数日をまとめて睡眠にあてて目覚めると、俺の腕の中で睨み付けてくる美少女が居た。とりあえず、キスしてみる。
「んぶっ!? じゅるっ、んんっ!?」
唇と舌を堪能しながら意識を覚醒させていくと反対側にも温もりがある。それと鼻につくアンモニア臭など。
「おはよう、ラクリール」
「起きたらさっさと離せっ!!」
「はいはい。粗相したみたいだな」
「五月蝿いっ!? 貴様のせいだぞ!」
立ち上がって慌てながらトイレに駆け込んでいくラクリール。シーツは色々と凄い事になっている。
「数日抱き枕にされて拘束されていたのですから、当然なのです」
「ふん。マスターに必要とされているのだ。名誉な事だろう」
「ララ、ルル、おはよう」
背中からの声と少し離れた場所から聞こえた声に返事をしながら身体を起こす。背中に居たのはララで、扉にもたれかかって警戒しているルルが居た。
「おはようなのです、マスター」
「おはようございます、マスター」
挨拶した後、軽く口付けをして立ち上がる。身体は女神化して女体になっている。寝る前にラクリール達を散々犯して精力を吸収したのだが、何か違和感がある。
「……なにこれ?」
「愚かにもマスターを襲おうとした有象無象です」
「全部ララとルルで蹴散らしたのです」
床に転がっている無数の氷漬けにされた霊体のような者達。こんなのでも魔力に変換できるので素手で触れて吸収してしまう。
「苦労。それじゃあ、俺もシャワーに行くから着替えを頼む」
「はいなのです」
「了解しました」
裸だったのでそのままシャワーをしに向かう。向かった先には既にラクリールが居て必死に身体を洗っていた。俺とのセックスが終わったら何時もの事だ。一生懸命俺の痕跡を消そうと頑張っているのだ。
「ラクリール」
「っ!? な、なんだっ!!」
「一緒に入るぞ」
「嫌だっ、来るなっ!」
トイレとシャワーと浴槽が一緒になった場所なので身体は自然と密着する。というか、する。嫌がるラクリールを無視してその身体を洗っていく。直ぐにララとルルも入ってくるので更に狭くなる。そこで嫌がるラクリールの身体を隅々まで洗いつつ、綺麗に洗っていたラクリールに新しいのを注ぎ込んでやる。俺自身はララとルルによって綺麗に洗ってもらう。
洗い終わって一部意外綺麗に流したら外に出て水滴を拭いてもらいながら服を着せて貰う。
「そういえばさ、今まで襲われた事なかったけどなんで今回は襲われたんだ?」
「マスターの身体が女神として覚醒したからではないのですか?」
「出力の問題でしょう。今回の睡眠によって全開吸収した魂を順次変換していたのが完了し、それによって釣られてきたのではないかと」
「ちっ、封印の増強も考えないとな」
現在の力は封印を施してあるので精々が神格者より低い程度だが、総量が増大すれば封印に綻びが出るのは必然か。
「うぅ……また穢された……申し訳ございません……クライス様……」
完全に落ちてはおらず、時折こんな風になる時がある。まあ、命令には従ってくれるのだけどな。
「おい、コイツは大丈夫なのか? ララのデータからではバーニエの技術を盗もうとしているみたいだが……」
「ふふ、何も問題ないのです。基本的に重要施設はララがマスターに付き従うのです。その時、ラクリールは命令されてひたすら自己鍛錬か軍隊での調練をさせられるだけなので技術を盗む暇もないのです。何よりラナハイムとの接触などは禁止しているのです。見つければ自ら殺すか捕らえるように命令してあるので問題ないのです」
「相手はプロでも戦闘技術の方は武装で補っているのか」
「もちろんそうなのですが、昔と違って今のバーニエは……人外魔境なのです」
「人間にとってか?」
「そうなのです。管理社会なのですよ。基本的にどこもかしこも魔導機人が警備し、戦闘用ゴーレムが多数存在し、警備システムとしてアシュラクーナが飛び回ってるのが現状なのです。住民は全て腕輪型のID機器をつけており、つけてないと問答無用で攻撃されて捕縛されるのです」
「やりたい放題だな」
適当に警備システムとして案を出して置いたのが魔改造されて採用されたみたいだ。うん、今のバーニエはスパイにとって地獄だな。捕まったスパイはありとあらゆる手段で情報を聞き出して送り込んだ国に請求するか、実験台にされるだろうし。
「まあ、ラクリールは大丈夫だ。そうだな、
「……はい……」
ラクリールの瞳からハイライトが消えて無機質な声で返事をする。仕掛けは上々。ラクリールは自らラナハイムを滅ぼす尖兵となる。そして、それは確実にラクリールの心を傷つけて立ち直れないほどの傷を与える。だが、原作であったようにラクリールは自らの心を守る為に次の依存先を探す。それは確実に俺になる。我ながら非道いが、これは生存競争なのだから手段は選んではいられない。気に入った強い女の子を使徒にして絶対に生き残ってやる。
「対策がされているのなら構いません。それより、本日の予定ですが……」
「ヴァイスハイトが呼んでいるのです。いい加減に行かないとまずいのです」
「そうだな。よし、行くぞ」
「「はい」」「了解した」
ラクリールも着替えさせて元に戻して一緒にヴァイスの元へと向かう。ヴァイスの執務室の前で止まり、ララ達を見る。
「ルルは一緒に来い。ララとラクリールはルナ=ゼバルを何時でも発進できるように準備しておいてくれ。話の内容次第では直ぐに出る事になるからな」
「了解なのです。補給物資は食料以外積み込みが完了しているのです。後は野菜など新鮮な物だけなのです」
「兵は……既に待機している。こちらに居るのは量産型魔導機人だからな」
「じゃあ、ラクリールはララの手伝いで。各部点検もさせておいて」
「わかった」「了解なのです」
部屋の扉をノックする。
「ヴァイス、エルカだ。いいか?」
「ああ、大丈夫だ。入ってくれ」
「了解。それじゃあ、そっちは頼む」
「ああ」
「ルル、マスターの事をお願いするのです」
「任せておけ」
2人に見送られながら扉を開けて中に入り、ヴァイスに近づく。中にはリセルも居る。丁度報告していたようだ。そして、見慣れない者で、ある意味見慣れた存在が居る。
「おや、この人がリューンやエイフェリアが言っていたエルカなのですね」
「そうだ。エルカ、こいつが魔導巧殻のアルだ。まあ、説明するまでもないだろうが……」
「まあね」
魔導巧殻アル。身長約70センチで感情が希薄で、常に論理的に考えて行動する。実際は四姉妹の中ではボケ担当であり、声がババ声で色々と物議を醸し出している。ディル=リフィーナに存在する四つの月の内、『闇の月』を司る月女神アルタヌーの名前と、力を模しているが、その体内にあるのは色々とやばい代物だ。ちなみに俺は許せない派だ。よって、強制変更する。
「その子、ちょっと整備するから貸してくれ」
「おや、どうしたのですか? 私の整備ならリセルで……」
「五月蝿い。ルル、捕えろ」
「イエス、マスター」
「あ~れ~」
瞬時に捕らえるルル。唖然としている2人を無視しながら道具を取り出して喉の部分を切り開いて弄っていく。音声部分の場所にデータを切り替えて、かつフィルターを設置。作り上げた音声は無表情系の元祖声優林原めぐみ。つまり、レイの声だ。そちらに変更する。
「あの、その子は?」
「ララの姉妹機でルルだ」
「ルルだ。マスターの忠実な下僕だ」
「よろしくお願いしますね。私はリセルです」
「記憶している。ヴァイスハイトも記憶しているので問題ない」
「そうか。これからよろしく頼む」
「マスターの命令次第だな」
「じゃあ、よろしくしてくれ。それで、ヴァイスはなんの用だ?」
ルルに命令をしつつ、要件を尋ねる。
「ああ、皇帝陛下が亡くなられて喪に服する事になっているが、他国はそんな事お構いなしだ。ザフハ部族国は国力が衰えて混乱しているこちらを虎視眈々と狙っている。ユン・ガソル連合国はレイムレス要塞に兵力を多少残して撤退している」
「そっちはまだ落としてなかったんだ?」
「皇帝陛下が亡くなられたせいで軍を動かせん。もうまもなく喪が開けるがな。まあ、この2国はまだなんとかなる。問題は……」
「ラナハイムがルモルーネ公国に攻め込んだか?」
「知っておられてたのですか?」
「まあ、動くと思ってたからな」
ルモルーネ公国はこの世界の楽園とも呼ばれる事のある国。彼方まで続く田園風景は故郷を思い起こす和やかな国と言われている。
「既にルモルーネ公国の一部の村が制圧され、ルモルーネ公国より救援要請がメルキア帝国に届いております」
「だろうな」
ルモルーネ公国は列強国に囲まれながら今までは戦争の気配などなかったろう。神の恵みを得たかのようなこの国は大量の食物を多くの国に輸出する事で平和を保つ事が可能だった。
「ラナハイム王国からすればルモルーネ公国の土地は喉から手が出るほど欲しい土地のはずですから、進軍は当然の事でしょう」
「ラナハイムは食料をほぼ輸入に頼っているからな。アル……は無理だからリセル、頼む」
「はい。ルモルーネ公国はメルキア帝国、ユン・ガソル連合国、ラナハイム王国に挟まれた小国です。肥沃の大地に恵まれ、農作物は中原でも有数です。その反面、軍事力はないに等しいです。今までは食料支援を行う事で永久中立を歌いながらも戦争に巻き込まれる事はありませんでした。それが現在、ラナハイム王国に攻め込まれております」
「相手方はラナハイム王国からの驚異を振り払ってくれるなら属国になってくれるそうだ」
「まあ、喪に伏しているメルキアを頼るなら当然だな。それで、どうするんだ? 俺的には受けていいと思うが……」
「メルキア帝国としては直ぐに受けられない。そう、メルキア帝国としてはあと数週間かかる。だが、それまでにルモルーネ公国は落ちるだろう」
「なるほど。つまり、メルキア帝国軍に所属していない俺達がやればいいんだな」
「そうだ。ラナハイム王国の勢力をエルカの単独勢力で防いでくれ。こちらは喪が終了しだい援護に向かう」
「いや、それはいらない。お前達はザフハ部族国とユン・ガソル連合国に集中しろ」
普通ならあちらと停戦している間にラナハイムを落とすのがいいが、こちらではそうは行かない。何故なら連中には俺と同じような存在が居る。そいつがルン=ファレスなんかを作り出しやがったんだからな。それにこちらの国力は原作よりも圧倒的に大きい。
「いいのか?」
「問題ないだろう」
「そうですね。エイフェリア様より喪に服す期間が終了次第、バーニエ全軍の半分の軍勢をこちらに送り込んでエルカさんに指揮権を移譲するそうです」
「バーニエ全軍の半分ね……」
多分、ってか、十中八九魔導戦艦もくれるんだろうな。残り半分でキサラを押さえるつもりか。今のキサラならそれで充分だろう。ガルムス元帥がどう動こうが、それを完全に封殺できるだけの勢力が存在するのだ。ゲーム内ならまだしも魔導戦艦を生身で落とすことはかなり難しい。魔法でも余程のものでないと不可能だ。それだけ制空権を支配するのは強い。まあ、グリフォン部隊とか出されるとまた話は変わるが、それこそ、こちらはアシュラクーナを大量に出せばいいのだからな。
「ディナスティはセンタクスへと兵力を送るんだな?」
「はい、そうなります。ディナスティからはお母様、ミライ将軍が大部隊を引き連れて参戦します」
ナフカとオルファン元帥は周りを支配下に置くのだな。まあ、それが正しいか。バーニエの周りは既に殆どの空いた土地がバーニエの支配下に組み込まれているからな。実戦経験の相手として魔獣や盗賊団を滅ぼし、試運転などで魔導機械を導入して魔導機人達に休まず開発を行わせているはずだ。
「では、ディナスティ全軍の半分とセンタクス全軍はバーニエからの武器、防具などの補給を受けながらザフハ部族国とユン・ガソル連合国を相手しよう」
「それでいいよ。ああ、条件つけていいか?」
「条件か? なんだ?」
「ザフハ部族国に居る金髪で赤目のテグルゥ族部族長であるネネカ・ハーネスを捕えて引き渡して欲しい」
「構わないが、捕獲できるかわからんぞ?」
「出てきたら連絡をくれ。ララとルルに捕獲させに行かせる。まあ、ミライさんなら簡単だろうが」
「梃子摺りそうなら連絡をしよう。しかし、2人が抜けて大丈夫なのか?」
「はっはっはっ、バーニエの技術力を舐めては駄目だよ。戦況を維持するくらい余裕だ。こっちはバーニエ全軍の半分だからな。言ってしまえば前のメルキア帝国の半分の戦力を全て投入すると同義だ」
「確かにラナハイムは2国を同時に相手するほどの戦力と戦う訳になりますから……充分可能かと思われます」
「そうか。では、その条件を受け取ろう。その代わり、功績は貰うぞ」
「構わないよ。俺は欲しいのが手に入ればいい。よし、完成」
「流石ですね。私ではそんなに早く改造できませんよ」
アルの改造を終了し、拘束を解除する。
「これは……声が変わりました」
「そっちの方が確かにいいな」
「そうですね……私は前の方でもいいですけど」
「何を言っている。マスターの行われた事に間違いがあるはずないだろう」
「あはははは……」
「さて、じゃあこんな所で俺はさっさと出撃する」
「頼む」
「了解。行くぞ、ルル」
「イエス、マスター」
ルルを連れてルナ=ゼバルへと移動する。既に準備を終えていたので直ぐにルモルーネ公国へと向けて進軍を開始した。目指すはコロナとギルクを殺さずに捕獲する事。まあ、ギルクはコロナのついでだけどな。コロナは闇でない方がいいからな。できれば両方がベストだが、無理はしない。心を壊さないように懐柔し、手懐けないとな。