シンデレラの武闘会~地上最強アイドル決定戦~   作:shima-ebi

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真3

 

 

「ああああぁっ!!」

 

咆哮と共に一気に真との間合いを詰めるニキビ男――。

 

低く上体を倒しての弾丸タックル。

 

もし、こんなものをまともに喰らってテイクダウンを奪われたら、小柄な空手家の真にまず勝機はないだろう。

 

馬乗りにされ、タコ殴りに遭うに決まっている。

 

確実にさばかなければ、負けは必至――。

 

バーリトゥードでタックルをさばく方法は、いくつかある。

 

上からがぶってタックルを潰す。 正面から膝蹴りをぶち込んで迎撃する。 かわしながら払いのける要領で横にいなす、etc.

 

だが、真の取った回避行動は、そのどれとも全く違った。

 

「ふぁっ!?」

 

卯月が見たのは――、空中で体をふわりと一回転させた真の姿だった。

 

なんと真は、タックルに対して一歩前に踏み込むと同時に、突進してきた男の肩に右手を置き、地面を蹴っていたのだ。

 

そしてそのまま男の背中の上で、柔道の前方回転のようにしてでんぐり返りをし、男の背後に着地していた。

 

結果的に、タックルを正面から飛び越えた形だった。

 

 

 ごっ!!

 

 

「なぁっ、がぁ・・・?」

 

目標を喪失した男は、真の背後にあった電柱に激突…

 

ずるずるとコンクリートの柱に赤い線を引きながらくず折れ、自分の鼻血の池の中へと沈んでいった。

 

「・・・・・!!」

 

その場にいた者たち全員に驚愕、戦慄の波が広がる。

 

もはや真の動きは、人間というよりは、何か、獣――。美しい牝豹を彷彿とさせるほどのモノだった。

 

凄まじいまでの反射神経、身体能力がその体には備わっているようだった。

 

「さあ、次は誰だ!」

 

二人の大男を難なく片付け、凛々と叫ぶ菊地真――

 

が、その直後、真の端整な顔に、ハッと“しまった”というような表情が浮かんだ。

 

「う、動くんじゃねえぇこのヤロォッ!!」

 

「・・・・!」

 

真の視線の先には、ピアスの男の右手があった。

 

その手は、さっきまで後ろから未央の口をおさえていたが、今、その手にはサバイバルナイフが握られていたのだ。

 

ナイフの刃先は、未央の右頬にぴたりと当てられていた。

 

「… あ…うぅ…!」

 

冷たい金属を肌に当てられた未央は、恐怖で顔を引きつらせ、固まっている。

 

「こ、この…! 卑怯だぞ、お前たち!」

 

真の目が怒りに燃える。

 

が、この状況で、“卑怯”などと言うこと自体が場違いであった。

 

真の憤怒の色は、すぐに悔恨の色へと変わった。

 

「へ、へへ… 動くんじゃねえぞ… おいっ、そこのお前もだ!!」

 

未央の足をつかんでいたナポリタン頭がその手を放し、地面に倒れていた凛に向かって一喝した。

 

転がっていた自分のスマホにそっと手を伸ばそうとしていた凛の動きがぴたりと止まる。

 

「み、未央、ちゃん……」

 

卯月は、開放されてはいたが、やはり根が生えたように立ったまま動けないでいた。

 

「はなせ…、お前たち、自分が恥ずかしくないのか!?」

 

「うるせーな、お前もうしゃべんじゃねぇーよ」

 

人質作戦が通用することを確認したピアスの顔には、もう余裕の笑みが浮かんでいた。

 

「へへッ、ナメやがってよぉ… タダで済むと思うなよお前?」

 

そう言うとナポリタンは、ハイエースの奥から物騒なモノを引っ張り出してきた。

 

「ひ…!」

 

卯月の顔に、さらに怯えの色が走る。

 

男の右手には、鈍く光る鉄パイプが握られていたからだ。

 

「いいか… よけんじゃねえぞお前」

 

人質を取っているピアスの方が言う。

 

「動いたら、こいつの顔がどうなるか分かってんな?」

 

ナイフを押し当てられた未央の頬からは、今にも、皮膚が裂けて血が滲んでくるように思われた。

 

(くそ…! ボクとしたことが…!)

 

ぎゅっと、唇を噛む。

 

(どうする…? 残り二人… くそ! 人質さえとられなければこんな奴ら・・・あっ!?)

 

「オラァッ!」

 

一気に距離を詰めてきたナポリタンが、鉄パイプを斜め上からフルスイングしてきた。

 

(やばっ!)

 

ごっ! という鈍い音が響く。

 

「うぅ…!」

 

左腕を上げてガードしたが、衝撃をまともに受けた真はバランスを崩し、尻餅をついていた。

 

空手の達人であっても、やはり少女… 大の男の攻撃をまともにくらえば、ダメージは甚大だ。

 

「ガードすんじゃねえ! 動くなって言っただろ!」

 

5mほど向こうのハイエースの縁に腰掛け、未央をがっちり後ろからかかえているピアスが吼える。

 

そして、ナポリタンがすかさず二撃目を振り上げてきた。

 

鉄パイプの一撃を、ガードもせずに受けたら…良くて昏倒、最悪死に至ることもあるだろう。

 

(くそぉ…!)

 

万事休す――。

 

真は、観念して目をつぶった。

 

 

だが――、

 

「……?」

 

来るはずの衝撃は、いつまでたってもやってこなかった。

 

おそるおそる、目を開けてみると、そこには――

 

 

「傷害の現行犯・・・これは見逃せないギルティね」

 

 

小柄な…、しかし、体の一部に相当なインパクトを持った女が立っていた。

 

明るめのブラウンカラーの髪を、左右の肩の上で二つ結びにしている。 

 

テカテカした紫色のワンピース(膝上20cm)の上に桃色のカーディガンを羽織っていた。

 

くりっとした目の童顔だが、佇まいから、トシは二十代後半と推察された。

 

一見すると少し派手目の、ただのOLに見えなくもない…

 

しかし、その胸の豊満な膨らみを中心に、妙な貫録がその全身を覆っているように思われた。

 

――そんな女が、鉄パイプを振り下ろそうとしているナポリタン頭の右手首を、横からがっしり握り込んでいるのだった。

 

「さ、早苗さん!」

 

卯月が、ぱぁっと、急に明るい声を出した。

 

“片桐早苗”――

 

シンデレラの武闘会にエントリーしており、多くのファンや関係者たちから「優勝候補筆頭」と目されている女だった。

 

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