最強チートハーレム野郎の折杖くんは俺TUEEEEがしたい【お試し版】   作:翠晶 秋

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勇者、回想に浸る

 

俺の名前は折杖(おれつえ) ベエルマキュリオン。

……いや、ベエルマキュリオンはアダ名で、下の名前は包己(つづみ)と言う。

事の発端は一年か、それくらい前に遡る。

 

 

 

 

「ようこそおいでくださいました勇者どの。まずは召喚にお応え頂けたことを心より感謝いたします」

 

神父のような服を着た二十代くらいのおじさんに、唐突にそんなことを告げられた。

余談だが、俺はオタクをかじっている。

だからこそ、そのセリフが異世界召喚のド定番であることは脳の髄まで理解しているはずなのだが……。

 

「……とりあえず一発殴らせて」

「何故です!?」

 

転生する前の俺は中の良い年下の女の子とお買い物、デートに行こうとしていたのだ。

生まれて初めてのデート、服も口臭も全部整えて意気揚々と赴いたところに、足元が光って、気がついて一番先に目に入ったのがこのおじさんだ。

 

「初めてのぉ。デートをぉ。邪魔してぇ。ただですむと思ってんのかコラッ!!召喚に応じただぁ?そんな覚えねえよ!人の迷惑考えろやコノ!そのちょび髭むしりとるぞ!」

「痛っ、痛い、は、はなして……」

 

冷静になるほど怒りがこみ上げてきて、罪のないおじさんに八つ当たりをしていると、奥の部屋からダンディなこれまたおじさんが出てきた。

 

「……君が、勇者かね?」

「そのつもりは無いけど、そうみたいだ」

「貴様!我が王に向かってその態度はなんだ!」

 

おじさん2号の周りの騎士が剣を抜く。

 

「えっ、王様なの?全然気づかなかった」

「貴様!」

「え、当たり前でしょ?逆に聞くけどあなた、知らない人を連れてこられて『あ、この人王様だ』って気づく?気づかないよねぇ?」

 

そう、俺は異世界に来たパニックとオタクかじりなせいで、騎士を論破し始めた。

 

「し、しかしこの状況でわからぬなど」

「状況?状況がなんだって?応えたつもりもないのに召喚されて、それで状況を把握しろと?絶対無理でしょそんなの!ねえ、あなたは確認できる?いきなり召喚されて、それで『あぁ、この状況はこうこうこういう事なんだな』って即座に理解できるかこのスカポンタン!」

「ぐ……うう……もういいです……」

 

早口で捲し立てて息の荒い俺に、王様は苦笑いで「すまんが、こっちに来てくれ」と促した。

通路を移動する王様についていくと、小さな客間に通される。

お付きの騎士たちは王様の手によって払われ、しぶしぶ扉の警護にまわって行った。

 

「良いんですか?一応王様なんですよね?」

「彼らは全員貴族だ。貴族はプライドが高い者が多くてな、君といると心にダメージを追いかねん」

「あ、なんかすみません……」

「かまわんよ。本来なら召喚に応える応えないの選択肢が与えられるはずだが、何かの手違いで強制的に呼んでしまったようだし。すまん、内の部下が迷惑をかけた」

 

ゆっくりと頭を下げる王様。

……ライトノベルのテンプレと違い、この王様は話がわかるな。

仲良くしといた方が良さそうだ。

 

「頭を上げてください。王様ってそんな簡単に人に頭を下げて良いんです?」

「や、確かにそうだな。では失礼して……」

 

王様が頭を上げ、手を叩いた。

さっき俺が論破した騎士が紅茶とドーナツをお盆にのせ、ソレを机に置いて去っていった。

 

「まずはお茶を飲んでくれ。僕の国は紅茶が名産なんだ」

 

そうして王様はドーナツをかじる。

 

「カップを、交換しませんか」

「……?あぁ、薬を恐れているのか。別にかまわんよ」

「……ありがとうございます」

「うむ」

「……」

「…………」

「………………」

「……………………飲まないのかね?」

「実家がお茶を飲むときはまず相手が飲んでから、というのを家訓にしておりますので」

 

常に警戒は怠らない。

今の俺は勇者だからな。

 

「これは手厳しい。確かに、両方のカップに薬が盛られていたら敵わんからな」

「…………ッ」

「ずず。これで大丈夫か?」

「ありがとうございます」

「うむ。こちらとしても信頼してもらいたいからな」

 

一口、口に含む。

あ、美味しい。

ティーバッグのよりも深みがある。

 

「口に合ったか?」

「はい、まあ」

「それはよかった。では、ある程度場も温まって……はないが、本題に入らせてもらう」

「…………」

「魔王を、退治してもらえんか」

「キタコレ」

 

心のなかで小さくガッツポーズを決める。

なんかこの王様は信用できるし、とりあえず聞いておこうか。

 

「きたこれ?」

「気にするな」

「そ、そうか。ごほん、魔王がな、ここの紅茶を気に入ったようで」

「ほう」

「倉庫の茶葉全部取り上げていった」

「この国弱すぎだろ」

 

しくじった。

口に出てしまった!

 

「あぁ、うん……。自分が嫌になるよ……。今ではこうやって来客の時しか自分も飲めないくらい貴重なんだ……。はは……民の茶葉一枚も守れない僕なんかがなんで王様やってるんだろ……」

「めっちゃ凹んでる!あぁ、すみません、すみません、きっと大丈夫ですよ!慕われてると思います!」

 

慌てて王様を慰める。

……あれっ、本来は勝手に飛ばされた俺が慰められる側じゃね?

そうして、俺はなんやかやで魔王を退治する旅にでることになったのだった。

 

 

 

 

それが今では仲間が強すぎて俺TUEEEEもできない状態、魔王(美少女)に人工呼吸やってます。

ハーレムメンバーのヒロインたちは顔を赤らめたり嫉妬したりと反応はそれぞれだが、まあ数が多いからやりづらい。

 

獣人のノワール。

没落姫様のナギ。

リアルお嬢様のソラト。

ドラゴンが人に化けたドラゴニアロリータのシエル。

魔王軍幹部のフィフタニエ。

なんか伝説の神器?に宿っていたらしい神様の一人、アストロボルグ。

隕石から世界を守った大魔法使いのエスガドル・リアクトフェテション・ナズミック、略してエリナ。

初めての旅で倒れた俺を自宅に運んで看病してくれた村人のロッカ。

 

その他にもたくさん。

 

ああ、多い多い。

エリナの本名なんか、よく覚えていたな、俺。

思い出に浸るのは長くなりそうだ。

 




お試し版はここまでです。
好評価やお気に入り登録者が増えていれば、【お試し版】ではなく、モノホンの小説として投稿していく所存です。

基本的に回想がメインの小説となります。
回想シーンのベエルマキュリオンと回想しているベエルマキュリオンの異なる反応をお楽しみください。
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