ウサミン星に移住したい 作:匿名希望のウサミン星人
うづりんとか他のしまむーSSとかアニメやらシンデレラ劇場などをお供にベンキョーチュー。
ガンバリマス······。
ああ菜々さんかわいいよ菜々さん
《本日は、──航空をご利用いただき、真にありがとうございました。また、皆様と機上でお会いできることを、心からお待ち申し上げます》
日本語で放送されたソレと同様の内容の、複数の言語のアナウンスをBGMにラックから黒いキャリーバッグを下ろし、その取手を掴んで持ち上げつつ人の流れに従って歩を進める。
順調だ、と心の中でほくそ笑む。
あちらにはフライトの日程やら時間やらは伝えていない。これならいつもよりずっとゆっくり過ごせそうだ。
────そう思ってた俺を、ぶん殴りたい。
「徹頭さん!何か一言!」
「徹頭さん、今の心境をお聞かせ願えますでしょうか!?」
「今一番やりたい事は何ですか!?」
『テットウ氏!何故タイタン・フット・エージェンシーからこの日本に移ったのですか!?』
バシャバシャと嵐の如く浴びせられる一眼レフのフラッシュ。
逃がさんとばかりに周りを囲み、いつまでも付いてくる取材陣。よく見てみると
誰だ余裕ぶって胸の中でドヤ顔しながら粋がってた奴は。俺か。
まぁ、かと言って無視するのも余り良い選択ではないだろう。
少なくとも無愛想キャラで通せる程器用な人間でもないので、誰に対して答えてるか分かる程度に
しっかし、それにしても人多過ぎない?こんな万年端役なむさ苦しい野郎なんぞに
それはそれとして、いい加減間に合わなくなるんでそろそろ退いてくれませんかねぇ?
数日前、とあるニュースが日本とアメリカという、世界を代表する先進国を驚かせた。
正確にはアメリカでは日本とは違い所属ではなく個人業としての俳優との契約という形をとっていたりなど日本と大分異なるのだが、長くなるので割愛する。
徹頭 鋼。
本名、『
齢13の時にベテラン顔負けのミステリアスな演技力にて鮮烈なデビューを果たし、16の頃には既に日本を代表する名優としての地位を確立していた。
更には18の時にアメリカの大手芸能事務所の三本指に入るとされる『タイタン・フット・エージェンシー』、通称『TFA』と契約を交わし、4年が経つ頃には既に名脇役としてその名をハリウッドに、全米に刻み込んだ鬼才である。
そんな男がアメリカに移り住み、正に順風満帆と言っても過言ではないのにも関わらず特に理由を語ることなく僅か10年と少しで拠点を日本に戻し、こちらも大手の『美城プロダクション』(以下346)に所属するというのだ。
その大物が今何をしているのかと言えば。
(や、やっと着いたぁ·····)
これからお世話になる
(デッ··········ケぇ!?)
完全にビビっていた。
この男、徹頭 鋼は実はかなりの小心者なのだ。
勿論
そして目の前に
流石にマンハッタンにて遠目で見かけた摩天楼、とまではいかないが、それでもアメリカに移る前に一度だけ訪れた事のある『黒井プロダクション』(以下961)のモノを遥かに上回る規模である。
アメリカでも高層建築物は腐る程見て来たが、流石にここまでとなると中々お目にかかれないものだ。画像で何度も見て分かっていたからと言っておいそれと受け入れられる様な光景ではない。
さらに言えば、その周りに経つ他の建物やらがよりその
従って心身共に腰が引けても致し方ない事なのだ。
しかし、それはここで足踏みしている言い訳にはならない。初日から遅刻という大失態こそ犯してはいないものの、本来の念入りに調べたルートを本来の予定通りに行けたのであれば一時間程
(大丈夫だ落ち着け俺!これから人様にご挨拶に伺うってのにビクついてどうする!?ここからが俺の───)
ジャイアントステップだぁ!
そうして
「すみません」
「うおわひゃひぇぇい!?」
思わず情けない声をあげ、その直後にギュン!と聞こえそうな勢いで顔を向けると顔を少し仰け反らせた大柄な男が立っていた。
厳つい顔をしておりそんなに驚かせてしまったか、と思ったがよくよく見てみればどうやらこの表情がデフォルトらしい。
「·····あぁ、驚かせてしまって申し訳ございません。てっきり我が社に何か御用がおありと思い」
「へ?いえいえこちらこそ見苦しい所をお見せして申し訳ありません、確かにお伺いしようとしていたんですけど御社の大きさに少し驚いてしてしまい·····」
「そういう事でしたか、私も最初はそうでした。所でどちらまで行かれるのですか?宜しければそこまでご案内致しましょうか?」
「え、いいんですか!?ありがとうございます!」
「いえ、お気になさらず。それと私は346プロの武内です、遅れてしまい申し訳ございません」
「名刺?···あ、いえいえこちらこそすっかり忘れてました!自分はこういう者なのですが、以後お見知り置きを······は?」
「······え?」
『······え?』
互いに顔を
数多のシンデレラを導く従者と、シンデレラと血の繋がった演者の、少し気の抜けた
途中で出会った武内さんのおかげで俳優部門のトコの責任者やアメリカで知り合った美城さんにスムーズに挨拶しに行けた事で大分時間に余裕が出来た。その為にこうしてカフェスペースでゆっくりさせてもらっている。いつか絶対にお礼しないと。
それはそれとして、そろそろ来るはずだけど······レッスンが長引いてるのかな、真面目だからなぁあの子。
「ギン兄さーん!」
と色々考えていたら、2週間前に電話越しで聞いた俺の名を呼ぶ声が。
「やっほーうっちゃん、おひさ〜」
「も〜ギン兄さん!その呼び方はやめてって言ったのに〜!」
「HAHAHA!うっちゃんはいつまでたってもうっちゃんさ♪」
「これでももう高校生なんですよ!?流石に恥ずかしいよ!」
「やー、ごめんごめん」
「わー!高ーい!······って言いながら持ち上げるのやめて!?」
「······いや待ってうづちゃん軽過ぎない?ちゃんとご飯食べてる?朝ごはんか昼ごはん抜いてたりしないよね?」
「食べてるよ!食べてるから下ろして!?人前でやらないで下さい!」
ワハハ、今でも高い高い好きなクセにあたふたしおってカワイイカワイイ。小さい頃はこれめっちゃ好きだったろうに。にしてもノリツッコミが上手くなったなぁ。
というかいくらアイドルとはいえ本当に軽い。真面目に心配になる位には軽い。それとも最近の年頃の子は皆こんなモンなの?しっかりお仕事なさいな厚生労働省。
今
因みにこの子、346に所属する100人以上のアイドルの頂点である『シンデレラガール』に選ばれた事のある、正にスーパーアイドルと呼ぶに相応しい存在だったりする。真っ直ぐさと純粋さから一部のファンからは大天使ウヅキエルと呼ばれていたりする。大体あってる。身内フィルターなけりゃ脇に手を引っ掛けるなんて事出来ないし。
「んじゃうづちゃん、なんか食べる?奢るよ」
「わぁ、やった!えーとそれじゃ···」
「あんまり頼みすぎないでねー、今割と財布の中身ないし」
まぁ足りなけりゃATMから下ろせばいいけど。というか
「そういえばギン兄さん」
ここを出た後の予定を確認していると、ふとうづちゃんが声を掛けてきた。
「ん〜?頼む物でも決まったの?」
「いやそうじゃなくて、なんでこのタイミングで戻ってきたの?」
「んー、理由はいくつかあるんだけどねー」
元々10年位したら帰ってくるつもりだった、てのもあるけど他にもいろいろある。
「ほら、お正月とかに年に1·2回は会ってたけどさ、なんだかんだうづちゃんのライブ見に行った事ないじゃん?
「け、結構恥ずかしい事言うね······」
「まぁ年齢的に年の離れた兄妹みたいに思ってるとこあるし。二つ目は、まぁ自分試しってヤツ」
「···?自分を試すためにアメリカに渡ったんじゃなかったっけ?」
キョトンとしながら首を傾げるうづちゃん。それも多分無意識。流石アイドルあざとカワイイな。
「あー、それよく間違えられるんだけどさ、ハリウッドに行ったのはあくまで修行だよ」
流石に年数で言えばまだまだひよっこな自分が通用すると思うほど自惚れちゃなかったし。なんなら周りの人達がギガントやらヤマタノオロチのバケモンやらに見えてたまである。
ただ俺は相当に強欲な人間だったらしく、そういう格上の人間の見てる景色を少しでも早く見てみたくなってしまった。
んで、手っ取り早くめちゃ積める方法ないかなーって思ってたら
「まぁつまりは、だ。当時の自分より遥かに
「そうだったんだね。······あれ、ていう事は場合によっては向こうにすぐ戻っちゃうかもしれない、て事?」
「場合によっちゃ、だけどね。まぁそうならない為に荒波に揉まれてきた訳だしねぇ······精々慢心せずに頑張らせて頂きますよ」
「なるほど···凄いです、ギン兄さんらしいね!」
「いやいや、俺からしたらうづちゃんの方が凄いと思うよ?」
4年もオーディション落ち続けても諦めないとか俺じゃとてもムリムリ。半年もてば奇跡もいい所だ。
そして一生懸命積み上げてきた努力がこうして実を結んでいる。正にうづちゃんは、島村卯月はなるべくしてなったシンデレラなのだ。
てか少し真面目な話しちゃったから『あのアイドルのライブ』が見たいから』っていうのが一番の理由とかとても言えなくなったんですけど。
「よし!私ティラミスにします!」
「へぇ、ティラミスなんてあったんだ」
「あれ、ギン兄さんメニュー見てなかったんだ」
「うづちゃんが来る前に何かを頼むのはちと申し訳なかったからね、お冷でなんとか粘らせて頂きました」
「その気遣いは嬉しいけどお店によっては冷やかしになっちゃうから程々にね···」
「勿論。あ、飲み物はどうする?」
「じゃあ、抹茶ラテで!」
「おっけ、それじゃあ俺はーっと、黒豆茶にしようかな」
「ギ、ギン兄さんおじいちゃんみたい······」
「いーじゃん?上手いんだし」
うるへぇ、最近の若い衆がオサレなだけなんじゃ。
まぁそれはいいとして、頼む物が決まったので注文をしようとした所で───
「すみません、注文お願い、し、ま·······」
「はいはーい、今行きまーす!」
「あ、
─────美城専務の執務室でのお話─────
「お久しぶりです美城常、いや今は専務でしたっけ?数ヶ月ぶりですね」
「アメリカで会って以来だな徹頭。いや、島村と呼んだ方がいいか?」
「いやいや、徹頭で大丈夫ですよ。そっちの方が慣れてますし」
一見穏やかな会話のように聞こえるが、この二人の間には嵐の前の静けさの様な不自然な静かさがあった。
「そうか、なら
「勿論ですよ、はいどうぞ」
「む」
男がキャリーバッグから取り出した紙袋を差し出すと、美城はそれを片手で受け取る。
そして恐る恐るといった様子で中に手を突っ込み取り出すと······
因みに今回の場合は金品ではなくあくまで雑誌というジャンルにカテゴライズされる本である上、特に
·······多分。
それを企画書を確認する位のペースで中を覗き、隅に丁寧に置いた。
そして机の上で手を組み、真顔で一言。
「しまむーマジやばくね?」
「わかりみが深い」
美城はこの後めちゃくちゃしまむーについて語った。
因みにこの時武内Pは今西部長から企画についての裁決を取ろうとしていた。実に幸運である。だってこんなとこ見たら胃がズッタズタにされた上で蹂躙されて死んでしまい、目はハイライトというハイライトを消しさられちゃうし。
専務にここまでのめり込ませるとか流石大天使ウヅキエルである。
美城専務の噂
とある俳優とかなり仲がいいらしい。