導師を継ぐ者(休載中)   作:五月時雨

4 / 4
予定通りに投稿しましたが、ひと月以上も待たせてしまい、すみませんでしたm(_ _)m

短めです。結構長くなるので、2部〜3部構成になります。


研究発表会 1

 

 怒号が響き渡る。

 

 ――子どもの世迷言だ

 

 ――遊びの場じゃない

 

 ――そんなことは不可能だ

 

 数多くの暴言。失笑。批難に否定。

 

 

 

 だがそれを、少年は嘲笑(わら)って受け止める。

 

そして、

 

『あなた方の研究こそ、時間の無駄だ』

 

そう、断言した。

 

 

 

―――

 

 

 

 アールスハイド国立魔法魔術学会

 そこでは日夜、魔法の研究が行われ、研究成果が出るたびに論文という形で発表され、国民の生活に還元されている。そうした成果が出るたびに行われる研究発表は、『臨時魔法研究学会』―通称、臨時学会と呼ばれる。

 それに対し一年に一度、ごく小さな研究や、プロジェクトの途中経過、そして一般公募を募り個人レベルでの研究成果を発表する『魔法研究論文発表会』―通称、研究発表会は、研究者だけでなく王都に暮らす民から商会の人間にも人気が高い。

 理由としては、普段見ないものが数多く出る珍しさや、便利な魔道具を見るのが目的な一般人と、それらを商売目的でいち早く知るための商会。一般の人も見学無料なことが、最たる理由かもしれないが。

 また研究者からすると、凝り固まった己の視点を別の角度から見つめることで、己の研究に反映する意図がある。尤も、こちらは研究としてのプライドのあまり高くない、柔軟な考えを持つ者ばかりだが。

 

 

 そんな研究発表会がこの日、開催されており、数多くの人が会場に訪れていた。

 

「はぁ……迷った」

 

 黒髪紫眼の少年。ヴィト・ボーウェンもまた。

 広すぎる建物内は、初めて来たヴィトにとって迷路と同義であり、早めに来た彼であったが、開始まで時間的に余裕がないにも関わらず、未だ発表者控室に辿り着かない。不親切にも建物内の地図等は無い為、完全に迷子だった。

 なお、会場入り口で受付を行ったのだが、係員の人は完全に親と来た一般の人と思い、客席へ案内された。丁度、人が多く来た時でもあったため忙しく、すぐに居なくなってしまい、控室の場所を聞けなかったという経緯である。

 

「今更言っても仕方ないけど、ディスおじさんに地図を用意してもらえばよかったなぁ……。この際、時間に間に合わなかったらバックレようかな」

 

 印刷技術の低いこの世界で、そんなことを言っても仕方がないのは分かるが、魔道具で何とかしろと声を大にして言いたいヴィト。間に合わないから。地図が無いから。ディスおじさんが用意しないから、と頭の中で愚痴のオンパレードを展開しつつ、若干やさぐれた感のあるヴィトが責任転嫁をしていると、後方から、声が掛かった。

 

「ねぇ、そこでなにしてるの?」

 

 可愛らしく、だがどこか活発な印象のあるハッキリとした声音。明らかに自分にかけられた声の主は、幼い少女だった。

 赤にも見える茶色いセミロングをした少女が、こちらを伺うように視線を向けていた。年齢は、ヴィトとそう変わらない。少なくとも二桁は無いだろう。同い年かもしれない。だがその身なりは平民にしては綺麗すぎる。おそらく貴族だろうと当たりを付け、できるだけ失礼の内容に、丁寧に理由を伝えた。

 

「恥ずかしながら、初めて足を運んだため迷ってしまいましてね」

「客席ならこっちの道を右に曲がったところよ?」

「あぁ、いえ。僕が行きたいのは、研究発表者控室なんです。始まる前に、父の応援に行きたくて」

 

 自身が歩いてきた方角を指差す彼女に目的の場所を使える。だが、子ども一人で控室に行くのはおかしい。今回に限ってはおかしくないのだが、彼女からすればおかしいだろう。そのためヴィトは咄嗟に、父の応援と嘘をついた。

 

「へぇ!あなたのお父さん、発表会に出るのね!」

「え、えぇ。だから応援に行こうとしたんですが、場所が分からなくて」

「そういう事なら連れてってあげるわ!あたしは何度も来てるから、場所知ってるの」

「ありがたいですが、あなたも何か用事があって、ここに来たのでは?」

「いーのいーの!シシリーはさっき見つけたし、あたしはトイ……お花を摘みに来ただけだから!」

 

 言い間違え、赤くなりながらも訂正する少女を見て、印象通りの明るい少女かもしれない。そう思いつつ、少女よりやや後方にあるお手洗いの方に一瞬だけ目を向ける。恐らく、お手洗いから出た時にヴィトを見つけたのだろう。

 

「そういうことなら、連れて行ってくれますか?」

「良いわよ。でもその変わり、その変な口調は無しね?」

「え……変、ですか?」

「堅っ苦しいのはイヤ。お仕事をしてる時のお父様みたい」

「分かりま……いえ、分かったよ」

「うんうん、それで良いのよ。じゃ、急がないと始まっちゃうから、早く行きましょっ」

 

 言うや否や走り出す少女を追いかけ、自然と笑みが溢れる。この世界でシン以外に初めての同年代の少女は、活発で明るくて、今回限りの出会いだろうが、振り回されっぱなしな自分。その事が何故かおかしくて。

 

 一頻り笑いを噛み殺すと、ヴィトは少女を追いかけ始めた。




この研究発表会までの期間も書きたかったのですが、それはそれで全くマリアが出せないので、一言でいうと我慢できなかった。

マリア出したくて間の話全カットしました!

い、いや多分回想的に、少し、チラッと、一瞬話すかもしれないけど。

活動報告にあるように、私の同時に連載している2作品と含め、順番に投稿しますので、次回は2週空いて3週間後になります。
詳しく知りたい方は活動報告をご覧ください
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。