劇場版SSSS.GRIDMAN ~Re:UNION あの頃のように同盟を結ぼうか~   作:藤乃さん

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はじめまして、藤乃と申します。
初心者ですがよろしくお願いします。


再・誕

 

 1年前――

 響裕太の身体にはグリッドマンが乗り移っており、裕太自身の意識はずっと眠ったままだった。

 怪獣と戦っていた『響裕太』は『自分を響裕太と思い込んだグリッドマン』であり、本当の裕太とは別人だ。

 

 当時の記憶はそのまま残っているものの、裕太としては複雑な気持ちになってしまう。

 

「俺は、何もしていない」

 

 そのことが、1年間、ずっと裕太の気持ちに暗い影を落としていた。

 

 ……けれど。

 

 ツツジ台に再び怪獣が現れたその日、予想外のアクシデントを経て、他ならぬ裕太自身がグリッドマンへ変身していた。

 

「大丈夫、俺は戦える。……去年、グリッドマンがやったみたいに、戦えばいい」

 

 裕太は、心のモヤが晴れていくのを感じていた。

 

 グリッドマンとして戦った記憶が残っているからこそ、グリッドマンとして戦える。

 

 これが、俺にしかできないこと。

 俺がやるべきことなんだ。

 

 敵は、巨大な二足歩行の竜……キンググールギラス。

 グリッドマンが初めて戦った怪獣がさらなる強化を遂げたもので、なんと、頭が3つに増えている。

 単純に考えれば、攻撃力はグールギラスの3倍だ。

 

 果たして、裕太はキンググールギラスに勝てるのだろうか?

 

 

 

 

 戦いが始まる前に、ひとつ、説明しておくべきだろう。

 そもそも、どうして裕太がグリッドマンに変身したのか。

 

 物語はおよそ2時間前に遡る――。

 

 

 

 

 

 

 * *

 

 

 

 

 

 その日、響裕太は、進路について悩んでいた。

 いまは高校2年生の11月、“自称進学校”のツツジ台高校では進路指導の時期だ。

 来週からは担任教師との面談が始まるのだが、それに先立って、進路希望調査票を提出せねばならない。

 

 締め切りは、今日まで。

 

 けれども裕太の調査票は、第一希望から第五希望までまっしろだ。

 担任教師から「調査票を出してから帰れよ」と言われていたが、どうにも手が動かず、放課後の教室で「うーん」と唸ることしかできない。

 

「裕太、まだ悩んでるのか?」

 

 話しかけてきたのは、クラスメイトの内海将だ。

 ものすごい特撮好きで、ちょっと変わったところもあるが、裕太にとって大切な友人といえる。

 

「調査票なんてテキトーに書いておけばいいんだよ。先生が知りたいのは、進学か就職か、くらいだろうしさ」

「それはちょっと適当すぎるような……。内海こそ、調査票、どう書いたんだよ」

「お、オレは……まぁ、進学は進学だけど、他にもやってみたいことが別にあるというかなんというか……」

 

 んん?

 内海はゴニョゴニョと呟くような小声になってしまった。

 いったい、どうしたのだろう。

 

 裕太が首をかしげていると、さらにもうひとり、別のクラスメイトが声をかけてきた。

 

「内海くん、声優になるんでしょ?」

 

 長い黒髪の少女……宝多六花だ。

 かつての戦いから一年が過ぎ、以前よりすこし髪が長くなっている。

 清楚で整った容姿はますます磨きがかかり、クラスの男子からは“高嶺の花”みたいに扱われているが、本人はまったく気にしておらず、放課後、こうして裕太に(そしてついでに内海に)声をかけてくることがある。

 

「へえ、内海って声優志望なんだ」

「あ、あのなぁ裕太。べ、別にマジで声優を目指しているとかじゃなくって、まあ、将来の可能性のひとつとしてだな……。というか六花サン、なんでオレが調査票に声優って書いたこと知っているんですかね……?」

「え? 内海くん、調査票にそんなこと書いたの?」

 

 六花は意外そうな表情を浮かべた。

 

「ほら、去年のいまごろ、内海くんが声優志望ってウワサが流れたじゃん。だから、冗談のつもりで『声優になるんでしょ?』って言ってみたんだけど……」

「マジかー……」

 

 内海は頭を抱えた。

 

「オレ、自爆した?」

「うん、自爆した」

 

 裕太が頷く。

 

「というか内海、調査票に声優って書いたんだ」

「……書いたことは書いた。でもな裕太、勘違いするなよ。オレは基本的に進学だからな。第1希望から第4希望までは大学の名前でびっしり埋めた。最後の、第5志望だけ何も思いつかなくて、とりあえず声優を入れただけだからな」

「う、うん……」

 

 内海がやけに早口だったので、裕太は圧倒されてしまう。

 ただ、ここまで必死な様子を見せられると、かえって怪しく思えてくる。

 内海のやつは特撮好きだし、そういう進路だって十分にありえるんじゃないか。

 

「というか、六花サンこそ、調査票はどう書いたんだよ」

「え? 進学だけど」

 

 こともなげに六花が答える。

 ちなみに裕太はときどき六花とLINEでやりとりしており、進学は進学でも、看護師志望ということを教えてもらっている。

 以前の戦いでは多くの人々が傷ついたが、それを六花なりに受け止めた結果、誰かの命を救う仕事を選んだという。

 

 裕太としては、そんな六花のことを立派だと感じていた。

 六花は去年のできごとをきっちり消化して、未来に進みつつある。

 

 ――じゃあ、俺は?

 

 実のところ、裕太は過去をうまく消化できていない。

 

 当時、裕太の身体にはグリッドマンが乗り移っており、裕太自身の意識はずっと眠っていた。

 六花や内海とともに戦った『響裕太』は『自分を響裕太と思い込んだグリッドマン』であって、本当の裕太とは別人だ。

 けれど、あのころの記憶は消えずに残っていて、まるで自分のことのように思い出せる。

 

 そんな矛盾のせいで、裕太はすべてを他人事として割り切ることもできず、かといって真正面から向き合うことも難しく、中途半端なまま1年が過ぎていた。

 

 ――こっちは過去だけで精一杯なのに、将来のことなんて考えられないよ。

 

 それが、裕太の本音だった。

 

 

 * *

 

 

 結局、裕太は調査票の第一希望に「進学」とだけ書いて提出した。

 担任教師には「面談までにもうちょっと詳しく考えておけよ」とお小言をもらってしまったが、ひとまずこれで下校できる。

 

 3人は学校を出ると『JUNK SHOP絢』へと向かった。

 この店は六花の実家であり、かつてグリッドマン同盟(命名:内海将)の拠点だった。

 

 怪獣との戦いが終わってから、今日でちょうど1年になる。

 そのことを記念(?)して、久しぶりに3人で集まる約束だった。

 

「……あれ?」

 

 歩道橋を渡っているとき、ふと、裕太は立ち止まった。

 夕暮れのビル街の向こうに、怪獣のような影を見かけた……ような気がしたからだ。

 

 だが、影は一瞬で消えてしまった。

 後に残っているのは、いつもどおりの平和な街並みだけ。

 

「おーい裕太、置いてっちまうぞー?」

「響くん、どうしたの?」

 

 六花と内海はすでに歩道橋の階段を下りていた。

 

「ごめん、いま行く!」

 

 裕太は階段を駆け降りると、急いで2人に合流した。

 そうして少し歩いたところで、内海がこんなことを言い出した。

 

「いやー、でも、あの店に行くのってホント久しぶりだよなー。なんだか懐かしくないか、裕太」

「う、うん……」

 

 裕太はすこしだけ曖昧に頷いた。

 というのも、内海はこの1年間ほどんと『JUNK SHOP絢』を訪れていないが、裕太はときどきお邪魔してコーヒーをごちそうになっていた。

 

 ちなみにママさんが淹れたものではなく、六花のお手製だ。

 去年の末あたりから六花はコーヒーに凝っており、裕太はその“味見係”として定期的にお呼ばれしていた。

 

 だが、裕太はそれを内海に明かさなかった。

 できることなら六花と自分だけの秘密にしておきたいところだが、さて、六花はどうだろう?

 

「そうだねー。響くんも内海くんも、ほとんど1年ぶりじゃない?」

 

 六花はほんの一瞬だけ裕太に視線を投げたあと、そんな言葉を口にした。

 どうやら六花も六花で、コーヒーのことは秘密にしておきたいようだ。

 裕太はニヤけそうになりつつも、同時に、ひとつの疑問を覚えていた。

 

 ――六花は、俺のことをどう思っているんだろう?

 

 少なくとも、嫌われてはいないはず。

 いまの関係は居心地がいいけれど、できれば先に進みたい。

 

 それができないのは、去年の記憶がひとつだけ欠けているからだ。

 

 グリッドマンが宿る直前、裕太は六花に対して、とても大事な話をしたらしい。

 いったい何だろう?

 裕太にはまったく覚えがない。

 六花にも尋ねてみたが「響くんが自分で思い出さなきゃ意味がないから」と言われてしまった。

 

 告白でもしたのだろうか?

 

 

 

 裕太がそんなことを考えながら2人の後ろを歩いていたとき――。

 遠くで、ドオン、と爆弾が落ちたような音が響いた。

 コンマ数秒遅れて、地面が激しく揺れる。

 

「うわっ!」

「おおわっ!?」

「きゃっ!」

 

 いきなりのことだったから、裕太も内海も六花も、三人揃って姿勢を崩してしまう。

 

「なんだなんだ、地震か?」

 

 内海が、ズレた眼鏡を掛け直しながら言う。

 

「でも、妙な揺れだったよな……」

「もしかして怪獣とか? でも、アカネは神様の世界に帰ったはずだし……。響くんはどう思う? ――響くん?」

 

 裕太は何も言わない。

 後ろを振り向いたまま、硬直していた。

 

 このとき、裕太は不思議な感覚に襲われていた。

 

 左手の手首……かつてプライマル・アクセプターを装着していた部分が、熱い。

 もしかするとグリッドマンが去った後も裕太の身体にはその欠片のようなものが残っていて、怪獣に反応しているのかもしれない。

 

「おい裕太、どうしたんだ?」

「響くん、大丈夫?」

「……俺、ちょっと見てくる!」

 

 裕太は走り出した。

 身体が軽い。

 いつもより、ずっと足が速くなっていた。

 さっきの歩道橋のところまで戻り、階段を駆け上る。

 あらためてビル街のほうへと視線を向ければ、遠くに、怪獣の姿があった。

 

 それは二足歩行の竜だった。

 グリッドマンが初めて戦った怪獣……グールギラスに似ている。

 だが、その首は1本ではなく、3本に増えていた。

 

 怪獣は、3つの口から火炎球を吐き出しながら暴れていた。

 このままじゃ、ツツジ台は火の海になってしまう。

 

「止めないと……!」

 

 裕太はほとんど反射的に、腕を十字に組んでいた。

 それはグリッドマンに変身するときのポーズだ。

 けれど、何も起こらない。

 当たり前だ。

 グリッドマンはもういない。

 グリッドマンが宿っていたジャンクも、いつのまにか消えてしまった。

 

「グオオオオオオオオッ!」

 

 怪獣が唸り声をあげながら、裕太のほうを向いた。

 中央の顔から、火炎球が放たれる。

 

 それは山なりの軌道を描いて、ゆっくりと裕太のほうへ飛来する。

 裕太はすぐに身を翻して歩道橋から飛び降りた。

 普通の高校生にはできない動きだ。

 

「やっぱり、俺にはグリッドマンの欠片が残ってるんだ……!」

 

 裕太は強く確信しつつ、火炎球から距離を取ろうとした。

 だが――すぐ近くに、六花と内海の姿があった。

 どうやら2人とも裕太を追いかけてきたらしい。

 

「内海くん、あれ……!」

「えっ? う、うわああああああっ!?」

 

 2人は火炎球に気付いたものの、驚きと恐怖によって、その場で立ち竦んでしまう。

 

「六花! 内海! 逃げろ!」

 

 裕太は叫ぶ。

 自分だけなら逃げることも可能だろう。

 でも、仲間を見捨てるわけにはいかない!

 

 裕太は2人の目前で立ち止まると、盾になろうとして、両手を大きく広げた。

 俺は六花と内海を守りたい、力を貸してくれ、グリッドマン! 

 

 ……グリッドマンはもういない。

 

 よって、裕太がここで更なる力を発揮することもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、そんな裕太のすぐ横を、銀髪の少年が駆け抜けた。

 アンチ。

 もともとは新城アカネによって生み出された怪獣だったが、最終的に『グリッドナイト』という第二のグリッドマンというべき存在へと進化を果たしていた。

 この1年間はずっと行方をくらましていたが、果たしてどこにいたのだろう?

 

「貸しひとつだ。いつか返せ」

 

 アンチは擦れ違いざまにそう呟くと、グリッドナイトへと変身した!

 

 

 

 

 





 パンドン→改造パンドン(メカ化)→キングパンドン(首が増える)の発想をおかりして、グールギラス→メカグールギラス→キンググールギラスにしてみました。
 で、キングがつく竜の怪獣とくれば首が3つかな、って……。(キングギドラ)
 

『魔王の逆襲』のマグマギラスもちょっと参考にしています。


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