やはり俺が346プロに所属するのはまちがっている。   作:巣羽流

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オリキャラ若干出ます。


3話

いつもより蒸し暑い夏の午後、外は地を打つような野太い雨によって覆われている。

俺は美城プロダクションにあるカフェの室内スペースで一休みしていた。

 

今日は朝から番宣のため朝から国民的五人組男性アイドルとVSするバラエティーに出演してきた。

 

俺も無事バラエティーに初出演を果たした訳だがめちゃくちゃ疲れた。

今までテレビの向こうで見ていた人と話すなんて緊張しないわけない。話振られるときょどっちゃうしもう嫌…あんな姿全国に晒されるなんて想像したくもない。

 

明日地球滅びないかな…。

 

「比企谷さん?どうしたんですか?」

 

「いや、なんでもない」

 

そうですか?と小首を可愛らしく傾げるのは現在人気急上昇のアイドル、高森藍子さんだ。

番宣のための収録であるなら当然彼女と共演し、その帰りにカフェに行って一休みをすると言ったら私も行くと着いてきた。

 

最近高森さんがやたらと俺に付いてくるんだが…アイドルなのに男の俺と一緒に居て良いのか?

 

「そろそろ注文しませんか」

 

「そうだな。安部さん!」

 

「はーい!」

 

少し離れた所に居るメイド服を身に纏った美…少女?に声をかけるとこちらに駆け寄ってきた。

 

「比企谷くんに藍子ちゃん!いらっしゃいませ!」

 

「こんにちは安部さん。注文良いっすか」

 

「はい!どうぞ!」

 

「はい!比企谷くんはいつものセットで良いですか?」

 

「はい。それで」

 

「かしこまりました!藍子ちゃんは?」

 

「私は紅茶とモンブランをお願いします」

 

「かしこまりました!少々お待ちください!」

 

元気に返事をして安部さんは厨房に消えていった。

 

安部菜々さん。彼女は俺が美城プロダクションに入る前からここに所属している事務所の先輩だ。自らの出身地をウサミン星、年齢を永遠の17歳と言い続ける所謂電波系アイドル。まだまだ売れているとは言えないが今後は専属のプロデューサーが付くと話していたし有名になっていくだろう。

 

「そういえば何で比企谷さんは年下の菜々ちゃんに敬語を使ってるんですか?」

 

俺が安部さんに敬語を使っている理由?

ある日プロダクションに落ちていた財布を拾い、中を見てみるとゴールド免許が入っていた。それだけだ。

 

「年下とはいえ事務所の先輩だからな」

 

「私も比企谷さんから見たら先輩なんですけど」

 

「高森さんは俺に敬語を使ってほしいんですか?」

 

「い、嫌です。敬語はやめましょう?」

 

あたふたと慌てる高森さんかわいい。

 

「お待たせしました!モンブランと紅茶のセットと比企谷スペシャルです!」

 

「ありがとうございます」

 

説明しよう!比企谷スペシャルとはコーヒーにこれでもかとガムシロとミルクを入れた究極の一杯にパンケーキが備え付けられた最強のセットなのだ!

 

「作ってる菜々が言うのも何なんですが…そのコーヒー飲むのはもう少し控えた方が良いんじゃないですか?」

 

「千葉県民のソウルドリンク、マックスコーヒーが置いてないからこれで代用してるんです。あるならこれは頼みませんよ」

 

マッカンが無いのがいけない。ここのプロダクション自販機にマッカンが無いとかおかしい。

 

「マッカンへの愛は地元民の私も分かるんですけど流石にこれは体を壊しちゃいますよ?」

 

地元民って…ウサミンでは無いのか…?

本当にこの人は脇が甘すぎる。マッカンよりも甘いまである。これで設定を押し通し続けられるつもりなのも甘い。

 

「安部さんは俺のオカンですか?」

 

「なっ!まだオカンなんて歳じゃ…ないです!」

 

ちょっとした間が空くんですかね…そういうところですよほんと。

 

とにかく!次は何を注文されてもブラックを出しますから!と告げ安部さんは厨房へ戻っていった。

 

おいおい…この業界は俺には苦すぎるんだからコーヒーくらい甘くしても良いじゃねえか…。

 

「じゃあ食べましょうか」

 

このあとたった一杯のコーヒーとケーキを食べるのにニ時間半もの時間が過ぎ去ったのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

コーヒーブレイク後、俺はパパっとスケジュールの確認と業務日誌の記入を済ませた。これなら今日は6時には帰れそうだな。

 

次のバラエティの台本を読んでいると俺のデスクの内線電話が鳴り響いた。いったい誰だ?

 

「はい、比企谷です」

 

「もしもし、横須です」

 

横須さんは高森さんの担当をしているプロデューサーさんだ。一見中肉中背の地味系な男性なんだが高森さんの他に数名のアイドルをプロデュースし成功させてきたやり手のプロデューサーだ。

 

「どうかしたんですか?」

 

「比企谷くんってさ…今日車で来たよね?」

 

「はい。雨が降ると予報で見たので」

 

そう、実は俺大学生なのにそこそこ稼いだお陰で中古だが車を買った。ちょうど某走り屋のアニメにはまったし車がほしくなってしまったのだ。

 

「それがどうかしたんですか?」 

 

「悪いんだけど帰るときにうちのアイドルを家に送ってやってくれないかな?雨が強すぎて流石に歩いて返すのは忍びなくて…」

 

窓から外を見てみると昼に比べ明らかに雨足が強まっているのが分かった。風も吹いていてまるで台風のようだ。

 

「俺は急ぎで作らなきゃいけない書類があるし…明日までに作らなきゃいけない企画書もまだうじゃうじゃで…ああ、今日は何時帰れるんだろ…ははっ」

 

「よ、横須さん。送りますから元気だしてください」

 

「ありがとう…助かるよ」

 

そんな消え入りそうな声で頼まれて断れるほど俺の心臓に毛は生えてない。

てかプロデューサー業怖い…俺プロデューサーじゃなくて良かった…。

 

俳優も嫌だけどな。そう考えるとやっぱり専業主夫、良いと思います!

 

「俺は6時頃に仕事終わるんで、そうしたらそっちに行きますね」

 

「ああ。よろしく頼む」

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「ふぅ…」

 

一通り明日の仕事の台本を確認し終わった。時計は五時五十分を指している。

 

時間通りに終わったか…。

 

帰る準備を済ませ横須さんのプロジェクトルームに足を運んだ。

 

「失礼します」

 

「比企谷くんか」

 

「迎えに来ましたよ」

 

「ほんと助かるよ。ありがとう」

 

横須さんの顔から生気が感じられない…いったいどれ程の激務なんだ…?

 

「比企谷さん!よろしくお願いします!」

 

「ああ」

 

高森さんはそんな横須さんの脇からひょこっと顔を出してきた。可愛い。

 

そういえば高森さんの家ってどこだ?流石に知らんな…。

 

「あ、あの」

 

「ん?」

 

高森さんの横には美少女が二人並んでいた。一人はショートヘアーに俺とよく似たアホ毛が特徴の可愛らしい女の子。もう一人は背が低くたれ目でサイドの髪がエグいくらい外跳ねしている女の子。

 

「えっと…小日向さんと輿水さん?」

 

「はじめまして。小日向です。今日はよろしくお願いします」

 

「はじめまして。輿水幸子です。よろしくお願いしますね」

 

「はじめまして。比企谷だ。よろしく」

 

なんと言うか…うん。可愛いを具現化したような女の子たちだな。王道アイドルって感じだ。カワイイ。

 

「この二人は寮なんだ。よろしく頼むよ」

 

「分かりました。じゃあ行くぞ」

 

「はい。プロデューサーさん!お疲れ様です」

 

「おう。みんな気を付けて帰れよ」

 

「「「はい!」」」

 

「じゃあ頑張ってくださいね」

 

「ありがとな」

 

横須さんに見送られ俺達は地下駐車場へ向かった。

 

「あれが俺の車だ」

 

俺の車は旧型のイン○ッサ、走り屋に憧れたので勿論MTだ。正直MTにしたのは後悔している。慣れたとは言えATに比べるとやはり面倒くさい。

 

「カッコいい車ですね」

 

そう言うと高森さんはいつもの定位置、運転席の対角線の後部座席に座った。

あそこに座るとバックミラー越しに俺がよく見れるらしい。

 

「お願いします」

 

高森さんに続き小日向さんも後部座席に座る。さらにそれに続き輿水さんも…ってあれ?

 

「カワイイボクが助手席に座るなんて比企谷さんも幸せですね!」

 

「いや、なんで普通に助手席に座ってんの?後部座席行けよ」

 

「もう後部座席はいっぱいじゃないですか!」

 

「いやいや五人のりだし。それに君らなら3人入るでしょ」

 

「何言ってるんですか?このカワイイが助手席に座っているのに何か不満でもあるんですか?」

 

「君アイドルでしょ…変に距離が近いとパパラッチの餌食になるかもしれないし」

 

もしも学生に手を出したとなれば俺は社会的に抹殺されてしまう。絶対ダメ!未成年とのお付き合い!

 

「そんなこと気にしてですか?ボクたち皆変装してますし大丈夫ですよ!」

 

「いやでも…」

 

「良いから早く行きましょう!」

 

「…はぁ。分かったよ」

 

まぁ気にしすぎか…後ろに二人も居るし大丈夫だよね?

 

仮にこれで文春砲くらったら輿水さんに養ってもらうか。

 

エンジンも暖まってきたのでいざ出発。ローギアに入れ勢いよくクラッチを離すとガクンと気持ちの良い加速を感じる。

 

ATは楽だが発進はMTが一番楽しい。

 

「もう、比企「比企谷さん!なんですかその運転は!?」

 

「…」

 

「え?何が?」

 

「カワイイボクが乗ってるですからもっと丁寧に運転してください!」

 

「あー…わりぃ。つい癖で」

 

忘れてた。てか輿水さんすげえな。ここまで自分カワイイと言えるとは…。実際カワイイけど。

 

「高森さんと小日向さんもごめんな」

 

「いえ、私は大丈夫です」

 

「私も慣れてるから大丈夫ですよ」

 

「そういえばさっき高森さんも何か言いかけたか?」

 

「いえ、何でもないですよ」

 

「そうか?」

 

「ちょと!まだボクの話は終わってませんよ!」

 

「えぇ…もう謝ったじゃん」

 

「全然反省の色が見えません!比企谷さんはボクがどれだけカワイイか分かってますか!?」

 

「分かってるよ。カワイイカワイイ」

 

「そのなげやりな感じはなんですかもう!」

 

「いやいやカワイイってちゃんと思ってるよ」

 

「そ、それなら良いんです」

 

「おお、それだけカワイイなら小学校でもモテモテだろ?」

 

「ボクは中学生ですよ!」

 

「えっまじで!?」

 

中学生!?これで!?

まぁ確かに見えなくはないのか…?

 

いや、やっぱり小学生だろ。小町の中学生の頃に比べて幼い気がする。

 

「マジです!13歳ですよ!」

 

「あまりにカワイイから小学生かと」

 

「そんなんじゃ誤魔化せませんよ!」

 

「ちっ…めんどくせえ」

 

「舌打ち!?舌打ちしました!?」

 

なんなんだこいつ。初対面なのにこんなすばずばと言うやつは初めて…いや、高校時代の部活のメンバーに一人いたな。

 

「っと、寮についたぞ」

 

流石寮だ。近いな。いいな…俺もこの近さがいい。

一応男性寮もあるらしいが、色々しがらみがありそうだから嫌だけどな。

 

「比企谷さん。ありがとうございました」

 

「おう、小日向さん。おつかれ」

 

「ありがとうございました」

 

「輿水さんもおつかれ」

 

「この話の続きは今度みっちりしますからね!」

 

「はいはいお疲れ」

 

「むぅ…お連れ様です」

 

はぁ…なんか疲れた。輿水さんってあんなだったのか。テレビと全然キャラ変わらねぇ。

 

なんであんなポジティブなの?俺にもその自信分けてほしいわ。俺のネガティブと足して割ったらちょうど良さそうだしな。

 

「高森さん。どこにいけば良いんだ?」

 

「えっと…○○の方です。たぶん車で15分くらいで着きます」

 

「ん、了解」

 

今度は急発進にならないようにゆっくりとクラッチをつなぐ。これが慣れるまで難しいんだよな…。

 

「にしても輿水さんって、すごいな。いつもあんな感じなのか?」

 

「はい」

 

「そうか…」

 

「…幸子ちゃんと仲良くなってましたね」

 

「どこをどう見たらそう見えるんだよ」

 

実際ダメ出しされただけだし仲良くなったとは違う気がするんだが。

 

「…」

 

「…」

 

えっ、どうしたこれ。

 

いつもはゆるふわオーラ纏わせてにこやかな会話するのになんか今日は雰囲気が違う。

 

ここは歳上として会話のリードをしてやるとするか。

 

「高森さん?どうした?」

 

「えっ!いえ、何でもないんです!」

 

「えっと…」

 

はい無理だ。そもそもそれが出来ればぼっちになってない。

 

「あっ!そういえばこの前茜ちゃんが…」

 

いつも通りのゆるふわ空間が次第に生まれてきた。

いつのもの感じに戻ってきたなら、まぁ言いたくないことを無理矢理言わせるのも変だしこれ以上の追求は無しだ。そもそも本当に何も無いかもしれないし。

 

「あっ!そこの道を左です!」

 

「…おう」

 

「その次を左で次の交差点を右で」

 

「了解」

 

「あの家です」

 

「あれか」

 

ここに住んでるのか。案外俺のアパートに近いんだな。

 

「今日はありがとうございました。また明日も頑張りましょう」

 

「ああ。お疲れ様」

 

高森さんは車から降りると走って家の中に入っていった。

 

そういや明日もバラエティーか…たしか衝撃映像のゲストだっけか。芸人いっぱいだよな…嫌だな。

 

それに頑張ろうって。

俺の嫌いな言葉は一番が「努力」で二番が「ガンバル」なんだぜー!オー!ノー!

 

「…帰るか」

 

ガコンとローにギアを入れ大雨の中、狭い住宅街の路地をノロノロと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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