心宿三とヴェロニカ、互いに特殊部隊所属、互いにステルスが特徴、互いに近接志向、互いにSSS機体待ち、なのに機体は片方は太陽で片方は翼。
挙句にフレーム特性などからアル・ニヤトはヴェロニカ専用機、ナイトメアは心宿三の専用機とネタにされる始末。
どこでどう間違えたんでしょうねー。いつものダッチーと言われれば納得するしか無いんですけど……。
せめて超改造に期待。
春の麗らかな日差しが差す豪邸の隅、そこに1人のメイド服姿の少女が腰を下ろして草弄りをしていた。
幼気な顔立ちではあるが、千年に1人といっても過言ではないほどの美少女である、否、美少女だ。
「三、ここに居たのね」
「二お姉様」
徐に少女が顔を上げると、屋敷の曲がり角からひょっこりと赤髪の少女が顔を出した。
ジャケット姿に乳首を隠すだけのブラとパンティ一枚というーー流石に薄着過ぎではないかと心配になる程の痴女然とした女性だ。
彼女はぽやぽやとした顔持ちの妹と彼女がしていた草弄りに少し顔を顰めると、この豪邸の主であり、彼女達のお屋形様が執務を執り行っている部屋を指で示した。
「私たちを呼んでる。仕事だってさ。私は先に行くから、あんたは着替えて来なさいよー」
「うん!分かった」
草いじりをやめて立ち上がると、彼女は更衣室にて纏っていたメイド服を脱ぐ。
きめ細やかな美しい白い肌が姿を現し、小さくも膨らんだ乳房の上から本来の仕事着を着こなす。
姉2人から常々ブラを着けろと言われるものの、違和感を感じて着ける気はまったくないこの天然娘は手早く着替えを済ませると高橋家当主の部屋へ音も気配も無く参入するのだった。
「〜のため、失礼。来たか、三」
投手に報告していたのだろう資料から目を離し、白髪の少女が持っていた資料の一つを少女へ渡す。
少女は、高橋家特殊部隊の1人、心宿三は、その手に持つ資料を眺めながら今回は〝誰を殺すのか〟を考え、そのあとは途中で終わった草いじりのことばかり考えていた。
「三が来たから要点だけ最初から話します」
三の姉にして心宿家の長女、心宿一が話を始めるのは有澤重工という古臭いだけが取り柄の企業が、ある一機のBMの開発に成功したこと、そのBMが近々開催されるBMコンペに参加すること、そして彼女自身が観たBMについての戦闘力雑感といったものだ。
「BMの名前は山城。カテゴリーについては……新しいタイプと呼べる、BMタンク。BMの下半身に無限軌道を備えたもので、火器に様々なグレネード兵装を装備。火力は高橋家が所有するBMを軽く凌駕するかと」
へぇ、と目を光らせたのは痴女然とした姿の心宿二。
面白そうに見つめるのは山城ではなく、山城が持っているグレネード兵装の数々だ。
しかし、その中に己の好みそうな装備が無いと知り唇を尖らせる。
「ちぇ、火炎放射器は無いのねー」
「二。報告中だ」
「はいはーい」
「搭乗者はレイヴン。OATHカンパニーの独立傭兵で、様々なBMを所有及び使用し、どんなに危険な依頼も受けることで有名なA級傭兵です。ーー曰く、どんな死地にも戦いを求めて参戦し、真っ向から敵を叩き潰した上で帰還することから、付いた渾名が全てを焼き尽くす黒い鳥……と」
「ヒュウ♪そんなの雇うなんて戦車屋も本気ってわけね。戦闘は?」
「それについては私が見たことを言うより、直接見たほうが早いだろう」
ピッ、と執務室に現れたホログラム映像は、先日の模擬戦闘の記録されたものだ。
一機の無骨なBM戦車が、手持ちや背負っているグレネード兵装でバカスカと高橋重工のBM達を爆壊していく様は呆れを通り越して最早爽快感すら漂っている。
最後に巨大戦艦のブリッジを一瞬で爆発させたところで映像は終了するが、その時には血気盛んな心宿二はお肌ツヤツヤで伸びをしていた程である。
「気持ちいいくらいに有澤の持ち味を生かしたBMね」
「ああ、代々戦車産業で培って来たノウハウ。特に装甲と榴弾、これが単純故に恐ろしい」
特殊部隊の隊長を持ってして恐ろしいと言わざるを得ないその火力に心宿三はコテン、と小首を傾げるので、2人の姉は恐ろしい才能の片鱗を持つが本業として経験の少ない可愛い妹に補足をつけるのだ。
「有澤重工は先代の高橋家が幹部をやっていた所よ。代々戦車や装甲車、グレネード兵器を売りにしてたの」
「その有澤が技術の枠を集めて開発した山城は、正に有澤重工を体現したBMと言える。その火力と装甲は近づくものに等しく圧力を与えるだろう」
「?こんなものは全て避ければ問題ない。吾やお姉様方なら簡単だ」
無邪気にドヤる妹の天然ぶりに、2人の姉は「それがどれだけ難しいことやら」と少し心配になるのだった。
「………分かった。では、命令を出す」
「!」
高橋家当主の言葉を皮切りに3人に緊張が走る。
「山城計画の全ての人員を消せ。パイロット、整備員、開発者、全てだ。我ら高橋家を脅やかすものは一つとて要らん。戦車を作るしか能の無い老害に高橋家が天下を思い出させてやれ」
「「「はっ!」」」
賽は振られ、指令は下された。
高橋に刃向かうもの、全てを抹消せよ。
そして3人の姉妹は、心宿三は出会う。
己と同じ、戦いの天才たる1人のドミナントにーーーー。
「レイヴン。準備出来たよ」
「うっし、じゃあ始めるか」
時は変わり、有澤重工。
先日の模擬戦闘をフィードバックして護衛として要らないものは降ろし、要るものを載せることにした。
「ん?……おい!ガトリング砲の中身は榴弾仕様じゃないだろうな?」
「うっひぃ!すぐ換装します!」
「ったく、油断も隙もあったもんじゃねえ。確かにグレネードで焼き尽くすのは面白いけど、これも仕事だからな。なんとか護衛としては使えるように弄らねえと」
現在の山城の装備は、ガトリングガン、バズーカ、グレネードキャノン、グレネードミサイルだ。
護衛対象に接近する敵にはガトリングとバズーカで弾幕を張りつつ、狙撃手にはグレネード兵器で潜伏場所もろとも灰燼に帰してもらう構成となっている。
「これならどんな相手でも通用するだろう。相手は要人云々の前にコイツをどうにかしなきゃならねーってわけだ」
正に要人暗殺最後の砦ってワケ。ケケケ、っと底意地悪く笑うレイヴンに、相棒の雲雀は問う。
「私なら諦めもつくけど。レイヴンならどうする?」
「それでも無視して狙撃か、最初の不意打ちで沈める。それさえ防ぐなら懐まで潜って要人とダンスだ」
歴戦の傭兵をもってして暗に正攻法ではやらないと示唆するほどのBM山城を、有澤重工の令嬢はキラキラとした瞳で「山城は名機になる!」と確信するのだ。
「それじゃあ試し行くぞォ!」
「次は帝国機の襲撃想定」
「はっ、定期切符を切る前に降車させてやるよ!」
「分かった。帝騎システムが発動したら即終了ね」
「例えだろ!例えー!くそっ、やってやる。やればいいんだろ!」
その背中に忍び寄る魔の手に気付かず、有澤重工は今日も元気だ。
かんそうもらうと、つぎのとうこうも、はやくなる、きがする