魔導巧殻 もう1人の神殺し   作:ヴィヴィオ

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ユン・ガソルの切り札、その1

 

 

 

 

 防壁の上から見れる相手陣営に変化が起きた。それも尋常ではない。というか、かなりやばい。

 

「おい、あれは……」

「やってくれるなっ!」

 

 敵陣営で起き上がる巨大な存在。それは恐竜のような存在で、真っ黒な存在。それが複数立ち上がってくる。全部で4体。その正体はルン=フィアレスだ。数十メートルもある巨体だが、何より厄介なのがある。いや、それ以前に……

 

「ルン=フィアレス。薙ぎ払いなさい!」

 

 エルミナの命令により4体のルン=フィアレスが口を大きく開いて光線を放つ。放たれた光線は文字通りメルキア帝国の軍勢を薙ぎ払っている。

 

「やばいぞこれはっ!」

「直ぐに救援を……しかし、これはまずいです」

「待て、よく見ろ」

「あれは……溶けてますね」

「早すぎたんだ……」

 

 そもそもユン・ガソル連合国に歪竜が居るのがおかしい。歪竜とはオルファン元帥が未来に開発した物だ。歪竜とは数多の力を集結させて混ぜ合わせた強大な魔力。それに強大な力の受け皿になる強靭な肉体。魔力と肉体を制御し、一つの個体として制御する核。これら3つの要素を集約させた最強の魔法生物だ。それが色々と改造されているようで、巨神兵ならぬ巨神竜になっている。まあ、俺という存在や、ラナハイムの怪しい奴らを考えれば転生者かトリップ者、憑依者が居るのだろう。メルキア帝国に俺が居るように。

 

「まあ、アレを倒さなくては負けるぞ」

「だな。ラクリール!」

「なんだ?」

「狩りに行くぞ!」

「了解した」

 

 ルナ=ゼバルを突撃させて連中を倒すしかない。

 

「ルナ=ゼバルで突撃する。最低限の防衛部隊を除いて全員で行こう」

「そうだな。全軍、ルナ=ゼバルに搭乗させよ」

「はい!」

 

 リセルが指示を出していく。直ぐに俺達はルナ=ゼバルに搭乗して敵陣へと突撃する。センタクスから出て敵陣へと突撃する。ユン・ガソルの連中を薙ぎ倒し、一体にルナ=ゼバルを横這いから突撃させて切り裂き、体内に砲撃して1体を落とす。しかし、同時にルナ=ゼバルは航行不能になるが仕方ない。

 

「エクリール!」

 

 艦長席からエクリールに指示を出す。指示に従い、ラクリールが目を瞑り、天に掲げた長刀に膨大な魔力を収束させていくラクリール。剣を通して頭上に放たれた光線は途中で雷雲と合流し、四方八方へと枝分かれを繰り返して改めて審判の落雷としてルン=フィアレスに膨大な数の雷が直撃する。

 

「ちっ、仕留めきれんか」

「全員、降りて戦うぞ!」

「「「はっ!」」」

 

 2体目を攻撃全力で攻撃する。敵の攻撃はルナ=ゼバルに襲いかかる。この際仕方ないので盾にして戦う。ルン=ファレスの攻撃は本陣を優先しているのでなんとかなっているが、残り3体も居る。魔導歩兵達による砲撃によりなんとか2体目を倒す。

 

「親衛隊、ルン=ファレスを守りなさい!」

 

 しかし、エルミナがそう簡単に許してはくれない。

 

「ここで会ったが100年目なのです!」

「お前は、あの時の! よくもあの時はやってくれましたね!」

「ここで決着をつけてやるのです! 魔導エンジンフルドライブ!」

「くっ!?」

 

 炎を撒き散らかし、この世の地獄を再現するララ。炎によって大地は焼けて溶かされていく。その中をエルミナは逃げたり、地形を利用して反撃したり部隊を指揮しつつララを防ぐ。

 

「ミライ様、あのデカ物を止めてください」

「任せて」

 

 大量の鎖を作り出してルン=ファレスを拘束するミライさん。本当に自分で作ってなんだけど、かなりやばいくらいの能力だな。

 

「ってか、ラクリール!」

「何よ!」

「鎖に向かって雷撃! それでダメージが上がる!」

「そうか、ミライ様、鎖を地面にも」

「そうね。ラクリール、やって」

「わかった!」

 

 大量の落雷を降らせ、鎖を通して拡大していく。そんな中でもルン=ファレスは攻撃をやめない。

 

「うりゃあああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 そして、そのうちの1体が元帥によって切り裂かられた。絶対に有り得ない現象だ。まさに化物といえる。俺も奴の瞳を狙撃したりして行動を妨害する。

 

「残り1体だ! このまま押しきれ!」

 

 攻撃する度に崩壊していくルン=ファレス。製造がまだ甘いのが救いか。

 

「ちっ、しかしここまでか」

「よくやりましたね。ですが、まだです」

 

 遠くの方から大量のディケイルがこちらを目指してくる。ルン=ファレスすら時間稼ぎかよ。これはまずいな。

 

「ユン・ガソルの兵よ、後退しますよ!」

「むむ、逃げるのですか!」

「こちらの攻撃はまだ終わりではありません!」

 

 煙幕などを展開して逃げる三銃士や兵士達。だが、それらに対応する間もなく、俺達にはディケイルとの戦闘を行わなくてはいけない。

 

「ぬしら、無事か」

「ガルムス元帥!」

「無事のようだな」

 

 ご老人とベルがやって来た。

 

「皆の者、良く聞けぇぇぇっ! これよりセンタクスに撤退する! 増援は来る。それまで持ちこたえるぞ。良いか!」

「はっ。センタクスの防御力はかなりの物です」

「よかろう。最悪の場合は皇帝陛下の撤退の時間を稼がねばならん。我らがセンタクスにて殿を担当するのだ。エイフェリア元帥が来るまでな」

「母さんか……なら問題なさそうだね」

 

 というか、早く来そうだな。

 

「ラクリール、ララ、撤退する。ララは全開の一撃をディケイル達にぶち込んでやれ」

「了解なのです」

「仕方ない。撤退の援護する」

「ふふ、頼むです。おりゃぁああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

 巨大な炎剣が文字通りディケイルをなぎ払い、巨大な炎の壁を生成する。

 

「ヴァイス!」

「全軍センタクスまで後退!」

 

 ラクリールがララを持って撤退する。どうにかセンタクスまで逃げ込めた。皇帝陛下もここに一旦逃げ込んでいる。ファラ・カーラもここにあるのだろうが、場所はわからない。

 

「さて、ヴァイスハイトよ、ここの装備でどれだけ持つ?」

「それは私よりエルカから説明させましょう」

「ふむ。貴様がエイフェリア元帥の娘で秘蔵っ子か」

「まあ、そういう扱いだね。ここの防備なら魔導炉の魔力が尽きるまでだから一週間は常に打ち続けられるけど、必要はないね」

「ほう?」

「どうしてだ?」

「だって、もう援軍が来たし」

「ふっふふ、流石はエイダなのです」

 

 遥か遠くの空に見える点。それはどんどん大きくなってくる。

 

「うそっ、空を飛んでいるんですか!?」

「馬鹿な……」

「ふはははは、こんな隠し玉を用意しておったのか!」

 

 そして、船がキラッと光るとビームが飛んできて、ディケイルを今度はこっちが薙ぎ払った。それに加え、船から無数の魔導榴弾砲などが撃たれ初めて、艦底からは数百機にもなるアシュラクーナがこれでもかと発進させられる。しかも装備が違うのか、魔導銃ではなく魔導砲を搭載していて、容赦ない砲撃を与えていく。

 

「凄いな」

「しかもまだ終わんないみたいだ」

 

 近付いて来た船……ヴァリアントはハッチを開いて中からルナ=ゼバルを2機吐き出した。空中にだ。そのルナ=ゼバルは空中でパラシュートを展開して速度を殺し、着地と同時にパラシュートを焼却して敵陣を薙ぎ払う。揚陸艦みたいだ。というか、ゲームと違ってかなり巨大な気がする。そして、何より全身魔導鎧の魔導機動隊が翼を展開して降下しながら砲撃をアシュラクーナと共に行なってくるのだ。その移動速度もホバーリングしていて、スムーズに動いて馬並みの速度を出して瞬く間に連携して撃破していく。ルン=ファレスが最後の抵抗とばかりに口を開くが、そこに一条の光が貫いて、消滅させる。まさにビーム兵器。それを撃った存在はヴァリアントの甲板で立ちながら、砲撃を行った槍の先端が左右に割れた音叉のような武器を持ち、緑の髪を靡かせている。この身体の以上スペックだからこそ見える。

 

「ふぅ……お前ら、私の大切な子に何しようとしてくたのか、たっぷり教えてやる。バーニエ全軍に通達。構わん、殲滅しろ。アシュラクーナ隊は全て敵本陣に特攻させて自爆させろ」

 

 拡声器で放たれた言葉は親バカっぷりでありながら、容赦ない事だった。数百体、下手をすれば千体のアシュラクーナがユン・ガソル兵に襲いかかる。まあ、ユン・ガソルもヴァリアントが現れた瞬間に撤退を行い出していたが、相当な数の被害を出した。お互いの国で戦死者は数万を超えるだろう。

 

「エイフェリア元帥め、頼もしくなっておるな」

「マスター、いいのですか、アレは……」

「構わん。帝国の為になる」

「ベル、エイダ様は素晴らしいのです! 私のマスターであり、エルカの母親なのですから!」

「ふん。とんだ親バカだな」

「しかし、納得できたな」

「ヴァイスハイト様、どういう事ですか?」

「こいつの母親だけはあるという事だ」

「ああ、なるほど」

「納得するなよ!」

 

 ここまでしないと……思う。思いたいな。

 

「マスターは絶対に嬉々としやるのです」

「そうね。作ったばかりで手に入れたばかりの玩具を絶対使うわ。私にしたように」

「あははは、ナンノコトカナー」

「諦めなさい。事実でしょ」

 

 ミライさんにも言われたけど、まあやっちゃうだろうな。うん、科学者の業だね。作ったら試さずにはいられない。自重しないお母様だ。ふむ、しかし……これは、いいね。俺は冥府の神でもあるアテナの神殺し。ここには大量の魂魄が存在している。いずれはタルタロスの所へいくのだろうが……頂戴してくれる。

 

「ちょっとルナ=ゼバルを回収してくるよ」

「お一人で大丈夫ですか?」

「護衛にラクリールとララを連れていく。行くよ」

「了解なのです」

「人使いが荒い……」

 

 ラクリールとララを連れていき、ルナ=ゼバルの周辺でバレないように魂を大量に回収する。両軍合わされば10万に行く量の魂は格別の力を生み出してくれる。

 

「マスター?」

「エルカ……貴方……」

「ふふふ、はははははははっ!! いいね、今までの身体が嘘みたいだ! 力が、力が溢れてくる! 信仰を集める連中の考えも分かるよ。でも、どう考えても体内で飼った方が効率的だ。意識を消滅させ、純粋なるエネルギーへと変換する。そもそも俺は古き女神の肉体を持つ。現神どもとは違うが、これはこれで使えるな」

「「っ」」

「ああ、お前達にも力を後で与えようか。ラクリールには言ってなかったっけ? 俺は神殺しだ」

「聞いてないわよ!」

「それでお前は俺の眷属。やったね」

「あぁ、クライス様……」

「マスター、マスターは変わられるのですか?」

「んにゃ、変わらない。俺は俺だ。力が覚醒しようともな」

「じゃあ、これからも同じように過ごすのです?」

「そうだな。ただ、本格的にラナハイムを潰しにかかるか。ユン・ガソルはヴァイスに任せればいいだろう。しばらくは大人しくするはずだ。ああ、ザフハでネネカは欲しいな。でも、コロナも欲しいし。うん、やっぱりヴァイスに頼めばいいか。代わりに母さんに頼んでいっぱい戦力を与えればいい」

「ら、ラナハイムを攻める? 待て、頼むからそれだけは止めてくれ! 私はそれをさせない為に……」

「嫌だ。といいたいが、いいよ。でも、あちらが仕掛けてこなければの話だ。もし、向こうから仕掛けてきたら俺は容赦しない。いや、そうだな。お前がラナハイムと戦うんだ」

「っ!? わ、わかった」

「このままラナハイムが野心を出さずに大人しくしている事を願うんだな。そうすれば……ああ、どうせならこちらから同盟の話を持ちかけてやろう」

 

 どうせ、ザフハと戦う時の尖兵は必要だからな。ラナハイムの人間を使えばいい。今回の事でキサラは兵力が格段に減った。メルキア帝国軍もだ。無事なのはバーニエとディナスティだけだろう。これから楽しくなるな。

 

 

 

 

 

 

 

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