検索失敗の異世界録   作:biwanosin

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今月分の投稿です。

この作品初の一万文字オーバーです。
まさか、一週間の間に二回も、一万文字オーバーを書くことになるとは・・・
そして、自分がこれだけ書けるとは思ってもいませんでした。

では、本編へどうぞ!


あら、魔王襲来のお知らせ? 後半

「♪~。では、プリムちゃん、私は魔王と戦ってきますね~」

「アンタにはどれがそうなのか分かってんの?」

「私、ではないですけどね~。ですよね、ミカさん?」

『うん、そうだね。あのちっさい子だよ。クロアが好きそうだ』

 

 そう言いながら十字架から出た光が矢印になってさすのは・・・

 

「あ、斑ちゃんじゃないですか~」

「何?アンタ知り合いなの?」

「はい~。昨日、プリムちゃんと別れた後で会いました~」

「・・・それ、襲撃した、って言ったりしない?」

「どうでしょうね~?」

 

 意外と鋭いですね~、プリムちゃんは。

 さて、いざやんは軍服の人のほうに行きましたし・・・

 

「独り占め、してきま~す」

 

 私はそう言いながら地面を軽く蹴って、斑ちゃんに接近して・・・

 

「昨日ぶりですね~、斑ちゃーん♪」

「ちょ、抱きつくな!」

 

 想いっきり、抱きしめましたぁ。

 うんうん、やっぱりプリムちゃんとは違った抱き心地ですね~。

 

「って、アンタは昨日の・・・!」

「はい~。朱羽葵お姉さんですよ~。約束どおり、名前を教えてください~」

「その前に放せ!」

 

 そう言いながら黒い霧のようなものを噴出してきて・・・

 

「い~やで~す」

「ちょ、何でよ!?」

 

 それは全て、私の腕に取り込まれました~。

 うんうん、それは私には効きませんよ~。

 

「こんの・・・!」

「わわっ。力持ちですね~」

 

 全力じゃなかったとはいえ・・・まさか、振り解かれるとは思ってもいませんでした~。

 見た目ロリっ子なのに、力があるんですね~。

 

「見た目ロリっ子なのに、力があるんですね~」

「人の事をロリ言うな!」

「あらあら、声に出てましたか~?ゴメンなさ~い」

「無意識に、とでも言うつもり?」

「わ・ざ・とで~す♪」

「殺す!」

 

 そう憤って飛び掛ってくる斑ちゃんを、私は少し横に動いて避けて、そのままプリムちゃんの炎をぶつけます。

 お、うまくおでこにぶつかりました~。涙目です~。いいですね~。

 

「この・・・!」

「ああ、ダメですよ~?」

「!?」

 

 一瞬のうちに背後にいた私を見て、プリムちゃんが驚いた顔をしていますね~。

 種は何てことない、ミカさんの力を借りただけなんですけどね~。

 そしてそのまま後ろから顔に手を伸ばして・・・ほっぺたをムニムニ弄りまわします。

 

「ちょ、やめ・・・」

「女の子は笑顔、ですよ~?いつも顔には笑顔を~」

「アンタみたいに、いっつも笑ってるやつの方が珍しいわよ・・・」

 

 そうですかね~?

 もう癖になってますから、わかんないんですよね~。

 

「はぁ・・・調子狂うわね」

「狂わせてますから~」

「ホント、そうよね。戦う気もなくなるわ」

 

 そう言いながら、腕の中で脱力する斑ちゃん。

 あれあれ~?

 

「魔王様が、ゲームの最中にそれでいいんですか~?」

「いいのよ。どうせ今、あんたに倒す気はないみたいだし」

「まあ、そうなんですけどね~」

 

 どうせ、ウサちゃんが何かするでしょうからね~。

 それまでの時間は、気にしなくていいでしょうし~。

 

 ・・・ばれたら、プリムちゃんにお説教ですかね~・・・

 

「・・・私の名前はペスト」

「そうですか。では、これからもよろしくお願いしますね、斑ちゃ~ん」

「呼び方変えなさいよ!」

「い~やで~す。最初に名前を言わなかったのが悪いんですから~」

 

 お、今回も諦めたみたいですね~。

 本当に、プリムちゃんとは色々と違いますね~。

 

「で、一つ提案なんだけど」

「なんですか~?」

「あなた、」

「朱羽葵、で~す」

「・・・アンタ、」

「あ・お・いで~す」

「・・・葵」

「は~い。何ですか~?」

 

 やっと呼んでくれましたね~。

 

「あなた、私のコミュニティに入らない?」

「そうですね・・・お断りしま~す♪」

「即答ね・・・そんなにいいコミュニティに入ってるの?」

「コミュニティ、ヘル・サタンに所属してま~す」

「聞いたことないわね・・・」

 

 まあ、無名ですからね~。

 

「“審判権限”の発動が受理されました! これよりギフトゲーム“The PIED PIPER of HAMERUN”は一時中断し、審議決議を執り行います!プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!繰り返します――――――――」

 

 と、そんな事を考えていたらウサちゃんの声が聞こえてきました~。

 

「・・・一時中断、ね。放してくれるかしら?」

「仕方ないですね・・・はい、どうぞ~」

 

 私が放すと、斑ちゃんは一瞬で消えてしまいました~。

 速いですね~。

 

「・・・で?アンタは、なにやってるのかしら?」

「さてはて、何のことでしょうね~?」

 

 後ろから、プリムちゃんの声が聞こえてきました~。

 怒ってますね~。

 

「とぼけるんじゃないわよ!アンタは、なにやってたのよ!?」

「敵の主力を抑えてました~」

「確かに抑えてたけど、戦う気はなかったわよね!?」

「それでも、彼女が出来たことなんて特にないですよ~?私に捕まる前に、何かばら撒いてましたけど~」

「それ、回収したんでしょうね?」

「出来る限りは。それでも、全部とはいきませんでしたね~」

 

 アレは、なんだったんでしょうか・・・

 そう考えて、腕に意識を向けて・・・

 

「わっ・・・なに、この死の気配・・・」

「え?これ、死の気配がするんですか~?」

 

 私達はそんな会話をしながら足を進めていきます~。

 左腕から出してるのはばら撒くことの無いように気をつけつつ、向かう先は図書館のような場所。

 とりあえず、相手のことを調べないといけませんしね~。

 

「ええ、結構濃密よ。・・・それでも、私達のとはベクトルも違うし薄いと思うけど」

「プリムちゃん・・・地獄の王と比べちゃダメですよ~」

 

 そう言いながら、頭の中から何かいいのがないか探していきますけど・・・中々無いですね~。

 

「そういえば、私達は審議決議というのに参加しなくていいんですか~?」

「ああ、いいのよ。どうせアタシ達みたいな弱小コミュニティが参加する席なんて無いだろうし、あっても参加する気とか無いし」

「あらあら、無いんですか~?」

「無いわよ。“ノーネーム”みたいに無理矢理でも名前を売らないといけないわけじゃないし、自然と広まる程度でいいのよ」

 

 意外と謙虚ですね~。

 

「それに、名前が知られてないからって襲ってきたやつらがいても、アタシの“主催者権限”とアンタがいればどうとでもなるでしょうし」

「ああ、それもそうですね~。本拠も、“ノーネーム”に居候させてもらっていますし、気にしなくていいですから~」

 

 と、そこで一つ思いつきました~。

 そういえば、名前・・・

 

「プリムちゃん、あの子、ペストって名前でしたよ~」

「それすっごく重要!!」

 

 わわっ、そんな剣幕でこっちを見ないでくださいよ~。

 驚いちゃうじゃないですか~。

 

「そんなに重要なんですか~?」

「重要よ!ってかアンタ、ペストって聞いて何にも浮かばなかったわけ!?」

「たいしたことは浮かびませんでしたね~」

「何でよ・・・ありえないでしょ」

 

 そうですかね~。

 だって、浮かんできたのなんて・・・

 

「十四世紀から十七世紀にかけて八千万人の死者を出した疫病で、“ハーメルンの笛吹き”の真相候補の一つ、というくらいしか浮かびませんでしたし~」

「わざとよね?アンタ、それわざとやってるわよね!?」

 

 さてはて、何のことでしょうか~?

 

「はぁ・・・じゃあ、向こうの残りの二人、あれの正体にも気づいてるのかしら?」

「一応、これじゃないかな~、というのはありますね~。・・・それでも、実際に見たプリムちゃんのほうが確実なんじゃないですか~?」

「まあ、そうでしょうね」

 

 プリムちゃんは今回、そういったことに手を出してましたからね~。

 私より、間違いなく詳しいはずですぅ。

 

「・・・あの女はネズミ捕りの男から派生した悪魔、ラッテン。軍服の男はヴェーザー川の化身、ヴェーザー。でっかい陶器が嵐の化身、シュトロム」

「あらあら、少し予想と違いましたね~。あの人は軍服でしたし、少年兵関連だと思いました~」

「確かに、見た目だけならそうね。もしかすると、その要素も少しは入ってるのかも。・・・でも、あの時振るった力は自然現象を操る類のもの。ハーメルンの伝承でそんなことが出来るのなんて・・・」

「確かに、ヴェーザーだけですね~」

 

 それなら納得ですぅ。

 それに、ヴェーザーがいないと成り立ちませんし・・・

 

「・・・よし、全部分かりましたぁ。もうゆっくりしましょ~う」

「って、は!?何が分かったのよ!?」

 

 プリムちゃんがすごい剣幕で迫ってきますね~。

 かわいいお顔が台無し・・・でもないですね~。

 これはこれでかわいいですぅ。

 

「簡単なことですよ~。誰が真実の伝承なのか。そして、このゲームのクリア方法、ですぅ」

「それ、今まさに全コミュニティが必死になって探ってると思うんだけど・・・」

「そうですね~。いざやんとか、相手から情報を引き出そうとしてる気がしますし~」

 

 口先で色々と情報を引き出してきそうですよね~。

 それに、新興のコミュニティなのか人材も欲していましたし・・・

 

「・・・あ、プリムちゃん。私、面白いこと思いついちゃいました~」

「・・・な、何よ?その顔、何かたくらんでそうですごく怖いんだけど・・・」

「そんなこと無いですよ~?いつも笑顔を、が私のモットーですから~」

「確かに笑顔だけど、笑顔だけで百種類はあるんじゃないの?」

 

 さすがに、そんなには無いですよ~。

 

「・・・で?そんな悪巧み?」

「プリムちゃんもノリノリじゃないですか~」

「まあこれでも?魔王サタンの娘なんだし」

 

 そうでしたね~。すっかり忘れかけてました~。

 

「では・・・今、私達のコミュニティって三人だけじゃないですかぁ」

 

 そして、私は思いついた作戦を話し始めました~。

 

「いっそ、三人とも私達のコミュニティに引き込んでしまいましょう♪」

 

 

 

▲▽▲▽

 

 

 

「ちょっといいか?」

 

 私が膝の上のプリムちゃんを愛でていたら、いざやんが声をかけてきましたぁ。

 いつもとは違う真剣な感じですし・・・仕方ないですねぇ。

 

「ええ、いいですよ~。プリムちゃんはどうしますか~?」

「いてもどうしようもないでしょ・・・アタシは、少し手伝いでもしてくるわ」

 

 そう言って膝から飛び降りて、部屋から出て行ってしまいましたぁ。

 また捕まえるのが大変なんですけど・・・仕方ないですね~。

 

「で、どんなご用件ですか~?」

「ちょいと質問。お前は、」

「どこまで今回のゲームを理解しているか、ですか~?」

「・・・ああ、そうだ」

 

 やっぱり、それですよね~。

 そこまでしないといけないほど切羽詰っているのでしょうか・・・でも、

 

「全部、理解できてますよ~?」

「な・・・マジかよ。なら、それを」

「でも、教えてあげませ~ん♪」

 

 その瞬間に、いざやんの顔が固まりましたぁ。

 いいですね~、その表情。

 

「・・・テメエ、」

「スイマセンが、今回のゲームにおいて、私達はコミュニティの強化を図ります。なので、教えてあげることは出来ませ~ん」

 

 あらあら、なんだか釈然としなさそうですね~。

 

「・・・はぁ、なら一つ思ったことを」

「なんだ?」

「いざやんは、自分が分からないからといって他人に教えてもらって、それで満足なんですか~?」

「それは・・・」

 

 いざやんは頭をガシガシとかいて・・・

 

「・・・はぁ、確かに言うとおりだ。ゲームのクリア条件の謎を解いたからって、それが共有する義務はねぇ。その知識はそいつ自身のもんだ」

「そうですよ~。では、頑張ってくださ~い」

「・・・ああ。だが、少しは話してもらうぜ?」

 

 そう言っていざやんが取り出すのは・・・

 

「ああ、なるほど。命令権ですか~」

「そうだ。これを使うのは自由だろ?」

「はい、その通りですよ~」

「じゃあ、ヒントを頼む」

「・・・では、時代背景と黒死病について。・・・それと、ハーメルンの碑文と本来の伝承をしっかりと見直してくださ~い」

 

 その瞬間に、命令権はボロボロと崩れていきました~。

 はい、これで私の分は終わりですね~。

 

「ふぅん、なるほど・・・」

「あらあら、分かっちゃいましたか~」

 

 となると・・・うまく動かないと、ですね~。

 難しくなってきましたけど・・・何とかなるでしょう。

 

 

 

△▼△▼

 

 

 

 ゲームが再開すると同時に、周りの風景は一瞬で変わりましたぁ。

 これは・・・ハーメルンの街並、ですかね~?

 

「これは・・・」

「ゲーム盤、だね。どうするんだい、葵ちゃん?」

「そうですね・・・予定通り、プリムちゃんは全力で真実の伝承のステンドグラスを探してきてくださ~い。たぶん、ステンドグラスはゆかりのある場所に隠してあると思いますから~」

「ん、分かった」

 

 プリムちゃんには空間倉庫とベルゼブブのところから取ってきたもの全部を渡してありますし・・・何とかなりますよね~。

 

「で、ミカさんは予定通り、あの二人を」

「OK、葵ちゃん。君はどうするんだい?」

「私は、」

 

 そう言いながら私は空中に目を走らせて・・・

 

「あの、斑ちゃんと戦ってきま~す」

 

 そう言いながら、まだ戸惑って動けないでいるほかの参加者を置き去りにして、斑ちゃんの元まで跳びます。

 お、驚いてますね~。

 

「昨日ぶりですねぇ、斑ちゃん♪」

「そうね・・・あなたがお相手?」

「はい~。後から来るかもしれないですけど、そんなのは気にせずに♪」

 

 そう言いながら八割くらいで殴り飛ばします~。

 いざやんなら防げたでしょうけど・・・私のは、無理ですよ~。

 

「いっつ・・・あなた、本当に人間?」

「はい~。純粋培養の人間ですよ~」

「その発言ほど、信じられないものは無いわ」

「あらあら、酷いです~。泣いてしまいそうです~。うわ~ん」

「この・・・!」

 

 怒った斑ちゃんが放ってきた黒い風の竜巻を、両手で触れて取り込みます。

 無駄なんですよね~、それは。

 

「といっても、普通の人間ではないですけどね~」

「でしょうね。その馬鹿みたいな力があって、普通の人間名乗るなんてものすごく嫌な奴よ?」

「でしょうね~。それと、筋肉の使い方もうまいんですよ~」

 

 それさえ極めれば、いざやんと戦っても手を抜いて戦えるんですよね~。

 気は、ずっと張ってないとですけどぉ。

 

「・・・それで?そんなことで私に勝てると思ってるの?」

「全く思ってませんよ~?さすがに、神霊相手にただの肉弾戦で勝てるとは思ってませ~ん」

「なら・・・」

「でも、」

 

 私はそう言いながら一気に接近して、プリムちゃんの炎を纏った両手で殴り続けて、斑ちゃんはそれを防ぎ続けます。

 意外とやりますね~。

 

「時間さえ稼げれば、私達の完全勝利ですから~」

「は?このゲーム、時間制限があることを分かってるのかしら?」

「知ってますよ~。ゲーム再開から24時間、ですよね~」

「なら・・・」

「それでも、時間が必要なんですよ~」

 

 そう言いながら全力で七つの炎を撒いて、ここに近づこうとする二人を邪魔します。

 あらあら、邪魔はさせませんよ~?

 

「ちょ、葵さん!何で、」

「近づかないでくださいね~?危ないですから~」

「そうではない!その魔王は、私が」

「いいですから、邪魔しないでくださ~い」

 

 言っても聞いてくれそうにないですし・・・まあ、いいです。

 このまま放っておきましょう。

 

「いいの?三人がかりで向かえば、私をどうにかできるかもしれないのに」

「無理ですよ~。あの子達が使えるのなんて、たかが神格級の武器ですから~」

「あら。効かないって分かってるのね」

「分かりきってますよ~。さっきも言ったように、あなたは神霊なんですから~」

 

 まあ、よっぽどレベルが高かったりすれば別なのかもしれないですけどね~。

 とはいえ、あの子達はそれを今すぐに使う気は無いみたいですし、そもそも使われたら困りますから~。

 

「でも、あなたはそれすら使えないみたいだけど?」

「ええ、全部貸しちゃってますからね~。でも、いいんですよ」

 

 そう言いながら、放たれた黒い竜巻に触れて取り込みます。

 あらあら、後ろで驚いてる気配がありますね~。そういえば、あの二人に見せるのは初めてでしたか~。

 

「この方法なら、あなたが死の風を放てるのは私だけ。そして、私にはそんなもの効きませんから~」

「なるほど。一番死人が出ないように、ってこと?」

「一応、それも配慮してますね~。ついでですけど♪」

 

 そう言いながらミカさんの浄化の力を解放して、斑ちゃんにダメージを与えます。

 やっぱり、死神に対してこれは効くんですね~。

 

「今のは・・・」

「そうそう、一つだけ忠告しておきますね~」

 

 そう言いながら、私は今まで一割程度で出していたプリムちゃんの炎を、十割まで解放します~。

 

「私は確かに神格級の武器を持ってるわけじゃないですけど、神霊と同じ攻撃はできるんですよ♪」

 

 

 

∵△∵△

 

 

 

 捜索隊は、ステンドグラスが発見されるたびに焦りを増していった。

 

「見つけました!ですが・・・」

「どうした!?どのステンドグラスを見つけたんだ!?」

「・・・鼠を操る道化、です」

「く・・・また偽りの伝承か・・・!」

 

 マンドラがそう憤る横で、ジンも焦りながら砕くように指示を出す。

 

 これまでの間に、彼ら捜索隊はたくさんのステンドグラスを発見した。

 だが、いまだに真実の伝承のステンドグラスは一枚たりとも発見されていない。

 

 そこには葵の作戦が影響しているのだが・・・そのことを、彼らに知る由はない。

 彼らはその後も、ただひたすらに偽りの伝承のステンドグラスを破壊し続けるのであった。

 

 

 

▽∴▽∴

 

 

 

 時は少し進み、飛鳥とラッテンの勝負。

 ラッテンはディーンに殴り飛ばされ、建物に突っ込んで軽く血を吐いていた。

 

「く・・・でも、まだ負けるわけには、」

「うんうん、それはいい心がけだね」

 

 自分の白装束が血で染まっていることを気にもしないで立ち上がった瞬間、彼女の後ろから男の声がした。

 ラッテンはとっさに振り返ろうとするが・・・その前に、首筋に一撃を喰らって意識を失ってしまう。

 

「よし。あとは、このままだと霊格の磨耗が危ないし・・・」

 

 そう言いながら彼はラッテンの胸の上に手をかざし、少しだけ自分の力を使う。

 

「よし。さて、見つかる前に立ち去るとしますか」

 

 そう言って、彼は翼を広げて飛び立つ。

 遅れて飛鳥が来たときには、一部が血に染まっている以外、何もない壊れた建物があるだけであった。

 

 この少し後に、十六夜と戦っていたヴェーザーの姿も、十六夜の目の前で、一瞬の間に消えた。

 

 

 

▼△▼△

 

 

 

「大罪の炎~」

「この・・・!」

 

 私が両手から七つの炎を同時に出すと、斑ちゃんはそれを黒い風で防ぎます~。

 そして、こちらに近づいてきて思い切り蹴飛ばしてきます~。

 

「いった~い・・・酷いじゃないですかぁ!!」

「ずいぶんと元気ね・・・わりと本気で蹴ったはずなんだけど?」

「確かに、そうですね~。でも、盾くらいならすぐに準備できるんですよ~?」

 

 私は、とっさに瘴気を固めて盾代わりにしました~。

 といっても、とっさだったのであまり質は良くなかったんですけど。

 

「おやおや、意外にも苦戦しているようだね?」

「ま、相手は神霊だしね。さすがの葵にも荷が重かったんじゃない?」

「ぶ~。そりゃ、お二人は神霊ですけどね~。今回は、倒すことはまだ目的じゃなかったですから~」

 

 気がつけば、プリムちゃんとミカさんの二人がすぐ横にいました~。

 まあ、ミカさんなら大罪の炎なんて大して効かないでしょうし、プリムちゃんは自分の炎を通ってこればいいですから、どうとでもなるんでしょうけどね~。

 

「で、首尾はどうですか~?」

「ああ。僕はうまくいったよ。ほら」

 

 そう言いながら両手に抱えてたものを見せてくれるミカさん。

 うんうん、うまくいったみたいですね~。

 

「ちょ・・・なんでラッテンとヴェーザーが、」

「ああ、大丈夫ですよ~。確かにボロボロですけど、ミカさんのおかげで死んではいないですから~」

「じゃ、僕はこれで」

 

 そう言って、ミカさんは十字架の中に戻っていきました~。

 魂だけの存在ですし、これ以上現界するのは危ないですね~。この状態で、働いてもらいましょう。

 

「さて、じゃあこの二人は空間倉庫の中に入れて置いてくださいね、プリムちゃん?」

「分かったわよ。というか、まだアタシが持ってていいの?」

「はい~。私は、斑ちゃんの相手をするので手一杯ですから~」

「そう。なら、こっちは引き受けたわ」

 

 そう言いながらプリムちゃんがあけた空間倉庫の中には、真実の伝承のステンドグラスが結構な枚数入っていました~。

 お、ちゃんと一まとめにしてありますね~。

 

「それに、そのステンドグラスは・・・」

「ええ、全部真実の伝承のステンドグラスよ。この街にある真実の伝承のステンドグラスは、全部回収させてもらったわ」

「そんなこと、出来るはずが・・・」

「アタシも、無いと思ってたのよね・・・でも、何とかなったのよ」

 

 かなり疲れたでしょうね~。

 これが終わったら、しっかり休ませてあげませんと~。

 

「オイ黒ウサギ!これは何だ!?」

「あ、十六夜さん!それが、葵さんが完全に遮断してしまって・・・」

 

 あらあら、いざやんまで来ちゃいましたか~。

 となると・・・

 

「しゃらくせー!!」

 

 やっぱり、壊されちゃいましたね~。

 

「オイ葵!これはどういうことだ!?」

「どういうこと、ですか・・・答えるなら、死人を出さないための作戦、ですかね~」

「は?」

「さっきのがあれば斑ちゃんの死の風は周りにいきませんし!」

 

 そう言いながらすぐそばにいたいざやんを押しのけて、隙ありとばかりに放ってきた黒い風を、全部取り込みます~。

 

「私には、あれは効きませんから~」

「・・・なるほど、それがオマエのギフトか?」

「まあ、その一端、ですね~」

 

 それで、一応は納得してくれたみたいです~。

 言い訳なんですけどね~。

 

「なら、こっからは手を貸せ!黒ウサギに作戦がある」

「お断りしま~す」

 

 まったく、そんな事をさせちゃったら、こっちの作戦が台無しじゃないですか~。

 

「・・・なら、どうするつもりだ?」

「簡単なことですよ~。私達、“ヘル・サタン”で魔王は倒します~。プリムちゃん、もう始めちゃってくださ~い」

 

 いざやんにこれ以上構っていたら、その隙にいざやんの言う作戦、とやらが実行されちゃいそうですからね~。

 急ぎましょう。

 

「いざやんは、少し離れててくださいね~」

 

 そう言って一度、いざやんを投げ飛ばします~。

 驚いた顔も出来るんですね~。

 

「・・・よし。偽りの伝承のステンドグラスは破壊できたわ!行くわよ、葵!」

「はい、いつでもいいですよ~」

「貴女たち、何を・・・」

 

 はいはい、もう少しだけ待ちましょうね~。

 そして、プリムちゃんはギフトカードを掲げて・・・

 

「ではでは、死神様。・・・地獄へ、ようこそ」

「な・・・!?」

 

 一瞬光ったら、次の瞬間にはそこは地獄でした~。

 これはこれは・・・いかにも、地獄、って感じですね~。

 

「こ、ここは・・・」

「さっきプリムちゃんが言ってたじゃないですか~。ここは、地獄です♪」

「け、けど・・・!ルールではゲーム盤から出ることは禁じられてるはず、」

「ああ、それは大丈夫よ。ただ、高度がかなりマイナスだけど」

 

 そう、ここはあのハーメルンの街の下に動いてきた地獄。

 地獄はやっぱり、地面の下に無いと、ですよね~。

 

「・・・でも!ここで貴女たち二人を倒せば、」

「あらあら、それは無理ですよ~」

 

 斑ちゃんが何かしようとした瞬間に、そこらじゅうから鎖が伸びてきて、斑ちゃんを拘束します。

 これで、斑ちゃんは逃げることも出来ないですね~。

 

「鎖ごときで・・・!」

「無駄よ。地獄はアタシの空間。ここで、アンタじゃアタシには勝てない」

 

 実際にそうなんでしょうね~。

 プリムちゃん、かなり強くなってますし~。

 

「さて、では・・・ミカさん、お願いします」

『OK!いくよ葵ちゃん!!』

 

 一瞬だけミカさんが十字架から出てきて、そのまま私の体に入ります。

 ミカさんは今、魂だけの存在ですから、こうして人に憑依することも出来るんですよね~。

 

「何を・・・」

「とりあえず、このまま斑ちゃんを打倒させてもらいますね~」

 

 そう言いながら十字架を洋弓にして、引き絞りつつ・・・ミカさんが憑依した結果ついた羽を広げます~。

 オマケに両腕にも十対の羽を持つ天使の刻印を出して・・・

 

「では・・・浄化の力、無限解放。いっきま~す!!」

 

 その力を存分に乗せた矢を、斑ちゃんに向けて放ちま~す。

 

 斑ちゃんは捕まっていることもあって、避けることもできずにその矢を喰らい・・・

 

「こ、この・・・程度、なんかで・・・」

「ああ。程度、なんかじゃないですよ~。ミカエルの力を限界以上に乗せた、魔を浄化する力。疫病を振りまく死神である斑ちゃんには、天敵もいいところですから♪」

 

 私の言葉の通り、斑ちゃんはどんどん矢によって存在を削られていって、最後には意識を失って、抵抗も出来ずに全身から力を抜きました。

 

「・・・魔王、ゲットです~」

 

 そうなった斑ちゃんの体に刺さっていた矢が消えて、プリムちゃんが鎖を解いて回収しつつ、一まとめにした真実の伝承のステンドグラスを顔を真っ赤にしながら掲げています~。

 これで、今回の作戦は終わりですね~。

 

 

 

▽▲▽▲

 

 

 

「お、頑張ってますね~」

 

 私はノーネームの本拠の農園跡地で、頑張って廃材を運んでいる人たちを眺めて、そう言います。

 あんなに小さい子まで、偉いですね~。

 

「で?私をここに呼び出したのは何でですか~?」

「ああ。ちょっと、今回のゲームについて聞きたくてな」

 

 私のすぐ横に立っているのはいざやん。

 やっぱり、気になりますよね~。

 

「まあ、結果としてゲームはクリアできたからいい。同盟の内容としても、な。むしろ死人が一人も出なかったんだから御の字だ」

「そうですか~?それならよかったですぅ」

 

 まあ、それについて文句を言われる筋合いはないんですよね~。

 ちゃんとクリアはしましたし、率先して動いたんですから~。

 

「黒ウサギやサンドラの邪魔をしたのも、確かに葵のギフトを使うなら邪魔でしかないからな。納得だ」

「それなら、用件はなんですか~」

「今回、何であんなことをしたのか、だ」

 

 ああ、それですか~。

 

「簡単なことですよ~。ちょっとコミュニティの人材補給で~す」

「人材補給?」

「はい~。“ヘル・サタン”はまだ三人しかいなかったですから~。ほら、来ましたよ~」

 

 私が指す先から仲よさそうに歩いてくるのは・・・つい先日まで魔王のコミュニティとして私達と争っていた、三人で~す。

 

「あらあら、三人とも似合ってますよ~」

 

 三人は、メイド服と執事服を着てもらっていま~す。

 

「まったく、何で私がこんな格好・・・」

「いいじゃないですか、マスター♪似合ってますよ」

「まあ、二人は似合ってるよな。俺は髪が伸びねえと、この格好は・・・」

「整えればいいんじゃないですかね~」

 

 実際、リバー君も少し髪を整えれば似合うと思うんですよね~。

 

「・・・で?私達はあなたに隷属してるわけだけど、何をしたらいいの?」

「そうですね・・・では、あちらを手伝ってきてくださ~い」

 

 私がさしたほうに、三人ともが素直に行って、シュトロムまで出して手伝っていますね~。

 うんうん、素直にいうことを聞いてくれるみたいで安心ですね~。

 

「・・・なるほどな。それで、全員回収してたわけか」

「正解で~す。隷属のために皆、こういったもので縛ってますし」

 

 そう言いながら私が見せるのは、指輪とネックレス、ブレスレットの三つ。

 順番に斑ちゃんにリバー君、フルートちゃんもつけているこれには、“グリムグリモワール・ハーメルン”の旗印が刻まれていま~す。

 向こうからの要望を、白ちゃんが聞き入れてくれたんですよね~。

 

「・・・ま、結果としてはクリアできたんだし、ノーネームと同盟を結んでるコミュニティが戦力強化をしたんだ。これ以上は聞かなくてもいいな」

「そうですよ~。それに、敵対する気は無いですから~」

「その言葉、信じていいんだな?」

「はい~。ミカさんからの頼みですから~」

 

 一応、あの天使()恩人ですからね~。

 頼まれた以上、ちゃんとやりますよ~。

 

「十六夜さ~ん!重くて一人ではもてないので、手伝ってくださ~い!!」

「葵!!アンタも手伝いなさいよ!!!!」

 

 話が纏ったあたりでそう呼んできたのは、いつも通りの格好のウサちゃんと、チャイナドレスのプリムちゃん。

 うんうん、プリムちゃん人間形態のときは肌が真っ白ですから、ああいうのも似合うと思ったんですよね~。

 

「んじゃ、手伝いに行くか」

「はい。はやく土地には復活して欲しいですからね~」

 

 そして、私といざやんは廃材を運ぶのを手伝いに行きました~。

 途中からどっちが同時により重いものを運べるかの勝負になって、楽しかったです~。

 

 あ、勝負は私が勝ちましたよ~。

 いざやんはやっぱり、筋肉の使い方を学ぶべきですね~。

 




こんな感じになりました。

いや~。疲れた・・・

では、感想、意見、誤字脱字待ってます!
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