劇場版SSSS.GRIDMAN ~Re:UNION あの頃のように同盟を結ぼうか~   作:藤乃さん

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初・陣

 

 白銀の稲妻が弾け、新たなグリッドマンが降臨する。

 それは、白い装甲に身を包んだ力強いフォルムの巨人だった。

 

 グリッドマンはファイティング・ポーズを取ると、怪獣へと向かっていく。

 その動きには迷いというものがない。

 本物の『響裕太』にとっては初めての戦いだが、まるで熟練の戦士のような身のこなしだった。

 

 ――その一方、六花は大きく混乱していた。

 

「響くんとアンチくんが、ひとつに……? なにそれ、意味わかんないんだけど……」

 

 裕太とアンチの合体変身。

 あまりにも突然のできごとに、六花はただ茫然とするばかりだった。

 

 そんな六花のもとに、内海が駆け寄ってくる。

 裕太に置いてけぼりにされたあと、彼なりの全力疾走で追いかけてきたのだ。

 

「はぁっ、はぁっ……! なあ六花、あの巨人って、グリッドマンだよな……? もしかしてグリッドマンが帰ってきたのか?」

「ううん、そうじゃなくって……ええと、響くんにグリッドマンの欠片? みたいなのが残ってて、それを使ってアンチくんと一緒に変身したというか……」

 

 六花の説明は(本人が状況の呑み込めていないのもあって)曖昧なものだった。

 だが、内海はすぐに状況を理解したらしく、力強くと、早口で自分なりの解釈を語り始める。

 

「裕太にグリッドマンの欠片が残っていた、ってことは、マンガの『ULTRAMAN』とか小説の『ウルトラマンF』みたいな状況ってことか。最近のウルトラシリーズのお約束だよな。アンチとの合体変身は『ウルトラマンA』っぽいか。とにかく、新しいグリッドマンにも名前が必要だよな。……稲妻とともに現れる戦士、つーことで、電撃超人グリッドマンF(ファイター)とか」

「内海くん、うるさい。ちょっと静かにして」

「え、ちょ、六花サン、さすがにその返しはひどいような……」

「いいから黙って」

 

 六花はピシャリと言い放つと、耳を澄ます。

 どこかから、裕太の声が聞こえたような気がしたからだ。

 

「……下?」

 

 六花は足元に目を向ける。

 ついさっきまでアンチが倒れていた場所に、携帯電話が落ちていた。

 折り畳み式のフューチャーフォン(ガラケー)だ。

 

「これ、アンチくんのケータイだよね」

「……ああ、たぶん」

 

 内海は頷きながらアンチの携帯電話を拾い上げる。

 

「つーかあいつの携帯料金、いったい誰が払ってるんだ?」

「分かんない。前はアカネが払っていたんだろうけど……」

 

 六花と内海は互いに顔を見合わせる。

 そのときだった。

 ブルルルルルルッ!

 携帯電話が力強く震えたかと思うと、裕太の声がスピーカーから響いた。

 

『このおおおおおおおっ!』

 

 六花は顔を上げると、グリッドマンのほうに視線を向けた。

  ビル街のほうでは、ちょうど、グリッドマンが怪獣……キンググールギラスの首を掴み、一本背負いを決めたところだった。

 

「響くん、すごい……!」

「裕太のやつ、めちゃくちゃ強いじゃねえか。去年の記憶が残ってるって話だったけど、経験値もそのまま、強くてニューゲームかよ。……てか、今回はこの携帯電話がグリッドマンと連動してるのか?」

 

 以前のグリッドマンは、六花の家にある「ジャンク」という古びたパソコンと連動していた。

 それと同じような状況なのかもしれない。

 

「内海くん、ちょっとそれ貸して」

「あ、ああ。いいけど……」

 

 六花は内海から携帯電話を受け取る。

 液晶画面を見れば、ジャンクの時と同様に、グリッドマンの視界が映し出されていた。

 

 

 

 * *

 

 

 

 グリッドマンとキンググールギラスの戦いは、ややグリッドマンの優勢ながら、膠着状態にあった。

 

「このまま戦っていても被害が増えるだけだ。早く勝負を決めないと……!」

 

 裕太は焦りを覚えつつ、キンググールギラスに格闘戦を挑む。

 もちろん反撃も飛んでくるが、新しいグリッドマンは分厚い装甲に覆われており、圧倒的な守備力を誇っていた。

 キンググールギラスの火炎球が直撃しても、まったくのノーダメージだ。

 

 ……しかしその一方で、攻撃力はやや弱く、決め手に欠ける。

 

 オリジナルのグリッドマンをバランス型とするなら、グリッドナイトはスピード型、新しいグリッドマンはディフェンス型なのだろう。

 以前の戦いを参考にしてキンググールギラスの首の根元にチョップを叩きこむが、あまり効いていない。

 

「どうすればいいんだ……! って、うわあっ!」

 

 裕太が考え込んだ一瞬のことだった。

 キンググールギラスは身をかがめながらグルリと回転し、その尻尾でグリッドマンの足を払ったのだ。

 

 グリッドマンはバランスを崩し、その場に倒れ込む。

 キンググールギラスは激しい雄叫びをあげると、3匹同時に、その口を大きく開いた。

 

「「「グウウウウウウウウアアアアアアアッ!」」」

 

 吐き出されたのは、火炎球ではなかった。

 真紅の熱線が3つ。

 それは途中でひとつに融合し、猛烈な勢いでグリッドマンへ襲い掛かる。

 

「うわあああああああああああああああああああっ!」

 

 熱線はグリッドマンを呑み込み、さらに、背後の街並みを一瞬で灰に変えた。

 アスファルトは蒸発し、焦げた地面が露出している。

 その向こうに、グリッドマンが倒れていた。

 分厚かった装甲も深く傷つき、額のエネルギーランプは点滅を繰り返していた。

 

 

 * *

 

 

 グリッドマンのダメージは、そのまま、アンチの携帯電話にも影響していた。

 携帯電話の画面が乱れ、バチバチと火花が散る。

 

「きゃっ!」

 

 六花は驚きのあまり、携帯電話を手放してしまう。

 そのまま地面に落ちる……かと思いきや、その寸前で内海がキャッチする。

 

「危なかった……! このケータイがグリッドマンに連動してるんだ。壊れちまったら、どうなるか分からないからな」

「ありがとう、内海くん……」

「いいってことよ。……それにしても、このままじゃヤバいだろ。くそっ、前と違ってクビの付け根は弱点じゃねえみたいだしなぁ、どうすりゃいいんだ」

「ねえ、怪獣の口、なんだかおかしくない……?」

 

 六花は携帯電話の画面を指差す。

 そこにはキンググールギラスの顔が映っていた。

 

 3つの顔。

 3つの口。

 そのどれもが焼け爛れて、ボロボロになっている。

 

「そうか!」

 

 内海は大声をあげた。

 

「さっきの熱線の反動で、怪獣もダメージを受けてるのか! だったら、口を狙えば……! でも、どうやって裕太に伝えりゃいいんだ……?」

「……電話、とか?」

 

 六花の頭のなかによぎったのは、去年、一度だけ聞いた言葉だ。

 電話は命と繋がっている。

 とくに今回はアンチの携帯電話がグリッドマンに連動しているのだから、そこに電話をかければ、グリッドマン……裕太に声を届けることができるのではないだろうか?

 

 六花はすぐに自分のスマートフォンを取り出した。

 

「内海くん、そのケータイの電話番号、分かる?」

「きゅ、急にそんなこと言われても……。オレ、ガラケーなんて使ったことないし……」

「じゃあ貸して。わたし、使い方なら分かるから」

 

 六花は、内海の手から携帯電話を奪うと、素早い手つきで電話番号を表示させた。

 

「早っ! さすがジャンク屋の娘……」

「こんなの普通でしょ。電話番号は分かったから、あとは――」

 

 六花は自分のスマートフォンから通話を発信する。

 数秒遅れてアンチの携帯電話が震えたかと思うと、回線が繋がった。

 

「もしもし、響くん! 大丈夫!?」

「えっ……? あっ、六花……? どうして六花の声が……?」

「説明はあと! いま内海くんに代わるから!」

「えっ、お、オレ!?」

 

 六花からいきなりバトンタッチされ、内海は戸惑う。

 

「え、ええとだな! 裕太! 怪獣の口だ! 口を狙え! 熱線のせいでボロボロだ!」

「わ、わかった! 六花、内海……俺、もう少しだけ、頑張ってみる……!」

 

 

 * *

 

 

 極大の熱線を食らった直後、裕太とアンチは気を失っていた。

 だが、六花からの電話によって意識を取り戻し……2人は、再び、立ち上がった。

 

「響裕太、いけるな?」

「いけるよ。……今度こそ、決める!」

 

 グリッドマンの両眼が、力強く輝いた。

 その全身にバチバチと稲妻が走る。

 

 裕太の心には、いま、闘志が燃え滾っていた。

 俺はひとりじゃない。

 六花と内海がいてくれる。

 

 正直なところ、去年のことが話題にあがるたび、裕太は大きな疎外感を覚えていた。

 六花や内海の言う『響裕太』は裕太本人じゃなく、『響裕太に宿ったグリッドマン』だ。 

 それを寂しく感じつつ、解決策もないまま過ごしていた。

 

 けれど、いまは違う。

 

 ――俺は、戦っている!

 ――六花や内海と一緒に、戦っている!

 

 1年という時間を経て、裕太はいま、ようやく2人と仲間になれたような気がした。

 

 その認識が、裕太の心をさらに強く震わせる。

 

「うおおおおおおおおお!」

 

 大地を蹴って、疾走する。

 

 もちろん、キンググールギラスも無抵抗ではない。

 焼け爛れた3つの口を開き、火炎球を次々に放つ。

 

「グリッドスパーク!」

 

 グリッドマンが左拳を突き出すと、稲妻がほとばしり、火炎球を空中で迎撃した。

 

「はあああああああああっ!」

 

 右足を強く踏み込んで、ジャンプ。

 空中で一回転し、鋭い飛び蹴りをキンググールギラスの横腹に叩き込む。

 

「グゥゥゥゥアアアアアッ!」

 

 キンググールギラスの態勢が崩れる。

 グリッドマンはそのまま中央の口を掴むと、上下にこじあけるようにして……引き裂いた!

 

「今だ、響雄太!」

「分かってる! ……グリッドライトセイバー!」

 

 グリッドマンの左腕から、細長い光の件が伸びる。

 

「スラッシュ!」

 

 横一文字。

 その斬撃は、キンググールギラスの左右の首を、ナナメに切り落としていた。

 

「トドメだ!」

 

 グリッドマンは後方へと飛び退くと、両腕を組んでエネルギーを貯めたあと、左腕の籠手……グラン=アクセプターから光線を放った。

 

「グリッドビーム!」

 

 それは稲妻の光線だった。

 白銀の洪水が、キンググールギラスを呑み込む。

 

 目も眩むほどの閃光。

 キンググールギラスは爆発し、灰すら残さず消滅した。

 

 

 

  

 

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