劇場版SSSS.GRIDMAN ~Re:UNION あの頃のように同盟を結ぼうか~ 作:藤乃さん
激しい閃光が弾け、赤と紫の巨人……グリッドナイトが出現する。
その目の前には、怪獣の放った火炎球が迫っていた。
「うおおおおおおおおおっ!」
グリッドナイトは雄叫びとともに、右の拳で火炎球を殴りつける。
その衝撃によって火炎球は爆発するが、グリッドナイトは無傷だった。
「こんなもので、おれを倒せると思うなぁぁぁっ!」
グリッドナイトは大地を蹴ってジャンプすると、怪獣……キンググールギラスに飛び蹴りを食らわせる。
キンググールギラスは、よろめき、そのままビル街へと倒れ込んだ。
高層ビルが崩れ、道路の車がひしゃげて潰れる――。
* *
グリッドナイトとキンググールギラスの戦いを、裕太たちはその場から眺めていた。
内海が苦々しげに呟く。
「あいつ、前と同じだ。まわりの被害なんて何も考えちゃいない」
「違うよ内海、アンチは俺たちを巻き込まないようにしているんだ」
裕太はそう確信していた。
なぜならアンチは「貸しひとつ」と言っていた。
要するに、今回は守ってやる、ということだろう。
「早くここから離れたほうがいい。俺たちがボンヤリしていたら、アンチの邪魔になる」
「なあ裕太、おまえ、キャラが変わってないか? もしかしてグリッドマンが戻ってきたとか……」
「俺は俺だよ。さあ、行こう」
裕太は短く答えると、内海、そして六花を連れて戦いの場を離れようとする。
ただ、六花はどこか上の空というか、考え事をしているような雰囲気だった。
「六花、どうしたの?」
「あたしの見間違いかもしれないけど、アンチくん、ケガしてなかった?」
「……そうかもしれない」
裕太は頷いた。
アンチの姿を見たのは数秒ほどだったが、たしかに、その身体はあちこち傷が刻まれていた。
「もしかして、あたしたちの知らない場所で、アンチくんはずっと怪獣と戦っていたとか……?」
「可能性はあると思う。……でも、それなら怪獣はどこから来たんだろう」
昨年の戦いでは、新城アカネが怪獣の原形を作り、それをアレクシス・ケリヴが実体化させていた。
けれど、アカネは自分の世界に帰ったし、アレクシスは封印された。
怪獣が出てくる原因は、もう、存在しないはずなのだ。
裕太と六花は揃って疑問に首を傾げ……そこに、内海が割り込んできた。
「もしかしたら、この世界にはもともと怪獣がいたのかもしれないぜ。『ウルトラマンガイア』の地球怪獣みたい」
「は?」
六花はものすごく冷たい視線を内海へと向けた。
特撮トークへの冷淡さは、去年とまったく変わっていない。
その時だった。
ドォンという激しい爆音が響いた。
裕太は思わず背後を振り向いた。
ビル街のほうではグリッドナイトとキンググールギラスが戦っている。
……状況は、グリッドナイトの劣勢だった。
もともと身体に傷を負っているせいだろうか、動きが鈍い。
グリッドナイトは光線技を叩きこもうとしたが、それよりも先に、キンググールギラスの体当たりが炸裂していた。
「うわあああああああああああっ!」
アンチの絶叫が響き、グリッドナイトの身体が弾き飛ばされる。
そのまま住宅街に墜落したかと思うと、再び立ち上がることもなく、姿を消してしまった。
ダメージが大きすぎて、変身を維持できなくなったのだろう……。
「アンチくん!」
六花が悲鳴をあげると、グリッドナイトが落ちた場所へと走り出した。
裕太はキンググールギラスへと視線を向ける。
グリッドナイトを追いかけてくる様子はなく、ビル街のほうで破壊活動を続けていた。
「お、おい裕太。どうする?」
内海は困ったような表情を浮かべながら、その場に立ち止まっていた。
「内海は先に逃げてくれ。俺は六花を追いかけるよ」
「お、おい! ちょっと待てよ裕太!」
内海の制止も聞かず、裕太は走る。
六花に追いついたのは、グリッドナイトの落下地点の近くだった。
周囲の家々は潰れ、瓦礫の山となっている。
六花は高い瓦礫を登ろうとしているが、手足の力が足りず、うまく進めないでいた。
「六花!」
裕太は走ってきた勢いのまま瓦礫を駆け登ると、上から六花に手を差し伸べた。
「響くん……? あ、ありがと」
「しっかり掴まってて。……よっ、と」
裕太は右手ひとつで六花を引き上げる。
六花は華奢とはいえ、それでも、年齢相応の体重はある。
それを腕一本で持ち上げるなど、普段の裕太ならば不可能だろう。
「響くん、こんなに力持ちだったっけ……?」
「たぶんだけど、俺にはグリッドマンの欠片が残っている。怪獣の出現のせいで、欠片が反応しているんだと……思う」
「じゃあ、グリッドマンに変身できるの?」
「……分からない。でも、アクセプターがないから、たぶん無理だ」
裕太は右腕を見る。
いまも手首にはビリビリとした違和感が残っているが、それ以上の変化はない。
「俺のことはともかく、まずはアンチのところに行こう」
「うん、そうだね。アンチくん、無事だといいけど……」
裕太と六花は、足元に気を付けつつ、瓦礫の山を進んでいく。
やがてくぼみのような場所に辿り着いた。
中心部には、銀髪の少年が倒れている。
アンチだ。
全身ボロボロで、頭からは流血していた。
両眼は閉じられており、ときどき、苦しそうに呻き声をあげている。
「アンチくん、しっかりして!」
六花が駆け寄って声をかけると、アンチはうっすらと瞼を開いた。
「おまえ、あのときの……。それに、響裕太……」
アンチは掠れ声で呟きつつ、裕太のほうを見た。
その左眼は赤く、右眼は青い。
「響裕太、いまのおまえはグリッドマンか?」
「……違う。欠片みたいなものは残っているけれど、俺は響裕太だよ」
「欠片……」
アンチはしばらく考え込むと、よろよろと身を起こした。
その表情はどこか鬼気迫るもので、近くにいた六花は何も言えないでいる。
「確かに感じる。グリッドマンの匂いだ」
アンチはそう呟くと、右手を伸ばし、ガッ、と裕太の肩を掴んだ。
「響裕太、力を貸せ。いまからもう一度、あの怪獣と戦う」
「戦うって……どうやって?」
「いまのおれは変身できない。エネルギーが足りない。……だが、グリッドマンの欠片があれば、何とかなるはずだ」
アンチの言葉に、裕太は考え込む。
怪獣はいまも暴れている。
このまま放っておけば犠牲者は増え続ける一方だろう。
もしかすると裕太のクラスメイトが殺されてしまうかもしれない。
たとえばそう、バレー部の問川のように!
「……分かった。さっきは助けてもらったし、借りは返すよ。俺は何をしたらいい?」
「おれの眼を見ろ。眼を見て、心を開いて……心を繋げ」
「心を、繋ぐ……」
裕太の頭をよぎったのは、最後の戦いだ。
あのとき、裕太だけでなく新世紀中学生の4人、さらにはアンチを含めた全員がひとつになり、真のグリッドマンに変身を遂げた。
同じことをすればいいのだろうか。
そう思ったとき――裕太の左手首に、左半分だけのアクセプターが現れた。
アンチの手首にも、右半分だけのアクセプターが現れていた。
裕太とアンチは頷き合い、同時に叫んだ。
――アクセス・フラッシュ!
白銀の稲妻が弾け、新たなグリッドマンが降臨する。
それは、白い装甲に身を包んだ力強いフォルムの巨人だった。
青色の瞳には、煌々と闘志が燃え滾っている。
裕太はいま、グリッドマンとなっていた。
巨大な手足はすべて裕太の思うように動く。
アンチはどうなったのだろうか?
そう思った矢先、裕太の脳内に声が響いた。
「いまのおれは戦えない。コントロールはおまえに任せる」
「……わかった、やってみる」
裕太は心のなかで頷くと、ファイティング・ポーズを取った。
「大丈夫、俺は戦える。……去年、グリッドマンがやったみたいに、戦えばいい!」
裕太は、自分の心がストンと整理されていくのを感じていた。
グリッドマンとして戦った記憶が残っているからこそ、グリッドマンとして戦える。
これが、俺にしかできないこと。
俺のやるべきことなんだ。
裕太が変身した姿は、ジャンボットをイメージしています。
ジャンボットが登場したとき、グリッドマンに似てるって話題になりましたよね……。