魔導巧殻 もう1人の神殺し   作:ヴィヴィオ

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センタクス防衛戦②

 

 

 

 

 

 ユン・ガソル連合国が攻めてきた。俺達は城壁の上からあちらを監察する。相手の数は万を超える。それに対してこちらの戦力はなんとたったの936人。他はルナ=ゼバルや量産型魔導機人と大量の重工業ゴーレムだけだ。まあ、高い魔導防壁に深いギミック付きの堀が何個も作られているし、戦力差はどうにか出来るだろう。

 

「さて、エルカ。どうする?」

「決まっている。当初の予定通り籠城だろう。態々打って出る必要もないくらい防衛戦力差はあるだろ」

「そうだな。こちらから一方的に攻撃できる」

「はい。第一防壁に取り付けられた魔導砲の数は約5000門。等間隔にほぼ隙間無く設置していますから1回の攻撃で相手の大部隊を攻撃できます。攻城兵器など近づけさせません」

 

 そして、それはあくまでも第一防壁だという事だ。センタクスの周りを重工業ゴーレムの数とルナ=ゼバルのドリルに物言わせて掘りまくりこの辺一帯を盆地にしてやった。つまり、簡単に説明すると大きなクレーターの中心にある高台に城が存在し、段々と下がっていく毎に魔導砲が標準装備された魔導防壁が存在する。設置してある魔導砲にしても砲門が上下左右に動く可変式なので問題無く長距離攻撃も可能だ。

 

「隠し玉は大丈夫か?」

「本当にこんなのを使うのか?」

「面白いだろ。アクティブ魔導防壁」

 

 領地の殆どを改造して広げられたセンタクスの防壁の上や前などにはレールが接続されており、100メートルの魔導防壁が動き回って攻撃する。もちろん、破壊された場所を取り外してその魔導防壁をそこに嵌めれば修理は完了という超便利機能。最終的にはこれほどまでになった。後、この戦いが終わったら鉄道をセンタクスに設置して領地の移動をスムーズにする予定だ。

 

「面白いが……この技術が敵の手に渡れば大変な事だな」

「おいおい、ヴァイスはバーニエと敵対する気なのか?」

「いや、そんなつもりは“今の所”は無い」

「今の所は、か。まあいい。バーニエを……いや、俺と母さんを裏切ったらどうなるかは分かっているだろう?」

「もちろんだ。だが、お前達が道を踏み外すならばどのような事になろうと正すのが友としての役目だろう」

「はいはい。じゃあ、そうならない事を祈ろうか」

「全くだ。バーニエの技術力は桁違いだからな」

「そうですね。数世代は先を行っています」

 

 リセルとヴァイスは技術革新を警戒しているが、まあそれもわかる。今のバーニエは兵力こそ少ないが、隠している物も含めればその戦力はキサラを軽く凌駕し、メルキア帝国の皇帝が指揮する帝国軍と同等だろう。量産型魔導機人を乗せた陸上魔導戦艦はそれ程までに恐ろしい。ゲームでは調整されていたがこちらではそんなの存在しない。あの質量が高速で突撃するだけでも敵軍の被害は甚大なのだ。ましてや、空を飛ぶ魔導戦艦が完成すればバーニエ一領でメルキア帝国の帝国軍と領主軍を相手に戦えるだろう。キサラがあちらについてもだ。ディナスティとセンタクスをこちらに引き込めば勝利は確実と言いたい。だが、問題はファラ・カーラの魔弾だろうな。

 

「あっ、どうやらお母様達が帰ってきたようですよ」

「ん?」

「あそこだね」

 

 リセルの声に空を見上げるとアシュラクーナに乗った量産型魔導機人とそれを率いていたララとミライさんがこちらに飛んでくる。

 

「とぅ」

 

 ララがわざわざ声を上げてアシュラクーナから飛び降りて防壁の上に着地する。すぐ横にミライさんも降り立った。ララは俺に敬礼をするがミライさんはそのままだ。

 

「ただいま帰還しましたマスター。遅くなって申し訳ないのです。ユン・ガソル連合国の威力偵察を終了したのです」

「ご苦労様。そっちは構わないよ」

 

 彼らの部隊にはユン・ガソルの威力偵察と、布陣を調べて来てもらていたのだ。まあ、威力偵察の方は空からの一方的な嫌がらせなんだがな。

 

「ただいま、2人共そっちは大丈夫?」

「もちろんです」

「はい。ご無事でよかったです」

 

 リセルは母親を抱きしめて身体を触って確認している。傍から見れば姉と妹だ。もちろん、妹の方が母親なのだが。

 

「アシュラクーナと魔導機人達は全員魔導機区画にあるルナ=ゼバルでメンテナンスと補給を受けろ」

「「「了解」」」

 

 空から俺の命令を聞いたアシュラクーナと魔導機人はすぐさまルナ=ゼバルに帰還していく。それを見送った後、俺は改めてララに向き直る。

 

「身体は平気か?」

「問題はないのです。でも、出来たらオーバーホールをして欲しいです」

「そうか。なら、とりあえず奴等を退けてからだな」

「やったです」

 

 オーバーホールは人間にとってのお風呂みたいな感じだ。普通のメンテナンスがシャワー感覚だな。まあ、こんな事は置いておいてずっと遠くに布陣しているユン・ガソルの連中を改めて見詰める。

 

「どうやら進軍を開始したみたい」

 

 ミライの言葉にあちらを見ると確かにユン・ガソルの兵が進軍を開始してきた。

 

「だが、数が少ないな」

「よく見えますね……どうしますか、ヴァイスハイト様?」

「攻撃を開始……いや、引き寄せた方が良いな」

「有効射程は1キロくらいだし、もっと引き寄せた方が確かにいいね」

 

 しばらく待っていると馬に引かれた馬車が何台かこちらに突撃してきた。明らかに数が少ない。だけど、あの中に人が居ればそれはそれで鬱陶しい。

 

「ララ、熱源を調べろ」

「はいなのです。あの中は……無人なのです」

 

 ララに熱源を調べさせると空な事が判明した。だが、エルミナがあちらに居るのだから絶対に何かを仕掛けて居るだろう。あのエルミナが何も仕掛けていないなんて有り得ないだろう。

 

「様子見なのだろうが、撃破した方が良いな。荷物はどうだ?」

「荷物はあるわね」

 

 ヴァイスの言葉にミライさんが返事をする。しかし、尚更怪しいな。

 

「ちょっと試して見るか」

「頼む。魔導防壁は一度放つと全ての砲が連動するからな。正直に言って勿体無い」

「だな」

 

 俺はヴァイスの言葉を聞きながらゴーグルを付けてアンチマテリアルライフルを構えて発砲する。爆音と共に発射された弾丸は馬車の屋根を貫いて吹き飛ばし、大爆発を起こした。

 

「中に火薬と発火用の魔法陣でも乗っけてるのかね……」

 

 適当に何個か撃って判明したのは爆発する物と爆発しない物があるという事だ。これは非常に面倒といえる。どれが爆発するか見分けられないのだ。

 

「しかし、送られてくる数は少ないが継続してきているな」

「面倒な……」

「エルカ、悪いが魔導機人達に狙撃を頼んでいいか?」

「まあ、そっちの方が効率的だな。いや、どうせなら魔導砲を装備させた兵士達に的当てをさせようぜ」

「なるほど。それならば確かに兵士達の訓練になります。ヴァイスハイト様、理にかなっていますが、どうでしょうか?」

「それでいい。リセル、頼む」

「はい。直ぐに」

 

 リセルは金属管で作られた通信装置である伝声管(でんせいかん)で矢継ぎ早に指示を放っていく。俺はその間に狙撃を行なっていく。だが、対応はしきれない。

 

「私がやる」

「ミライ様は帰られたばかりでは……」

「問題無い。任せて」

 

 手首を切って大量の血を流していく。それらは直ぐに真紅の鎖へと変わって俺が撃ち漏らした馬車を破壊していく。いや、それもただの破壊じゃない。馬車が爆発する前に鎖で掴んで敵陣の方へ放り投げている。もちろん、命中はしないがどんどん送られてくる馬車を破壊できるし、妨害できるので問題はない。

 

「しかし、幾らなんでも消極的過ぎるな」

「そうだな。だが、俺達にはセンタクスを防衛するしかない。本隊が到着するまでな」

「まあね」

 

 それからしばらく睨み合いが続いた。本来なら有り得ない事だ。奴等はこちらに援軍が来る事が分かっているはずなのにあちらから構成を仕掛けて来ないのだ。まさか、このまま撤退する気なのか?

 そう思っていたが、結局一週間もの間、殆ど何もして来なかった。そして、皇帝率いる帝国軍とキサラ軍がこの地に到着した。それと同時にファラ・カーラの魔弾が本陣よりユン・ガソル連合国の陣へと放たれ、巨大なクレーターを作成しやがった。もちろん、こちらも暴風で非道い事になったが、言ってしまえばそれだけだ。

 

「アレはなんだっ!!」

「新兵器だろうね。皇帝が何か作成していたのは知っていたけど、いや~こんなとんでもない代物とはね」

「それより、ヴァイス」

「ああ、分かっている。リセル、準備は出来ているか?」

 

 ヴァイスが被害の報告を聞きながら返事をしてくれる。非常に優秀だなリセル。

 

「はい。こちらは問題ありません。センタクスの防衛機能は殆ど無傷です。むしろ城や街の方が被害が大きいですね。爆風でガラスが割れたりしたそうです」

「そうか。掘っていて正解だったな」

「味方の攻撃で分からされてもねー」

「それはそうだが。それよりも……来るぞ」

「ああ、ここからが本番だ」

「そうですね。ヴァイスハイト様」

「ああ。全軍、ユン・ガソル連合国が攻撃を仕掛けて来るぞ! 存分に注意しろ!!」

 

 伝声管を使ってヴァイスが伝令を放つ。ファラ・カーラの魔弾でユン・ガソル連合国が消滅した?

 そんなのは幻想だ。だって、あの陣に人は殆どどころか“20人”くらいしか熱源反応が無かったのだから。そう、奴等は分かっていたのだ。ファラ・カーラの魔弾が放たれるという事を。故に適当にしか攻撃しなかった。そして、遠くから雄叫びと共に大量の敵軍が本隊とセンタクスに別れてやって来る。こちらにやって来る数は約8万。本隊にはどれだけ行ったか分からないが尋常じゃない数だ。

 

「メルキア帝国、センタクス領の実力を見せてやるか」

「楽しそうですね、ヴァイスハイト様」

「まあ、防衛力に関しちゃ、この倍は連れて来いって堂々といえるしねー」

「倍じゃないだろう。50万でも耐えれるさ」

「魔導炉が耐えられる限りという条件を無視すればですけどね」

「あはははは」

「リセル、魔導炉はエルカに作らせればいいんだ。つまり、現状は何も問題無い」

「非道いな。まあ、確かに作れるけどさ」

 

 そんな会話をしていると、ユン・ガソル連合国の兵士達がファラ・カーラの魔弾で出来た坂を下って一斉にこちらにやって来る。そいつらが第一防壁まで残り400メートルまでやって来ていた。

 

「第一防壁、攻撃開始!」

「了解。撃て」

 

 ヴァイスの指示を受けたリセルが伝声管を通じて第一防壁に連絡を入れる。その直ぐ後に5000門からなる魔導砲が地獄を展開するべく轟音を放ち、敵兵を蹂躙していく。それは正に人がゴミのようだと言える光景だった。うん、ヘッドフォンを付けてないと耳が痛くなるね。

 

 

 

 

 

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