早速独自解釈を投下していくスタイル。
早くマリアを出したい病患者です。特効薬は書くこと。ただし圧倒的に
森の奥へ続く一本道を歩く。まだ十歳にも満たない僕と、六十を過ぎたおばあさん。この小さな身体には大きすぎる荷物を持って、従兄弟とも呼べるシンの住む森の家に向かっている。
「ヴィト、やけに今日は荷物が多いじゃないか」
「うん。ディスおじさんに見てもらいたい物があったから、多くなっちゃった」
僕の名前は、ヴィト=ボーウェン。黒髪紫眼の男だ。
女性の方は、メリダ=ボーウェン。眼鏡の似合うしっかり者のおばあちゃん。僕のことを本当の孫のように可愛がってくれる、時々怖いおばあちゃんは、僕の荷物が気になるらしい。
僕とおばあちゃんに血のつながりはない。僕が一歳くらいの赤ん坊の頃、魔物に襲われた馬車の唯一の生き残りである僕を、おばあちゃんが拾って育ててくれたのだ。
そうして、『ヴィト=ボーウェン』の名前ももらった。これから会うシンもまた然り。同い年のシンは、僕とは違う馬車らしいけど魔物に襲われ、僕がおばあちゃんに拾われた様に、マーリン爺ちゃんに拾われた。お互い、今年で八歳になる。
そして僕とシンには、共通の秘密がある。
それは、前世の記憶。地球の日本で育った、全く別人の記憶があるのだ。馬車事故がきっかけなのか、その時から前世の記憶を取り戻し、自我を確立していた。
だから、僕とシンは拾い子だと教えてもらう前から、そのことを知っている。
地球での記憶は、ほとんど無い。自分が誰で、どう死んだのか分からない。あるのは日本での僅かな記憶と知識だけだ。シンもそうらしい。最初はショックだったけど、互いに共通の悩みを持つため、そこまで酷くなく、またこの世界の不思議を見て、悩みは吹き飛んだ。
それは、魔法。赤ん坊の頃は、これから向かうシンとマーリン爺ちゃんの家で過ごし、今はおばあちゃんと二人暮しをしているが、赤ん坊の頃にマーリン爺ちゃんが、何もないところから炎を出したのを見て、凄く興奮した。
おばあちゃんもおばあちゃんで、もしかすると日本の電化製品を凌駕しかねない道具を電力無しにフル活用していた。後に教えてもらったが、これを魔道具と言うらしい。
そんな訳で、僕とシンは興奮のあまり前世を悩むのも馬鹿らしくなり、適度に知識を活用しながら、楽しくこの世界を生きている。
さっき言ったディスおじさんとは、偶に僕たちの目的地でもある山小屋に遊びに来るおじさんで、推定偉い人。身なりは綺麗だし、クリス姉さんとジーク兄さんの二人もおじさんを守るように歩いてる節がある。
「ディセウムに?何を持ってきたんだい?」
「論文と新しい魔道具」
ってヤバッ!咄嗟に本当のこと話しちゃったんだけど!まだ秘密にしていようと思ってたのに…。でも、というかおばあちゃんになら言ってもいいかな?
「論文!?何でそんなものがウチにあるんだい」
「僕が書いたんだ。ちょこちょこと進めてたんだけど、ようやく書けたから」
言ったら呆れられた。まぁ予想通り。八歳で論文とか大真面目に言ってる姿を見れば、こうもなるだろうね。
……………絶対に驚かせてやる。
「題名は、『付与魔法に関する新考察とそれを基にした新たな付与魔法』」
あ、目の色が変わった。キランッて感じ。ホントに付与魔法好きだよね、おばあちゃん。
「詳しく聞かせな」
「うん。―――まず、この考察を始めたのは、シンが使う付与からだよ」
予想通り、おばあちゃんは乗ってきた。
「あぁ…シンの付与は独自言語を使ってるからねぇ。でも、それがどうして繋がるんだい?」
シンが付与魔法で使うのは、漢字だ。一文字で複数の意味を持つこともあるそれは、付与魔法に非常に使い勝手がいい。付与魔法の
「まず疑問に思ったのは、付与魔法において
さっきも言ったように、シンは独自言語―漢字を使用している。それは、この世界には存在し得ない文字。そのはずが、彼の付与は正常に効果を発揮している。
話を少しズラそう。
この世界における魔法とは、大気中に、あるいはこの世界全体に充満した、『魔力』と呼ばれる存在を操り、人の
多くの人はこの際、詠唱を行うことでイメージをより明確に補完し、強力な魔法を使おうとするが、イメージがしっかりもしていれば詠唱なんて要らないとは祖父母の談だ。僕もシンも精神年齢三十路間近なため、詠唱が無くてホントに良かった。
話を戻そう。
付与魔法も魔法の一種であるなら、そこには術者の想像が働いていることは分かるだろう。
で、あるならば、付与における文字とは?
「それは、詠唱と同じ。術者の想像を補完するものだと、僕は最初考えた」
例えば、火。この文字を見て、知的生物である人間なら、酸素を燃焼し熱を放出する赤い存在をイメージする人が多いだろう。そしてそのイメージとは、そのまま存在を説明する概念でもある。
「だから、魔法には
「あぁ。大丈夫だよ。でもヴィト、その仮説が正しかったとしたら、付与魔法で文字は必要なくなっちまうさね」
さすがおばあちゃん、理解が早い。その通りだ。文字が概念を確立するためだけにあるのなら、無詠唱を使える人にとって、付与もまた、文字が必要なくなってしまう。概念は、想像力だけで補完できてしまうから。
「おばあちゃんの言う通り、次はその問題があった。でも、これも簡単に説明ができるんだよね」
ここで、おばあちゃんに一つ問う。
「文字とは、一体何だと思う?」
「人が意思疎通をするために必要なものさね」
「それも正しい。でも、それだけじゃないんだ」
答えは、未知を既知に変える手段。
「さっき例に出した『火』。こう聞けば、文字を見れば、容易にそれが何であるか想像できるけど。……文字がなく、火という存在を知らない原始の人にとって、それは説明のしようがない未知のモノなんだ」
人が未知を理解するために文字はできた。ともすれば、文字には存在を確立させるだけでなく、
「だから、文字とは概念を内包する。という考えができる――人が、存在の概念を文字という形に集約させたんだよ」
さて、こうして考えると、スッキリとした二文で、全ての考えを纏めることができる。
付与魔法とは文字を介した概念の確立である。
文字とは人が概念を内包させた存在である。
ここまでくれば、日本人お馴染みの三段論法で僕の新考察は完成する。
「付与魔法における文字とは、人が内包させた概念を確立したものである」
そこまで仮説が立てば、もう分かるだろう。
「付与魔法における文字が果たす役割とは?」
「概念を確立させ、道具に定着する手段。と言えば良いのかい?」
だぁい正解。拍手喝采だ。だからシンは漢字で付与が使える。もちろん僕も。僕やシンが抱くイメージを魔力によって
「だから『効果を想像しながら魔力で文字を書き入れる魔法』なんていう雑な定義はこう変わる。
『術者が想像する概念を、魔力を用いて術者にとって最も定着させやすい【文字】という形に変換することで、その存在を確立する魔法』
『また存在が確定したために、術者の元を離れてもその存在の安定が保たれるため、付与という形で物体に魔法を宿らせることができる』」
静かに聞いていたおばあちゃんは、しばらくの間呆然としていた。もう少しでシンの家に着くが、まぁ良いだろう。少し疲れたし。
実は、あと少し続きがあるんだけど、また後でいっか。
「はぁぁぁぁぁ……。ヴィト、アンタって子は全く――っ!」
「な、なに?」
深ぁぁいため息のあとに、隠しきれない喜色を浮かべた顔で怒鳴られた。嬉しいのか怒ってるのか分からないよこれ…。
まぁたしかに、言いたいことは少し分かる。これじゃあ付与魔法とは言えない。言うなれば文字魔法。その副産物が、付与なのだから。
「一回アンタの頭の中を見てみたいよ。絶対にシンと同類さね」
「僕はあそこまで非常識じゃないよ!」
ひどい。時々街には出てるし、おばあちゃんと一緒に魔道具の取引に同行したことだってある。途中で本屋さんによって、おばあちゃんとマーリン爺ちゃんが導師とか賢者とか呼ばれていることも知った。森から一度も出ていないシンより常識はあるはずだ。尤も、前世持ちという意味では同類だけど。
「その発想力は天才的だってことだよ!ディセウムに見せるって言ったね!良いよやってやりな!あの小僧が驚く様が目に浮かぶよ」
「実はまだ続きがあるんだけど、聞く?」
「まだあるのかい!?ディセウムに見せる時はアタシも同席するよ。どれほどのモノか見極めてやるさね」
「うん。ちょっと常識外れな所があるから、二人に判断してほしいな」
推定偉い人を小僧呼ばわりできる二人の力関係とはいったいどうなっているのか。
いや、国難を救った英雄二人だったっけ。なら国王すら頭が上がらなさそう。おばあちゃんが導師と呼ばれているのは、凄い尊敬している。本人に言ったら恥ずかしがってたけど。
「既にかなり常識外れなんだけどねぇ。シンと二人して、どうしてこうなっちまったんだか、アタシには分かりゃしないよ」
し、心外なっ!
この新定義は、きっと世界を揺るがす。多くの人にとって、親しみのある『文字』が、最も存在確定をしやすいという定義は、逆説的に
例えば、絵。身体強化という言葉を付与したとしよう。この世界の文字では『身体』で三文字、『強化』は四文字で計七文字使う付与。漢字でも四文字だ。
それを例えば、
ディスおじさんに見せる論文には、この事も記されている。そして、この新定義を確固たるモノにしてしまう、魔道具もまた荷物にあるのだから。
『魔法は想像じゃっ!』
なら付与も想像でできるはず!僕は文字なんて常識に囚われない!
やったらできちまったぜ。
ばあちゃんも知らないみたいだし、論文みたいに書いちまお。
どうせなら自慢したい。推定偉い人に見せよ。
みたいな。だいたいおじいちゃんが原因。
前世の一人称『私』はもう少し後…と思う。まだ、前世で過去に使ってた『僕』が主。
早くマリアを出したいけど、独自解釈を主とした設定厨のオンパレードもやりたい今日この頃。