短めです。結構長くなるので、2部〜3部構成になります。
怒号が響き渡る。
――子どもの世迷言だ
――遊びの場じゃない
――そんなことは不可能だ
数多くの暴言。失笑。批難に否定。
だがそれを、少年は
そして、
『あなた方の研究こそ、時間の無駄だ』
そう、断言した。
―――
アールスハイド国立魔法魔術学会
そこでは日夜、魔法の研究が行われ、研究成果が出るたびに論文という形で発表され、国民の生活に還元されている。そうした成果が出るたびに行われる研究発表は、『臨時魔法研究学会』―通称、臨時学会と呼ばれる。
それに対し一年に一度、ごく小さな研究や、プロジェクトの途中経過、そして一般公募を募り個人レベルでの研究成果を発表する『魔法研究論文発表会』―通称、研究発表会は、研究者だけでなく王都に暮らす民から商会の人間にも人気が高い。
理由としては、普段見ないものが数多く出る珍しさや、便利な魔道具を見るのが目的な一般人と、それらを商売目的でいち早く知るための商会。一般の人も見学無料なことが、最たる理由かもしれないが。
また研究者からすると、凝り固まった己の視点を別の角度から見つめることで、己の研究に反映する意図がある。尤も、こちらは研究としてのプライドのあまり高くない、柔軟な考えを持つ者ばかりだが。
そんな研究発表会がこの日、開催されており、数多くの人が会場に訪れていた。
「はぁ……迷った」
黒髪紫眼の少年。ヴィト・ボーウェンもまた。
広すぎる建物内は、初めて来たヴィトにとって迷路と同義であり、早めに来た彼であったが、開始まで時間的に余裕がないにも関わらず、未だ発表者控室に辿り着かない。不親切にも建物内の地図等は無い為、完全に迷子だった。
なお、会場入り口で受付を行ったのだが、係員の人は完全に親と来た一般の人と思い、客席へ案内された。丁度、人が多く来た時でもあったため忙しく、すぐに居なくなってしまい、控室の場所を聞けなかったという経緯である。
「今更言っても仕方ないけど、ディスおじさんに地図を用意してもらえばよかったなぁ……。この際、時間に間に合わなかったらバックレようかな」
印刷技術の低いこの世界で、そんなことを言っても仕方がないのは分かるが、魔道具で何とかしろと声を大にして言いたいヴィト。間に合わないから。地図が無いから。ディスおじさんが用意しないから、と頭の中で愚痴のオンパレードを展開しつつ、若干やさぐれた感のあるヴィトが責任転嫁をしていると、後方から、声が掛かった。
「ねぇ、そこでなにしてるの?」
可愛らしく、だがどこか活発な印象のあるハッキリとした声音。明らかに自分にかけられた声の主は、幼い少女だった。
赤にも見える茶色いセミロングをした少女が、こちらを伺うように視線を向けていた。年齢は、ヴィトとそう変わらない。少なくとも二桁は無いだろう。同い年かもしれない。だがその身なりは平民にしては綺麗すぎる。おそらく貴族だろうと当たりを付け、できるだけ失礼の内容に、丁寧に理由を伝えた。
「恥ずかしながら、初めて足を運んだため迷ってしまいましてね」
「客席ならこっちの道を右に曲がったところよ?」
「あぁ、いえ。僕が行きたいのは、研究発表者控室なんです。始まる前に、父の応援に行きたくて」
自身が歩いてきた方角を指差す彼女に目的の場所を使える。だが、子ども一人で控室に行くのはおかしい。今回に限ってはおかしくないのだが、彼女からすればおかしいだろう。そのためヴィトは咄嗟に、父の応援と嘘をついた。
「へぇ!あなたのお父さん、発表会に出るのね!」
「え、えぇ。だから応援に行こうとしたんですが、場所が分からなくて」
「そういう事なら連れてってあげるわ!あたしは何度も来てるから、場所知ってるの」
「ありがたいですが、あなたも何か用事があって、ここに来たのでは?」
「いーのいーの!シシリーはさっき見つけたし、あたしはトイ……お花を摘みに来ただけだから!」
言い間違え、赤くなりながらも訂正する少女を見て、印象通りの明るい少女かもしれない。そう思いつつ、少女よりやや後方にあるお手洗いの方に一瞬だけ目を向ける。恐らく、お手洗いから出た時にヴィトを見つけたのだろう。
「そういうことなら、連れて行ってくれますか?」
「良いわよ。でもその変わり、その変な口調は無しね?」
「え……変、ですか?」
「堅っ苦しいのはイヤ。お仕事をしてる時のお父様みたい」
「分かりま……いえ、分かったよ」
「うんうん、それで良いのよ。じゃ、急がないと始まっちゃうから、早く行きましょっ」
言うや否や走り出す少女を追いかけ、自然と笑みが溢れる。この世界でシン以外に初めての同年代の少女は、活発で明るくて、今回限りの出会いだろうが、振り回されっぱなしな自分。その事が何故かおかしくて。
一頻り笑いを噛み殺すと、ヴィトは少女を追いかけ始めた。
この研究発表会までの期間も書きたかったのですが、それはそれで全くマリアが出せないので、一言でいうと我慢できなかった。
マリア出したくて間の話全カットしました!
い、いや多分回想的に、少し、チラッと、一瞬話すかもしれないけど。
活動報告にあるように、私の同時に連載している2作品と含め、順番に投稿しますので、次回は2週空いて3週間後になります。
詳しく知りたい方は活動報告をご覧ください