有澤重工×アイアンサーガ 〜アリサガ〜   作:人類種の天敵

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山城破壊命令

 

 

 

 

高橋重工の特殊部隊〝心宿〟に一つの指令が下った。

 

ーー山城計画に関わるパイロット及び有澤重工の人員を全て消せーー

 

心宿の雇い主にして高橋重工の社長を務める男にそれを命令され、心宿姉妹の長女、次女、三女は高橋家の一室で計画を立てていた。

 

「今回の任務は山城計画に関わる人間の排除だ。と言っても有澤重工全てを相手にするわけにはいかない。そのため、山城計画の中でも有澤重工製BM山城の整備員、パイロットをターゲットにし、武器弾薬については調査の下高橋家の圧力で製造を止めるならそれで良し。圧力を掛けても造るのであれば頭を潰すことにする」

 

心宿一が集めた資料には山城計画の現在の開発メンバーが事細やかに記されている。

 

その人員は約50人ほどで、外様の人間はテストパイロットの傭兵とそのパートナーのみだ。

 

「シナリオは?」

 

「有澤重工の武器弾薬が試験場に辿り着いたところ、不慮の事故によって火薬が全て爆発。不幸にも現場にいた人間は死ぬことになる」

 

「過激ね〜♪」

 

「二、お前の火炎放射器は証拠隠滅に使うからそのつもりでいろ。三、お前はこの人物を攫ってもらう」

 

「これは?」

 

三が手に取った資料には彼女と同い年だろうか、無表情の少女が写り込んでいる。

 

「雲雀。かの天才リヒャルトにも、才女セラスティアに引けを取らないと言われた才嬢。ムラクモ社のクレイジー・アーキテクトこと雲雀・叢雲だ。彼女を高橋家の管理下に置ければBM技術の水準は帝国や連邦の上を行くだろうとの事だ」

 

「あのムラクモのねぇ。ああ、思い出した。数年前に列車事件で突如失踪したやつね。そんなのを欲しがるなんて高橋家も変わり者やらBM開発に必死やら……ね」

 

雲雀・叢雲。

ムラクモ・ミレニアム社きっての天才と呼ばれ、数多の機体開発、あらゆる実験にその名を連ね、全て成功に収めてきたムラクモ社の原動力と、当時騒がれていたアーキテクトだ。

 

その裏では独自の設計理論で数えきれないほどの被験体を廃人に追い込んだと噂され、いつしかクレイジー・アーキテクトと呼ばれるようになった少女である。

 

その少女を手中に収めて高橋家の当主は一体何をしようと言うのか、高橋家の忠実なる暗殺者達は思考を、感情を、全て排して今回の計画を練っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くちゅん」

 

「風邪か?……おい俺のパーカーで拭おうとすんじゃねーよ。バッチいだろ。ほらティッシュ、それ使え」

 

「……うん」

 

有澤重工の格納庫に山城を格納し、本日の仕事は終わりと帰り支度を始めていたレイヴンと雲雀。

 

2人は日本に来た観光として自称温泉マイスターの有澤斑鳩から是非行ってみるべしといくつかの温泉の名所を教えて貰っていたのでその中の一つに向かっている途中だった。

 

「さてさて、今日は帰ったら有澤から買った武器を伽藍鳥に取り付けるのか?手伝うか?」

 

先日購入した有澤重工の狂気グレネードガトリングはOATH日本支部に既に送られており、雲雀はそれを大型BM輸送ヘリ伽藍鳥に取り付け用と考えていたのだ。

 

「アレがありゃ乱戦なかに突っ込むのも逃げるのも楽になるな。ついでにミドリのコレクションに加わるかもな」

 

実際ガトリングの威力だけでも高いのに銃弾は有澤製の超小型榴弾なのだ、レイヴンとしても毎秒何十発のグレネードを撃ちまくる上に9機ものBMを抱えることが出来る伽藍鳥と戦場では出逢いたくねえなぁ、とぼやく程度には伽藍鳥は魔改造されている。

 

「こっちは良いよ。レイヴンはレイヴンで弄りたい子がいるんでしょ?」

 

「ん?そんなに急ぐことでもねえけどさ」

 

レイヴンが持ってきたBMは五機。

バイエルングループ製の突撃機ことフレンチナイトの改造機ーーナイトレイヴン。

 

ゼネラルエンジンの最新機、海兵隊〝GHOST〟のヘビーマシン改造機ーーモンスターマシン。

 

同じくゼネラルエンジンの機体にして同社の趣味機体と言わざるを得ない全身銃座ことメタルウォーヘッドの改造機ーーメタルウォードック。

 

帝国工業の傑作、騎士級帝騎ランスロットの改造機ーーボールス。

 

そして前回の仕事の際に使用していたBMギリーフォックス。

 

この内ギリーフォックスは狙撃機として完成されており、ナイトレイヴンは武装と外装に追加ブースターの装着、モンスターマシンは有澤重工よりライフル用のグレネードランチャーと無人機の爆雷を発注、メタルウォードッグは何も手を付けておらず、ボールスに関しては銃と盾を取り外し、現在の武装はレーザーブレードのみとなっている。

 

「この通りちゃあんと予定を組みながら弄ってんやで」

 

「メタルウォーヘッドだけ除け者になってない?大丈夫???」

 

「アイツはいつか四足歩行形態にするからモーマンタイモーマンタイ。で?お前は?」

 

「うん。もう取り付け箇所は決まってるから実際に扱ったみて使い勝手が良かったら飛龍用に二丁買おうかな……って」

 

無表情で指を絡めつつ、今後の予定を話している雲雀を、数年前に出会った頃と比べりゃ表情が柔らかくなったとレイヴンは口の端を歪ませた。

 

「ああ、あの竜胆の。確か近接機体が取り付いたら爆発するクレイモア仕込んでんだろ?可愛い顔しておっかねえBM作るもんだぜ。うちのアーキテクト様はよ」

 

「……ん」

 

無表情ピースを披露しながら雲雀は彼と出会った頃を思い出していた。

 

当時ムラクモ本社から支社へ移動するための列車に搭乗していた時、本来は極秘裏の筈の彼女の乗る列車は一機の黒いBMと見覚えのあるオレンジ色のBMに襲われたのだ。

 

二機のBMは雲雀のいるVIP車両以外を徹底的に破壊した後、突然互いに攻撃を始め、オレンジ色のBMが沈黙する事で戦闘を終了した。

 

『お前、俺のオペレーターになれよ』

 

そして彼はムラクモ社から雲雀を攫った。

 

『いやー、依頼人の奴が報酬を払うのを渋ったのか攻撃してきたのをこうやり返してな?それで支払いのアテがないから仕方なくお前を攫うのさ。なんせ俺は悪い奴だからな?』

 

彼女を攫った時にボヤいた彼の台詞である。

 

だから彼女はレイヴンが寝ている隙にBMの戦闘ログを解析してオレンジ色のBMと彼との会話を聞き、ムラクモ・ミレニアムには戻らない選択をした。

 

『レイヴン…協力してほしい…。私は何か…されたようだ…。…人間でなくなってしまった…。ムラクモを…列車を…襲撃したい…。これ以上手術を…。解放…されたい…。協力してくれ…。そして、彼女……を…』

 

彼女が聞いたのはその部分だけだ。

 

オレンジ色のBMは……ムラクモ社の実験体となったワイルドキャットと呼ばれる男は列車の破壊と、自身の後始末を傭兵に依頼したのだろう。

 

そして彼はそれを了承するとワイルドキャットをBMごと灰に還し、しかし彼女を誘拐するに留めた。

 

 

 

ワイルドキャットは私を殺してほしいとは言わなかったのだろうか。

 

ムラクモ社の実験や開発に参加し、実験体達の悲鳴を聴くうちに表情も感情も閉ざした少女は、毎日そればかりを考えていてはレイヴンに聴けないでいる。

 

聞いたら彼は答えてくれるだろうか、私を殺してくれるだろうか。

 

(わたしは、生きていていい……人間?)

 

自問自答を繰り返すことに自分がおかしくなっていく。

自分が誰なのか分からなくなっていく。

目的地の銭湯の脱衣所でぼーっと立っていた彼女は、自分の背後に立っていた者のことなど、この時は知る由もなかったのだ。

 

 

 

「あーっ!いい湯……。生きかえる」

 

景色満載の露天風呂で人生のなんと素晴らしいことかと馬鹿な妄想に浸る男レイヴン。

彼は石で出来た囲いに体を預け、日々のBM戦闘で疲労した身体を労っていた。

 

「……ったくぅ、俺が話を振ってやったっつーのにあんな顔するなんてな」

 

浮かべるのは先程の相棒の顔、他人には無表情にしか見えないだろうが、訓練された彼の目によれば随分と気落ちしているようだった。

 

「ここ最近の依頼のせいかねぇ。どうもムラクモがちょっかいかけてるようにしか思えねえ。OATHまで嗅ぎつけたかな」

 

ここ数ヶ月、受ける依頼でムラクモ社のBMや傭兵達の姿を見ることが多くなった。

それは敵としても、味方としてもだ、それならばまだいいが、奴らは全員が全員雲雀の事を遠回しに聞いてきてうざったい。

 

ミドリやOATH社長自身もそれを考えてか、今回の有澤重工の依頼をレイヴンに持って来たのかもしれない。

 

「あー……邪魔だなぁ」

 

タオルで顔を覆い、彼は一言呟いた。

 

(この際箔付けだーって言い訳で潰すかね)

 

今更狂犬だの全てを焼き尽くす黒い鳥だのと忌み嫌われている彼だ。

企業の一つを潰したところでさして世界が変わるわけでもあるまい。

 

「何も変わらねえよな、結局」

 

大君だなんだと顔も知らない奴の手駒として縛られたままなのが嫌だった、それを親しい者から期待を掛けられているのだと喜ばれるのが嫌だった、それでも世界は彼を駒としていて、それが面倒でいつしか考えることを辞めていた。

 

ーーーーふと、外に目を向けると、鳥籠の向こうを一羽の黒い鳥が飛んでいた。

 

ソレはとても自由に空を飛んでいた。

 

何にも縛られず、自分以外を不自由な存在だと嘲笑っていた。

 

だから成りたいと思った。

 

あの鳥に、渡り鳥に。

 

戦場を掻き乱し、BMを撃ち、人を殺し、その度に親しき者の影は彼に囁くのだ。

 

『そして汝は何を成す?』

 

大君の手駒だった時と何ら変わらぬ、と嘯くその影にいつも同じ言葉を返してきた。

 

「この空を飛ぶ。何にも縛られることのないあの渡り鳥のように」

 

その結果が今の自分だろう。

ランクはAとなり、いろんな恨みも羨望も買って、ある依頼人からは報酬の後払いとして嫁も貰った(と本人は真面目に考えている)。

 

雲雀の様子がおかしいと感じたのは、今回の依頼がBMの開発だったからだろう。

単にBMの改造なら自重しない彼女もBMの開発となるとムラクモ時代を思い出してナーバスになっている。

 

「ああ、本当に邪魔だ」

 

列車襲撃依頼で任された3つの仕事。

1つは列車の破壊、1つは依頼者の破壊、もう1つは少女の解放。

 

彼女の声はとても心地良くレイヴンの耳に余韻を残す。

 

「渡り鳥は、カラスは自分の縄張りには厳しいぜ」

 

現在進行形で雲雀が拐われたのにも気付かない馬鹿がキメ顔でそう言って脱衣所に上ったところーー。

 

「悪いが、任務だから」

 

そこに、死が立っていた。

 

 

 





アイアンサーガをしながらアルドノア・ゼロのBGMを流すのが好きです
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