ハツコイ   作:クロロ

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ヨウガシ①

入学して二週間がたち学校生活が慣れてきたころ

俺たちはエプロンをつけ家庭科室に集合していた

女子の目線と男子のそわそわしている様子が俺たちの班に降り注ぐ

「……はぁ、ダル。」

「もうせっかくの調理実習なのに気が滅入る事言わないでよ。それに、今回は秋葉くんのせいでしょこうなったの。」

「……まぁそうだけどさぁ。お前のせいでもあるだろ。」

綾風の言葉に俺は項垂れる。まぁ昼休みにあんなことを話したことから始まった

 

「ありゃ?優じゃん。」

「あれ。舞子先輩お久しぶりです。」

俺は昼休みに家庭科室に余裕を持っていこうとしていたら舞子先輩がコーヒーを持って歩いてきていた

「珍しいですね。一条先輩といないなんて。」

「そりゃ、俺だって楽以外にも友達いるから別の友達と話すことはあるって。」

まぁ当たり前か。舞子先輩は男子の友達は多そうな性格だし

「もしかして調理実習?」

「はい。ケーキ作るらしいんですけど。あんまり本格的にできないので。」

「そういえば優は雑誌で洋菓子も一応作れるんだよな?クリームやカスタードクリームもほとんど優が作っているんだろ?」

「はい。一応、世界大会に出た時に準グランプリの人からレシピ交換をしてアレンジを加えた物になりますけど。」

「まぁ、実際美味しかったしね〜。」

「先日はお買い上げありがとうございました。」

俺は頭をさげる。先週末に二年生の先輩たちが全員で俺の家の和菓子屋に立ち寄り和菓子を食べていったのだが

……物の見事に平均金額5000円くらい食べていったからなぁ。

特に桐崎先輩も餡が気に入ったのか餡を購入までしていったし橘先輩はカロリー、小野寺先輩と一条先輩は財布の金額を気にしていたのが面白かった。

「それで、優はどんなケーキを作るつもりなの?」

「ジャムを使って複数の様々な苺の味を楽しめる苺ケーキを作ろうと思ってます。抹茶とどちらか迷ったんですが、試作品のジャムがあったので。」

「おっ。もしかしてそのジャムある?」

「ありますよ。少し舐めますか?」

俺は瓶を一つ取り出すと舞子先輩に小型のスプーンを差し出す。

そして一口加えると

「……」

「どうですか。」

「……これってもしかして自家製?」

「はい。俺特性の苺ジャムです。来年のメニューに組み込もうって。これはとちおとめですね。んでこっちはあまおうに。様々な苺を一度に味わえるようにジャムでコーデしたんで。」

「余ったら俺にくれない?」

「流石にダメです。これで試作まだするつもりなので。」

結構気に入ったのか本当に残念そうにしているのだが

「そういや、今年もやるのかな?去年と同じこと。」

「去年何かあったんですか?」

「去年の調理実習で好きなやつにケーキを渡すっていうバレンタインのようなことをやっていたわけなのよ。」

「へぇ〜そんなことあったんですか。まぁ、こっちはやらないんじゃないですか?去年よりも早いペースで調理実習するみたいなんで。」

「そっか〜これを伝統行事にしたら面白いと思ったんだけど。」

「仕掛け人先輩なんですか?」

まぁこの先輩なら女子への根回しも完璧だろうしバレるヘマもおかさないだろう

まぁ多分誰かさんのためだと思うが

「でも、流石にやらないと思いますよ。」

と適当に雑談をしたのを近くにいた女子に聞かれていたらしくするとざわざわと俺のクラスで盛り上がり、気になっている異性にあげるという構図ができあがったのだ

 

「それで秋葉くんは誰かにあげるの?」

「……あげるわけないだろ。本当は綾風と小野寺に食ってもらおうと思っていたんだけどパァだよ。普通に一人で食う。」

材料的にホールなんだけどなぁ

「あれ?私たちに分けるつもりだったの?」

「ホール一つのケーキ食い切れないし。姉貴行きかな。こりゃ。」

俺はそうしてタルトの生地を作り始める。世界大会行った時に俺は洋菓子や和菓子など世界中のパティシエからレシピの交換をしていた

洋菓子では姉貴の好物だからよく作ったことも幸いし、テンポよく制作していく。

そして一時間半が経過して最後の苺を乗せ終える

「よし完成っと。」

「……うおっ。すげぇ。」

すると近くにいた男子が俺のケーキを見た途端驚いている。

苺を満遍なく使ったタルトは苺を1パック丸ごと使い苺のジャムを三種類使うことで味の変化も楽しめる

「……なぁ、秋葉。少しこれ食べてもいいか?」

「は?」

「頼む。この通り。」

すると頭を下げるクラスメイト

「お、おい。……まぁ別にいいけどさ。」

「本当か?」

「……秋葉くん。私も食べたいんだけど。」

すると綾風が俺に聞いてくる

「別にいいぞ。てかもういいから全員で分けろ。またいつでも作れるし。」

すると歓声が聞こえいちごのタルトが食べられていく

俺は廊下の方に向かい歩きだし少し歩いたところでしゃがみこむ

『君は和菓子よりケーキ作りに向いている。だから私の元にこないかね。』

つい半年前に言われた言葉を思い出す。もう何十年も世界一のパティシエと呼ばれる人の声が今でも耳に残る

「……はぁ。」

分かっている。そんなことは

だから今でも悩んでいる。

……俺は和菓子作りの道に進むべきかを

「秋葉くん。」

「あっ、小野寺か。どうした?」

「秋葉くんの姿が見えたから。少し心配になって。」

「あぁ、目立つの苦手だから逃げてきただけ。小野寺はケーキ食べないでいいのか?」

「私はいいや。……隣いい?」

「はぁ。……制服汚れるぞ。」

「クリーニングかけるから大丈夫だよ。」

「なら、別に許可はいらないけど。どうしたんだよ。」

「えっと、これ作ったんだけど風ちゃんが秋葉くんのケーキ食べにいっちゃったから。これ食べない?」

すると小野寺の手元には抹茶のケーキがふたつ分置かれている。

「まぁ、それじゃあ一つ。」

俺は一口手でつまんで食う。まっちゃの渋みと少し甘めの生クリームが上手く組み合ってる

「上手いな。てかケーキも普通に作れるのか。」

「秋葉くんほどじゃないけどね。」

「俺は昔から勉強も運動もできない分料理に特化しているからな。まぁ、赤点をとるほどじゃないけど。」

あとはよく歌が上手いと言われるくらいか

ついでに凡矢理にも推薦で入ったくらいだし、推薦じゃなければもう3ランクぐらい下の学校に入ることになっていたところだ

てか

「お前今日もらいすぎじゃね?」

小野寺の手には箱に包まれたケーキがたくさんあり、それも青色とかのラッピングをされている

「えっと、断ったんだけど。」

「ふ〜ん。」

普通に可愛いし、俺たちのクラスのアイドルみたいな感じになっているから当たり前なんだけど

「そういえば、何で私にくれたんだろう。」

「お前に気があるからじゃねーの。」

「どういうこと?」

小野寺知らなかったのか

「舞子先輩と俺の話をクラスの女子に聞かれて。気になる奴にケーキを渡すって風潮になったんだよ。」

「えっ?」

「去年舞子先輩達がやったことを話してたら綾風が知り合いの女子に広めていって。男子もそれに乗っかる形だったからな。」

「風ちゃん何しているの?」

まぁ、あいつも少し舞子先輩とタイプは似ていそうだしな

「そういや、秋葉くんはケーキ貰ったの?」

「一個も貰ってない。てか俺なんかもらえるわけないだろ。」

「……そうなの?」

「あぁ。まぁ、サンキュー。ケーキ美味かった。」

お世辞抜きで美味しかったな。シンプルだけどどこか懐かしい味だったし

俺は立ち上がる

いつのまにかブルーな気持ちが消えていて、気持ちが晴れやかになっていることに俺はまだ気づけなかった

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