「いい眺めね」
私は旅団の気球に乗り、夜空を旅していた。
「ちょっとアンタ。気安く身体に触れようとしてんじゃないよっ」
マチとじゃれ合いながら。
「しょうがないわね。やめてあげるわ」
残念ながら、まだ一方通行の気持ちでしかないので、私は大人しく手を引く。
一応、マチの手さばきを確認する意味もあったけど、本気の私には及ばない事がわかった。これならいざって時に力技で抑えられる。
「団長が連れて来い、って言ったから手荒な真似はしないけど……この状況で良く動じないね」
「ガールズハンターですから」
マチに笑顔で伝えて、今度はシズクの横に移る。
本を読んでいる所を邪魔するのはちょっと嫌だったけど、本能に従って胸に手を伸ばす。
「ん」
どうやら、本を読むのに集中しているらしく、シズクは無抵抗で触らせてくれる。ただ、反応が薄いのはあんまり面白くない。
頑張って、声だけでも引き出しましょうか。
「んん」
服と下着の上からでも、しっかりと分かる柔らかさ。着痩せするタイプではないらしく、大きさは見た目より小さいけど、もちろん文句はなし。微乳でも、女の子のおっぱいには変わりない!!
「アンタ、いい加減にやめな」
「マチが触らせてくれるなら」
「……はあ」
マチの呆れ顔、頂いたわ。お金を払ってもいいレベルね。
「はっはっはっ、いい女じゃねえか。今度、手合わせしようぜ」
「いいけど、死なないでよ……って、どうかした?」
ウボォーの言葉に笑顔で返すと、何故かきょとんとされた。
「んーや。どれくれぇの実力があるか、本気で知りたくなっただけだ。俺達が蜘蛛だって知っていて、いつでも嬢ちゃんを殺せそうな状況でありながら、殺されないという確固たる自信。その上で挑発にも取れる言動なんて、並大抵の実力者じゃそうはいかねえからな」
なるほど、そういう考えをしていたのね。
ウボォーって、どちらかと言えば馬鹿なのかなと思っていたけど、中々に賢いわ。戦闘狂であると同時に、戦闘に関わる事に対して、物凄く真面目な観点も持てる。
これこそ、並大抵の実力者じゃない証拠ね。
「お褒め頂き光栄よ」
男なのが非常に残念だけど、クラピカに殺させるのは勿体ないかも知れないわ。場合によっては、助ける選択肢もありになる。
「フェイタンは、リナとちょっとだけ戦ったんだろ? どれくらい強い?」
シャルナークがフェイタンにそう訊ねて、シズクを除き皆の視線がフェイタンに向かう。
ただし、私はそんな事を無視して、またシズクの胸を揉む。一応、ちょっとだけ意識は向かわせるけど。
「……実力は能力次第ね。体術なら、蜘蛛の誰よりも強いと思たよ」
どうやら、私の実力を読めるくらいには、実力があるようね。お陰で、体術なら基本的に負けないと理解できる。
「フェイタンがそこまで言うなら、嬢ちゃんはかなり強いって事だな。おーい、嬢ちゃん。能力は何系だよ?」
「特質系よ」
私は手を止めないで、顔だけをウボォーに向けて答えた。
「団長やパクノダと一緒か。こりゃ、手合わせが楽しみになってきたな」
「手加減はしてあげるから安心していいわよ」
手合わせが決定事項になっている事を無視して、私は微笑んだ。
◆ ◆ ◆
それから、気球が撃ち抜かれ、一時間くらい続いた空の旅が終わりを迎えた。
不時着した場所は、原作と同じ通りの荒野。目下の地面には、黒服のおじさんがうようよしている。
空に向かって適当に発泡される銃が、なんかリズミカルで音楽に聞こるのが面白い。
「オレがやって来らぁ。嬢ちゃん、一緒に行くか?」
……あれ、誘われた? ウボォーって一人で戦うのを好むんじゃなかったかしら。
「そうね……手伝うわ」
多分、実力を見極める一端なんでしょう。
私は素直に従って、ウボォーの後ろに付いていく。
「待て」
一人の黒服が手で仲間を静止しウボォーに近づいて、ウボォーの顔に銃を構えた。
「客をさらったの、テメェらか?」
「ああ」
「この場面でええ──」
面倒だったので、フライング気味に黒服の首を刎ねる。
一般人相手なら、素手に念を込めるだけで余裕なのが非常に助かるわね。
「おいおい嬢ちゃん。俺の獲物を取らないでくれよ」
「だって、面倒だし……」
できれば、クラピカが来る前に帰りたい。ばれても問題はないけど、ばれない方が面倒じゃない。
「それもそうか。なら、さくっと終わらせちまおう」
「ありがとう、ウボォー」
「いいって事よ。んじゃ、逃げたい奴は逃げな。一人も逃さねえけどな!!」
ちなみに、こう呑気に会話している間も、しっかりと弾丸が命中していたのだけど……まあ、それは置いておきましょう。
どうせ、取るに足らない出来事だわ。
「さてと……」
視界の端で捉えた狙撃手二名の為に、手頃な大きさの石を二つ用意した。
そして、視線を向ける事なく石を二つ投擲して、狙撃手の殺害に成功する。
これで服が傷つく可能性を一つ排除できたので、黒服を適当に殺していく。もちろん、剣は使わずに身体のみで。
「そこまでだ、バケモンが!!」
恰幅のある、ハゲのおっさんがバズーカーを構えた所で、小石を銃口に投げ入れる。
「あ?」
気づいた頃に、時すでに遅し。案の定、爆発した。
爆煙が晴れると、黒服たちとハゲの肉片らしき物が落ちている。焼き具合は、こんがりっぽい。
「焼き鳥、食べたいわね」
「オレは肉が食いたいぜ。この後、皆で飯でも行くか」
「賛成」
逃げまどう黒服たちの悲鳴を無視して、ウボォーと会話を続けた。
◆ ◆ ◆
「っ!?」
クラピカは、双眼鏡を使って見た光景、人物に息を飲んだ。
体格がかなり良く、素手で人を紙屑の如く千切る男。
(なぜ、リナさんが……)
その相方は、場違いな美少女。白いワンピースに、茶髪のポニーテール。どこか気怠そうに黒服を殺す様子は、ある意味、クラピカが知る普段のリナと相違が無かった。
「どうしたの、クラピカ?」
「いや……見てみるといい。相手たちは、桁外れに強い念能力者だ」
クラピカは、動揺を隠せない相手に、動揺を隠そうと試みながら双眼鏡を渡す。
(理由は、後で訊けばいい。今はただ、任務に集中する)
そう自分に言い聞かせて、クラピカは一度、リナに対する思考を止める事にした。
◆ ◆ ◆
「まず、一人目よ。絶は中々のものだったけど、私に遠く及ばないわ」
ウボォーと陰獣の犬が会話している途中で、地中から出てきそうだった陰獣を、地面を砕くついでに叩き潰した。
確かな感触があったから、運が良くても瀕死状態ね。
「まじか、全然気づかなかったぜ」
「私は円が使えるからよ」
実際には、事前情報を持っていたのと、使うまでもなく気配が分かったからだけど。
「あの面倒なやつか……細けえ作業は嫌いだ」
「ウボォーはそうでしょうね」
「なめやがって……死んで貰う!!」
私たちの会話に痺れを切らしたのか、犬の言葉をきっかけに、三人で突っ込んでくる。
「美少女にそれは酷いと思わない? 死ぬのは貴方たちよ」
「は?」
犬は首。
「え?」
毛玉は胴体。
「あ?」
虫は手足。
「全く。自分の実力をわきまえなさい」
「うぉぉぉ。何したんだ、嬢ちゃん!?」
ウボォーが驚くのも無理はない。
三人との距離はおよそ10m。飛び道具を使った様子もなく、私は右手を数回振っただけ。
考えられる可能性は、具現化系の何かを"隠"を使って隠していた場合。そして、斬撃性の何かで、距離があっても攻撃が届く物。
つまりは、"凝"で私を見ていないと分からない。想像だけだと、ちょっと判断するのが難しい事になる。
「ま、これが私の念能力なのよ」
実際に使ったのは剣……まあ、気づかないでしょう。手の動きを、わざわざ曲線軌道にしておいたし。
もしかしたら、後ろにいる旅団員には勘付かれているかも知れないわね。"凝"による視線は感じなかったから、恐らくだけど。
「そうか、こりゃ本当に楽しみだ。残る陰獣は六人……競うか?」
「乗ったわ。今のこれはノーカンにして、先に四人倒したら勝ちね。負けた方がご飯奢りで……何か問題あるかしら?」
「んや、問題なしだ。次は少し全力で行くぜ」
「期待してるわ」
一つ、問題があるとすれば……。
私は少しだけ移動し、ウボォーの背中で間接的に隠れている、ノストラード組を視界に捉える。
クラピカと、ばっちり目が合った。
やっぱり……いたわね。フォローが必要かしら。
「どうしたよ、ため息なんかついて」
「残る陰獣が、馬鹿じゃなければいいなと思ったのよ」
つまらなさそうに見せて、足に付けておいたホルダーから携帯を取り出し、クラピカ宛にメールを作成して送信する。
ほどなくしてメールが返ってきたので、内容を確認してからホルダーにしまう。
無事に帰ってくれて助かるわ。こんな所で戦闘なんて、誰の得にもならないし。
「あ、陰獣がそろそろ来るわよ」
相手からすれば、"円"の範囲内に入っているなんて思ってもいないでしょうね。
「おお、まじか。お前ら、陰獣が来るってよ」
ウボォーの言葉に、残りの旅団員が近くに集合する。
「マチィィィ!!」
とりあえず、私はマチに飛びつく。
「来るんじゃないよっ」
すると、全力で回避されてしまった。
「酷いわ。少しくらい触らせなさい」
「さっきも言ったけど、アンタはどこか胡散臭い」
凄く的を射ているので、反論できないのが痛い。だけど、私はめげないわ。
「それでもっ!! マチが大好きなのよ!!」
私の想いを、素直に伝えてみる。
「性的な意味で?」
「うん。あ、いや違……わないわ。そうよ、全部好きなのよ!!」
的確なシズクの合いの手に、思わず本音が出てしまった。
「……アンタ、一回病院に行ったほうがいいよ。割りと真面目に」
そう言って、マチは私から遠ざかる。
どうやら、外したようね。今度は、別の方向を検討しないと駄目だわ。
「リナって、残念な人だね」
シズクの言葉が胸にクリティカルヒットし、私はその場で項垂れた。
◆ ◆ ◆
……完全に、忘れていた。間違いなく、私のせいだ。
「よし、ウボォーの居場所がわかった。地図を用意したから、今直ぐ向かうよ」
シャルナークの言葉で、数人が慌ただしく部屋から出て行った。
クロロの隣でその様子を眺めていた私は、ため息をついて奴を睨む。
「熱い視線を感じる」
語尾にトランプマークが付いてた、似非マジシャンの事を。
「知り合いだったのか?」
「一応。しゃべった事はないわ」
クロロに質問され、ヒソカに対して嫌味を込めた言葉で返す。
「そんなナチュラルに嘘を付かないで欲しいな。僕と君の仲じゃないか」
「……はあ」
本当に、余計な事をしてくれたわ。
結論から言うと、クラピカの手によって、ウボォーが攫われた。
その原因は、トランプを使って遊んでいる変態。原作の通りなら、この辺りの時間帯でクラピカと会って話をしている所のはず。
なら、何故。アジトにまだいるかと言えば、恐らくはメールで済ませたから。
とりあえず私が手を回して、クラピカとウボォーの戦闘を避けようと試みたのに、陰獣との戦闘中にウボォーが攫われた。
手段は原作と一緒。キッカケは、両方に確認を取った訳じゃないけど、多分ヒソカの密告。大方、私が旅団と一緒にいると聞いて──「面白そうだ」の理由でやったんでしょう。
もっとも、私が旅団と一緒にいると伝えて起こったはず。ウボォーが攫われたのは偶然じゃなくて必然で、その理由は強化系が良かったから、に違いない。
「どうやら、ヒソカに気に入られているようだな。で、リナと言ったか。お前の目的はなんだ?」
ただ、ただ冷静に。それでいて強い意志を全身から感じる。
特に強く感じるのは、交わした瞳から。返答次第じゃ、容赦しないという明確な殺意だわ。
「そうね……」
目標は色々ある。その中でも最優先は……やっぱり、アレになるわね。
「救済よ」
「…………その言葉に、偽りは?」
「ない」
私は、一段と鋭くなったクロロの視線を受けながら、そう断言した。
ヨークシンでの最優先事項は、パクノダの死亡回避。彼女は蜘蛛の為に望んで死んだのかも知れないけど、私が存在していて原作女子を死なせる訳にはいかない。
だから、遠回しにウボォーを守ったのだけど……ヒソカのせいで無駄になった。
正直、今からでも余裕で間に合う。けれど、クラピカの事を考えると転がる方向に転がれ、としか思わない。
私が介入するのは、一度だけ。ウボォーの救済に一回手を回したから、この後でウボォーに手を回す気は、恐らく起きないはず。
自分の事なのに予定が未定なのは、私の気まぐれな性格から。それに加えて、対象が男という点。ぶっちゃけ、目標に関係ない点。
この三つの理由から、私は動かない事になりそう……と、自己判断している。
もちろん、マチ、シズク、パクノダから、誰かの身体を対価として出してくれれば、問答無用でクラピカを殺すのだけど……まあ、それは私から提示する事もないし、よっぽどの状況だわ。
「…………なるほど。蜘蛛の未来を知っているのか。すると、タレコミはお前が……いや、その可能性は皆無か。お前が何らかの能力を使って知っていても、競売品を守る意味がないしな。なら、お前の目的は他にもあるはずだ。しかも、今の救済という言葉と、ほぼ同レベルの目的だろう?」
で、この男、賢すぎない?
確かに言葉の選択が危ういとは思っていたけど……やっぱり、クロロあってこその旅団って訳ね。カリスマ性が半端じゃないわ。
「ええ。クロロの推測通りよ。お望みなら、それも教えるけど?」
「いや、フェイタンの言葉で理解した。ガールズハンター……つまり、女だな。ここからは俺の推測になるが、お前が知っている未来だと、三人の内の誰かが死ぬんだろう。だからお前はここに来た。救済とは……ある対象にとって、好ましくない状態を改善し、望ましい状態へと変えることを意味した言葉。自分の目的が救済なら、その蜘蛛の未来を変える事によって、お前に利益が出る。つまり、三人が無事なのだろう。ガールズハンターが女を手に入れると直訳して、手段や合意を問わず身体を手に入れる事であるなら、お前にはその実力がある訳だ。そして、その実力は蜘蛛の未来を容易く変えるほどの力。それと同時に、蜘蛛の事情はお構いなしと見た。お前の、女に対する執着は分からないが、節操なしでもないはずだ。蜘蛛の三人を狙いに来たのが良い例だな。これらから考えられるお前の性格は……欲望に実直でいて気まぐれ。目的の為なら手段を問わず、親しい者でも男なら手に掛ける冷酷さを持っている。逆に、女の為なら自身の命を差し出すほどに狂っている。もっとも、そうならない為の力なのだろう? 救済の成功率も、軽く100%と見た。言い換えると、私の要求を飲んでくれたらオマケも付ける。三人のオマケに、蜘蛛が無傷で済む可能性も選ばせてあげる……って所か。どうだ? かなり的確だと思うが?」
「驚きを通り越して、久々に危険を感じたわ」
原作じゃ分からなかったけど、ここまで賢いなんてね。
「ある意味、危険を感じているのは俺の方だ。これだけ的確に突いたのに、オーラに微塵の揺らぎも感じられなかったからな。お前……いや、リナ。取引をしないか?」
この言葉が、このタイミングで来るって事は……なるほど。こんどは逆に驚かせてあげましょうか。
「蜘蛛全員が私の為に無償協力と、未来の情報及び、適度な協力ね?」
「…………そこまで分かっているなら、言葉にする意味もないか。どうだ?」
蜘蛛が私個人の傘下に入り、その代わりに蜘蛛への協力……ま、美味しい条件ね。取引に見えて、一方的な協力関係だし。
クロロは、それを見越してでさえ、取引と言った。
私の性格を読んだ上での持ち掛けだから、取引で間違ってはないけど。
「もちろん、オッケーよ。契約書は、蜘蛛全員の命で良いかしら?」
本当に一方的。もう、脅迫といっても差し当たりない。
「愚問になるが、リナにその力があるならな」
「愚問ね」
「取引、成立だ」
クロロが右手を伸ばしてきて、私は笑顔でそれに答えた。
◆ ◆ ◆
「集まって貰って早速……お前たちには勝手で悪いが、蜘蛛はリナに無償協力する事になった」
あれから数時間経って日付は変わり、九月二日。ウボォーを除く全員が、アジトのメインルームに集められ、クロロからの説明が始まった。
ただ、あれだけじゃ意味が分からなかったのか、何人かが首を傾げている。
当然よね……あ、レアアイテムゲット。
私はそんな中、モンスターをハントするゲームで遊んでいるけど、これが中々面白い。
「もちろん、俺の独断だ。だからこれから、簡単な説明を行う」
クロロが一拍置いて口を開く。
「まず、リナがガールズハンターで、実力のある念使いだと知っているな?」
旅団員が全員頷き、クロロはそれを見て言葉を続ける。
「その実力は、確かめた訳じゃないが、ここにいる俺たち位なら余裕で殺せるそうだ。そして、リナは……今日、ウボォーが攫われる事と、俺たちが競売品を奪う事を知っていた」
クロロの言葉で十人から、それぞれ濃度の異なる殺気を向けられた。
もちろん、スルー。私は任務報酬を受け取り、鍛冶屋にキャラクターを走らせる。
「それがリナ自身の能力かは不明だ。しかし、その情報を悪用された訳じゃない。そこで俺は、リナの持つ未来の情報と、ガールズハンターのリナに無償協力を交換した。ここで最初の言葉に戻るが、俺の勝手だ。協力的になるかどうかは自分で決めてくれ。ただし、契約書は蜘蛛の命。こちらからの契約破棄は、蜘蛛の壊滅だと思って貰っていい」
バキッ──と、木が砕ける様な音が響き、そちらに視線を向けた。
「ならここで契約破棄して……その女を殺せばいいだけだろ? 団長よ」
ノブナガ右横には砕けた木箱があり、強く握られた右拳で壊した物だと気づく。
今度は視線をゲーム機に戻す事で、スルーに決め込む。
「そうだな、それもありだ。リナは女を殺さないと決めているようだし、パク、マチ、シズクは最低でも殺されない。蜘蛛の復帰も可能だろう。ただ、それでどうなる? さっきも言ったが、リナに協力すれば未来が手に入る。これは本人からの情報だが、このまま進めばメンバーが半数以下になるそうだ。これを回避するにはリナの情報が不可欠で、場合によってはリナの協力を仰ぐ事になる。つまり、リナが俺たちに譲歩してくれただけに過ぎない。リナにとってこの取引は、ノーリスク・ハイリターン。俺たちにとって、ローリスク・ハイリターンだ。分かるか?」
「分かるが、ならその情報だけで良いんじゃねえか。半数を失う事を念頭に置いて、安全に進めば──いてっ!? 何しやがる、マチ!!」
このくらいの敵、一撃で倒してほしいわ。
「分からないのかい? アイツはガールズハンター。そもそも、私を含めた三人にしか興味が無い。そして、それが目的って」
「分かってるよ。だから、あの女を殺して終いだろ」
「ノブナガ。ならなんで、俺からこの条件を出した?」
クロロがノブナガに近づいて、質問を投げかける。
「そりゃ……未来の情報が欲しいからだろ?」
「ああ、そうだ。そして、リナ側の条件はなんだ?」
「無償協力……ん? 何にどう協力すんだ?」
「つまり、そう言うことだ。別に、内容は決まっていない。そして、リナが情報を出す条件もない。言っただろ? 気まぐれだと。情報が正しいかは不明だ。だけど、正しいかも知れない。そして、情報がなくても、明確な協力という対価を差し出せばリナは答えてくれる。こちらからの破棄と言っても、リナの情報が間違っていれば契約破棄でもない。当然の権利だ。それに、前提条件として……リナが、蜘蛛を滅ぼす可能性は未定。あるかも知れないし、ないかも知れない。未定と未定。これは、取引と称した、友好関係だと思ってくれ」
あー、やっと倒したわ。話も終結に向かっている様子だし、そろそろ口を挟みましょうか。
「ただのギブアンドテイクよ。私は三人の身体で遊べればいいし、クロロは未来の情報が手に入る可能性があればいい。そもそも、最初から三人を奪う事は可能だし、別に我慢する意味もない。そりゃ、蜘蛛を壊滅して、反抗的なマチを快楽で堕とすとかは中々にそそるシチュエーションだけど……あ、本気でやらないわよ? 女の子の幸せが一番だわ」
あのオーラが出ていたので、想像の途中で思考を切ってフォローを入れる。
もっとも、マチから離れていたのに、マチに離れられたのはちょっとショックを感じた。
「ま、つまりは……信じるも信じないも自由よ。私は本当の事しか言わないし、実力も本物。疑っているなら、少しだけ能力を見せてもいいわ」
「……なら、少しだけ見せてくれよ」
「了解」
これで露骨に警戒されるのは嫌だけど……とりあえず、フェイタンの能力でも見ましょうか。一応、原作知識として知っているから確認の意味を込めてだけど。
原作キャラで、知らない人の能力を見るのは流石に怖い。身体に影響は出なさそうだけど、心に影響が出ると困る。もしかしたら、見えない可能性もある。
じゃあなんで、こんな能力にしたかって言われたら、原作キャラ以外を見る為なのよね。戦闘補助としての能力だし、原作キャラとは余程の事がない限り、戦闘もしないと思っていたから。
「ペインパッカー」
あ、ライジング・サン以外に、数種類もあるのね。知りたくなかったわ。
フェイタンの能力を知る全員が息を飲む中、私はそんな事を考えていた。
遅くなった、変な所で切った気がした……でも、気にしない。
書きたかったクロロとの会話が終了、しかしプロットなしはやっぱえり厳しいなぁ。
今度から、しっかりつくろう。難しい話、難しいし。