼? 彼女? は、機械的な音声と共に、俺の方を向き質問に答え始める。

 

「君達は、何者、なのかな?」

 

「アァ、紹介ガマダデシタネ。ハジメマシテ、提督! ワタシタチハ、艦娘ノ皆サンノ手足トナッテ働く"妖精さん"デス!」

 

 機械ゆえの綺麗な角度の敬礼を行う、自らを"妖精さん"と名乗った汎用アンドロイド。

 いや待て、妖精さんって、ゲームに登場したあの二頭身の可愛らしい小人ですか。

 

 確かに、被っているお面は、あの妖精さんを彷彿とさせるが、それにしても、妖精さんと名乗るには無理があるんじゃないだろうか。

 どんなに引きで見ても、あの可愛さはにじみ出ていないと思うのだが。

 

「ドウカシマシタカ?」

 

「え、あぁ、ちょっと……妖精と名乗るには、無理があるんじゃないかと」

 

「エ?」

 

「妖精、と言うには、その、可愛さがあまり感じられないという、か?」

 

「エ?」

 

 刹那、おもむろに立ち上がった妖精さんは、言葉少なく迫るように俺を壁際まで追い詰めると、次の瞬間。

 俺の顔の脇の壁目掛け、その硬そうな手をついた。

 

 あぁ、まさか前世でもされた事なかった"壁ドン"を体験する事になるなんて、思ってもいなかったよ。

 

「妖精さん、ダッテイッタラ、妖精さん、ダヨ」

 

「いや、あの……」

 

「妖精さんっつたら妖精さんなんだよ、いい大人なんだから、そこんとこ察しろよ? オーケー?」

 

「ア、ハイ」

 

 こうして、俺は妖精さんという名称に納得したのであった。

 え? 威圧的じゃなかったかって? そんな事ある訳ないじゃないか、これは、所謂、大人の判断というものです。

 

 さて、こんな戯れを行っている間にも、タグボートにより第九バースから離岸した神風は、いよいよ大宇宙(大海原)を目指し離水の時を迎えた。

 

「さぁ、抜錨よ! 神風、発進します!!」

 

 艦長席に腰を下ろした神風の合図と共に、神風の船体が、ゆっくりと離水し、大宇宙(大海原)を目指して速度を上げ始める。

 ふと、モニターの一つに映し出された外部映像に目をやると、第九バースから手を振る大澤宙将の姿が確認できた。

 

 モニター越しに敬礼し、大澤宙将の見送りに応えると、大気圏離脱に備え、用意された椅子に腰を下ろす。

 

「マモナク、大気圏ヲ離脱シマス」

 

「エンジン出力正常、艦内各部、異常ナシ」

 

「いいわね、よし」

 

 各座席に腰を下ろし、与えられた役割を淡々とこなしてゆく妖精さんと神風。そんな様子を、俺は静かに見つめ続ける。

 

 暫し、身動きの取れない状態を体験した後。

 艦橋内に設けられていたランプが、赤から青へと切り替わる。

 どうやら、無事に大気圏を離脱出来たようだ。

 

「艦内、重力制御、正常ニ作動中」

 

「艦内各部、異常ナシ」

 

「よし、では合流ポイントで合流を行います」

 

「ヨーソロー」

 

 エンジンがうなりを上げ、船体が大宇宙(大海原)を進む。

 やがて、合流ポイントに指定された宙域へと進入すると、レーダー員を務める妖精さんが声を挙げた。

 

「八時ノ方向ニ艦影ヲ確認。識別確認、完了。合流予定ノ友軍部隊デス」

 

「進路そのまま、速度に注意して」

 

「ヨーソロー」

 

 モニターに映し出された映像には、ゆっくりと神風を目指し近づいてくる複数の艦影の姿が映し出されていた。

 やがて、それらは相対速度を気にしつつ、船体各部に設けられたスラスターの青白い炎を噴射させ微調整を行いつつ、神風を中心に周囲に展開してゆく。

 

「合流完了、各艦トノデータリンクヲ開始シマス」

 

 そして、神風を中心とする隊形を組み終えると、続いて各艦とのデータリンクが始まる。

 と同時に、各艦の情報が神風に集約され、程なくしてデータリンクが完了すると、全艦、最初のワープ開始宙域を目指し並走を始める。

 

「艦長、BAC-CAS-J728ヨリ入電。本艦ヘノ乗員移乗許可ヲ求メテイマス」

 

「移乗許可? 数は?」

 

「二名トノ事デス。両名トモ艦娘デアルトモ」

 

「どうする、司令官?」

 

「もしかして、補佐の為に派遣された艦娘かもしれない」

 

「分かったわ、移乗を許可します。接舷準備!」

 

 モニターに映し出されたのは、神風に接近する一隻の黒を基調に一部オレンジのラインが入った塗装を施された、M-21701式村雨改級宇宙巡洋艦であった。

 神風同様、戦後、次世代艦艇群の開発・建造と並行し行われた旧式艦艇群の再設計・建造により誕生した(ふね)の一隻である。

 

 口径こそ変わらないものの、主砲は連装収束圧縮型衝撃波砲塔へと変わり、搭載ミサイルや電子装備も一新。

 特に変化が如実なのが、艦尾のエンジン周りで。

 タキオン式次元波動エンジンの搭載に伴い、次世代艦艇群の中・小型と同様のロケット型のものに変化している。

 そして、当然ながらワープ航法や波動防壁の展開能力も有している。

 

 因みに、固有艦名ではなく番号認識なのは、同艦が自律制御戦闘艦、所謂無人艦だからだ。

 防衛軍では、基本的に無人艦は番号認識となっており、その為先頭に"Black Autonomous control"の頭文字である"BAC"が付けられる。

 また、外見での区別を容易にすべく、船体の塗装を黒に統一しているのも特徴である。

 

 なお、番号の前につけられた"J"の意味だが、これは同艦が日本の造船所で建造された(ふね)である事を意味している。

 無人艦は、緊急時などを除き基本的には無人で運用される。それが故に、素材や精度加工等、有人艦と比べると建造技術のランクが落とされており。

 故に、アース7(セブン)と呼ばれる大国以外の国々でも、国により建造許可が下りた艦種に違いはあれど、技術力の向上等を理由に無人艦は建造されている。

 なので、無人艦の番号の前には、建造国を示すアルファベットが付けられるようになっているのだ。

 

 最後に余談ながら。

 最近では、命名基準の緩和等を進めても、小型など余裕で四桁を突破する程の建造数の増加に伴い、有人艦に名付ける固有名の重複が危惧された為。

 "金剛七号艦"という例のように、固有名の後に番号を振り分けて重複を避ける措置をとり。

 また、一部の無人艦では別の頭文字を付けられている事もあり、戦力が肥大すればする程、防衛軍は命名という(ふね)の命に頭を悩ませているのである。

 

「重力アンカー、接続ヲ確認」

 

「左舷収容ハッチを開いて、ボーディング・ブリッジ展開!」

 

「了解、左舷収容ハッチ開放、ボーディング・ブリッジ展開開始」

 

「カウント開始、5、4、3、2、1、BAC-CAS-J728ヘノ接続完了。酸素、充填、開始」

 

「酸素充填率、百」

 

「ドアを開いて、移乗者の収容を開始します!」

 

「了解、収容作業開始シマス」

 

 と、BAC-CAS-J728の説明とちょっとした脇道の説明を独り言のように語っている内に、移乗作業は大詰めを迎えていた。

 

「BAC-CAS-J728カラ移乗シタ二名ノ乗艦ヲ確認」

 

「ボーディング・ブリッジ、無事収容完了。重力アンカー、正常ニ接続解除確認。左舷収容ハッチノ閉鎖ヲ確認。艦内気圧、酸素濃度、全テ正常値範囲内デス」

 

「収容作業、完了シマシタ!」

 

「司令官、移乗完了よ。先ほど乗船した二人を艦橋に呼ぶ?」

 

「あぁ、頼む」

 

「分かったわ。それじゃ、艦橋に案内して頂戴」

 

 こうして、モニターに映し出されたBAC-CAS-J728が再び所定の位置へと戻る様子を他所に。

 艦橋に、二人の女性が入ってきた。

 

「あれ? 大淀さん?」

 

 その内の一人は、何と大淀であった。

 

「私は確かに大淀ですけど、空間護衛総隊の司令部で勤務している大淀とは別の個体ですよ」

 

「あ、そうなんですか」

 

 艦娘というのは、やはり人間の女性に姿形が似ているとはいえ、機械なのだ。

 故に、同一の容姿を持った異なる個体というものが当たり前に存在している。

 人間のように外見を見れば一目で判断できるものと異なり、性格や口調等、内面の違いで判断しなければならないが、艦娘にも、確かに個体ごとが持つ固有の個性という違いは存在している。

 

「では改めて、和泉提督の補佐を務める艦娘の大淀です。今後とも、よろしくお願いしますね」

 

「よろしく、大淀さん」

 

「あ、出来れば呼び捨てで構いません」

 

 こうして、改めて大淀の自己紹介を受けた所で、続いて、大淀と同じく艦橋にやって来たもう一方の女性が声をあげた。

 

「はじめまして、和泉提督。技術関係の補佐を務める艦娘の明石です」

 

 ピンクの髪を靡かせ、水色のシャツの上からセーラー服を着込み、腰回りに視線が釘付けにされそうなスカートを履いた女性は、自らを明石と名乗った。

 

「他にも、艦娘達の、人間でいえば体調管理のサポートもしてます。……あ、和泉提督、もし提督も激務で処理する時間がなくて溜まっちゃってたら、遠慮なく言ってくださいね。提供しますから、身体」

 

 ──ピンクは淫乱、はっきり分かんだね。

 

 さらりととんでもない事を言い放った直後、艦橋内の温度が宇宙空間と同じマイナス二七十度に急転降下してゆく。

 あぁ、神風が口を開けたまま固まってしまった。

 

「ちょちょ! ちょっと明石!! 何言ってるのよ、貴女は!!」

 

「へ? 何が?」

 

「何がじゃないわよ!? 提督の前で、いや、大勢の人がいる前で身体提供しますなんて普通言わないわよ!!」

 

 暫し、あまりの事に全員が固まっていたが、最初に我に返った大淀が、明石に食って掛かるように問い詰める。

 

「あ、じゃ、また二人の時にでも改めて……、あ、何なら大淀も混ぜて三人でやります? 私は三人でも全然いいですよ」

 

「明石ぃぃぃっ!!」

 

 大淀の悲鳴にも近い声と共に、明石の口は、大淀が何処かから取り出した粘着テープによって、強制的に塞がれるのであった。

 こうして、明石の問題発言は終息した。

 

「すいません提督。あれでも明石は腕の方は一流ですから……」

 

 と言っている大淀の後ろで、明石は、こっちの腕前も凄いですよと言いたげに、アレをアレする手の動きを行うのであった。

 

「あ、うん。二人とも、今後ともよろしくね」

 

 ま、多分、何とかなるでしょう。

 

「司令官、笑顔が引きつってるわよ」

 

「あはは……、はは」

 

 こうして、大淀と明石の二人との挨拶を終えた俺は、その後、人知れずため息を漏らすのであった。

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