魔導巧殻 もう1人の神殺し   作:ヴィヴィオ

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西の都バーニエ②

 

 

 

 

 さて、教えて貰う技術は教えて貰ったので先ずは拠点である家を改造する。この家は館といえる規模だが、その殆どが研究施設である。人工魔石……魔焔を製造する魔導機械や製作機械などが多数存在しているのだ。個人の研究施設としては破格だろう。まあ、現在では旧式になるんだけどな。これはエイフェリアが元帥になって研究施設が完成する前まで使ってた奴だから。

 

「リューン、今日は改造するからこれを買ってきてくれ」

「結構必要なのですねー」

「ああ。魔導機械も作るからな。どうしても鉄とかは必要だ」

「了解なのです」

 

リューンに買い物を頼んだ後は探査(サーチ)の魔術を使って熱源を調べる。でも、上手くいかない。

 

「魔術はイメージだったな……なら、エルカならこれだろう」

 

俺は自分の耳に片手を当てて耳を押さえながら親指の爪を噛んで精神を集中する。エルカ・ザウネンは潜水艦の通信兵であり、聴音では抜群の成績だ。つまり、彼女をイメージしつつ同じ動作をする。魔法自体のイメージはソナーの様な感じをイメージして行う。探すのは水源と熱源だ。

 

「……見つけた。推定131メートル……行けるな」

 

問題は掘る機械だが……いっそクレーン機能付油圧ショベルを作るか。基本構造はゴーレムを利用して自動化を行いつつ……行けるな。魔焔の数は大丈夫だ。よし、やるか。先ずは図面から作らないとな。

俺は自室に戻って設計図を作る為に先ずは覚えている絵を書いていく。羽ペンしかないので書き直しは出来ない。なので何度か失敗しながら書いていく。絵が完成したら次に設計図を……クソ面倒だ。

 

「ちっ、製図機から作るか」

 

これから楽にする為にも先ずは製図機の作成に入る。製図機の中でも特に便利なドラフターを作成する。ドラフターは製図用に特化された製図台の一種で、製図板上にT定規、勾配定規、縮尺定規などの製図道具の機能を集約したアームがついている物だ。アームに取り付けられた定規自体が縮尺可能な定規になっているから、正確な寸法を直接読み取りながら同時に平行線や垂直線、正確な角度の斜線などが引けるのでとても便利だ。それに高さや傾斜角度が容易に調整できる専用脚にするとベストだが流石にそこまでは作れない。こちらの設計図はさっさと作成する。

 

「リューンが帰ってくるまでにさっさと作るか」

 

大きめの分厚い板を用意して上と下に別の大きめの板を接着する。こちらは充分はみ出すようにして滑り止めに使う。上下の板に小さな溝を作って紙がちゃんと固定されるようにしておく。後で押さえる枠も作るので問題無い。アームの方は鉄製にして丸い芯を使って動くアームにする。後はアームの先にT定規、勾配定規、縮尺定規などの製図道具などを作って取り付ける。かなり簡単に作成できるくせにかなり便利だ。

 

「さてと、クレーン機能付油圧ショベルの設計図だな」

 

作ったドラフターを使って絵に起こしたクレーン機能付油圧ショベルを設計図として書き上げていく。それが完成したら今度はパーツ毎に分けていく。

 

「って、また問題があるじゃねえか……」

 

メルキア帝国は魔導技術こそ高いが重工業による生産力はユン・ガソル連合国に圧倒的という程まで劣っている。原作ではその為に魔導戦艦の部品を敵国であるユン・ガソル連合国に新型の魔焔反応炉の設計図を渡して作って貰ったのだ。アレははっきり言っていらない。

 

「はっ、ならこの俺が工業力をあげてやればいいじゃねえか。そう、俺自身の為にな」

 

労働力はゴーレムでいい。こっちには魔導技術があるし、施設作成もゴーレムにやらせればいい。そして工場も作れる。いっそ、魔焔の製造すら工場化すればいいんだ。しかし、微妙に違うが鶏が先か、卵が先かという問題だな。工業施設の建設や労働力を得る為にゴーレムを作らねばならないのにそのゴーレムを大量に作る為に工業施設が居るのだから。まあ、こうなったら型鍛造でいこう。正確に図った状態の物を丸太をくり抜いて一度作る。削るのがクソ面倒だが仕方無い。

 

「ただいまなのです」

「おかえり。リューン、精密作業は得意か?」

「もちろん得意なのですよ! リューンは魔導技術で作られた魔導巧殻なのですから!」

 

えっへんと胸を張るリューンを見ながら俺はにやりと笑う。

 

「な、なんなのです……無茶苦茶嫌な予感しかしないのです! ここは戦略的撤退を……」

「逃げると飯抜き」

「なんですと!? 鬼、悪魔、鬼畜!!」

「五月蝿い。いいからこの設計図通りに掘れ。誤差0.01mmくらいまでしか許さんからな」

「む、無茶苦茶なのですよ!!」

「ただ、出来たらご褒美をやろう」

「ご、ご褒美……なのです?」

「ああ。クレープというそれは甘くて美味しいデザートだ」

「く、クレープ……」

「冷たいアイスクリームやホイップクリームに果物を入れた奴でな……とっても美味しいぞ」

「話しかけるでないです! ぬぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

瞬時にリューンが作業に取り掛かっていく。その速度はとてつもない速さで迷いなく掘り進んでいく。だが、失敗する。丸太が動いたのだ。

 

「エルカ、固定具をよこせです」

「わかった」

 

鉄のテーブルに穴の空いた杭を溶接してそこに丸太を突き刺す。次に横から前に刺した杭よりも細い物を突き刺す。前に刺した杭の穴に入れて突き通してしっかりと固定する。精密作業だが空間認識能力は高いので問題無い。リューンも同じだ。

 

「ふふ、これで大丈夫なのです。0.01とか言わずに0.0001mmまでやってやるですよ。そう、魔導巧殻長女の名にかけてなのです!」

 

デザートに釣られて凄い速度で生産していくリューンに俺も頑張って制作していく。まあ、俺は別の作業だがな。それは非常に簡単だ。上が空いていて左右に分かれる鉄の箱を作るのだ。そして、リューンが作り上げた物の上の部分に魔焔を取り付けた鉄の棒を取り付けて天井に固定する。これで箱の中で浮いてる事になる。箱には棒がちゃんと外に出るように大きめに作ってある。そこに溶けたドロドロの鉄を流し込んでいく。普通なら木も燃えるがそこは棒に取り付けた魔焔から魔術を発動して防ぐ。これでしばらく放置すれば型がほぼ完成する。後は真っ二つに割ればいい。もちろん、固まっているがそこは熱く熱した工具で割る。2回ほど失敗したが3回目からは問題なく出来た。後は割った場所に入っている木を燃やして排除する。すると金型ができる。箱の右側にはボルトを付けてたい焼きみたいに開閉式にしておく。後はこの金型に魔焔を埋め込んで秘印術で極薄の結界を発動するようにしておく。この暑さも計算して作っているので問題無い。これで上から流し込んで放置すれば部品が完成する。後は錬金術で細かい調整をして綺麗に整えるだけだ。それからはひたすら同じ事を繰り返すだけだ。

そして、10日後にリューンの作業も俺の作業も終わったので、改めてゴーレムの部品を生産していく。巨大な分大量の鉄が必要だった。

 

「エルカ、コストがかかりすぎなのですよ」

「わかってる。最終的に量産して売り払う予定だ」

「なるほどなのです」

 

作成したゴーレムは魔焔を5個必要とする。ぶっちゃけ1個じゃ出力が足りない。

 

「効率悪いな……新型魔焔でも考えるか」

「そんな簡単に言って……不可能なのですよ」

「それもそうだな。いや、魔焔炉の構造を変えればいいか」

「? どうする気ですの?」

「連結」

「それだけじゃ意味が無いですの」

「だから増幅させる」

「できるですの?」

「可能だ。多分……早速作るか」

 

5個だから五芒星の秘印術で増幅させるか。元から魔導銃とかも増幅させて使ってるんだし。

 

「ちょっと待つですの!!」

「なんだよ?」

「こんな場所でやったら大変な事になるですの! せめてちゃんとした研究所でやるですの!」

「いや、確かに危ないが許可が降りんだろ」

「ふふ、このリューン様に任せておけば大丈夫ですの。ほら、さっさと着いてくるですの!」

「はいはい」

 

確かに爆発したら危険だし、安全な場所があるならそっちでいい。なので、ちゃんと着いていく。いや、違うな。リューンは俺の頭の上で寝転がって道を指示するだけだし。

そんな感じで無事に魔焔炉を研究している研究所に到着した。しかし、ここは重要施設だ。なので当然の如く魔導鎧に身を包み、魔導銃と魔導槍で完全武装した屈強な兵士達が警備にあたっている。

 

「止まれ!」

 

直ぐに制止の声が聞こえたので俺は大人しく止まる。するとリューンが飛び上がって胸を張って言葉を魔導兵達にかける。

 

「者共ご苦労様なのです」

「りゅ、リューン様……いったい何の御用でしょうか?」

「研究施設を使うのです。この子はマスターの弟子……養子なのです。だから施設を使わせるのです」

「し、しかし……」

「私の言う事が聞けないのですかぁー!」

 

両手を振り上げて起こるリューンにどうするって仲間に相談するような視線を向けるが、他の人は全員目をそらす。

 

「しょ、少々お待ち下さい……元帥閣下に確認致します」

「なら先に入れるですの! こっちは新型の魔焔炉の実験をしに来たですの!」

「っ!? 新型っ!! わ、わかりました! おい、直ぐに結界の準備と元帥閣下に連絡を送れ! それともしもの時の非常警戒態勢を発令する!」

「了解!」

 

無茶苦茶慌ただしくなった。

 

「中でお待ちください。ただ、起動だけはこちらの準備が整うまでお待ちください」

「わかっているですの」

「了解」

 

俺は返事をした後、先導してくれるリューンの指示に従って移動していく。そして、分厚い扉を何枚も潜って地下の空間に移動する。

 

「あそこの部屋で作るですの。実験は別の部屋で行うのでくれぐれも起動はしないようにお願いするですの」

「ああ」

 

俺は小型魔導炉用のケースと複数の鉄板を取って狭い部屋へと入る。隣の部屋とはかなり分厚い壁がある。これももしもの為の対策だろう。

そこにある椅子に座ってテーブルにある工具を使って加工していく。普通は鉄板に秘印術を刻んで中央に魔焔を配置する。それをケースに何枚も並列に入れて動力炉である魔焔炉を作りあげる。だが、俺はそんな事はしない。先ずは五芒星を鉄板に刻んでいく。その後に秘印術で魔力を増幅する術式を刻む。五芒星のの端の一つに魔焔を設置する。他の3つの場所には増幅術式を刻む。使う増幅術式は神殿から持ってきた資料と現在の秘印術を合わせて改造した奴で従来のより効率は断然いい。あっちが1.5倍ならこっちは3倍だからな。

 

「ここには何を刻むです?」

「これは上にある魔焔に魔力を送る様に刻むんだ」

 

最後に残した場所には“上にある魔焔に魔力を送る”様に命令術式を刻む。そして、次の鉄板にも同じようにしていく。ただ違うのは魔焔を配置する場所が別の場所で、“最後に魔力を送る”と刻んだ術式の上だ。そしてもう一つは一箇所だけ端の場所に何もせずその周りを経由して増幅するようにする。もちろん増幅率は小さいがな。本来ならびっしりと術式を刻むのだから。そして、さっきと同じように“上にある魔焔に魔力を送る”と刻む。これの繰り返しだ。そして5枚出来たら確保しておいた一箇所の穴の真ん中をくり抜いてやる。

 

「それでどうするです?」

「次はパイプだな」

 

錬成してくり抜いた鉄を塊に戻し、輪っかを不空作る。その裏と表に強化の秘印術をびっしりと刻印する。そして1枚の五芒星の終着点にパイプを設置し、魔焔の下にも接続する。そう、これはバイパスだ。それをどんどん重ねて5枚がさねにする。最後には開けていおいた穴にパイプを通して一番下まで一気に最初の板まで降ろして接続させる。これによって循環して増幅し続ける事ができる。だが、これだけだと無限に増幅し続けて耐久性もいずれは超えて爆発する。よって、今度はケースに細工をする。ケースには魔力を魔導機械に流す為のコードがある。それを一番上の板にある下へ送る術式の上と一番下の板に魔焔の下に繋げる。二つに設定するのは一定以上の魔力が溜まったらそれを吸い取る事だ。ちなみにケースには鉄板を入れる為の溝があるので密着する事は無い。其の辺もちゃんと計算して作ったので問題は無い。

 

「出来た」

「どれぐらい出力が出るか楽しみなのです!」

「そうだな」

「新型の魔焔炉らしいなっ!!」

 

少し休憩していると、扉が開けられてエイフェリアが入って来た。しかも息が荒い。絶対に走ってきたな。うっすらと汗も掻いているし、肌も少し赤い。

 

「これだ。どうだ?」

「これは……駄目だな。実験を許す訳にはいかない」

「何故!?」

 

エイフェリアの言葉に俺は驚いてしまう。何故否定されるのかがわからない。

 

「術式と構造を見た感じ、確かにこれは素晴らしい。確実に従来のより遥かに上になるだろう。だが、理論値とはいえこれだけの高出力になる物だと制御する為の外付けの魔導機械が居る」

「反応炉?」

「そうだな。それが居る」

「それなら魔力を貯めて置く場所もあった方がいいのです」

「バッテリーか」

「バッテリー?」

 

エイフェリアは分かっていないみたいなので、バッテリーを説明していく。

 

「確かに貯めて貯蔵タンクが有れば便利だな。よし、今すぐ反応炉を作るぞ。それと貯蔵タンク……バッテリーか。そっちは任せる」

「わかった」

「仕方無いのでお手伝いするです」

「ああ。おい、誰か!」

「はい、なんでしょうか?」

「全研究員に作業を停止してこっちに集まるように言え。これから新型の魔焔炉……魔焔反応炉を作成する!」

「はっ!!」

「くっくく、楽しくなってきたじゃないか……」

 

直ぐに兵士が走っていく。エイフェリアはこうなると誰にも止められない。完全にスイッチが入っている。しかし、設計図を作った方が良いな。あ、そうなるとドラフターを取ってくるか。

 

「ちょっとドラフターを取ってくるから人を貸してくれ」

「それはなんだ?」

「ドラフターは……」

 

俺がエイフェリアに説明するとエイフェリアの言葉は凄く完結だった。

 

「よし、ちょっとその設計図を職人に渡して生産させるから渡してくれ」

「いや、世話になってるからいいけど……お金頂戴。研究費が欲しい」

「足りないのか?」

「全然。だって、目的は魔導巧殻を作る事だからな」

「そうだな。それが夢だったな。いいだろう……売上の1%を渡そう。生活費とか授業料とか色々と計算するとそれぐらいでいい」

 

設計図を渡すだけで1%か……確かに充分美味しいや。

 

「わかった。それでいいよ。それじゃあ取ってくる」

「ああ……いや、私も行こう」

「わかった。直ぐに取り掛かろう」

「この2人、似た者同士ですの……でも、甘いのですよ。こらっ、その前に晩御飯が先ですの!!」

 

俺達はリューンに注意されて仕方なく帰ったらご飯を急いで食べる。その後、ドラフターを運ばせ、設計図をエイフェリアに渡す。エイフェリアはその設計図を更に改良して瞬時に便利で生産効率のいい設計図に書き直した。こういうのはまだ全然かなわない。ちなみにドラフターは最優先生産項目に指定され、魔焔反応炉と同時作成される為、多数の職人と研究者達を徹夜に追い込んだ。

そして、一週間後には新型の魔焔反応炉の実験が開始され、高出力でありながら安定した魔力量を一定期間の間だけ無限に量産し続ける物が出来た。問題があるとすればそれは部品の摩耗が早く、交換が必要な事だ。白金色の魔法鉱であるアルブネア鋼で作ると約2年間持ち、ドワーフ族の製法によって作られるパール鋼で作ると約6年間持ち、結晶化した神獣の骨であるラミアス石で作ると約7年間持つ事がわかった。どれも高価な代物だ。買えばパール鋼やラミアス石とか4000もするしな。ちなみに建築用の木材が100だったり、綺麗な水が100だったり、石材が100だったりする。ちなみに石材1個と資金200で8人用の住居が建てられる。まあ、パール鋼やラミアス石は買取が800だったりするんだがな。

 

 

 

 

 

 

 

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