センタクス近郊に到着してみれば火の手があがり、明らかに大変な事になっている。俺達はルナ=ゼバルのブリッジで確認している。
「さて、どうしようかな……」
「きゅ、救助に行かないのか?」
膝の上に乗せて胸を揉みしだいているラクリールが質問してくる。このブリッジに居るのは俺とララ、ラクリールに加えて魔導機人が20人居て、それぞれ担当している。ブリッジにこれだけいるので、全体で見ると80名の魔導機人が搭乗している。なのでブリッジの20人と館内活動の30人の計50名で魔導陸上艦ルナ=ゼバルを動かしている。残り30人が戦闘部隊で俺とラクリール、ララの元にそれぞれ10人つく。ちなみにこの艦の登場人数は130名だ。なので残り47名になる。そして母親の愛か何か知らないが、とっても怖い……いや、頼もしい事にこの艦の格納庫には魔導砲が装備され、優れた攻撃性能と高い防御性能が両立している魔導外装の完成系であるアシュラクーナが20機も搭載されているのだ。まあ、ルナ=ゼバルには遠距離攻撃ほとんどない突撃タイプの陸上艦なんだからこれは助かる。
「無駄だと思いますけど……」
「そうだな。近くに生命反応はあるか?」
「肯定。軍団規模の部隊の移動を確認。方向はセンタクスより撤退しているもよう」
センタクスから撤退しているなら、そいつらがユン・ガソル連合国の連中だろう。確か原作ではエルミナが指揮を取っていたな。ならば決まりだ。
「そいつらをユン・ガソル連合軍と仮定し、進路をその先に取れ」
「御意」
即座に俺の指示に従ってルナ=ゼバルを移動させていく。
「ラクリール、ララ。戦闘準備をしろ」
「イエス、マスター」
「……いいだろう。だから離せ」
「はいはい」
俺が解放してやるとさっさと膝の上から退こうとするラクリール。だが、その身体は残念そうにしている。そして、ラクリールはララと共に準備をしに向かった。
「さて、俺も準備するかな」
それからしばらくして俺達は連中の予定進路の先がよく見える崖の上に到着して部隊を降ろした。地上に降りて俺は狙撃体勢に入る。軍用に開発した暗視機能と赤外線、拡大機能などを取り付けた特別な軍用ゴーグルをつけて目標を狙う。俺の下についている10人も同じようにアンチマテリアルライフルを持って射撃体勢を取っている。ああ、魔導機人がイメージしやすいのは木洩れ陽のノスタルジーカのフローライト・アルヴェガだ。こちらはゴーグルをつけていない。そんな物、瞳に直接搭載してある。
「マスター、準備が完了しました」
「こっちも終わったぞ」
「ご苦労」
ララはVenusBlood-GAIA-の姿そのままでラクリールも同じスク水のような服だ。こちらも原作通りだな。ただ、装備が違う。ラクリールの装備が普通の剣だったのが魔導剣になっており、雷の力を扱いやすいように調整した魔焔反応炉を使った魔導エンジンを取り付けた物だ。こちらは小型で出力こそ低いが芸術の域まで強化してある。そもそもラクリールに魔力を供給し、強化しながら剣自身もパール鋼で鍛えあげた特別製で雷を纏う。強度も切れ味もかなり鋭い。そして身体強化まで行ってくれる優れ物だ。
「それじゃあ俺が射撃したらラクリールが魔法を撃ってララが突撃しろ」
「了解です」
「……いいだろう。だが、ルナ=ゼバルは使わないのか?」
「ルナ=ゼバルは援護射撃だけでいい。壊されてもかなわんし、撤退する時の為に温存しておく」
「逆襲をくらいたくないのです」
「それもそうか」
「というか、せっかくエイダから貰ったんだから大切に使いたいしな」
「マザコンなのです」
「マザコンだな」
「五月蝿い」
「エルカ様、来ました」
魔導機人の報告に即座にゴーグルを降ろして対象を睨む。確かに来ている。俺は指示を出して何時でも行けるようにした。そして、連中が通りかかる瞬間にエルミナ・エクスに向かって引き金を引いた。発射された弾丸は音速を超えて飛んでいく。本来なら命中してこれで終わるはずだった。だが、驚いた事に既にエルミナは回避行動をとっていた。
「っ!?」
そして、直ぐにこちらを見てきた。エルミナは即座に指示を出して盾を構えるように指導し、撤退していく。
「攻撃開始!」
俺の声に長距離射撃が開始される。同時にラクリールの詠唱が開始されて雷雲が現れ出す。その時には既にララが部隊を引きずれて突撃する為に崖を降りていく。その間に俺も狙撃を行っていく。もちろんルナ=ゼバルからの援護砲撃も行っていく。
「防御魔術を切らしては駄目です! 対雷撃術式展開準備!」
魔術師を重点的に狙撃して殺していく。だが、流石は三銃士の1人という事か、防御力が凄まじい。だが、それでもラクリールが詠唱を完了した。
「ユン・ガソルの雑兵如きが……立ち向かうのは愚かだとその身に教えてやる」
目を瞑り、天に掲げた長刀に膨大な魔力を収束させていくラクリール。一見無防備に見えるラクリールの周りには魔導盾が浮遊し、詠唱を阻害しようとする敵の攻撃を本来なら阻害する。いや、阻害するどころか自動で反撃してしまう。この盾も一つ一つに魔導砲と魔焔反応炉が取り付けられているのだから、一つの兵器だ。これはラナハイムの
「――死ねぇッ、有象無象どもがぁぁぁぁぁあ!!」
剣を通して頭上に放たれた光線は途中で雷雲と合流し、四方八方へと枝分かれを繰り返して改めて審判の落雷として地表へと向かう。そして着弾すると同時に焼き切り、爆風で吹き飛ばしていく。それは神秘的な光景でまさに審判の轟雷と名付けられるに相応しき魔術であり、圧倒的な破壊力を持つ。
「くっ!?」
審判の轟雷がなり止むと同時になんとか耐え抜いていた生き残り達にララ達が突撃していく。
「全軍、食らいつくのです! マスターの望むままに敵を撃破して褒めてもらうのです! それこそ最高のひとときなのです!」
炎を纏わせた大剣を振りまわし、盾毎敵兵を切断し、取り付けられたカノンをぶっぱなす。大剣から取り付けられたカノンから発射された弾丸は敵陣を突き進み、盾に命中すると中の力を解放し大爆発を起こす。吹き飛ばされる兵士達は即死した者達以外、後続の部隊が直ぐにとどめを刺して確実に殺していく。
「我々も行くぞ! ユン・ガソルに地獄を見せてやれ!」
ラクリールも戦場へと向かう。もはや一方的な虐殺だ。少人数で大人数を虐殺するという奇襲戦法ならではの戦いが行われている。
「ヒャッハー、なのです!」
ガトリングガンをぶっぱなし、辺り構わず殲滅していくララに合流したラクリールが斬りまくる。
「むむ、負けないのです」
「抜かせ。私の方が凄いという事を見せてやる」
ララはガトリングを収納し、ラクリールに合わせて大剣でぶった斬り続ける。ラクリールもラクリールで剣戟と魔法を使って確実に敵兵を殺していく。だが、エルミナも負けていない。双剣を使ってララとラクリールを牽制し、隊への被害を減らしている。
「落ち着いて対処なさい! こちらの方が圧倒的に数が多いのです! 5人で確実に1人を包囲して殺しなさい! ユン・ガソルの兵ならばこの程度の数に負けるのなど許されません!」
「「「はっ!」」」
流石は三銃士。奇襲から持ち直してきたか。初撃の砲撃とラクリールの審判の轟雷、ララの突撃でかなり数は減っているが元の数が違う。そもそもこっちは100人も居ないのに1000人以上の部隊に喧嘩を売る方が間違っているのだ。
「信号弾を撃て。これより俺達は甲板より援護射撃を行う」
「「「了解」」」
全員で瞬時にルナ=ゼバルへと搭乗していく。
「発進させろ」
「了解」
そして、発進させる。
「あれは……まさか!?」
「撤退だ! 遅れるな!」
「逃げるですよ!」
崖を飛び降り、戦場の真っ只中へと落ちてくるルナ=ゼバル。そして、前方に設置されているブレードユニットで敵兵を斬り裂きながら突き進む。
「乗れ!」
「急げ!」
魔導機人達は魔力を足にある魔導機に集中させて、推進力を得て一気に飛び上がって腕からワイヤーアンカーをルナ=ゼバルへと打ち出して走っているルナ=ゼバルへと戻っていく。ラクリールとララはそのまま走りながら飛び上がり、下に向かって互いの魔術を放って、その爆風でルナ=ゼバルへと飛び上がる。むろん、その撤退を援護する為に俺も狙撃しているし、甲板から二人に向かってアシュラクーナのアンカーを射出して確実に回収する。
「行け!!」
「エンジン出力全開。敵陣を突破します」
敵兵をひき殺し、アシュラクーナを背後に展開して砲撃と防御を担当させながら俺達は撤退する。
「ラクリール、やるぞ」
「……仕方無い。わかった。いいぞ」
俺はラクリールが天へと掲げる剣を握って魔力を込めていく。そして、共に魔術を発動する。
「「置き土産だ、もう一度喰らえぇぇぇぇえッ!!」」
ラクリールは嫌そうだが、その身体は確実に俺の物になっている。既に眷属化の準備も整って、もはや俺の命令には逆らえないし、何時でも眷属にできる。ただ時期を待っているだけだ。
「センタクスへと進路を取れ」
「了解」
放たれた審判の轟雷により敵陣は足を止めるしかできず、俺達は悠々とセンタクスへと向けて撤退していく。