魔導巧殻 もう1人の神殺し   作:ヴィヴィオ

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原作開始だぜ、ヒャッハー!
でも、暴れるのはお母様!


センタクス①

ヴァイスハイト

 

 

 

 

 ラウルバーシュ大陸中原において五大国の一つとも称される強国、メルキア帝国。メルキアの東・センタクス領は現在、宿敵ユン・ガソル連合国の猛攻に晒されていた。

 メルキア帝国は皇帝の下、国内が有能な四人の武将『四元帥』と共に統治される中、東領の元帥が戦死した報せを受けたメルキア皇帝は激怒し、凄惨な戦場と化したセンタクス領へ増援を送る事となった。これに答えたのがバーニエとディナスティであった。

一面を覆い尽くす焼け焦げた木々や兵士の死体に打ち据えられた鉄塊に今なお燻り続ける戦場の熱気。それはこの地での戦闘が集結してから二日は経つというのに、目の前には未だ戦火の傷跡が広がっていた。そう、大地に突き刺ささった剣は煤にまみれながらも鋭さを保ち、残された残骸もまた朽ち果てていない。その情景は名残と呼ぶには生々しく、死臭さえも嗅ぎ取ることができる。

 

「こうなってしまえば敵も味方も関係無いな。できることなら弔ってやりたいところだが……生憎と俺は聖職者ではなく、彼らと真逆の立場にいる」

「仕方ありません。それが私達の選んだ道ですから……ですがヴァイスハイト様、そんな私達だからこそ……せめて味方であった方々の魂に報いる方法があります」

「ああ、センタクスを俺達の手で奪還する。街を守るために戦った同胞の思いに答えるためにも必ずな。リセル、お前の力……あてにさせてもらうぞ」

「微力ながら、副官として支えさせていただきます」

 

ようやく辿り着いた戦場を前に、過敏になっていた心をリセルの言葉が解きほぐしてくれる。そう、俺達はユン・ガソル連合国に奪われたセンタクスの街を奪還するそのためにやってきたのだ。

 

「北にいる本隊の戦況は聞いているか?」

「敵軍に阻まれ、苦しい状況に立たされているらしいですね。本来であれば、私達と本隊でセンタクスを挟撃することはできたのですが、ザハフ部族国が攻めて来ましたから……」

「キサラが主力を担う本隊はその対応に追われることとなり、当初の予定は変更を余儀なくされたと……」

 

ユン・ガソルが手を回していたのだろうな。面倒な事をしてくれたものだ。

 

「俺達がする事は戦況を見極め、然るべき時に背後から強襲を仕掛け、敵将を撃破し、センタクスを奪還することだ。予定とは少々異なるが、命令はなによりも優先される。少しでも早くセンタクスの情報を得たいところだな」

「それはもう少しかと。行っているのがあの人ですから」

 

リセルの言葉に軽く笑い、今か今かと斥候を勝手でたお方を待つ。

 

「ただいま。リセル、ヴァイス」

「噂をすれれば、か……」

 

俺の目の前に現れたのはリセルよりも頭一つ分ほど小さい十代後半の少女。その服装は明らかに戦場に出る姿ではない。襟元のボタンを外した白いYシャツと真ん中で止めていない黒いブレザーというらしい物に青い丈の短いスカートと黒いベルト、黒いストッキングにグリーブという姿なのだ。かろうじて靴だけまともだ。

 

「お変えなさいませ、お母様」

「ご苦労様でしたミライ様。お疲れのところすいませんが、報告をお願いします」

「うん、いいよ。センタクスは完全にユン・ガソル軍の制圧下にあったよ。守備隊は壊滅し、ノイアスの爺様も生死不明の状態。それと東門で指揮していると思える敵将の金髪……名前なんだったかな……」

「えっと、有名な方ですと三銃士ですね」

「そうそれの金髪」

「金色の髪という事はエルミナ・エクスですね」

「それが居た」

「喧嘩を売ってないでしょうね」

「失礼な……暗殺しようとしただけだよ」

「お母様……」

 

この身体になった後、ミライ様の戦闘意欲は凄まじかった。人間とまったく変わらない姿に血を媒介とした戦闘能力は桁が違うといえる。だが、御蔭で色々と無茶な事をなさるので俺とリセルは大変だ。

 

「しかし、噂に名高い三銃士が相手か……」

「私が相手をするからリセルとヴァイスは露払いをすればいい」

「それは助かりますが……」

「お母様、無茶はしないでくださいね。メンテナンスするこっちの身にもなってください」

「……負ける事じゃなくてそっちを心配されるとは思わなかった。わかったから私にもその胸を寄越して……」

「むっ、無理です……私にはどうする事も……」

「おのれリセル……まさか私の子だというのにここまで成長するとは……」

「やぁっ、お母様、やめてください!」

 

リセルはミライ様に胸を揉みしだかれている。

 

「あんなに小さかったリセルが……もぎ取ろうか」

「止めてください! というか、ヴァイスハイト様も助けてください!」

「ミライ様、今は敵の配置をお教えください。センタクス奪還が優先されますから」

「仕方無い。えっと、こんな感じ」

 

ミライ様が兵士から渡された図面に敵の布陣を書き込んでいく。その光景を見ながら剣を交える事になる敵将の高名を思い起こす。

『三銃士』とはユン・ガソル連合軍の中枢ともいえる3人の将軍の総称だ。それに伴い、国王の側近中の側近でもあるそうだ。この三銃士はそれぞれ、鋼鉄の軍師、戦の申し子、謀略の魔女と呼ばれる異なる特色を持った3人の美女で構成されているそうだ。

 

「エルミナ・エクス、三銃士の中で軍務全般を担当する才女でしたね。私やヴァイスハイト様とそう年齢は離れていませんが、幾多の戦場で勝利を収めた歴戦の名将ですね」

「それに敵に対しては一切の容赦をしない苛烈な性格らしい」

「成程、流石は鋼鉄の軍師という事か。一筋縄でいかない相手のようだな……」

 

名のある将が指揮をしているだろうと覚悟していたが、まさかユン・ガソルの誇る三銃士とは……先生も予想されていたのだろう。だからこそミライ様を寄越したという事か。ミライ様も居るし、敵の布陣は俺が思い描いていた通りの配置だ。

 

「本隊を警戒するあまり、ユン・ガソル軍の主力は北に集中している。攻めるのは楽だな」

「それにバーニエからも援軍がくるはずだから、気にせず戦っていいよ」

「バーニエからですか……まさか……」

「誰が来るかわからないけど、通信でエイダが驚くがいいとか言ってたから期待できるよ」

「エイフェリア元帥のお墨付きですか……それは楽しみですね」

「ですが、それでは困りますよヴァイスハイト様」

「ああ、そうだな」

 

俺が上に行く為にはこの戦で手柄を立てなければならない。エイフェリア元帥自身を持って送りだされる戦力が生半可なはずはない。あちらにはミライ様を開発したエルカもいるのだから。

 

「俺達の存在は気づかれていると思われますか?」

「大丈夫」

「お母様の言うとおり、今しばらくは大丈夫でしょう……ですが、時間の問題かと思われます」

「敵兵との遭遇は避けたけど、強行軍で痕跡はそのままだからいずればれるよ」

「ならば俺達が優位に立てる時間は短いですね。別働隊である俺達の戦力は決して多くはないですから。それに先の一戦で消耗しているとはいえ、未だユン・ガソル軍の方が我々の戦力を上回っている事実もあります」

 

攻めては相手の数倍の戦力を用意するのが定石だ。この戦力で挑むのは本来なら自殺行為だ。だが、今という時ならば無謀が無茶に変わり、勝利への道を歩む事ができる。

 

「ですが、ユン・ガソル軍が籠城を行おうにも、センタクスの防衛力は前の決戦で大きく削られています。補強は行われているでしょうが、この短期間では元の防御力を発揮する事はできないでしょう。ましてや彼らは民の協力が得られず、常に反乱の可能性を考えねばなりませんから、録に進んでいないでしょう」

「籠城に大切なのは援軍と守る者達の結束。そのどちらが欠けても籠城は成功しない。今回は成功するはずがない。ましてやここは都市なのだから」

 

要塞や砦ならまだしも都市の場合は守り手に市民も含まれる。故に占領直後のセンタクスで機能的な籠城戦が可能かと言われれば不可能だ。

 

「それにユン・ガソル連合国の主力は攻城兵器です。あらかじめ襲撃に備えていたのならばともかく、この状況ではその性能を活かすことはできないでしょう。用意された攻城兵器の殆どが北側に配置されているのですから……」

「そうだな。ユン・ガソル軍の意識が本隊に向いているから俺達に気づいていない。それに本隊の戦況が思わしくないことが結果的にセンタクスの街を前線から遠ざけ、油断を生んでいるはずだ。そこを突き、南からユン・ガソル軍に奇襲を仕掛ける。北から来る本隊への警戒を強めている以上、南からの対応は微かな隙を生む。そして、その隙を致命的にする存在がこちらにはいる。ならば勝利は確実だ」

「任せてよ。可愛い子供達の為に頑張るから」

「俺は……」

「ヴァイスにはリセルを貰ってもらうから子供で間違い無いわ」

「おっ、お母様っ!!」

「なに? 手柄を立てたら結婚してもらうから。これはオルファンとの決定事項よ」

 

既に手回しはされているだろうな。まあ、リセルの事は嫌いではないし、俺は構わないのだが……リセル次第だな。

 

「諦めろ。既に手回しはされている。それとも俺では嫌か?」

「嫌だなんて事は有りません! ですが、私では釣り合いが……」

「馬鹿。元帥の娘が何を言っているの? 釣り合いとか取れてるに決まってる。その脂肪に知能が吸われた?」

「うぅ……非道いですお母様……」

 

ミライ様はリセルを弄って遊んでいるな。この自然体のような余裕が俺達の緊張を確かに解きほぐしてくれる。

 

「さて、部隊配置も完了した。じゃあ、ヴァイス、リセル」

「はい。ヴァイスハイト様、ご命令を」

「ああ。待たせたな諸君。然るべき時が来た。我々は任務を忠実に遂行し、目的を達するのみ。目標はメルキア帝国センタクス領、東の都センタクス。ユン・ガソルに奪われた我らの地をこの手で奪還する。全軍、全身せよ!」

 

熱い視線を向ける兵達の前に一歩踏み出し、拳を振り上げながら号令を発する。それと同時に全軍が進軍を開始する。

 

 

 

 

 

 

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