「ん? おかえり」
「ええ、ただいま」
マチを抱えたま帰って来たというのに、ヤヤの反応が薄い。
ただ、テレビを見ながらポテトチップスを食べるヤヤの姿を見て、何となく……。
「夫婦って、こんな感じなのかしら」
「夫婦?」
「いえ、いいわ」
一仕事終えて帰宅し、それが当たり前だと構えている嫁。百年の恋も、所詮は妥協になってしまいそうね。
とりあえず、マチをベッドに寝かして、絶対に動けない様に拘束具を準備する。
まず、舌を噛み切らない様に、特製・ギャグボール。
次に、関節を外して抜けられると困るので、特注の念縄を使って全身を縛る。これは、念を込めると一切合切、伸縮しなくなる代物だ。
最後に、身体検査にて武器を押収しておく。
もし、手元になくても針を操作でき、尚且つ"発"を使える危険性を排除する為に。そもそも、針がなくても"発"を使える可能性はあるけど……それはその時に対処しましょう。
え、ワールドで確認? 女の子の秘密を無理やり知るなんて、滅茶苦茶に失礼じゃない。
「手慣れてるね」
「本業ですから……って、感想はそれだけなのかしら」
もっとこう、リナは本当にソッチの人間なんだ、とか。変態!!エッチ!!とか。
「うん、別に」
ふっ。
「天誅!!」
「いやぁぁぁ!?」
腕だけ簡単に縛って、後ろから胸を揉み始める。
「ふふふ、本当に嫌ではないでしょう」
「う、ふぁ……っっ!? そ、そこは……あっ」
柔らかさは極上。感度も最高。下は知らないけど、胸はとりあえず名器だわ。
どこを触っても感じてしまう様だから、乳首を避けて揉み続ける。
「ああ、堪らないっ」
「いやいやいや、だめ、だめだって──ふゃんっ!?」
で、焦らしてから乳首をキュッとつまむ。
胸の責め方は無限大にある。それが楽しいし、それが欲に終わりがない証明ね。
乳首を重点に責めてもいいし、揉む方を重視しても良い。
「ん、はぅ、きゃう!? うぅん、ひっ!?」
揉む、揉む、摘まむ、揉む、捻る。
「ヤヤ、可愛い」
「あ、あぁっ。だめ、ほんとっ、んんっ!? ん、あ、あぁあっ!! い、イイイッ……っは、イっちゃうからぁ!!」
「だから、イきなさい」
両手の揉む速度を上げて、人差し指だけで乳首を弾く。
「あぁぁぁ、だ、だめぇっ!!」
そして最後に、回り込んで服の上から、右胸の乳首に噛みついた。
◆ ◆ ◆
「ふぅ、これがメインディッシュの前の、メインディッシュという奴かしら」
「ぐすっ」
ヤヤは、泣いていた。
「可愛い」
「いや、もう、ほんとにだめ!!」
腕を拘束されたまま、私の胸で泣いていたヤヤはが、一瞬で部屋の端まで移動する。
「へぇ……鍛錬は怠ってないのね。良かったわ、ゾーンポテチが日課に感じる姿だったし」
「……ポテチは日課だよ?」
ええい、このホテルが何でも用意してくれるからって、自由を満喫しているわね。庶民的に。
まあ、カロリーの消費も多いし、大体が胸に行くはずだから気にしないでおきましょう。
ヤヤって、私より神秘的な性能を誇ってるのよね。
スタイルキープは置き忘れ、肌のケアはゴミ箱に、食生活はメタボもびっくりだ。
私もかなりおざなりとはいえ……流石に程度がある。
母に躾られた結果でもあるけど、無視し続けるとコンディションが落ちていたことがあった。
それからは、最低でも三日に一度は手入れはするのだけど。
「本来なら追加のギルティだけど、いいわ、許す」
「え、うん。ありがとう……で、その子は?」
「幻影旅団って第一級?盗賊団のマチよ。盗んできた」
「ふーん。どうするの?」
純粋なのか、天然なのか。
いや、私のせいで純粋ではないはず。
もっとも、確かに意図は難しいかも知れないわね。
ただ単純欲望を満たして遊ぶだけなら、わざわざ連れて来る意味はないし。
それこそ、メンチやレルートの時みたいに、どっかで監禁すればいい。
「仲間に……なるとは思わないけど、とりあえず交渉かしら」
「仲間探してたの?」
「いいえ、玩具が欲しいだけね。その過程で仲間になってくれれば御の字でしょ? 可愛い女の子が増える訳だし」
とはいえ、中々どうして面倒なのよね。
ツンデレならどうにでもなるけど、全力で嫌われているので対処が難しい。下手すると死んでしまうのも、原因の一つ。
最終手段は……いえ、色々な手段は用意できるから、困ったらアレを頼ろうとも思っている。
アレを使うのは交渉が失敗した時だから、そう出て来る事はない。むしろ、決して頼りたくない。
でも、あの娘……便利だし。その為に、骨も折ったし。
「確かに、可愛いと思う。でも、リナが玩具を欲しがるのは納得してるけど、仲間は私以外作らないで欲しいなぁ……なんて、少し思っちゃうかも」
おや、ヤヤがデレた? とりあえず、抱きしめよう。
「ありがとう、ヤヤ。その気持ちは、素直に嬉しいわ……なら、貴方の気持ちを尊重しましょう」
うん、仲間はやっぱりいらないわ。
玩具として、手先として……あっちに流しましょう。
彼女たちなら、きっちり管理を出来るだろうし。
「え? いや、その……嬉しいけど、いいの?」
「いいも何も、貴方がオンリーワンでいてくれるなら、それでいいわ。ま、手癖だけは勘弁して貰うけど」
「あー、うん。ほ、ほどほどでお願い……します」
「改めて、ありがとう。じゃ、早速」
時間がもったいないし、色々始めましょうか。
私は、頼れる彼女に電話を掛けた。
◆ ◆ ◆
「また、ですか」
「ええ、また、ね」
「お遊びが過ぎますよ、リナ様」
「ごめなさいね。何かお詫びは考えておくから、お願いするわ」
「……全く。デート一回でどうでしょう」
「あら、その先はいいのかしら?」
「高望みすると、非戦闘型の私なんて殺されますから。どっかの誰か……特に、アレには」
「アレは最高の成功作であり、失敗作だけど……見た目は可愛いわよ。まあ、シャーロットとは相性が悪いから、しょうがないけど」
「性質が未だに受け入れられなくて……最大の失敗でした。では、とりあえず準備を進めます。どれが必要ですか?」
「二番と四番。保険として──」
「ええ、アレには連絡しておきます。準備が整い次第、メールで連絡を。その後、ミーナに転送させます」
「別に、急ぎではないし、ミーナにお願いしなくてもいいわよ?」
「……察して下さい」
「なら、連絡は電話で。シャーロットとの会話は好きだし、声を聞かせて」
「畏まりました。では、また後で」
「楽しみに待ってるから、シャーロットのもしもしコール」
「さり気なくハードルあげないで下さい……でも、そんなリナ様をお慕いしております」
◆ ◆ ◆
「……誰、今の」
電話を終えると、中々に低いトーンでヤヤからの質問が来た。
「ん? 私の右腕ね」
少し意地悪して、回答を簡素にしてみる。
「リナの馬鹿」
どうやら、今日のヤヤは……あ、そういえば久し振りだったのよね。なるほど。
マチの事が解決したら、色々と説明しましょう。
「ふふっ、今はヤヤが一番よ。でも、もう少し時間を貰うわ。具体的には、マチへの対処が済んだらね」
「……分かったけど、なんか、変かも」
「変?」
「その、リナと久し振りにあったからか……動悸がします、はい」
やっぱり、良い傾向みたいね。
ヤヤにとっては、そうでもないみたいだけど。
「それも、気にしなくていいわ。じゃ、少し出かけて来るわね。個室が必要だから」
「あ、うん。いってらっしゃい……早く帰って来て下さい。じゃないと、ゾーンポテチ繰り返すから!!」
地味だけど、それは不衛生すぎるので、早く済ましてしまおう。
「ええ、分かったわ」
拘束されたマチを抱えて、私は部屋を出る。
向かう先は、ぶっちゃけどこでもいいのだけれど、人目をある程度避けたいので、岩盤地帯へと足を進めた。
◆ ◆ ◆
さて、準備は整ったのだけれど……シャーロットなら、きっと。
そう思った丁度のタイミングで携帯が震え、ホルダーから引き抜いて、名前を見ずに電話に出る。
「ベストね」
「リナ様の為ですから。と、今から送りますが……ご武運を」
ご武運……?
「ん? ええ……って、まさか」
早い、早すぎる。いくらなんでも、アレの到着にはっ──
「リ~ナ~さ~まぁぁぁぁぁ!!」
感度の良い耳が上空からの微かな声を拾い、すかさず能力を発動。強化系能力"星帝"を最大数値まで上げて、隣の岩山に跳び移った。
響く爆発音、吹き飛ぶ岩山。
私の立っていた岩山は、飛来したアレによって、根元まで全てが爆散していた。
「ちっ、受け止めてくれませんでした」
「見つけた早々に、私を殺そうとするのは辞めなさい」
次第に砂塵が晴れていき、そこに立っていたのは、純白のロリータドレスを着た一人の少女。
金髪でアップツインテール。童顔であり、身長は140㎝。ただし、体重は8tもある。
そう、8t。
「殺すなんてとんでもないです!! でも、リナ様なら死なないですよね?」
「限度があるわ。貴方が相手なら、死ぬ可能性もある」
「なら、一回くらい相手して下さいです。まだ処女なのは、私だけじゃないですか!!」
うん、つまりはそういう事。
「物理法則って物があるわよ!! 何かの間違いで貴方にのしかかられたら、間違いなく死ぬわ!!」
「その星帝状態ですと、実は受け止められるはずですよね?」
どうやら、知力が上がっているらしい。
見た目はどう考えても、知性溢れるお嬢様。クールに笑う美少女と想定したはずだったけど……能力の代償か、思考力がポンコツになってしまった。
もっとも、シャーロットの設計が間違った訳じゃなかったし、原因は不明なのだけど。
「誰から仕入れた情報か分からないけども……ずっとこの状態だと、盛り上がれないでしょ」
「あ、そうですね。なら、また何か考えますです」
どうやら、落ち着いてくれたみたい。この場合、思い直し?
とりあえず、命の危機が一つ去ったと喜ぶべきね。
「で、用件だけは理解しているの?」
「もちろんです。記憶消去です」
駄目だった。流石はポンコツね。
「シャーロットと会話してないでしょう」
「マスターはいずれ殺します」
本当に不安だ、コイツ。
「まあ、貴方は最終手段だし、そのまま待機していなさい。二番と四番を呼んであるから」
「ああ、型落ちじゃないですか」
「貴方の姉たちよ、しっかり尊敬しなさい」
「ふっ尊敬なんて出来るわけないじゃ──くはっ!?」
8tもあるはずのポンコツが唐突に吹き飛び、岩山にめり込んだ。
「姉を侮辱するなっ」
「相変わらず、能力だけですわね」
ポンコツが元いた場所には、二人の美少女。
青髪ポニーテルでブルーのミニドレスを着ていて、下にはスパッツを履いている二番。少しツリ目で、シャーロット五重機士の中で一番活発な少女だ。
身長は160㎝あり、体重は70㎏。すらっとしているが、戦闘タイプの彼女は少し重く設定している。
ちなみに、微乳だ。
もう一人の四番は、赤髪で腰まであるストレート。真紅のロングドレスを纏って、赤の手袋をしていおり、腕を組んでポンコツを睨んでいた。
150㎝の40㎏。二番目に軽い代わりに、能力と戦闘のバランスが一番取れている。
ちなみに、巨乳だ。
吹き飛んだポンコツと違い、二人ともまともではあるのだけれど……ポンコツに対しては相変わらず雑だ。
「汚れるじゃないですか」
まあ、流石に無傷よね。めり込んで服が汚れただけで、傷もなさそう。服にも、本体にも。
むしろ、あったらびっくりだけど……不意打ちじゃなかったら、二人の全力でもまず吹き飛ばないし。
「さて、そろそろいいかしら?」
マチを抱えたままだったけど、そのまま岩山を飛び降りて三人の間に降りる。
「リナさまぁ、とりあえず抱きしめてくれっ!!」
「まずはキスをお願いします。ええ、それはもう濃く情熱的に!!」
うん、まともでも、ポンコツと比べて……で、あるわ。
「アクア、ルー、落ち着きなさい。シトリンが面倒なのは分かるけど、軽々しく吹き飛ばさない。自然破壊はシトリンと同義よ」
「「はっ」」
戒めるには、手っ取り早い。言う事も聞いてくれるし、本当にシトリンとは大違いね。
……いや、言う事はシトリンも聞くけど。湾曲する可能性高いだけで。
「悪いけど、このままだと報酬はないわ。だから、さっさとお願いね」
ぶっちゃけ、私にもそれほど時間はない。
目的が決まっている分、大丈夫だと思うけど……ヤヤとも約束したし。
「「分かりました(わ)!!」」
まあ、この二人なら早く仕事をしてくれるわね。シトリンが邪魔しなければ。
でも、失敗のリスクも考えないといけないし、その為のシトリンだ。
代償が大きすぎる気もするけど、背に腹は代えられない。
「シトリンも、真面目に頼むわよ。頑張れば、望みを叶えてあげてもいいわ」
「本当ですか?」
「ええ」
「やるです!! 姉二人!!」
「いや、お前が仕切るなよ」
「全くですわ。メインは私たちと分かっていて?」
「さぁ、やるです!!」
人選を間違えたかも知れないわね。
けど、一番と三番は……もっと性質が悪いし。そもそも、能力も違うから今回のケースならこれしかない。
「それじゃ、洗脳を始めましょう」
意味もない死を招くより、意味のある生が大事だ。
それがたとえ、ある程度の真実から遠ざかっても……母が私にしてくれた様に。
護る事に繋がるから。