TS転生だとしても、絶対に諦めない。   作:聖@ひじりん

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15話『灰色狂想』

 

 

 空が茜色に染まり始めた頃、私は三人の女子と共に、殺風景で荒れている一室に入った。

 

 クロロのお願いは一旦保留にしている。その理由と目的はただ一つ……。

 

「さぁ、恋バナを始めるわ」

 

「……」

 

「……」

 

「……正気なの?」

 

 なんで、疑われているのかしら。私、何も変なことを言っていないのに。

 

「そんな驚いた顔されても、今までのアンタの行動からしたら、十分おかしいんだけど」

 

「マチの言う通り」

 

 三人から否定されてしまった。

 

「確かに、今までの動きを見る限り、とても恋バナをするタイプには見えないかも知れない。だけど、私はこれでも純粋、純潔、純情なのよ」

 

「「「ダウト」」」

 

 でしょうね、うん。

 

「まあ、信用されてない。されないのは分かったけど、とにかく話には付き合って貰うわよ」

 

 そうじゃないと、一向に前へ進めないし。

 

「アンタを信用出来ないのはあるけど、それ以前にこのメンバーでするわけ?」

 

 マチ、シズク、パクノダ、私。そう思うのは当然なメンバーね。血を血で洗い流した経験のある女子四人が恋バナなんて、おとぎ話でもありはしないでしょう。

 

「んー、実際にはしなくてもいいわ。でも、しないと多少……いえ、かなりの問題が生じるのよね」

 

 主に私の弱点に繋がる問題なので、これ以上疑われない内に話を進めたい。

 

 最も、弱点と言っても、それが伝わって何かが起こる程の弱点ではないけど。

 

「ふーん……あたしゃ付き合ってもいいけど、何か隠してるね」

 

「どうしてそう思うのよ」

 

「勘だ」

 

 出た、マチの直感。

 

 本当、どうにもならない未知なる領域系のシックスセンスはやめて欲しい。

 

 今だけは、あのノブナガに同情できるわ。

 

「残念ながら…………正解。隠している事が一つあるわ。それは恋バナをしようと言った、真意に繋がる事でもある。だから、それを踏まえてもう一度提案するけど……さぁ、恋バナをしましょう」

 

「断る」

 

「マチに同じく」

 

「私も」

 

「でしょうね」

 

 私は項垂れた。

 

 やっぱり、話を進める為には、理由から離さないといけないかしら。

 

 いや、それとも実力行使で進むべき?

 

 自問自答を繰り返すが、一番の答えは出て来ない。

 

 私が望むのは、相手の情報……主に心情なのだけれど、これは『星帝の世界(セイクリッド・ワールド)』を使って読み取れない情報だ。

 

 女の子の心情ぐらい、察してやれる男だと信じきっていた、昔の馬鹿を責めたい。

 

 多少の未練とか置いといて、一旦あの頃に戻って百回ぐらい殺したい。切実に。

 

「なら、一つだけ答えてくれると助かるわ。ぶっちゃけ、恋バナとか言っても、知りたいのは一つだけなのよ。お願いするわ」

 

 三人に目配せてから、軽く頭を下げる。

 

「はぁ、ならその一つだけだ。もちろん、内容によっちゃ、応えない」

 

 マチの鋭い眼光に、身体が絶妙に震えた。

 

「取り消すよ?」

 

「ごめなさい、条件反射よ」

 

 話が進まなくなる方が嫌なので、素直に謝っておく。

 

 今は本当に、話が円滑に進んで欲しいし。

 

「それなら……良くはないけど、いい。で、アンタの訊きたい事は?」

 

 なんて言葉がベストか……多少なりとも、表情やオーラを微動させないと、感情が読めない。

 

 簡潔で分かりやすく、相手の心に刺さり、なおかつ動揺を誘える言葉でないと駄目。

 

 そうなると……やっぱり、名前を出すのが良いかしら。 

 

「三人とも、クロロとかに恋してる?」

 

「はぁ?」

 

「んー」

 

「はい?」

 

 うっわ、なんてグレー。白黒どころか、やっぱり意図が伝わらなさすぎて、何も分かんないじゃない。

 

「えーと……やっぱり無理ね、このメンツだと」

 

 理解力に乏しいメンバーだとは思わないけど、分野次第じゃ諦める必要がある。

 

 その分野が、この恋バナ……正気を疑われた時点で、やめるべきだった。

 

「男性として好きって意味だけど、そこは大丈夫よね? それも分からないなら、直ぐに止めるわ。あ、もちろん、クロロじゃなくても好きな男性がいるなら、その可否だけでもいいわよ」

 

「その心は?」

 

「手を出せない!! ……あ、うん、そういう事」

 

 シズクの返しに思わず答えてしまったけど、ギリギリ結果として発生する理由なので、そのまま肯定する。

 

「また、意味不明な理由だね」

 

 マチの視線が、少し優しくなった気がした。

 

「意味不明なのは承知の上で、訊ねないといけないのよ。最悪、私の命に関わるし」

 

「それは良い事を聞いた。最悪ってケースがどれか分からないけど……やり方によっちゃ、アンタを殺せる訳だ」

 

 やっぱり、マチは根本的には優しいのね。

 

「殺気を込めずに発する言葉ではないわよ。それに、私がソレを伝えた時点で、殺されないって言ってるも同然だし」

 

 あくまでも、最悪のケースの場合。その最悪は、私が気を付けてなお、起きるかも知れないという条件だ。

 

 今まで生きて、ヘマはしてないし……無知であれば、罪でも罪を回避できる。

 

「相変わらずやり辛い……分かった。アンタの質問には答える」

 

「やった」

 

 ガッツポーズと共に、思わず声も弾んだ。

 

「アンタには残念だろうけど、クロロの事は気にいっている。これが恋心と言われればノーだけど、そもそも気にいらない相手の盗賊団なんかに、所属する意味ないよ」

 

 ……ごもっともで。

 

 私の基準からしても、かなりグレーね。無自覚っていうラインは。

 

「マチと同じく。リナには悪いけど、女の子に興味ないし」

 

 シズクもグレー。

 

「私は個人を愛するより、旅団を愛しているわ。これがリナの基準からして、セーフかアウトか分からないけど……」

 

 パクノダもグレー……というか、ほぼアウトね。

 

「全滅じゃない」

 

 見事に全滅した。精々、セクハラして楽しむ位だけど、その基準はツータッチまで。

 

 元々、確かな基準がない為に私の匙加減になり、経験上そうしている。

 

 主に、自身の不利に働きやすい、優れた直感力のお陰で分かったんだけど。

 

「うーん………………」

 

 四方八方に手を尽くせば、手を出せる。

 

 その褒賞が絶対、割に合わない。

 

 多分、精神的に死に掛けるはず。

 

 そこまでして、手を出したいかと言われれば……ぎりぎりノー。

 

 でも、何もせずにこの地を去るのも悔しい。

 

「なるほど、悔しいのね……あの色男、殺すか」

 

 確かな殺気を込めて、言葉を吐く。

 

『っ!?』

 

 三人に距離を空けられ、その手にはしっかりと念の武器が握られている。

 

 私も、それに答える様に無言で剣を出し、右手に力を籠めた。

 

「私の物にならないなら、壊してしまうのが道理よね?」

 

「……悪いけど、共感できやしない。もちろん、抵抗はさせて貰う」

 

 答えたマチの顔から、汗が落ちている。

 

 恐らく、本格的な死を感じているのでしょう。

 

 そうなるよう、本気の殺気を出している訳だし。

 

「なら、残念だけど……私の為に、死んで」

 

 踏み込んで、まずシズクの武器を斬りつけ、消滅させる。

 

 かかと方向からの足払い、倒れる前に身体を抱き、後ろに跳ぶ。

 

「私は、ここよ?」

 

 抵抗されるのが面倒なので、言葉と同時にシズクには気絶して貰い、床に寝かす。

 

「本当に化け物だね、アンタ」

 

 マチが振り向いて、そう答えた。その言葉には、確かな恐怖を感じられる。

 

「さて、人質を作った意味は、良く分かるわよね?」

 

 狙ったのはシズクだし、高確率で条件が通るはず。

 

「……シズクは、うちの要。条件はなんだい」

 

 ああ、本当、良い。 

 

「マチ、貴方が欲しいわ」 

 

 歪めた顔に、混ざっている恐怖心。滲む怒り。得体の知れない、私への興味。

 

 望んだのは、その反応だけど、これは予想以上ね。

 

「分かった」

 

 まだまだ、絶望が足りない。もう一段階、引き出さないと。

 

「じゃあ、まず……服を脱いで、下着になって。元々何も持たないマチなら、造作もない事でしょう?」

 

「くっ」

 

 流石に、この状況で抵抗心は少ないのか、素直にマチが脱ぎ始める。

 

 武器を隠し持っているのが面倒くさいのはあるけど、主な目的は、もちろん脱がしたいだけ。

 

 いいえ、脱いでいる姿が見たい。

 

「へぇ、元々上は付けてないのね。下はスパッツだし、うん、かなり"ソソル"わ」

 

 形が良く、それなりに育った胸。ツンと上向きで、まさに想像通り。

 

 頑なに触らせてくれなかった、その胸が、わずか10m先で披露されている。

 

 多少の羞恥はあったのか、顔がほんのり赤い。

 

「可愛いわね、マチ。次は、四つん這いになって犬の様に、私の足元に来て」

 

「……ふん」

 

 反応を見せるのが嫌だったのか、顔を伏せながら、要求通りに近づいて来る。  

 

 時間はそれほど掛らず、私の足元に近づいたマチは、俯いたまま顔を上げない。

 

「顔を上げて」

 

 身体を震わせながら、マチが顔を上げる。

 

 やっぱり、先ほどより顔が赤い。

 

「うん、可愛いわ。本当に」

 

「次は、どうするんだ」

 

「立ち上がって、私にキスして。もちろん、言わずとも分かる場所に。そして、情熱的に」

 

「変態め」

 

「褒め言葉よ」  

 

 初めから、こうしておけば良かったなと思うけど……ここまで来て、少し後悔してる。

 

 まさか、こんな上手く成功するなんて。

 

 いや本当に、軽い冗談のつもりだったけど、良くあるテンプレをなぞるだけで、普通成功するかしら。

  

「口、開けな」

 

「いーや。無理やりこじ開けて」

 

 うん、怖い。自分の才能が怖い。

 

 こうすれば、何とか最悪のケースになりにくと判明したし。

 

「っく……んく」

 

 とりあえず、キスさせる事に成功した。

 

 言葉を発すると、口が開いてしまうので、黙ってマチの顔を眺める。

 

「ん、ちゅぱ……はっ、んぷ」

 

 で、この娘……もしかしなくても、初めて?

 

「下手糞ね。こうするのよ」

 

 頭の後ろに左手を、右手を顎に添え、顔を上に向かせて口をこじ開ける。

 

「んんんっ!?」

 

 口内に舌が触れた瞬間、私の舌が切断されてしまう。

 

「かかったね、パクノダ!!」

 

 ビックリするほど痛いけど、耐えられない痛みではない。

 

 やっぱり、そんな上手く行かなかったなと反省。パクノダからの弾丸を三発、ふわっと全身から出した念で包み込んで、軌道を変更、撃ち返す。

 

「えっ!?」

 

 狙った箇所はもちろん拳銃。もっとも、特に意味はないけど、時間差で当てて窓枠から外に飛ばす。

 

 私がそっちに割いた行動の間で、マチがシズクを奪還して、パクノダの傍に戻ってしまった。

 

「いはい。はれれない」

 

 仕方がない。まさか使うと思ってなかったけど、治療しましょう。

 

 星帝の慈愛《セイクリッド・アフェクション》。星帝に備わる、修復能力だ。

 

 ヤヤにあれだけ説明しておいて、この結果だと、笑い話にしかならないわね。

 

「心配してくれるなら御の字かしら……さて、振り出しね」

 

「それが、アンタの能力かい」

 

「一部だけど。元々ある私という質量に変化があった場合に、それをリセット出来る能力よ。簡単に言うと、超再生ね。治癒力を限界を超えて強化すると、こんな感じになっちゃうだけで」

 

 失われた血すら補うので、念が続く限り、永遠に輸血も出来る。なんて世界に貢献できる能力なのかしら。

 

 もっとも、この能力も初期に思い描いていた物と、かなり変質してしまっている。

 

 これは、外からの想像と、現実での相違がかなりあった為。それを独自解釈と考察を繰り返す事で、念能力がある程度変化した。

 

「で、聞きたいのはそれだけ? もっと場を繋ぎなさい。そうしないと、終わりが来るわよ」

 

「……さっき、私の弾丸を返した原理は」

 

「ああ、あれね。あれは能力じゃなくて、ただの念操作よ。水の中の抵抗力って知っているかしら?」

 

「空気抵抗よりも、更に大きい程度しか」

 

「それだけ知っていれば上出来ね。で、解説すると……水中では空気中の約19倍、抵抗を受ける。つまり、物にもよるけど、ざっくり言うと負荷が強いのよ。で、問題は念の抵抗力ね。そもそも、念とは何ぞや。どういう仕組みで生み出され、どういう仕組みで動き、どういう仕組みで扱っているのか……考えた事ある?」

 

「……いえ」

 

 まあ、普通はそうよね。

 

 そもそもこの世界の人間に、念について考えるという概念がない。服装と一緒で、世界のルールだ。

 

 世界は広く、念について専門で考える人間もいるけど、それはそれ。元々意味不明な原理で動く念を、理解して使おうとも、その全てを扱える人間ではない。

 

 理論を追い求める人間は、残念ながらその下地がないからだ。

 

 その中で、もし真理に辿りついた人間がいるとすれば……決して、世に公表などしないだろう。

 

 この世界には、個人で戦うには無謀とも言える科学技術。つまりは、兵器が存在している。

 

 端的に言えば、消される訳で。そんなリスクを背負ってまで、ほぼ理解されない理論を説明して回る馬鹿はいない。

 

 力とはあくまで個人の物であり、世界基準に示した場合、必然と世界と対峙する結果になる。

 

 念とは、何ぞや。

 

 私が得た結論も、恐らく足りていない。

 

 人類が、人類の創造を出来ないのと一緒で。

 

 脳が、脳の原理を理解していないのと一緒だ。

 

 精孔を無くすと、確かに念は生まれなくなる。しかし、その精孔にも個人差があり、鍛える限度が存在する。

 

 私が最高の資質を持って生まれ、その私に限界がある。つまり、世界の見えないシステムにあくまでも従っているという事。

 

 もちろん、世界に抑止力があるだけで、世界を破壊できないわけじゃない。

 

 世界=破壊できない。ではなく、抑止力>人の破壊>世界と、抑止力を破壊できないだけ。

 

 もっとも、世界を破壊した所で、何も残らないので意味はない。

 

 まあ、新世界にはそれを叶えるマジックアイテムが多く存在するのだけれど……実物を見た事がないから、まだ想像になってしまう。

 

 人である以上、不老不死になろうと、孤独には勝てない。つまりは、抑止力ね。

 

 ある程度、出来る事柄が自由にあるっていうのが、世界の抑止力に対抗できる唯一の部分。それが、私が違う世界から来た、最大の特典だ。

 

 念とは、なんぞや。

 

 有限的・無限から壱を。

 

 壱から有限的・無限を。

 

 ほぼほぼ、魔法の様な力。

 

 それが念だと、私は思う。

 

「まあ、原理は簡単なのよ。発する念の密度を上げれば、抵抗力。すなわち、防御力、"堅"が出来る。それを瞬時に使えば、空気中に浮いている物体を、四方から包み込むように……まさに、水中と似た効果が生まれる訳。それで止めた弾丸を、念の流れを作り方向を変え、放出させただけ」

 

「簡単に言うけど、私にはできないわ」

 

「特訓すれば出来るわよ」

 

 実際、ヤヤには理論を説明し、理解してもらった。

 

 もっとも、やっているのは"念の操作"。元より水の性質に似ている念を、動かす力を身につける為だ。

 

 すると、いろんな幅が広がるし、簡単に応用が利くようになる。

 

「だから、例えば……」

 

 その場で強く念を発し留めて、念場という物を作る。自身を模った念が、身体から切り離された状態だ。

 

 そして、足に力を込めて地面を蹴ったと同時に、"絶"に切り替え、それを二回。この間、約一秒。

 

「瞬間移動的な」

 

「うひゃぁぁぁ!?」

 

「シッ!!」

 

 パクノダの胸を、思いっきり後ろから揉みしだいた。

 

 中途半端に、念での戦いに慣れている人に対して、かなり友好的な技だ。 

 

 "硬"、"纏"、"絶"をスムーズに行い、錯覚させるだけ。特に名付けてないけど……念応用の一種にしてもいいはず。

 

「戦闘に置いて、念の切り替えが重要なのは分かって頂けたかしら?」

 

 マチの攻撃を回避し、同じ様に元の位置に戻る。

 

「本当に、化け物だね、アンタ」

 

「そうでもないわ。"円"を最初から使っていれば、反応が増えたと分かるし。そしたら、初動で相手の動きに気づけるわ」

 

「前提で無茶言ってんじゃないよ」

 

 ……でしょうね。

 

 ずっと"円"をしながら、戦闘が出来るなら、かなり強い念能力者の証拠だ。もちろん、私以外で知らないし。

 

 ノブナガなら、もしかしたら出来るかも知れないけど……まあ、反応して終わりだわ。

 

 だって実際には、攻撃と共に反応が、物凄い速度で近づいてきた訳だし。

 

「で、改めて選択を。誰か一人、私の物になれば、色々と見逃してあげる。生贄と言ってもいいわ……けど、一番旅団に必要ないのは、マチよね? 情報処理の要である、シズクとパクノダから考えれば」

 

「アンタの物になるくらいなら、死んだ方がまし」

 

「短絡的ね。何も、命を奪う訳じゃないわよ。心を頂くだけで」

 

 結構、物理的にだけど。

 

「はっ、出来るものなら、やって──」

 

 秘技、魚肉ソーセージから編み出した、口封じの効果的な方法。

 

 近づいた時に隠して設置した、念の塊を拘束に使い、マチの動きをその場で封じた。

 

 それに加えて、暴れられると抜けられるので、後頭部に塊をぶつけて気絶させておく。

 

「はあ、言ったでしょ……"円"を使っていれば、相手の初動を読めるって。舌を噛もうとした脳の動きだって、読めちゃうわ」

 

 もちろん、脳の構造に詳しいわけじゃない。精々、何がどれに繋がっているか。

 

 つまり、神経に伝わる前の微細な動きを感じ取り、念を遠隔操作してマチを止めた。

 

 これも、特に操作系や放出系である必要はない。

 

 私はもう一度だけ念を動かし、マチの身体をこちらに誘導する。

 

「手品でも能力でもないわよ。仕掛けは置いてあった訳だし……参考になるか分からないけど、説明欲しい?」

 

「一応」

 

 驚きすぎて、結構、緊張感が薄れてしまっているみたいね。

 

「具現化した能力を、"隠"で隠せるなら、そもそも普通の念も隠せる。離れた能力を操作できるなら、そもそも念を操作できる。放出した念が弱まっていようと、元が違えば確かな質量を持つ……大体はこんな話だけど、少しだけ詳しく話すなら、念系統についてかしら」

 

 マチの服を念で拾って手元に持ってきて、服を掛ける。

 

「さっき水の様にと説明したけど……流れを操作できるなら、人ひとり分の念の塊を用意すれば、流れを作ってある程度だけど誘導が可能になる。必要なのは念を操作する技術と、放出した念を留める技術ね。今の私が使える放出系能力は、45%だけど、これだけあれば人を吹き飛ばす念を放出できる。これを操作するには、どれ位の数値が必要だと思う?」

 

「……同じ位じゃないかしら」

 

「正解は、僅か5%。流れを与えるだけだから、ほぼ誰にでも出来る。念系統はあくまでも何が得意かってだけで、実際に一流の念能力者は、鍛えれる数値を鍛え上げるでしょ。ただ、何故鍛えるかは分かっていない。鍛えれるから、鍛えているだけ。それで、何が出来るか考えないから……そこで停滞する」

 

 まあ、活用すればこんな事も出来るのだと、パクノダが理解しても特に意味はないんだけど。

 

「よく思うのが、放出系の人って念を飛ばしがちだけど……それって正確には、念を身体から離しても、力強さを保つのが得意なんだと思うの。つまり念を放つって能力にしなくても、元々からできるはず。むしろ、飛ばすのは操作系よねって」

 

 六性図が近いのも、それが主な理由のはず。

 

 対極に具現化があるのは、具現化した念が、どの性質なのか関係するから。

 

 元々、身体から離しても大丈夫な様に作れる物は、基本的に何の能力も付与できない。コルトピが良い例だと思う。

 

 恐らく、手元で発動する強力な能力も持っているはず。

 

「創造するのは難しいけど、創造できてしまえば、唯一無二になる」

 

「え?」

 

「具現化系の能力の真理ね」

 

 先にキャパシティの概念を埋め込まれると、その時点で制限が大きくなってしまう。私が色々と規格外に見えるのも、あくまでそれの差なだけ。

 

「つまり、リナは……念という本質を、見いだせていない人が多いと言いたいのかしら」

 

「ザッツライト。まあ、そういう訳で……私は帰るわ。貴方たちで言うお宝も手に入れたし、恨まないで頂戴ね。返して欲しかったら、いつでも挑戦を受けるし」

 

 もちろん、見つけられるならだけど。

 

「あ、ちょっと待ちなさい!!」

 

 待つと言われて、待つ馬鹿はいない。

 

 私はお姫様抱っこでマチを抱えたまま、ホテルへと足を向けた。

 

 

 

 

 




調子にムラありすぎ、申し訳ない。


本当にゆっくりと、更新は頑張ります。



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