プロローグでも書いた通り、今回から主人公の一人称で進めていきます。
気付けば俺は河川敷に立っていた。
何故、河川敷にいるのかがからない。
理由を知るために記憶を辿ってみる。
確か俺は地球に降ってくる巨大隕石を破壊するためにロケットで宇宙に向かったはず。
そして宇宙でロケットから出て隕石を無事に破壊した。
だが、宇宙空間で息ができずに窒息した。
つまり、俺は死んだはずなのだが…
なぜか今はちゃんと生きている。
それも不思議だが、おかしな事はまだあった。
俺の身体がおかしかった。
どうも少し若返ったようだ。
死んだときは30代半ばだったはずだが、今は10代後半の時の身体だと思われる。
若かった頃の身体なのだが違和感なく動かせている。
服装も上下黒のジャージと高校生の時に鍛練してた時と同じ格好である。
不思議なことは多いが考えても答えは出ないと判断し、今度はここがどこかを考える。
まず行ったのが周りに薄い気を張り巡らしてどんな場所か把握することである。
要するに気配探知である。
範囲は限界まで広げることにしよう。
これで疲れはするが街一つぐらいなら把握できる。
分かったことはここは割りと大きな街で何故だかは分からないが武道を行うような気を持つものが多いこと。
そして、目の前の川を泳いでいるものがいることだ。
泳いでいる理由はどうも溺れている犬を助けようとしているみたいだ。
泳いでいる奴が肉眼で確認できるところまで移動する。
そいつはちょうど犬を抱えて岸に上がるところだった。
気の感じから予想はしていたがやはり今の俺と同じぐらいの女子だった。
整った顔立ちにポニーテールの髪、最初の印象は活発そうだった。
そいつが犬を温めようとしていたので、俺は自分が着ている上のジャージを脱いで渡した。
「これを使って犬を拭いてやれ」
本当はタオルを渡すべきなのだが、生憎今の俺にそんなものはない。
「…ありがとう!」
俺が着ているジャージを渡したので少しためらったが女子はジャージを受け取り犬を拭き始めた。
拭き終えるとひとまず安心と思ったのか女子は犬を地面に降ろした。
犬はわんとお礼を言うように鳴いてその場を離れてしまった。
気も安定しはじめているから大丈夫だろう。
「ごめんね。あなたの服を使っちゃって」
「俺が使えと言ったんだ。気にすることはない。」
「そんなこといかないわ。何かお礼をしなきゃ」
お礼か…
普段なら断るがここは少し甘えるとするか
「それなら、この街について教えてくれないか?」
「もちろん。でもここだとあなた身体が冷めちゃうよね…」
今、俺の上半身はシャツ1枚なのだが、目の前のこいつは川で服着たまま泳いだせいで濡れてるせいで俺なんかよりよっぽど冷えそうなのだが。
「俺はともかくあんたは着替えた方がいい。風邪を引くぞ。」
「大丈夫よ。いつもの事だから。」
これがいつものこととはどんな日常を送っているのだろうか…
「あんたが大丈夫でも俺が心配する。」
「そう?なら、川神院に向かいましょう。」
川神院がどんな場所かは知らないがそれがこいつの家なんだろう。
俺と女子はその川神院に向かうことにした。
川神院、名前から想像していたがやはり寺院だった。
驚いたことはここでは武道の修行が行われているらしい。
というか聞いたら、メインは修行らしい…
中に入ると胴着を着たものがかなりいた。
試しにそいつらの気を探ってみると腕のたちそうな奴が多い。
「どうしたの?修行してる人達見て?」
「強そうな奴が多いと思ってな。」
「それはそうよ。川神院は武道の総本山と呼ばれてるんだから。」
なるほど。
だから、周辺に武道をするものの気が多いのか。
「ワン子、誰だそいつ?」
「あ、お姉さま」
お姉さまと呼ばれる胴着を着た女子が突然現れた。
高速で移動してきたせいで本当に突然目の前に現れたのだ。
長い髪に凛とした雰囲気、それでいて一目で強いと分かる程の気を待っている。
最初の印象は俺の直感が戦闘狂といっていた。
「お姉さま、この人は…えーとあなた名前なんだっけ?」
「そういえば、名乗っていなかったか。俺は林道 春風だ。」
「あたしは川神 一子。よろしくね。」
「ああ、よろしくな。で、あんたは?」
「こっちが聞かれるとはな。まぁ、いい。私は川神 百代、美少女だ。」
自分から美少女というとはな。
まぁ、確かに綺麗な顔立ちだとは思うが。
「林道くんはね、犬を助けるの手伝ってくれたのよ。」
はたして、あれを手伝ったことになるのかは疑問だがな。
「そうだったか。」
「二人は姉妹のようだが、名字が川神だが川神院と関係があるのか?」
「あたしたちのおじいちゃんが川神院の総代なの。」
「なるほどな。」
「林道といったな、どうだ?私とこれから勝負しないか?」
百代が勝負を仕掛けてきた。
どうやら、俺の直感は当たっていたようだ。
「お姉さま、突然何をいってるの!?」
「ワン子、見てみろ。こいつ、相当鍛えているぞ。」
俺としてもこの身体がどこまで動くかは知っておきたい。
だが、今の俺にとって大事なのはここがどこかである。
「分かった。だが、後にしてくれ。」
「まさか、乗ってくれるとはな。良いだろう。少し待ってやる。」
上から目線なのが気になるな。
「本当にいいの?大怪我するかもしれないのよ。」
「構わない。勝負で受けた怪我なら武闘家としては本望だ。」
俺としては逆に怪我させてしまうことの方が気がかりである。
「一子、用事ができてしまったが、準備が出来次第この街について教えてくれ。」
その後、俺は胴着を借り、一子が着替えた後に約束通りこの街について教えてもらうことが出来た。
ここ川神は神奈川県にあるみたいだが、ここに来る前の記憶では、そんな地名はなかったはずだ。
学生という一子に歴史と地理の教科書を見せてもらったがほとんど俺の知っていることだったが一部、知らないことも存在した。
ここは俺のいた地球と差異のある平行世界という結論に至った。
なぜかは分からないが戻ることは出来ないと仮定し…そもそも戻ったところで俺は死んでいるのか。
だとすると二度目の人生はこの地球で生きるとしてどうやって生きていくか。
当面の問題は金だ。
金がすべてとは言わないがないと生きていけないのも事実だ。
「…どうくん」
「うん?」
どうやら一子に呼ばれたらしい。
聞くだけ聞いてずっと考えていたから当然か。
「お姉さまと本当に戦うの?」
「売られた勝負だ。断る理由がない。」
「でも…」
命のやり取りをしない勝負にここまで心配されるとは一体、どういうことだ?
「お前の姉はそんなに強いのか?」
「強いなんてものではないわ。お姉さまは武神と呼ばれる程強いの。」
武神か
恐らく、強くなりすぎて誰と戦っても満足できないのだろう。
正直、勝つつもりだったがそれも考えなければならないようだ。
仮に勝ってしまったら俺が注目される可能性がある。
これからの生活を考えるとそれは避けたい。
「おい、用事はすんだか?なら、早く始めよう。」
武神は痺れを切らして催促しにきた。
俺はどうしようか考えが纏まらずに足取り重く移動した。
川神院の敷地内、修行僧がいつも鍛練で使用する広場みたいなところで戦うようだ。
百代がワクワクしながらそこに立っているので分かる。
その様子を他の修行僧と一子が見ている。
どうやら、彼らも百代が戦うのを知っているみたいだ。
観念を決めて、戦おうと思うがその前にやることはやらなければ。
「百代、一子、お前らのおじいさんに挨拶をさせてくれ。」
「なんで、ジジイに挨拶をするんだ」
「勝負の場所に川神院を使う許可と門下生であるあんたと勝負することへの挨拶だ。」
「そんなの必要はないぞ。」
「なら、あんたとの勝負は無しだ。」
さすがに川神院を使う以上、総代には話をつけなければ問題となるだろう。
百代はそんなことしなさそうだし。
「モモ!なに勝手にここで決闘をしようとしておる。」
「げ!ジジイ」
立派な髭をしたご老人がやって来た。
どうやらこの人が川神院総代、一子たちのおじいさんらしい。
「あなたが川神院総代ですか?」
「おお、そうじゃ」
「俺は林道 春風。これから川神 百代との勝負をここでやらせていただくものです。」
「そうだ。ジジイ、私たちはここで戦うんだ。引っ込んでろ。」
こいつは人を敬うことを知らないのか。
身内だからといって口が悪すぎではないか。
「アホか、ここでお前が戦ってみろ、川神院が壊れるではないか。やるならよそでやらんか!」
勝負を行うだけで壊れるとはそんなに激しくなると思われているのか。
「チッ、しょうがないな。おい、林道」
「なんだ?」
「しょうがないから場所を変えるぞ。」
「分かった。」
こうして、俺と武神の勝負は場所を移して行われることになった。
場所は移り、ここは河川敷
多くいた修行僧もいなくなり、ここには俺と百代と一子だけである。
「一つ確認したい。」
「なんだ?」
「これは正式な試合として扱うのか?」
「正式な試合と言ったらどうする?」
「我が流派の為、負けるわけにいかなくなる。」
正式な試合かそうでないか
それだけで勝負の重みは変わってしまう。
もちろん、公式な記録には残らない。
だが、これに負ければ俺が百代に敗北したことを誰にどう言われたとして反論は出来なくなる。
人によっては正式だろうがなかろうが敗北を受け入れない者もいるようだが。
「なら、これを正式な試合としようじゃないか。」
「お前はその意味を分かっているんだろうな」
「分かっているさ。私が楽しめるかどうかだろう。」
「俺に負けてその考えを改めるんだな。一子審判を頼む。」
「わ、分かったわ。」
覚悟は決めた。
武闘家としてこいつには一度痛い目にあってもらおう。
「林道流 創始者 林道 春風」
俺が名乗ると百代は笑って口を開けた。
「川神流 川神 百代」
「「いざ、参る」」
今回は書き溜めてたやつがあったので更新が少し早めでしたが次からは時間があきます。