暗殺教室と将来の夢   作:マックスメンメン

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練習試合
練習試合 ROUND1


 突然決められた練習試合。

 対戦相手は俺が嫉妬心を抱いた赤羽業って人らしい。

 てか、何で国家機密がカルマと呼ばれる人物と繋がっているのか聞きそびれた。

 正直、勝てる気がしない。

 アレは練習してるとかしてないとか、そんな次元ではないと思う。流れるような動きで敵の攻撃をかわし、ボクサー顔負けのパンチを繰り出し、蹴り技すらも一級品。

 格闘経験が無いらしいが、どうしてあそこまでの技術を会得しているのか全くもって謎であり、何より戦い慣れしているのがヤバイ。

 しかし、殺せんせーは俺に「君が自分を信じれば出来ないことはない」と、言った。

 その言葉を聞いて少し嬉しい反面、格闘経験者が自分の土俵で有利に戦う後ろめたさがあった。

 いくら強いからとはいえ、相手はキックボクシングなんてやったことないだろう。まあ、俺もキックボクシングは素人だけど。

 

 明日の練習試合開始は午後の5時。

 練習試合とはいえ、緊張している。なにせ、相手が相手だし、試合なんていつぶりのことか。

 ブランクを埋めるにはまだまだ、時間がかかりそうだ。

 そんな、内心焦っている俺を見て、少し心配そうに、けれど何故か嬉しそうに母さんが言った。

 

「まさか和夢ちゃんがまた格闘技を始めるなんて、母さん嬉しいわぁー♪」

 

 仕草は何故か若い女子のようで、あざとさが見える。

 無理するな母さん……。

 

「これも烏間先生のおかげね! 今度お礼しなきゃ!」

 

 おい待て、何で烏間先生のことを知っている。

 担任は園川さんだと思ってる筈だろ。

 

「こないだウチに来て少し話したのよー? 何でも和夢ちゃんに勉強とキックボクシング教えてくれてるそうじゃない? 秘密にしてるなんて母さん寂しぃー」

「烏間さ───先生に会った、だと? いやいや母さん、嘘でしょ?」

「本当よ? ほらっ!」

 

 そう言って母さんはスマホで撮ったツーショット写真を見せてきた。

 そこには……

 

 

 顔をピンク色に染めて烏間先生の格好を真似た(クオリティ低い)殺せんせーの姿。

 母さんの胸らへんを凝視している。

 

「よし、次会ったら暗殺しよう」

「えっ!? そんな物騒なこと先生に対して思っちゃダメでしょ和夢ちゃんっ!?」

 

 いや、一応ソイツ、ターゲットらしいし。

 殺したらお金貰えるから……。

 そんな会話の最中、何故か母さんが俺から目線を逸らし、言いづらそうに口を開く。

 

「それと、ね? 少し言いづらいんだけど……こんな物いつ買ったの? 和夢ちゃんが、その、男の子だから、ね? 気持ちわからなくわないけど……先生に注意されて……」

 

 それは先日没収された巨乳が表紙のエロ本だった。

 確かに、R18の物を14歳のクソガキが持っていたらダメだろう……だからって、だからって……。

 

「母さんに返す必要あった!?」

 

 俺はいつぶりのことか、泣きながら部屋へと逃げた。

 

 

 ■

 

 

 目が覚めればもう昼過ぎだった。

 ベットから体を起こし、両手を上げて体を伸ばす。

 

「ヤバイよなぁ……生活習慣見直さないと」

 

 そんなことを呟くと、俺は直ぐに部屋から出て顔を洗い、緩みきった顔をパンパンと自身の手で叩く。

 気合いは十分。あとはベストなコンディションで練習試合をするだけ。

 俺はバックにグローブと脛当て、ファイルカップにバンテージ…忘れ物がないか確認しつつ準備を始める。

 

「勝てるかな……」

 

 不安が募るばかり。

 正直憂鬱だ。

 メンタルが弱いのもボクサーにとっては弱点であり、敗北へと繋がる。

 わかってはいるのだ。だが、どうしても鍛えられない。

 玄関で靴を履いている時も、準備している時でさえ、まるで体が鎖で締め付けられているような感覚さえある。

 カロリーフードを開け、ぽりぽりと齧りながら玄関を開ける。

 玄関の扉はまる巨大な扉のように重かった。

 でも、そんな時に殺せんせーの言葉が頭をよぎった。

 

『君はもっと自信をもっていい。それだけの実力を備えています。だから前にも進みなさい……そうすれば、きっと夢への大きな一歩に繋がるでしょう』

 

 思わず苦笑してしまった。

 先生にしては臭すぎるセリフ。

 まあ、最後に『先生を殺せなかったら意味ないですけどね』と、緑のシマシマを顔に浮かべながら言わなければ完璧だったのだけど。

 

 こうして俺は大きな一歩を踏み出した。

 

 

 ■

 

 

「せんせー、まだ来ないのー?」

「お、おかしいですね。もう来る予定なんですが……」

「和夢くんだっけ? 不登校の……ビビって逃げちゃったんじゃね?」

 

 カルマが赤い髪を揺らしながらケラケラと笑っている。

 既に練習試合の準備は終わっており、E組専用のグラウンドの真ん中には殺せんせーが作ったリングが置かれている。

 その出来は完璧なもので、作るのに一体いくらかかったのかは不明である。

 

「ねえねえ、渚。その、和夢くんってどんな人?」

 

 緑色の綺麗な髪をした少女───茅野───が渚の裾を掴んで聞いた。

 彼女は転校して今年から椚ヶ丘に来たので和夢のことを知らないのだろう。

 

「えっと、僕もあんまり詳しくはないけど……中学一年の時はよく全校集会でボクシングの表彰されてたりしたかな? でも、2年の後半から学校来なくなったって聞いたよ?」

「……そうなんだ。何かあったのかな?」

「それは僕にもわからないけど……カルマくん、あんな余裕そうにしてるけど結構警戒してるみたいだから、強いんじゃないかな? ボクシング……」

 

 リングの周りにはE組の生徒達が集まっており、不登校である東條和夢の話題で盛り上がっている。

 

「先生ちょっと様子を───」

 

 殺せんせーがそう言いかけた時、一人少年がこちらに向かっているのが見えた。

 

「やっと来たみたいだねー? 殺せんせーあの子でしょ? 和夢くんって」

 

 クラス一同、視線を和夢に向けている。

 すると殺せんせーはリングの側から突如消え、気がつけば和夢の横で何やら色々と話している。

 

「確か和夢って元A組だよな?」

「そうそう、俺らアイツのこと全然知らねーよな」

「てか、何で不登校だったんだ? 別にイジメとかあった訳じゃないだろ?」

 

 磯貝や前原、杉野はそんな会話をしている。

 そして、ようやく容姿がわかるほどの距離までやってきた。

 髪は黒と赤茶色のツートンで髪は長く、目は少しつり上がっており、八重歯が目立つ。

 パッと見、髪が長いせいか女性にも見える風貌をしており、やや小柄。

 カルマと並べば身長も体重も明らかに違うだろう。

 しかし、皆が感じ取ったのはそんな事ではなく、

 

(((((なんかすげぇ猫みたいッ!?)))))

 

 と、まあこんな感じである。

 

「てか、殺せんせーになんかキレてない?」

「和夢くんだけっけ? なんかシャーって言ってそうで可愛いじゃん? あ、パンチしてる」

「あの二人なんか楽しそうだねー♪」

 

 何故だか怒っている和夢は殺せんせーに攻撃してるが全て躱されていた。

 しかし、その光景はどこか楽しそうにも見える。

 

「さてと皆さん、大変お待たせしました! 和夢くんの登場ですッ!!」

「あっ、えと、E組の東條和夢です。よろしくお願いします……って、話そらそうとしないでください? アンタ人の母親に色目使ってんだよ!?」

「「「「は?」」」」

 

 和夢が軽く挨拶し、すぐさま爆弾を投下すると殺せんせーは皆から汚物を見るような目を向けられる。

 

「ち、違いますよ皆さん!? 勘違いしないでッ! アレはそもそも和夢くんから没収した───」

「わーっ! わーっ! バッカじゃないんですかアンタ!? 人が言ってほしくない事をクラスメイトの前で言おうとするって?」

「にゅや!? ば、バカとは心外ですねぇ? 先にバラしたのは和夢くんじゃないですかッ!?」

 

((((なんだこの低レベルな戦い……))))

 

 なんか面倒くさそうな奴が来たとクラスの皆が思っている中、一人の生徒が口を開いた。

 

「楽しく会話してる所悪いんだけど、さっさと始めようよ? それとも怖じ気づいちゃった?」

 

 まだ待たせんの?、と言わんばかりに赤羽カルマはリングの上から和夢を見下ろしていた。

 

「楽しくは会話してないけど……それより、遅れてごめんね? だいぶ待ったでしょ? 今準備してくるから待ってて……えーと、赤羽さん?」

「カルマでいいよ。俺も和夢くんって呼ぶから」

「了解しましたぁー」

 

 

 ■

 

 

 赤羽カルマは思った。

 この試合、楽勝だと。

 ボクシング経験があり、ちょっと殺せんせーの指導を受けていると聞いたので警戒してはいたが、実際目の前に来たのは潮田渚のような小動物。

 背丈は低く、体重も軽そうだ。

 それに渚のような得体の知れない()()もない。

 

「なーんだ。心配して損した」

 

 この時、カルマの顎は上に上がっていた。

 

 

 ■

 

 

「いいですか、和夢くん」

 

 グローブやヘッドギアを付けている最中に殺せんせーが話かけてきた。

 どうやら俺のことを心配しているのだろう。

 最後のアドバイスってやつだろうか?

 

「君には自信をつけてもらいたいので、この練習試合を実現させました」

「はぁ……それで?」

「ですが、貴方にもやってもらいたいことがあります。それは───」

 

 

 ───カルマくんの天狗っ鼻をへし折ってください。それが彼の成長にも繋がる筈なので……。

 

 

 って、言われても……。

 何をすればいい訳?

 

 そしてとうとう、試合が開始されようとしていた。

 

 

 ■

 

 

 試合はキックボクシングルール。

 1ラウンド1分30秒の2ラウンド。

 レフェリーは殺せんせーが担当するらしい。ちなみに審査員も分身でめちゃくちゃな数がいる。

 

「よろしくお願いします……」

 

 和夢は頭を下げる。

 

「気楽にやろうよ? ()()()()()()()なんだからさ?」

 

 カルマは余裕を醸し出している。

 そんな中、殺せんせーは一人笑っていた。

 

(さあ、見せてあげなさい和夢くん───)

 

 

 ───君の実力をッ!!

 

 カンッ!!

 

 と、ゴングが鳴り、軽くグローブ同士を合わせる両者。

 そして次の瞬間、

 

「えっ?」

「まじ、かよ……」

 

 スパァンッという音。

 崩れ落ちる体。

 

 開始4秒足らず、赤羽カルマはダウンを取られた。

 

 どの技も来ると分かれば避ける事が可能であり、2度目3度目の攻撃こそが本命とも言える。だが、初手でも確実に当たる。そんな例外も存在するのだ。

 その技はどんな世界チャンピオンですら当たる事を前提にリングに上がるという。

 その技の名は「ジャブ」

 幾多もの条件が満たされ、やっとのこと発動できる他の技術とは大きく異なり、無条件で堂々と正面突破が可能。

 この技を殺せんせーは念入りに和夢に仕込んだ。何度も繰り返させ、体に刻みこまれたジャブ(ソレ)は油断しているカルマへとやすやすと突き刺さり脳を揺らした。

 

 

 

 ■

 

 

(アレ……俺、何してんだっけ?)

 

 カルマは朦朧とする意識の中、ワーン、ツー、という声を聞いて即座に覚醒する。

 

(何をされた?)

 

 カルマは和夢の方を見た、そこにいるのは間違いなく和夢。

 だが、先程の子猫のような雰囲気は何処にも無く、いるの牙を剥いた化け猫。

 

 そしてカルマはレフェリーの前で拳を合わせ、まだ戦闘可能であると意思を示しめすと、

 

「余裕で勝つ俺カッコいいー♪ とか思ってたでしょ? カルマくん」

 

 殺せんせーからのオチョクルような言葉を投げかけられた。

 ボンッと、カルマの顔が一瞬にして赤面した。

 

「恥ずかしいですねぇ? 油断しているからそういう事になるんですよー?」

 

 殺せんせーはカルマの痛い所を突き続けると、突如目つきが変り、怒気を含んだ声で言った。

 

「ああ、ようやく目が覚めたよ殺せんせー? 今からは本気で行くよ」

 

 まだ試合は始まったばかりである。




やっと主人公の容姿を描写出来た。

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