暗殺教室と将来の夢 作:マックスメンメン
足は張り裂けそうなほど痛み、心臓はバクバクと地震のように跳ね上がっている。
自分の吐息、がゼェゼェと、耳に入ってくる、そして口で息をしているせいか喉がカラカラである。
俺は舐めていた。まさか、奴がここまでするなんてッ!?
「さぁ、和夢くんっ! 次は10キロマラソンですよ! あ、心配しなくて結構です。和夢くんの体調は触手をとうして管理しているのでご安心を……ほら水の補給もしっかり! 倒れそう? 何を言ってるのですか!? チャンピオンになるのでしょう!? この程度の練習は朝飯前ですよ!」
俺は横でギャアギャアと騒ぐ椚ヶ丘中学校3-E組担任である殺せんせーに言ってやりたいことがある。
過呼吸を起こしそうなくらい疲弊しきった体力と気力から誠意いっぱい力を振り絞り、早朝……早朝? の4時ごろに大きな声で叫んだ。
「本当に朝飯前だわ!?」
「いやー、朝から大声出すのは先生ちょっとどうかと思いますよ?」
「アンタが言わせたんでしょうが!? て、あ、れ……」
その言葉を最後に俺の意識はシャットアウトした。
「ふむ。いきなりこのメニューはキツ過ぎましたかね? 彼の肉体を触手で調べた所、問題なさそうだったのですが……」
殺せんせーは気絶した東條和夢を抱き抱えたまま、触手で顎ら辺を押さえて首をかしげる。
少しやり過ぎたかな? と、思いつつも全く反省した様子はなく、ヌルフフフと不敵な笑い声漏らしながら抱き抱えている和夢をみて言った。
「文句を言いつつしっかりとメニューをこなす君はきっと素直な良い子なんでしょう。きっと君はビッグになる……今日の放課後も楽しみですねぇ」
そのままマッハで家まで送り、バレないようにベットへ和夢をそっと寝かせる。
体の汗はしっかりと拭いたので、風邪は引かないだろう。後はトレーニングし、負荷のかかった部分に湿布を貼りる。
枕元には先生特性プロテインを置き、そっと窓を閉めて寝ている和夢を見て彼は言った。
「お休みなさい和夢くん……良い夢を」
■
「……知ってる天井だ」
眼が覚めるとそこは部屋だった。
なんだか嫌な夢を見たような気がする。何故かは知らないが夢の中には黄色いタコ───通称、殺せんせーと名乗った───が現れ、トレーニングをやらされた。
夢にまで出るってヤバイな。てか、妙にリアルな夢をだった……ん?
「いだっ、イデデデッ!? な、なんだこれ?」
肩、足、背中、腹筋に激痛が走った。
その症状は打撲などに似ているが、俺には何にもこころ辺りが……。
そんな事を考えていたのが束の間。ある生物の顔が頭の中に浮かんだ。
そんな、ま、さ、か。
「夢じゃ、なかった、のか?」
ふと、目線をベットの横にある机の上へ向けるとそこには先生からの置き手紙手紙と異様な色をしたプロテイン。
いや待て、明らかにヤバそうな色をしているがこのプロテイン大丈夫なのだろうか?
因みに手紙にはこう書かれていた。
今日の朝は疲れたでしょう。
先生特性プロテインを用意しておきました。これを飲めば速攻超回復っ!! (写真付き)これを飲んでから足腰の痛みがなくなり元気になりました、とお礼のメールが届くくらいです。
今日はゆっくり休んでください。では放課後にまた。
最後はタコの絵で締められていた。てか、足腰関係なくね?
………。
こういう時、どういった反応をすればいいのだろうか。
これが漫画の世界なら、叫んだりキレたりするのか? だが現実である。
現実の人がこんな体験をしたらをしたら、どういう反応をするかわかるか?
そう、無反応である。
流石にリアクションが取れない。万能先生過ぎて逆に怖い。しかも俺は昨日断ったつもりだったのだが。
まあいい、考えるだけ無駄である。
身体がバキバキになっているが、生活には支障がない。
俺は直ぐに顔を洗いに行き、コップに先生が作ったプロテインを入れ、牛乳を注ぐ。
かき混ぜる物が無かったのでリビングに用意してあった朝ご飯の箸を使ってかき混ぜる。
朝から母親は居ない。もう仕事にいったのだろう。
朝ごはんの中には母さんが残した手紙が一通。なんだか、先生と似ている内容の手紙だった。
てか、何だよ特製味噌汁って……真っ黒なんだけど。
俺はそんな事を思いながら辺な色のした液体を口の中へと含んだ。
出てきた感想は、
「うまッ!? 何だコレ」
普通に美味い、てか今まで飲んだプロテインの中で一番美味い。
てか、コレは本当にプロテインなのか……変な薬とか入ってないよね?
ちなみに味噌汁も大変美味しゅうございました。
■
「和夢くん、おはようございます」
「もう夕方ですけどね」
体の痛みでベットでゴロゴロしていた和夢は家では聞くことの無い、先生の声で起こされた。
ここは完全に和夢の部屋。プライパシーの侵害×不法侵入の犯罪である。だが、そんな事で咎められるような存在では無いのだ。
目の前の教師は……。
「さあっ、早速第2回チキチキ放課後の特別授業を始めましょう!!」
「いや、昨日断りましたよね?」
「にゅや!? そそそそんなこと言わず、ねえ!? やりましょうよッ!? 今日の朝は張り切ってやってたじゃないですか!? それとこんな所に如何わしい本を隠してッ!! ダメでじゃないですか!? コレR18ですよ!? 14歳の君にはまだ早過ぎます!! 先生が責任をもって処分を───」
「わーッ! わーッ! それ、ちょっ!? 何でもってんですか! バカっ! 返せバカッ!」
和夢は顔を赤面させ本を取り返そうとするが、ヒュンヒュンと避けられる。
「わかった! 俺が悪かったからやめて!」
結局、まんまと殺せんせーのペースにはまり、勉強とトレーニングが開始し始める。
ちなみに、巨乳が表紙のエロ本は先生が没収していった。
■
「ぜぇ…ゼェ……きっつッ」
殺せんせーはマジマジと和夢の様子を見ていた。
「流石ですね。ボクシングを長く続けていたからでしょう、基礎が出来ている分、トレーニングへの適応力が早い。もう少し様子を見る予定でしたがシャドーをやった後にミッドからやっていきましょうか」
そう言って殺せんせーは何処からともなく巨大なん鏡を取り出した。
和夢は鏡の前に立ち、軽くフォームを確認した後、シャドーボクシングを開始する。
そのシャブ、そのストレート。全てが長年積み上げてきた結晶体。まるで教科書を見ているかのように綺麗なフォーム。
軽々しく行われるそれはとても真剣であり、目の前で試合が繰り広げられているようにすら感じた、だが。
「ダメだ……」
和夢は急に手を止め拳を握り、下を俯く。
「どうしたのですか?」
「勝てるイメージが湧かないんだ」
「イメージ、ですか……」
そう、和夢は対戦相手をイメージし、シャドーをしていた。
そして、和夢自体は決して自分に甘くはない。むしろ厳しすぎるくらいだ。
殺せんせーが作ったトレーニングメニューには決して手を抜かず、己の限界を超えギリギリまで追い込むストイック精神。
そのストイック精神が彼の心を蝕んでいた。
「先生……俺、少し前にストリートファイトをたまたま目撃してさ、見たんだよ天賦の才って奴を」
空を見上げ、まるで何かを悟ったかのように彼は続ける。
「凄かった。俺は喧嘩なんてしたことないけど、わかった。きっとボクシングをやっている俺でも喧嘩であの人に負けるって……」
目は少しだけ潤んでおり、今にも泣きそうな顔。
「格闘技をやってる動きじゃなかった。けど、一つ一つの動きは無駄がなくて、一瞬で五人をボコボコにしてた。しかも椚ヶ丘中学校のズボン履いてたから俺と同学年……正直羨ましっいって思った」
それは嫉妬、明確なまでのジェラシー。
「今も彼のあの時の動きをイメージしてシャドーの対戦相手してもらったけど、まるで勝てなかった。そんな奴が近くにいるんだ……世界なんて取れるわけ……先生?」
その時、先生は何故だか固まっており、フルフルと震え始めた。
「和夢くん……」
「はい?」
「その少年……髪赤かったり、します?」
「え、あ、多分赤かったような……」
「オーマイガーッ!!」
「うわっ!? 何ですか急に……」
殺せんせーは少し焦った様子だ。
しかし、すぐに取り乱したことを和夢に謝ると手を取り、目には炎が宿っていた。
「いいですか、和夢くん……」
「は、はい?」
「今月いや、来月までに必ず、必ず、カル……その少年を超えると約束しますッ! お互い頑張りましょうッッ!」
「は、はぁ……」
先程までのしんみりした空気はもう何処にも無かった。
それは殺せんせーの計算通りなのか、いつものように和夢はペースに飲まれてしまう。
その後は初の蹴り技───ローキック、ミドルキック、ハイキック───の要点(腰の入れ方)などを教わり、練習を終了した。
ちなみに和夢が嫉妬している相手が同じクラスでしかも、停学がとけ、殺せんせーが触手を破壊されて悔しい思いをしているのは内緒である。
■
「てかさ、先生は何でウチの担任やってるわけ?」
「それは教えられません。先生が地球を破壊してしまえば意味の無いことですから」
「あー、そう言えばアンタ世界滅ぼすんだっけ?」
既に練習が開始され、1週間が経とうとしていた。
既に和夢は恐ろしい勢いで成長しており、蹴り技も連続10回程なら流れ作業のように蹴れるようになっていた。
だが、まだ左足の連続キックは遅い。
「どうです? そろそろ学校に来ませんか?」
スパァンッと、ミッドの音が空き地にか弾いた。
「何言ってんの? 俺が強くなったのが実感できるまでって言ったじゃないですか? それまで待って……」
「そうですか、なら明日練習試合をします」
「はい?」
和夢のとぼけた声が上がった。
練習……誰と? などと思っていそうな顔だ。
「試合相手は君が嫉妬心を抱いている赤羽業くんです」
対戦相手を聞いて、和夢はナワナワと体を震わせ、言った。
「誰、それ?」
■
「キックボクシング? 何で俺なの殺せんせー」
「いや、ほらカルマくんなら戦い慣れしてるでしょ!? もし勝てたら先生の秘密教えてあげますから」
赤髪の少年に必死に頭を下げる殺せんせー。
そんな姿を見つめる3-Eの生徒達。
「殺せんせーもこんなにお願いしてるし、やってあげれば? カルマくん強いし、問題ないと思うよ?」
「渚くんがそういうならやってあげてもいいけどさー、なんか企んでんだよね、このタコ」
土下座をしている殺せんせーの顔は僅かながらに笑っていた。
そのことにクラスの皆は誰一人として気がつかなかった。