シンデレラの武闘会~地上最強アイドル決定戦~   作:shima-ebi

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序章

 

765プロと346プロの全アイドル、総勢200名以上の少女たちによって競われた美の祭典・アイドルミスコンイベント―――

 

横浜アリーナで行われたその決勝戦「シンデレラ・ライブバトル」では、勝ち残ったファイナリスト、宮本フレデリカ・高垣楓・十時愛梨・佐城雪美の四名によって“究極の美少女”の座をかけて壮絶な激闘が繰り広げられた。

 

その熱もまだ冷めやらぬ頃…

 

今度は日本武道館の中央闘技場の上。

 

大観衆が見守る中、徳川光成よろしく姿を見せたのは、いつものように年甲斐もなくふりふりのアイドル衣装に身を包んだ例のアイドル…川島瑞樹だった。

 

 

『みんなぁ――ッ! 地上最強(物理)のアイドルを見たいかァ―――――ッ!!!☆』

 

 

 “オォ――ッ!! オオオオオオオオォォッッ―――――!!!”

 

 

(うんうん、わかるわ…! 私も…! 私もよ!みんな……!)

 

大歓声を上げて腕を振り上げる観客たちに、瑞樹は満足そうに頷く。

 

『おっけーッ!☆ では、これより・・・!』

 

『全アイドル最強決定戦! “シンデレラの武闘会”を開幕いたしますッッ!!』

 

『宇宙一強いアイドルとして認定されることになるのは一体誰なのか…? 見届けていただきましょうッ!!』

 

『それでは! アイドル戦士たちの入場ですッ!!』

 

 

 “ワアアアアアアアアアアァァァ―――――――ッッ!!!!”

 

 

入場口から最初の選手が現れた途端、客席からは一段と大きな歓声が上がり、異様な熱気に包まれていった…

 

 

武道館でアイドルたちによる物理バトル“シンデレラの武闘会”が始まるその二週間ほど前。 

 

土曜の、午後六時半過ぎ――

 

すっかり暗くなったJR原宿駅近くの路上で、マイクを持ち、テレビカメラに向かって笑顔で何やら喋っている女がいた。

 

 

『皆さんこんにちはー! うふふっ、あなたのハートにツーシーム!☆ いつも元気もりもりっ! ぴちぴちフレッシュアイドルミズキでーす!☆』

 

 

そのぶりっ子ぶったセリフとは裏腹に、アイドルにしては少しばかりオトナの貫録が有り過ぎるようにも見受けられるリポーター… 

 

シンデレラの武闘会で総合司会を務めることになる、川島瑞樹その人だ。

 

 

『さあさあ本日は私、原宿の神宮前交差点へ来ています。 ちょっとまだ肌寒いですが、いやはやさすがは若者に人気のスポット! ご覧の通り、お買い物や観光に訪れた人たちでごった返しています!』

 

 

神宮前交差点――

 

あの、多くの女性アイドルが所属する青山通りの346芸能事務所から、ちょうど1kmほどの場所である。

 

かなり大きい交差点だ。

 

タクシー、乗用車、トラックなど色とりどりの車体とヘッドライトが引っ切り無しに行き交う。

 

そして瑞樹の言う通り、カップルや学生、サラリーマンにOL、親子連れ、外国人の観光客の集団などなど、様々な出で立ちの人々が無尽に闊歩していた。

 

そんな中、川島瑞樹は五人ほどで連れだって歩いていた学生風の男たちに声をかけた。

 

『すいませーん! そこのお兄さんたちぃ、ちょっといいかなぁー?☆』

 

「え、は… な、なんですか?」

 

『今度、日本武道館で“地上最強アイドル”を決めるイベントが行われるので、それに合わせて世論調査みたいのをしてるんですが…』

 

『どうです? お兄さんたちは、“女性アイドルたちが本気で物理バトル”をしたら、誰が一番強いと思いますか?』

 

 

「アイドルで最強…?」

 

「そりゃやっぱ…アイドルん中で物理的に最強のヒトっつったら、あの人じゃないっすか。 片桐早苗」

 

最初に名前が挙がったのは、やはり片桐早苗であった。

 

「元リアル婦警だもんな。 柔道、空手、合気道の有段者な上に、逮捕術までマスターしてんだろ? 隙がねーよマジで」

 

隣のメガネの男が相槌を打つ。

 

「拙者、早苗殿にブン投げられて逮捕されるのが夢でござるよw ぐふぉふぉっ!w」

 

チェック柄のシャツの裾をズボンに入れ込んだオタクファッションの男はドゥフドゥフと鼻息を荒くした。

 

「いや、そーかぁ? 早苗サンは確かに実績はあるんだろうけどさ、やっぱほら、トシだし… ガチで闘ったらすぐ負けるんじゃねーの?」

 

「だよな。 なんか、メロウイエローの中野有香と組手して負けたとか聞いたことあるけど」

 

「いや、それは早苗さん酔っぱらってたからって噂だぜ」

 

「意外にさ、物理バトルならきらりが最強なんじゃねーの? 杏とか片手で平気で持ち歩いてるし」

 

「生きたモビルスーツ諸星きらりか… パワーなら藤本里奈や及川さんも侮れない」

 

「でもさ、その子たちは闘争心ってもんがねーだろ? なんでもアリなら、元暴走族のたくみんが一番じゃないか?」

 

「オイオイお前らさ、ブラックナース・柳清良さんの最凶伝説を知らねえとはモグリだな?」

 

 

 わいわいがやがや… あーでもないこうでもない…

 

 

瑞樹そっちのけで議論を始めてしまった学生たち…

 

 

「すいませーん!何やってんですかぁ?」

 

「アイドルの話ならうちらも混ぜてやー♪」

 

横から黄色い声が響く。

 

片手にクレープを持ったギャル系ファッションの女子高生二人組が口をはさんできた。

 

『おっと…! え、えっとですね、最強の女性アイドルは誰かについて、皆さんに聞いてるんだけど…おねーさんは誰が一番強いと思います?』

 

瑞樹がマイクを向ける。

 

「アイドル最強? そんなん決まってんじゃん!マコト王子様一択っしょ! 王子なら誰が相手だってハイキック一発でバァーン!!ですよっ!」

 

“バァーン”と言った時の女子高生の口からクレープのカケラが飛び出してきたので、瑞樹は慌ててマイクを引っ込めた。

 

マコト王子様… 765プロの空手の達人、菊地真のことだ。

 

「ねえ見て見て! うちすんごい動画持ってんだから… こないだハマの中華街に行った時にさ、マコト王子が熊みたいにデッカい黒服たちと闘っててさぁ…!」

 

もう一人の長い髪を二つ結びにしている少女が、鼻の穴を膨らませながらスマホを瑞樹に差し出した。

 

そこには…一流のスタントマン顔負けの凄まじい動きで、明らかにカタギとは思われない黒服の大男たちをばったばったと薙ぎ倒していく菊地真の姿が映っていた。

 

『!? え、なんですかコレ…? 映画の撮影?』

 

「違うってガチのケンカだって! あとで分かったんだけど、これどっかのお金持ちのSPと闘ってたらしーですよ。 ハンパないっしょ?」

 

確かに、自分の何倍もありそうな大男数人を次々と蹴り飛ばしていくその菊地真の姿は、もはや超人的といっても良かった。

 

(へえ… 今回の武闘会には、765プロからも二人エントリーされてるけど、そのうちの一人、菊地真ちゃんねぇ…)

 

(今回のイベントは、早苗ちゃんと亜季ちゃん中心に346の身内だけでの闘いになると思ったけど、どうやらそうでもなさそうね。 これは面白くなりそう…!)

 

二週間後に迫ったアイドルたちの武の競演、「シンデレラの武闘会」… 

 

一体、どのような闘いが繰り広げられることになるのか。

 

瑞樹は思いを馳せると共に、胸の中で更に期待感が増していくのを感じていた。

 

 

 

 

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