魔導巧殻 もう1人の神殺し   作:ヴィヴィオ

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レイムレス要塞①

 

 

 

 

 

 エルミナ・エクス

 

 

 

 

 

 予想外に被害を受けました。しかし、こちらの兵力は問題ないレベルです。そもそもセンタクスに送った兵は本隊の極僅かなのですから。しかし、その後に現れた連中は不味い。明らかにセンタクスを襲った連中と装備の質が違いました。そもそもなんですか、あの陸を走る船は……あんなのを相手にするには大型の攻城兵器や大規模な魔法が必要ですよ。あちらの将が使ったような魔法をですが。

 

「エル姉、大丈夫?」

「パティルナ……ええ、こちらは平気です。ただ、あの陸を走る船とその船に乗っている連中は要注意です。センタクスを襲って来た者達も油断は出来ませんが……」

 

 私に話しかけてきたのはユン・ガソルが誇る三銃士の一人パティルナ・シンク。彼女は頭ではなく天性の勘により敵の策を見破り、その対処方を導きだす戦の申し子で、戦況を変える切り札として行動して貰っている。ルイーネの講じた策略と、私の製作した兵器。この二つを携えて戦場へ赴き、自らの腕でもってユン・ガソルに勝利をもたらすのが彼女の役割です。

 

「確かにそうみたいだね」

「ええ。あの部隊の者達も何か変でした。まるで生きていないような……意思の無い人形を相手にしているみたいでした。御蔭で兵の皆も怖がっています」

「死を恐れない兵士って奴?」

「ええ、その通りです。しかも、その全てが精鋭……親衛隊レベルの実力者達でした」

「何それ、化け物じゃん! っ!?」

「どうしました?」

「エル姉、何か西の方から嫌な感じがする……」

「っ!? 総員、戦闘配置! 偵察隊を出しなさい!」

 

 パティの感覚は非常に頼りになります。そのパティが嫌な感じがするといったのです。杞憂であればいいのですが……そううまいことは行かないでしょうね。

 

「センタクスに攻め込む準備をしてたのに、こんな時に来るなんて最悪だよ」

「そうですね。しかし、センタクスの連中は自殺志願者ですか? こんな短期間では街の復興もできていないはず……いえ、それ以前にこちらの戦力とあちらの戦力を考えれば数倍どころの差じゃないのですが……」

「エル姉がやり過ぎたとか?」

「……それは……あるかも知れません。ですが、そうなれば普通はセンタクスを破棄して撤退します」

「だよね」

 

 となると、考えられるのは時間稼ぎですね。しかし、そんな事をしてもたかが知れるはず……どういう事ですか?

 とりあえず、今は戦の準備をしましょう。

 

 

 

 

 

 

 ララ

 

 

 

 

 ララは現在、ミライと共に魔導機人20機に新型魔焔反応炉に細工をした物を搭載してアシュラクーナに乗りながらレイムレス要塞を目指しているのです。

 

「ララ、到着予定時間は?」

「休憩を入れるので明日の2300の予定なのです」

「わかった」

 

 ミライはアシュラクーナに乗りながら自身の血液で構成された鎖を放ったです。それは蛇のように意思を持って空を駆け、見張りをしていたユン・ガソル連合国の兵を反抗する間も無く羽交い締めにして捕らえたのです。私達に奇襲は不可能なのです。何故ならサーモグラフィで検知できるのですから!

 

「確保」

「ふふ、それじゃあ少し待つのです」

 

 ララは気絶している兵士の身体を斬り裂いて、ちょっとした物を埋め込んでやるのです。そして放置するのです。これを何体かに繰り返し行って、ミライ達はレイムレス要塞を目指していくのです。

 

 

 

 

 

 エルミナ

 

 

 

 

 

「報告します!」

「どうぞー」

「お願いします」

「監視所の兵と偵察に出していた多数の兵がこちらに逃げてきます!」

「敵は?」

「森の中を進軍中につき不明です。ですが、真紅の鎖が見えたとの事です!」

 

 真紅の鎖という事はセンタクスで出会った者ですね。しかし、生きていたのですか……いえ、生きているのは構いません。ですが、これほどの短期間で戦場に復帰できるなどと信じられません。では、違う者という事ですか?

 

「鎖使いか……ふふ、あたしといい勝負ができそうじゃない」

「パティ、気を付けてください。もし、その存在が私がセンタクスで出会った存在なら相当な実力者です」

「わかってる。でも、その前に森に向けて掃射した方がいいよね?」

「そうですね。味方の収容後、直ちに発砲します。砲門を開いて命令あるまで待機!」

「はっ!!」

 

 私の命令を聞いて、直ぐに兵士が指令を伝達しに向かう。私とパティは城門の上へと移動する。そこで見た物は、森の中から出て来る鎖達が執拗に兵隊を追い回し、捕らえようとしている場面だった。そして、砦の中から彼らを助ける為に数隊の部隊が救助活動を行い、鎖に貫かれて殺されている。だけど、そこに私は違和感を覚える。

 

「射程圏内より味方部隊の撤退を確認しました!」

「分かりました。目標は森の中に居る敵部隊。攻城兵器部隊、放て!」

「撃てぇええええええええええっ!!」

 

 次々と轟音と共にレイムレス要塞の防壁に設置された無数の攻城兵器から放たれる攻撃が森の中へと放たれていく。それらの砲撃を真紅の鎖で叩き落としたりして防御していく。そして、次第に鎖は引いていく。

 

「まさか、鎖使い1人で襲撃に来たの?」

「確かに足でまといが居ない方が強いでしょうが……」

 

 あの時、私が対抗出来ていたのは悔しいですが、あの司令官の男とその傍に居た女性を攻撃するふりをする事で防いでいました。お母様と呼ばれていただけあって、あの二人は彼女にとって大切なようでしたが……その二人がいなくなると手がつけられないかも知れません。少なくとも、私とパティの二人か、1人を多数の部隊で囲んで相手をしないといけません。

 

「パティ」

「駄目だよ。まだだ。まだ嫌な感じがする。違う。もっと悪くなってる!」

「……」

 

 さっきよりも悪くなている? 敵を追い払い、味方を救助したというのに?

 今と前で違う事はなんでしょうか……まず一つ目は敵がやって来た事。二つ目は一度出した兵士が戻ってきて救助されている事。

 

「被害報告です。駐留していた部隊の43名が死亡、23名が重症。駐留していた部隊と撤退して来た部隊合わせて231名が軽症です!」

「分かりました。ご苦労様です。引き続き救助を……待てください。こちらに逃げてきた部隊で死傷者はでていないのですか?」

「はい、全員無事です! 奇跡的な事です」

「そうだよねーまるで……っ!?」

「そういう事ですか!! 全軍に通達! 直ちに救助した兵を隔離しなさい!!」

「ど、どういう事ですか?」

「いいから早く!!」

「は、はい!!」

 

 連中はわざとこちらに逃げる者達を追いかけるだけで殺したり行動不能になるような攻撃をしてこなかった。それなのに助けに入った駐留部隊は容赦無く殺している。そっちに目を逸らされたが、明らかにおかしい。これが違和感の正体です。

 

「エル姉、なんで敵はこんな事をしたのかな?」

「決まっています。私に対する意趣返しです。それも最低最悪な方法で!」

「ど、どういう事?」

「助けられた兵士はおそらく……」

 

 私が答えようとした瞬間、レイムレス要塞の内部と外で複数の爆発が起きた。それは連鎖的に反応し、レイムレス要塞内部を煙に満たしていく。そして、私達の近くでも爆発したのか、私やパティの頬うにベチャと何かがついた。私はそれを無視して全軍に向けて指令を出す。

 

「全軍、警戒せよ! メルキア帝国軍が来る!」

「エル姉、これって……」

「ええ……救助した兵士の身体の一部でしょう……」

「あいつら!!」

「効果的な方法です。どうやら私は追い詰めすぎたようです……いえ、先に仕掛けたのはこちらですが……人を人とも思わないとは……」

「っ!? エル姉、やばい! 来るよ!」

「くっ!?」

 

 煙を斬り裂いて飛来した真紅の鎖をパティの声でなんとか反応した私は双剣を引き抜いて弾く。だが、何本かの鎖は防壁の上を超えて途中で先端が変化し、鍵爪のようになって固定された。

 

「みーつけた」

「あははは、凄いね。ご指名だよ、エル姉」

「そのようですね。歓迎したくはないですが……」

 

 先程まで居なかった存在が防壁の上に有った。そいつは無数の真紅の鎖を手に付けた指輪から出し、浮遊させながら私達を見た。黒い髪の毛を後ろでくくった青い瞳の少女。

 

「前はよくもやってくれた。今度はこっちが仕返しに来たよ」

「それにしては非道い方法ですね」

「やられたら、やり返す。倍返しだ!」

 

 そして、少女が無表情のまま不気味に笑い、空を指差すと空から無数の魔導機械が降りてくる。それには統一された鎧に身を包んだ見覚えある兵士達が乗っている。

 

「まさか、空から攻めてくるとは……予想外です」

「メルキアの技術力を甘くみたね」

「くっ」

「何アレ、凄いんだけど! アレ欲しい!」

「パティ、今はこの状況をどうにかしないといけません!」

「そうだね。2対1になるけどいいよね?」

「2対1? 違うよ、2対2だ」

「そうなのです!」

 

 その声と共に私達は瞬時に左右に飛ぶ。するとそこに巨大な剣が防壁の一部を破壊してクレーターを生み出す。とんでもない怪力と言えます。

 

「はじめましての人はこんにちは。また合った人は……別にいいや。えっと、名前はララ。よろしくなのです」

「あ、あたしはパティルナ・シンクだよ」

「これはご丁寧にありがとうなのです」

「いえいえ、こちらこそ……」

「「そこの二人!」」

「挨拶は大切なのですよ。こっちはミライ・ザイルードなのです」

「そうだよね。こっちは知ってると思うけどエルミナ・エクスだよ」

 

 まったく、パティルナは……いえ、ちょっと待ちなさい。ミライ・ザイルードと言いましたか?

 確かミライ・ザイルードといえば新しくオルファン・ザイルードの妻になった人ではないですか……そんな人がこんな所に来るんですか……メルキア帝国は何を考えて……いえ、それは我が国も同じでしたね。しかも、こっちは王ですのでさらにタチが悪いです。

 

「ああ、それとさっきのミライの発言は訂正しておくのです」

「ん?」

 

 訂正する所はありましたか?

 

「メルキアの技術力を甘くみたんではないのです。バーニエの技術力を甘くみたのです。ここは重要なのです」

「どうでもいい」

「どうでもいいよね……」

 

 いえ、どうでもよくありませんよ。これは結構重要な情報です。

 

「ぎゃああああああああぁぁぁぁっっ!!」

「た、助けっ」

「何がどうなってるんだ!!」

 

 下から無数の悲鳴が聞こえてくる。これは非常に不味い。早く行きたいのですが……そんな隙はありませんね。

 

「さて、戦場も出来上がってきた頃合なので……たっぷりララ達と遊んでもらうのです」

「ちっ」

「仕方無いね……」

「遊びは終わり。はじめよう」

 

 下手を打てばレイムレス要塞を奪われるかも知れません。しかし、被害は出たとしてもここは奪われるべきでは有りません。ならば死力を尽くして勝利するのみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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