東方暗殺鐵〜リゾット・ネエロが幻想入り〜   作:ガリュウ432

2 / 7
お待たせ致しました。
物語はまだまだ序盤なので、特にストーリーの進展もございません。次回あたりからですかねぇ。

(リゾットの一人称を私から俺に修正致しました。ご指摘ありがとうございました。)

それでは本編をどうぞ


Episodio.2 メタリカーMetallica

全裸の銀髪の少女に風呂場で遭遇した後、俺は風呂上がりで湯冷めするといけないのでひとまず服を着て風呂場から出た。

 

「慧音、今上がったぞ。」

 

「そうか。湯加減は悪くなかったか?」

 

「ああ・・・。とてもいい湯加減だった。」

 

「それは良かった。・・・リゾット・・・、ひょっとしてだが・・・。風呂場で『何かに出会ってはいないか』?」

 

何かに出会う・・・。

・・・多分あれのことを言っているのだろう。

 

「・・・脱衣所で全裸の銀髪の少女と遭遇した。」

 

「・・・やっぱり・・・。アイツの叫び声が聞こえたからな・・・。なんと言っていたかはわからなかったが・・・。すまなかったな、アイツは元々今日来る私の客人なんだ。悪いやつじゃあない。そろそろ上がってくると思うから、仲良くしてやってくれ。」

 

「ああ。もちろんそのつもりだ・・・。」

 

そんなことを話しているうちに、先程の少女が風呂から上がってきたようだ。

 

「うぃー慧音。上がったぞー。・・・お、彼氏さんもいるみたいだね。」

 

「お、妹紅。上がったか・・・ん?『彼氏』・・・?」

 

慧音が一体何を言っているんだというふうに首をかしげる。妹紅も目を見合わせて首を傾げる。

 

「え?彼は慧音の彼氏さんじゃないのか?」

 

「・・・・・・!?!?!?!?!?ななななななななな、何を言い出すんだお前は!?そそそそそそそんなわけないだろう!!」

 

「焦りすぎだぞ・・・。尚更怪しいな・・・!」

 

「いやだから!!!」

 

「・・・おい。」

 

リゾットはたまらず2人に声をかける。

 

「「はいっ!?」」

 

「・・・自己紹介をして欲しい。俺の自己紹介もちゃんとするから、お前のことをなんて呼べばいいのかわからない。」

 

誤解を解こうにも、彼女の素性もわからないので下手に話す訳には行かない。

 

「あ・・・悪い。あんたは?」

 

「俺はリゾット・ネエロ。一応外来人だ・・・。」

 

「私は藤原妹紅(ふじわらのもこう)だよ。・・・あーえぇと・・・。あんたは彼氏さんじゃあないんだよな・・・?」

 

「だからそうだと言ってるだろ!!」

 

「落ち着け慧音・・・。俺はもちろん慧音の彼女じゃあない。なんなら今日が初対面だ。」

 

しかももし仮に彼氏だとすれば、友人が来る日に彼氏を連れてくるわけないだろう・・・。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「よし、夕餉が出来たぞ。たんと食べてくれ。」

 

「お、珍しく肉もあるじゃん。どうかしたのか?」

 

「生徒の親が猟師でな。今日その方からいっぱい猪肉を頂いてしまって、どうしようかと思ってたんだ。」

 

猪肉・・・。猪。久しく食べるな。特にお気に入りのリストランテがあった訳では無いが・・・。そもそも稼ぎも少ない。待遇も悪かったのが暗殺チームであったからな・・・。

 

「よし、食べるか!」

 

慧音がそういうと、妹紅が

 

「いただきます!」

 

と、声を上げた。

・・・そうか。日本にはそういう文化もあるのか。

 

「・・・いただきます。」

 

Paese che vai, usanza che trovi.(異なる国には異なる習慣)(日本語で郷に入っては郷に従えと同義)・・・だ。

 

「・・・驚いたな。君はイタリア人と聞いていたのだが。」

 

「・・・まあ。異国ではそこのやり方に従うのが一番いいからな・・・。」

 

・・・・・・・・・。

食事が終わり、一服している頃、妹紅が真面目な顔になり俺に尋ねてきた。

 

「ずっと気になってたんだけどさ、リゾットさっき、『一応外来人』って不思議な言い方してたけど、ありゃどういう意味だ?」

 

「・・・俺は死んでここに来た、という事だ。外来人は生存した物が来ることが普通らしいからな。」

 

「・・・そういうことか。ならリゾットって、幻想郷(ここ)に来る前は何をしていたんだ?・・・あ、嫌なら話さなくてもいいけど。」

 

・・・やはり聞いてくるか。一応、釘をさしておこう。

 

「そうだな・・・。話しても構わないが・・・、慧音。もし、俺の過去を聞いて、気が変わったのなら、この家からたたきだしてくれて構わない。」

 

「・・・少なくとも一般人に認められるようなことをしていない・・・ということか?」

 

慧音が真剣な顔で聞いてくる。

俺はその質問に素直に頷く。

 

「ああ。・・・俺は、ここに来る前、とあるギャングの暗殺者(アサシン)の集まり・・・。いわば『暗殺チーム』のリーダーだった。」

 

「!?」

 

「!!・・・じゃあ、隠密のプロである君が、なぜ死んでここに来たんだ・・・?」

 

慧音からの指摘。これにも素直に答える。

 

「・・・俺は、いや俺達は・・・、絶対の王である、ボスを裏切った。我々の仕事と待遇の釣り合わなさから反逆を企てたのだ。」

 

「・・・だから殺されたというわけか?」

 

「・・・いや、俺以外のほかのメンバーは、俺たちとは違う、別のチームの人間に殺された。・・・皮肉な事に、そのメンバーを殺した奴らも、ボスを裏切っていたみたいだがな・・・。」

 

「じゃあ、お前は・・・。」

 

妹紅が眉を下げておずおずと聞く。

 

「・・・俺は、そのメンバーを殺した奴らを追っていたら、幸運にもボスに出逢えた。・・・そして、ボスをあと少しで殺せる・・・というところで、相手の術にかかり、殺されてしまった。・・・そして、気がついたらここにいた。」

 

「・・・そう・・・か。」

 

慧音は顔を俯かせる。

妹紅は何も言わずにこちらを見ている。そして、しばらくして、口を開く。

 

「つまり・・・、仕事以外じゃあ殺しはしたことないってことか?」

 

「・・・?まあそうだな・・・。あまり仕事以外では実力を見せることはしない・・・。いつ、足がついてしまうか分からないからな。」

 

「・・・なら、いいんじゃねえか?」

 

「まあそうだな。・・・君がどこでも人を殺していたような大悪人なら追い出すだけじゃなくてここで始末していたかもしれないが、君はいい人間のようだ。・・・信用していい。」

 

信用・・・。信用か。ある意味、我々暗殺チームが1番欲しかった言葉なのかもしれない・・・。まさか、こんな所でかけられるとは・・・。

 

「・・・そうか、恩に着る・・・。」

 

「ああ。もとより、君を歓迎する気でいるんだ。そう気負いしないでくれ。」

 

「私も突然聞いて悪かったね。リゾットが極悪人だったらどうしよかと思っていたんだ。」

 

「・・・一応、悪人ではあるんだが・・・。」

 

「根はってことさ。リーダーになれるってことは、それなりに人格者ってことだからね。それに、チームメンバーを殺した相手を追っていたということは『少なくともチームメンバーに思い入れがあった』んだろ?復讐の意志はあるないに関わらずだけどね。」

 

そこまでよく言ってくれるとは・・・。

・・・だが、その通りなのかもしれない。メンバーが日に日に減っていく日々。この世界に入った発端も元は復讐からだ。もしかしたら少なからずあったのかもしれないな。しかし、暗殺者が復讐者になったからこそ・・・、敗北したのだろうか。・・・まあ、今となってはどうでもいいことか。2人は俺を受け入れてくれるらしい。有難い話しじゃあないか・・・。

 

慧音が思い出したように立ち上がり、押し入れから服のようなものを取り出す。

 

「・・・そうだった。リゾット、部屋着を渡しておくよ。いつでもその服じゃあ窮屈だろう。」

 

「・・・この服は?」

 

「浴衣といってな。日本の固有の衣服だ。イタリア人にとっては馴染みがないかもしれないが・・・。まあ、落ち着けると思うぞ。」

 

慧音は笑顔で渡してくる。

しかし開くとその服は、薄いコートのようだった。

これを下着の上から着るというのか?・・・もろ見えじゃあないのか?

 

「慧音ー。渡してもリゾットは着方が分からないと思うぞ?もろ見えじゃあないかって顔してるぞ。」

 

「・・・ああ。情けない話だが、着方がわからない。」

 

「・・・仕方ないな。ほら、袖を通して両腕を上げてくれ。」

 

袖を通して両腕をあげると、慧音が襟を正し、紐を結び出す。

ガタイのいい女とは思っていたが、こう近くで見ると、背は低いんだな。

 

「・・・君が高いんだろ。」

 

「・・・なぜ心がよめた・・・。」

 

「ある程度わかるさ。」

 

ふと気づくと、妹紅がニヤニヤとしている。

 

「おい妹紅。何をニヤニヤしている・・・。」

 

「いやーやっぱり2人はさ、デキてんじゃないの?彼氏彼女超えて夫婦みたいだよ?」

 

ゴッ!!!!!!!!!!!!!!!

 

とんでもない音が家に響く。

さっきまで紐を結んでいたはずの慧音が、高速で妹紅の目の前に移動していた。そして、さっきまで笑顔だったはずの妹紅が倒れている・・・。

 

「・・・今、頭突きしたか・・・?いや、頭突きの音だったか・・・?」

 

「・・・口は災いの元という事だ。」

 

慧音は「お前もなんか言ったら同じ目に遭わせる」と言わんばかりの目線を送ってきたので俺は口を(つぐ)む。

・・・慧音の前ではあまり下手なことを言うのはよそう・・・。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

着付けが終わり、着心地を確認する。

・・・落ち着けていい服だ。かなりスースーするが・・・。

 

「今日はもう遅い。明日もあるし、2人とももう寝るといいだろう。」

 

「・・・そういえば、明日妹紅は何をするんだ?」

 

「私も寺子屋の手伝いかな。まあ私は学があるわけじゃないから子供たちと遊んでやってるだけだけどね。」

 

「まあ子供たちのいい息抜き相手に放ってるさ。」

 

教師ではないんだな・・・。

イメージ通りに近いが・・・。

 

「・・・リゾット、失礼なこと考えてないか?」

 

「考えてない。というかなぜお前達2人は心を読めるんだ。」

 

談笑を交わし、もういい時間になったので、寝床に入る。

慧音が用意してくれた寝室に入る。日本ではベッドではなく、床に直に引く布団というものが敷かれていた。床も畳という植物でできた床で柔らかく、過ごしやすい。

特に動いていた訳では無いが、今日はよく眠れそうだ・・・。

 

ー翌日ー

 

慧音が朝食を用意している音、そして朝日の光が差し込み、起きる。

薄暗い光じゃなく、明るい朝の陽射しを浴びて起きるのはかなり久しぶりかもしれない。

身体を起こし、襖を開ける。

 

「お、おはよう、リゾット。朝餉ならできているぞ。顔を洗って、食べるといい。」

 

「ああ、ありがとう。」

 

あっさりとした朝食のメニューを全て平らげ、いつもの服に着替える。まだ時間に余裕があるのか、慧音も寛いでいる。

 

「いつ頃出発するんだ?」

 

「30分後くらいだな。とはいっても、寺子屋まではすぐさ。妹紅ももう起きるはずだろうし。」

 

そういうと、慧音の後ろの襖が開く。

 

「ふぁ〜・・・おはよう二人とも・・・。」

 

「おはよう妹紅。すぐに顔を洗ってこい。飯はできてるぞ。」

 

「ああ、ありがとう。」

 

「・・・いつもこんなふうなのか?」

 

「まあな。しょっちゅう妹紅も家には来るが、あんな感じだ。悪い気はせんがな。いつもは1人だから、人が増えるのは楽しいものだ。」

 

慧音が微笑みながら喋る。

その後、顔を洗って帰ってきた妹紅が物凄い勢いで朝食を食べ終えた。・・・見ているこっち側が苦しそうになるくらい早かった。

3人の出発準備が終わり、玄関を開ける。

朝早いが、人が沢山歩いていた。・・・朝市で賑わっているのか・・・。

 

「さて、向かうか。」

 

「はいよー。」

 

寺子屋の方面に歩き出す。場所は慧音の家の裏手、いわゆる村の大通りにあるみたいだが。慧音の言う通り、そこまで遠くはなかった。というよりかはかなり近い。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さて、もうそろそろ授業が始まる。私は教材の準備がまだあるから、2人は教室の前で待っていてくれ。」

 

言われた通りに、妹紅と俺で教室の前で待つ。

教室の前に立つと、中から賑やかな声が聞こえる。

 

「・・・そういえばリゾットは、教師の経験はあるのか?」

 

「・・・全くないな。まあ、教えるくらいならなんとかなるだろう・・・。」

 

かと言って緊張してないわけじゃないし、不安もある。・・・何せ、今までしたことがないからな、教師というものを。

 

「すまない待たせたな。じゃあ、入ろうか。」

 

そう慧音がいい、心の準備が済まないうちに障子を開ける。まあ、なるようにはなる・・・か。

 

「みんな!おはよう!」

 

「おーっすお前ら!!」

 

慧音と妹紅が挨拶を言いながら入る。・・・俺も、軽い会釈をしつつ入る。

 

「「「「「おはようございます!!」」」」」

 

「えーみんな、今日は私と妹紅先生ともう1人、お手伝いで来て頂いている人がいる。自己紹介してもらうから、よく聞くようにな!」

 

そのように促され、教壇に立つ。

 

「・・・今日、教師として入るリゾット・ネエロだ。よろしく頼む。」

 

「「「「よろしくお願いしまーす!!!」」」」

 

子供たちが大きな笑顔で返事をする。

これが・・・触れることのなかった世界・・・か。

 

よく見るとちらほらと羽根の生えた少女がいるな。

昨晩慧音が言っていた『妖精』というやつか。

 

『この幻想郷には、人間だけでなく多種多様な種族がいる。妖怪や妖精など・・・。ただ、意思疎通はしやすいと思うから気にしなくていい。』

 

たしかに、こう見る分には健気な子供と変わりはない・・・。

妖怪や妖精と聞いてどんなものかと少しばかり不安だったが、これも解消されたな。

 

ー理科の時間ー

 

「この世には『磁石』というものが存在する。これは同じ磁石をくっつけたり、(しりぞ)けあったりする不思議な石なんだ。」

 

「せんせ!なんでその石、赤と青に塗られてるの?」

 

1人の生徒が聞く。

 

「そうだなー。理由としては極をわかりやすくするためだな。」

 

「・・・きょく?」

 

「じゃあよーく見とくんだぞ。」

 

磁石・・・か。もしかしたら、この世界ではスタンドは不必要なのかもな。戦う必要などサラサラないのだろう・・・。

 

「赤と青を近づけると・・・。」

 

カチンッ

 

「すごい・・・!落ちない!!」

 

女子生徒が驚く。

 

「でも、同じ色どうしだと・・・。」

 

「あれ・・・くっつかない?」

 

「何かを挟んでいるみたいだ・・・。」

 

生徒がざわつく。

 

「こんなふうに、磁石は不思議な物体なんだ。赤をN極、青をS極というぞ。磁石を水に浮かせると、赤の方は必ず北をむく。方角を調べるのにも使われているぞ。」

 

「リゾット先生、ちょっといいですか?」

 

授業を見ていると、名前を呼ばれ周囲を見渡す。

 

「・・・お前は・・・。」

 

気づいた方向には、緑髪をサイドテールでまとめた、羽根の生えた少女だった。俺は先程慧音から渡された座席表を見る。名前がわからないからだ。

 

「大妖精だな。・・・どうかしたか?」

 

「ちょっと気になるところがあって・・・。なんで、磁石ってくっつく時と離れる時があるんですか・・・?」

 

おどおどとした様子で聞いてくる。

俺は、大妖精の横に座り、解説を始める。

 

「・・・なるほど。こういう時は、図を書いてみるとわかりやすいぞ・・・。」

 

俺は、大妖精に1本の棒磁石を描かせた。

そして、そこに線を付け足していく。磁力線だ。

 

「・・・この矢印を向いている方向に、力が働いているという訳だ。着いてこれているか?」

 

「は、はい!分かります!」

 

「そして、これを同じ方向に二本並べると、S極が受ける磁力線は相手の磁石のN極からの磁力線と同じ方向に向いているだろ?だから、自分の方向に、相手の磁石を引きつける・・・という訳だ。・・・分かったか?」

 

「・・・はい!分かりました!ありがとうございます、リゾット先生!!」

 

大妖精が笑顔で礼を言ってきた。

・・・どうやら、上手くいったようだな。

どうなることかと思ったが、教師として上手くやれているのではないだろうか。

その時、何者かが廊下をドタドタと大きな音で歩いてくる音がした。そして、教室の障子が勢いよく開く。

 

「ガキドモォッ!うるせぇんだよっ!!!」

 

出てきたのは小太りの青年。

・・・どの世界でもあんな落ちに落ちた人間というものはいるようだな。ギャングの俺が言うのもなんだが。

 

「なんだ貴様は!」

 

「センコーは黙っとけ!おいガキども!!テメーらギャーギャーやかましいんだよ!!迷惑なんだよ!」

 

「ひぃっ・・・!」

 

子供たちが全員後ずさる。

先程まで教えていた大妖精を自分の後ろに隠れさせる。

 

「・・・おい、止まりな。お前なにもんだ。」

 

妹紅が子供たちの前に立ち、男に聞く。

 

「へへ、ただの人間さ。人間様さ!テメーらガキどもがうるせぇから数を減らしに来たんだよ!いるのは僕みたいに未来を見据えた偉いやつが必要なんだよ!」

 

「・・・お前・・・!」

 

「手ぇ出すの?僕はこの里の幹部の息子だよ?センコーに手ぇ出されたって父さんに言って、こんな寺子屋潰してやることも出来るんだぞ!!」

 

「・・・そんなくだらねぇ事のために・・・!」

 

「妹紅!・・・やめろ。」

 

「だけどー」

 

「・・・妖怪の私が出ると、面倒なことになる・・・。妹紅も人間だが・・・、蓬莱人のお前が手を出すと同じことになる・・・。ッ・・・。」

 

「ひゃあーははははは!!!これで心置き無くガキどもを減らせるね!さぁ・・・1人ずつ刺し殺してやるっ!!」

 

「・・・お前には手を出せないかもしれんが・・・。・・・だが、生徒達には手出しさせん!!!」

 

男がナイフを近くの子供に突き刺そうとしたその時、慧音が目の前に飛び出す。

 

「ッやべ・・・!!」

 

「ッ!『メタリカ』ッ!」

 

俺は咄嗟に叫ぶ。男の手にあるナイフは慧音の胸を突き刺す寸前で止まる。・・・間に合ったか。

 

「・・・?(今・・・、僕、ナイフ止めたっけ?まあ、いいか。)センコー。危ねぇじゃん。僕はあんたには興味ないの。ガキを殺すことしか目的じゃないの。いいから黙ってどけっ!!!」

 

もう一度男はナイフを振りかざそうとしているな。・・・だが、もう・・・。『遅い』。

 

「っ!?あれ!?なんで!!ナイフがっ!?持ち上がらないんだ!?どうして『空中で静止してんだ』ッ!?」

 

男はついナイフから手を離す。

・・・しかし、ナイフは『地面に落ちなかった。』

 

「・・・何が起きてるんだ・・・?」

 

慧音も、目の前で起こっている事態を受け止めきれない。

妹紅も同じ状態だ。

男が焦っている。今がチャンスだろうな。

俺は男の方へと歩き出す。

 

「リゾット・・・先生?」

 

後ろにいる大妖精が、びっくりした目でこちらを見つめる。

 

「・・・大丈夫だ。慧音も、俺に任せてくれ。」

 

「・・・リゾット・・・。」

 

「慧音と妹紅が『人間でない』ということが今のでわかってしまったが・・・。そんなことは関係ない。私も似たような状況だったのだからな。優しさに、『そいつが何者か』なんて無粋な言葉は要らない・・・。そうだろう。2人とも。」

 

「・・・。」

 

「なんか新しー奴出てきたじゃん・・・。まさかッ!こいつがこのナイフを!?」

 

(ッ・・・!まさか、これがリゾットの・・・!?)

 

「・・・恩人を助ける為ならば、俺は実力を出すのは厭わない。・・・覚悟するといい。お前に勝ち目はない。」

 

「舐めやがって・・・!別にナイフなんかなくてもッ・・・!」

 

「・・・みんな、授業の続きだ。」

 

俺の一言に全員が目を丸くする。

・・・ま、無理もないだろう・・・、

 

「リゾットお前、なにを・・・!!」

 

「磁石というものは、別に磁石とだけくっつくものじゃあない。・・・実は磁石はあるひとつの金属を引きつける。・・・それは鉄だ。」

 

俺は、男から目を離さずに男に近づきながら話す。

その間に、アイコンタクトで妹紅と慧音に子供たちを後ろに避難させる。

 

「・・・鉄・・・。」

 

「あの鍋とかに使われてるやつのことー?」

 

「こんな時にも質問するのかよ!」

 

子供たちの変なまじめさに妹紅は呆れる。

 

「そう、その鉄だ。そして、磁石にひきつけられているものは、『必ず磁石の方を向く』。」

 

そう言いながら、男の目の前にあるナイフを指さす

そのナイフはしっかりと空中で固定され、慧音がいた方向に刃先は向いておらず、『俺に向かって刃先が向かっていた』。

 

「なっ!?(まさか・・・、リゾットに向かって磁力が働いているというのか!?)」

 

「そして鉄は、磁力を受けると・・・。」

 

メタリカをさらに発動させ、ナイフをこちらに飛んでこさせる。

 

「なっ僕のナイフがっ!!」

 

しっかりと柄を掴み、能力を解除する。

 

「・・・このように磁石に向かってくる。・・・俺のは簡単に言えば、磁力を操る能力を持っている。何の罪もない子供を狙うお前に使うには少しばかりもったいない能力だが・・・。」

 

「てめェ!どーいう仕掛けなんだよォーッ!!意味わかんねーことぬかしてんじゃあねーぞ!!」

 

 

 

「・・・これが、『スタンド』というものだ。」

 

 

 

「・・・スタ・・・ンド?」

 

妹紅が聞いたことないというふうに首を傾げる。

 

「スタンドは精神力が具現化したものだ。攻撃力を持ち、・・・特殊能力も持つ。その特殊能力がこれということだ。」

 

「・・・ハン!要は磁力を発生させてるだけだろ!?じゃあ近づけば問題ないってことだなっ!!」

 

「・・・自ら射程距離に入ってくるか・・・。無知は・・・罪だな。」

 

俺はメタリカを発動させる。

今回は磁力じゃあない。・・・男に対してだ。

 

「・・・!?ぐぇっ!?」

 

男は腕に激痛が走り、腕を見る。

右腕の内部にくっきりとナイフの形が浮かび上がっているのだ。

 

「ぎゃああああああああっ!?ぼ、僕の腕の中にッ!?なんでナイフが入ってんだよォーーー!?」

 

男は焦り、右腕を振り回す。

右腕を振り回した影響で、内部からナイフが突き出る。

 

「イッデェエエエエッ!?!?」

 

「・・・どうした。俺を殴るんじゃあなかったのか。腕にナイフを入れ、突き出させるなんて器用なマジックをするじゃあないか。」

 

慧音は目の前で起きている状況を受け入れられなかった。

さっきまでナイフは『1本』だった。男が持ってきていたナイフしか無かったはずだった。そのナイフはいま、リゾットが握っている。筈なのに、今は『2本ある』。男の腕から突出しているのだ。

 

(どこから・・・、出現したと言うんだ・・・?)

 

「リゾット先生つよーい!!」

 

「カッコイイー!!」

 

「リゾット先生・・・!」

 

「・・・子供には見せられねぇ惨状のはずなのになんで子供はこんなに盛りあがってんだ・・・。さすが幻想郷。」

 

妹紅も再び呆れる。

だが、リゾットにこんな能力があるとは、つくづく不思議な男だと思わされた。

 

「・・・3秒だ。」

 

「あ・・・?」

 

「3秒以内に今までの非礼を子供たちと2人に謝れば能力を解除し、治療してやろう。・・・だが、言葉がなかった場合はもう少しきつい罰を受けてもらおうか。」

 

「はっ・・・!そんな情け、僕にはいらないんだy」

 

「3」

 

「・・・ちょ、嘘だよね?」

 

「2」

 

「嘘だといえ・・・よ・・・!」

 

「1」

 

「ヒイイ・・・ッ!」

 

「ゼ」

 

「ひいいいいいい!!ゴメンなさい!!皆さん、本当に申し訳ありませんでした!!!仕事が上手くいかず、むしゃくしゃしてやったんです!!本当に申し訳ありませんでした!!」

 

悪足掻きなどせずにそうそうに謝ればいいものを。

ギリギリまで持ちこたえようとしても意味は無いだろう。

 

「・・・まったく。生徒であれば頭突きをしていたが・・・。どれ、腕を見せてみろ。」

 

「うぅ・・・、ごめんなさい・・・。」

 

男は腕を見せる。・・・だが、ナイフは消えていた。

 

「・・・あれ?ナイフ・・・は?」

 

「もう消しておいた。能力で出現させたものだからな。俺が操っているものだから、消せるのは容易い。」

 

「・・・リゾット、お前の能力、・・・一体なんなんだ・・・?」

 

「・・・後で詳しく話す。今は手当をしてやれ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

男は手当が終わるとしおらしくなり、妹紅に連れられ寺子屋を去っていった。

そして、教室では・・・

 

「リゾット先生!あれどういう能力なんだ!?」

 

「せんせー!もっかいやってー!!」

 

「・・・お、おい、お前ら・・・。」

 

「ふふ、懐かれたみたいだな。」

 

「あんなおぞましいもの見せられて、どうして懐けるんだ・・・。」

 

子供たちに囲まれていた。・・・しかし、どうやらこの世界ではスタンドこそないようだが、スタンドの『能力』に通ずるものはあるようだな・・・。

 

「リゾット・・・。そろそろ聞かせてもらおうか。」

 

「・・・そうだな。子供たちも聞いておいた方がいいかもな。少しばかり、俺の能力は危険なところがある。聞いておいてくれ。」

 

そう忠告を受け、全員息を呑む。

そこまで身構えなくてもいいが・・・。

 

「さっきも言ったが、俺はスタンドというものを持っている。」

 

「まった、そのスタンドというのは・・・。」

 

「・・・一応俺のスタンドはこんなものだ。」

 

全員に手のひらを見せ、そこから『メタリカ』を出現させる。

 

 

『ロォォォォォォォォド・・・。』

 

 

「・・・なんだ・・・これは?」

 

「なにこれー!」

 

・・・スタンドはスタンド使いにしか見えないはず。

幻想郷では見えるようになっているのか?

 

「ちょっと可愛いかも!」

 

・・・そうか。メタリカは可愛いのか。

 

「これがスタンドというものなのか?」

 

「ああ。俺のは群体型といって、複数体居るが、本来は1人1体がスタンドのルールだ。俺のは所謂特殊型だ。」

 

「・・・そしてそいつの能力だが、『磁力』と言っていたな。」

 

「・・・ああ。磁力を発生させる。だが、こいつはそれだけじゃあない。鉄を作り出せる。」

 

「・・・鉄を?」

 

「そうだ。人間の血液には『鉄分』が含まれている。それを使って鉄を作り出しているんだ。・・・あのナイフはあの男の鉄分から作り出したものだ。勿論、作り出したものなら鉄分に戻すことも出来る。」

 

「・・・なるほどなー。つまり、まさに暗殺向けの能力ってことだな。」

 

妹紅が呟く。

子供たちには聞こえてなかったみたいだが、俺は静かに頷く。

 

「リゾット先生ってすげーんだな!!最初は怖そうだなって思ったけど、俺たちを守ってくれて、ありがとう!!」

 

男子生徒が笑顔で礼を言ってくれる。

それに続き、生徒のほとんどが次々と感謝を述べる。

ふと、大妖精と目があい、大妖精も照れくさそうに頭を下げる。

俺自身、こういうことに慣れてないせいか、俺も微笑み返すことしか出来なかった。

 

「・・・あれ。ふぇえっ!?リゾット先生!メタリカちゃんが!!」

 

大妖精が叫び声を挙げる。

 

「なんだ!?どうした!!」

 

「私のハサミの形を変えちゃってますー!」

 

「・・・メタリカ、生徒を困らせるんじゃあない・・・。」

 

まったく・・・、未だ動揺がスタンドに現れやすいな・・・。

 

to be continued…




バトルといえばバトル、リゾットのスタンド初出現編でした。2人目のヒロイン、大妖精の登場回でもあります。
一応、リゾットさんは動揺は表情に現れにくいが、スタンドに現れやすいという設定にしています。

ー次回予告ー
Episodio.3 幻想郷の賢者ーSaggio di Gensokyo

Introduzione del personaggio
上白沢慧音/KAMISHIRASAWA KEINE
ー知識と歴史の半獣
性別/女性
種族/ワーハクタク
能力/歴史を食べる程度の能力、歴史を創る程度の能力(獣時)
危険度/低 人間友好度/高
リゾットを匿ってくれた人間と妖怪のハーフの女性。
面倒見がよく、初対面のリゾットにも分け隔てなく接する。
寺子屋で教師をしており、説教時にあびせられる頭突きの威力は相当。1番くらっているのは妹紅。

藤原妹紅/FUJIWARANO MOKOU
ー不老不死の竹林案内人
性別/女性
種族/人間(蓬莱人)
能力/老いることも死ぬこともない程度の能力
慧音の親友。妹紅自身も慧音の事を自分の理解者だととても好意を持っている。初対面のリゾットにもとても良く接してくれる。普段は、『迷いの竹林』の案内をしている。

大妖精/DAIYOUSEI
ー名無しの大妖精
性別/女性
種族/妖精
能力/不明
寺子屋の生徒。授業中、リゾットにもわからない箇所を尋ね、その直後に起きた事件から、自分のことを守ってくれたリゾットのことを意識するように。穏やかな性格で、妖精の中では知識もある。寺子屋では優等生のようだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。