IS<インフィニット・ストラトス>―Deus Ex Machina   作:ネコッテ

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第102話 賽は投げられた

「見送りはここまでいいよ。ありがとな、みんな」

 

 お茶をしたあと、私たちは一夏と箒を見送るため、モノレール乗り場の改札口前を訪れていた。

 一夏と箒が乗るモノレールは13時00分発。現時刻は12時50分。私たちは残りの時間を使って、別れを惜しんだ。

 

「うん、今度はクリスマスイブに」

「それまで達者でな」

「元気でやんなさいよ、二人とも」

「うむ、おまえたちもな。おまえたちと共に過ごせて楽しかった。みんな、いままでありがとう」

 

 いつは仏頂面の箒も、いまだけしんみりした表情だった。

 いろんな別れを経験してきた彼女だが、こればかりは慣れないものらしい。

 

「どうしちゃったのよ、箒。今生の別れみたいに。ちょっとの辛抱じゃない」

 

 湿気った空気が嫌いな鈴が、バシッと箒の背を叩く。

 ラウラも二度頷いて、

 

「そうだ。重く考えることもない。生き残ってさえいれば、また直ぐに会える。死ぬなよ、箒」

「だから、重いっつうの! まるで一夏たちが出兵するみたいじゃない。縁起でもない」

「まあ、別れは終わりじゃない、また会うためにするものって言いたいんだよ、ラウラは」

 

 いつもやりとり。箒はこぼれそうになる涙をぬぐい、微笑をみせた。

 一夏はそんな幼馴染の肩を叩き、見守っていた私へ向き合った。

 

「アリス、おまえには本当に世話になった。<IS学園>って場所で、いままでやってこられたのは、他らなぬおまえがいてくれたおかげだ。おまえと出会えたからこそ、俺は男として成長できたと思う。ありがとな」

 

 そう言って、右手を差し出す。私も手を差し出す。握った彼の手は節袋し、皮も厚かった。男らしく逞しい手。努力の賜物だった。顔つきも入学当初より精悍になったと思う。でも、それが私のおかげだなんて、思わなかった。

 

「いいえ、私は何もしていませんよ。さまざまな出来事があなたを成長させたこと、それは揺るぎない事実でしょう。けど、乗り越えられたのは、あなたの中に情熱があったからです。その情熱を、これからも失わないでください」

 

 正義感が強く、曲がったことが嫌い。それが彼の魅力であるが、世界の不条理に憤ることも多かった。それでも実直に現実と向き合い、乗り越えていく芯の強さが、彼にはある。

 

(けど、そういられたのは、おまえが背中を押してくれたからなんだぜ……)

 

 一夏はしばらく結んだ手を離さなかった。不思議に思った私は首をひねった。

 

「どうしました?」

「え? あ、いや、なんでもないぜ。でも、いつかちゃんと礼をさせてくれ」

「じゃあ、次に会ったとき、その料理の腕前を私に振るってください」

「ああ。腕を磨いておくよ。だから、また会おうぜ、必ず。みんなもな」

 

 一夏は下していた荷物を持ち上げた。時刻は12時59分になろうとしていた。

 一夏と箒が手を振りながら改札を潜っていく。私たちも手を振りながら、二人を見送った。

 

「行ったな」

「じゃあ、あたしたちも戻りましょうか。あたしも荷造りしないといけないし」

「ふむ、では、なんだ、私が手伝ってやろうか?」

 

 犬猿の仲のラウラが手伝いを申し出て、鈴は怪訝そうにした。

 

「……なに、いきなり、どういう風の吹き回しよ、ラウラ」

「ふふ、ケンカ仲間がいなくなるのが、さいびしいんだよね、ラウラは」

「おまえはさっさと国に帰っていいぞ」

 

 ムスっと言い放ったラウラの一言に、「ひどいッ」と悲鳴を上げるシャルロット。

 

「身の回りのお世話をあんなにしてあげたのに、なんでそういうこというかなぁ!」

「頼んだ覚えがないからだ」

「あ、そういうこというんだ! ――ちょっとエリー聞いてよ。ラウラったらひどいんだよ、ってあれ、どうしたのエリー」

 

 モノレール乗り場の入口を眺めていた私に、シャルロットが言った。

 

「いえ、セシリア、最後まで見送りにこなかったなぁと思いまして」

「あ、ほんとよね」

 

 あのセシリアが一夏の見送りにさえこないなんて、よほど訓練に熱心なのか。

 根を詰めすぎていなければいいんだけど……。

 そう心配していると、ケータイの着信が鳴った。発信相手はロリーナだった。

 

「どうしました」

『いま時間あるかしら』

「ええ、まあ」

『よかったわ。それなら、整備科第七格納庫に来てもらえる。見せてたいものがあるの』

 

 見せたいものとはなんだろう。

 セシリアの事も気にはなったけど、私は「わかりました」と答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――モノレール・プラットホーム

「よかったのか? 彼女に何も告げないで」

「なんだよ。別れならちゃんとしただろ?」

「そうじゃない。アリスにちゃんと気持ちを伝えなくてよかったのかと言っているんだ」

「な、なんのことだよ」

「まあいい。な、一夏、私は大事な人と離れる辛さを知っている。そして、その別れが前ぶれなく訪れることも、な。だから、後悔のないように、いま、この機会を大事にした方がいい」

「でも、また会えるだろ? おまえとまた出会えたようにさ」

「一夏、おまえと再会できたこと、私は奇跡だと思っている」

「そりゃ、俺がISを動かさなければ会うこともなかったかもしれないけど」

「出会いや再会とはそういうものなんだ。次があるとは限らない。お節介かもしれないし、おまえの都合もあるだろう。けど、言っておきたかったんだ」

「そっか、わかった。次の会う時までに、どうするか考えておくよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 整備科第7格納庫。一夏たちを見送ったあと、ロリーナに見せたいものがあると呼ばれ、私はラウラとシャルを連れ、ココへ訪れた。第七格納庫は屋外にあり、ヘリや消防車、電源車が置かれた場所だ。そこで私たちが目撃したものは、4機のダブルローターヘリだった。機体下腹部には巨大な金属製のパーツをぶら下げている。

 

「これは……」

 

 ワイヤーで吊るされた無機質な金属製の物体は、一見して装甲車にも見えた。しかしながら、それには“足”が生えていた。まるで月光(アーヴィング)のような二足歩行型の装甲車、いや戦車といえるそれは、ヘリの降下と共にがっしりした脚で地面を踏みしめた。

 

「メタルギア?」

 

 まるで怪獣のような金属の物体を見上げて、ラウラが言った。

 メタルギア。兵士と兵器を繋ぐ金属の歯車として生み出された新たな兵器。一カ月ほどまえ<キャノンボール・ファスト>の会場付近で現れた巨大兵器と同じカテゴリーの兵器だ。

 しかし、眼前のメタルギアは<キャノンボール・ファスト>で目撃したメタルギアよりも無骨で重厚に見えた。

 

「これはメタルギアREX(レックス)よ」

 

 背後から聞こえた声に振りかえると、ロリーナと簪が立っていた。

 

「メタルギアREX?」

「あなたが目撃したRAYとは違う系列のメタルギアよ。TMDとして日本が開発したの」

 

 TMD。サード・ミサイル・ディフェンダー。新型ミサイル防衛構想のことだ。

 

「このREXは右部のレドームで弾道ミサイルを補足し、二足歩行であらゆる地形を走破しながら、迎撃ポイントに向かうわ。到着後、装備されたパトリオットミサイル(・・・・・・・・・・)で、弾道ミサイルを撃ち落とすの」

「もしや、このREXは単独でミサイルを迎撃するのか」

 

 ロリーナが「ええ」と答える。ラウラは目を見開いてREXを見上げた。

 ミサイル防衛の要ともいわれる高射隊(FU)は複数基のミサイル発射機と、射撃管制装置、レーダー装置、電源車両。そしてそれらを動かす40人規模の隊員で構成される。そのすべてをたった一機で担うといのだから、ラウラが驚かないはずがない。

 

「まさに脚の生えたイージス艦だね。で、なんでこんなものがIS学園に?」

「……このREXを借り受けることが、わたしに手を貸してくれた条件だったみたい」

 

 と簪が顔を出す。ロリーナはふふっと笑った。

 

「だとしても、よく日本政府が承諾しましたね……」

 

 国際平和を国是にする日本は、武器の取り扱いに厳しい国家。

 よく武器の付与なんて受けられたものだ。

 

「それだけ国産第三世代の開発が急務だったのよ」

 

 アメリカ製を購入・運用すればアフターケアもアメリカに依存してしまう。「独自の防衛」へ舵を切った日本政府は、それだけその依存を嫌ったってことか。

 

「それで、誰が乗るんです?」

 

 REXは有人機だ。誰かが乗って操縦しないといけない。

 そう言った私に、ロリーナが「はい」と操縦マニュアルを渡す。

 

「え?」

 

 私は自分を指さした。もしかして私が乗れと?

 

「大丈夫よ。REXの操縦はほとんどセミオート化されているから難しくないわ」

 

 「そうですか?」と操縦マニュアルをパラパラ捲る。

 確かに記載されていたコクピットのレイアウトは意外にもコンパクトだった。操縦桿が二本と、フットパネルに、コンソールとモニター。いかにもな操縦室に「ロボットのコクピットみたい」って思って読み込んでいると、そこへ新たな人物が入ってきた。

 

「ようやく見つけましたわよ、更識簪」

 

 急かされるように現れたのはセシリアだった。

 セシリアはREXに目もくれず、つかつかと簪の前に歩み寄った。

 

「もう一度、わたくしと<エーテリオン>を賭けて戦いなさい」

 

 どうやら、ここにやってきた理由は簪に再戦を申し込むためらしい。

 先月、<フレキシブル>の習得に苦戦するセシリアは、簪が持つアイテム<エーテリオン>――実際はただのビー玉――に目を付け、それを賭けた決闘を簪に持ちかけた。結果は簪の勝利に終わり、セシリアは<エーテリオン>を手に入れ損なったのだが、まだ諦めていないらしい。

 

「……いやだから。……あれはただのビー玉で。……手に入れたってなんにも……」

「またそんなことを言って逃げる気ですわね」

「……そ、そうじゃなくて……」

 

 まったく聞く耳を持たないセシリアに、うっすら涙を浮かべる簪。

 そんなやり取りを見ていられなくなった私は、簪を庇うように背後へ隠した。

 

「そこまでですよ、セシリア。バカなまねはやめなさい。簪が困っています」

 

 セシリアは眉間に険呑なしわを作り、私を睨んだ。

 

「バカなまねですって? わたくしが必死に<フレキシブル>を得しようとがんばっているのに、あなたはそれをバカな真似とおっしゃるの?」

「バカなマネですよ。ビー玉なんかにすがって。喧嘩を吹っかけられる簪の身にもなってみなさい。これ以上、簪に突っかかるなら、私が相手になりますよ」

 

 前の模擬戦で「あとはまかせとけ」と簪の背中を押した手前、私には事態を収める責任がある。それに、私が矛を向ければ、セシリアは矛を下すと思っていた。だが、返ってきた反応は、私の意図しないものだった。

 

「――――またですのね」

 

 セシリアは視線を落としていた。握られた拳はギリリっと鳴っている。

 私がその意図を汲めず眉をひそめると、セシリアは俯いたまま言った。

 

「また、他の人の味方をするんですのね……。あなたって、いつもそう。シャルロットさんや簪さんの味方ばかり。あなたはわたくしのことなんかこれっぽっちも気にかけてくれない……」

 

 予想しなかった言葉が返ってきて、私は思わず怯む。

 何とか「そんなことは……」と取り繕っても、セシリアの溜飲は下がらなかった。

 

「うそですわ。わたくしがどんな気持ちで悩んでいるか分かろうともしていないから、“バカなこと”なんて言えますのよ。それとも、わたくしが<フレキシブル>を習得できず、苦労していることを知らなかったとでもいうの?」

「それは……」

「――もういいです。興が反れましたわ。決闘はまたいずれ。次までに覚悟をきめておいてくださいませ、更識簪」

 

 言って踵を返すセシリアの背に、反論のすべがなかった私はただ俯くしかなかった。

 セシリアの気持ちを無碍にし、軽率な発言をしてしまったのは事実だ。

 

「……アリス、ごめん。わたしのために」

 

 心を痛めるように言った簪に、私は首を左右に振るう。

 

「いえ、あなたは悪くありませんよ。彼女が激昂したのは私のせいです」

 

 確かにセシリアの行いは馬鹿げている。けれど、そんなことをしなければならないほど追いつめられているセシリアの心情を察してやれなかった、その無神経さが問題だったのだ。

 

「でも、あんなに怒らなくっていいのにね」

「ああ、事実、彼女のやっていることは、バカげている」

「それだけじゃなかったんですよ」

 

 <エーテリオン>のことだけじゃない。自分に味方しなかった私に、腹が立ったのだろう。もっと自分のことを考えて欲しい。セシリアはそのサインを出していたのに……。私は全然セシリア・ファーストじゃなかった。

 

「……じゃあ、仲直りしにいく?」

「そうですね、このまま24日は迎えたくありませんし」

 

 首を傾げて訊く簪にそう答える。そしてすこし考えてからこう言った。

 

「でも、そのまえにちょっと寄り道していこうと思います」

 

 

        ♣        ♢         ♠        ♡

 

 

 と、私たちが向かった先は、幸いにも崩壊を逃れた整備区画だ。

 そこではロキがインカムで誰かと会話しながら、何かのパラメーターをチェックしていた。目視するモニターの画面には、光圧センサーで見られるドーム状の罫線グラフが映し出されている。重力波をモニタリングしているようだった。

 

「ロキ、ちょっといいですか」

 

 もともとBTレーザーは<亡国機業>で生み出された技術。ロキなら役に立つ情報を持っているのではないか。そう思って訪れたのだ。

 「アリーシャ、すこし場を離れる」とやってきたロキに、私は事情を説明した。

 

「<ブルー・ティアーズ>について聞きたいことがあるんです。実はセシリアが偏光射撃の習得に悪戦してまして、あなたから習得の助言をいただけないかと」

「それはかまわないが。――場所はここでいいか」

「はい」

 

 ロキが置いてあった作業机とパイプ椅子を引っ張ってくる。

 用意された椅子に私と簪は腰掛けた。

 

「まずBTレーザーについてどこまで知識がある?」

「<ブルー・ティアーズ>っていうレーザー媒質を用いた固体レーザーの一種で、特殊な脳波で屈折するってことぐらいは」

「よし。じゃあ次は“波”の性質について知っているか」

「波の性質?」

「……電波や光波、津波といった“波”は“波”と干渉すると増幅される性質を持つ。……これが波の性質。……レーザーも波の一種であるから、同じ現象が生じる」

「さすがだ、更識簪。ただし、BTレーザーが画期的だと言われる理由には、この増幅効果に加え、特定の周波帯の脳波を受けることで性質が変化するからだ。この特性を利用したものが<フレキシブル>だ」

「で、“特定の脳波”って、どんな脳波なんです」

「α波とθ波の境で生じる脳波、いわゆる“宇宙意識”というやつだ。具体的な数値でいえば7.8Hzの脳波がそれに該当する。これは奇跡の周波とも云われ、こんな研究結果も出ている」

 

 ロキは空中をタップし、自身のクラウドからいくつか資料を表示させた。

 資料はロシア語で書かれていて、私には読めなかった。

 

「これは何です」

「ロシアの超能力に関する研究ファイルだ」

 

 ロシアが犯罪捜査や諜報の分野で“超能力”を活用している話は聞いたことがあるけど。

 

「超能力者がその能力を発揮するとき、この脳波が検出されることが研究で分かっている。このファイルには超能力を開花させるための訓練メニューも記載されている。内容は誰にでもできる簡単なものだ」

 

 そう言って“スプーン”を取り出す。私と簪はまさかと思う。

 

「……もしかしてスプーン曲げの練習をしろと……?」

「そうだ、スプーンを曲げられたら、レーザーも曲げられる」

 

 ロキはふざけたようすもなくそう言った。

 私は不安な表情をした。ナーバスになっているいまのセシリアに「スプーン曲げで<フレキシブル>を習得できる」なんて言ったところで、反感を買うだけじゃなかろうか。バカにしておりますのと云われるのが目に見える。いや、<エーテリオン>も大概だけど。

 

「なんていうか、他にもっと違う方法ってありません?」

「これが習得への近道だが……そういうなら、あれをやろう」

 

 「ちょっと待っていろ」とロキがまた場を離れる。ややして帰ってきた彼が持っていた物は奇怪なヘッドセット。ドーム状のフレームに、コードが複雑に絡んだ、怪しい装置だ。

 

「こいつは特定の脳波を検知し、増幅する装置だ。ISのマインドインターフェースと併用もできる。<ヘル>に装備したヤツの試作品ではあるが、動作は保障する」

 

 <ヘル>。スコール・ミューゼルの専用機だ。彼女もまた自然発火(パイロキネシス)という超能力を持つ。それを発揮するときにも、同じ脳波が検出されるのだろう。ロキが譲ってくれたのは、その制御装置か。

 

「それはすごく助かりますけど……」

 

 私はその装置を眺めて、不満な顔を見せた。何が不満かって、そのデザインだ。試作品とあってコードがむき出で、なんだかどっかの研究所が人体実験とかに使っていそうだった。

 

「……可愛くない……」

「ね」

 

 不細工かつ無骨なデザインに、私と簪は口をそろえる。

 ロキは「可愛くないといわれてもな……」と自分の発明品をしげしげ眺めた。

 

「だが、ちゃんと動作はするぞ」

「でも、かわいくないですよ?」

 

 乙女にとって見た目の可愛さは重要なのである。

 

「じゃあ、俺にどうしろというんだ」

「可愛くしてください」

「……カッコイイでも可」

 

 ロキは露骨にめどくさそうな顔をした。

 目は「まったく女ってヤツは……」とでも言いたげだ。

 

「こっちは防御システムの調整で手いっぱいだ。これで我慢しろ」

「……わたし知っている。……<ナルヴィ>に<ゴーレム>ってコードネームがつけられたとき、『じゃあ、もっとスマートにすればいいんだろ』って、<ナルヴィⅡ>を小型化した」

「……なぜ知っているんだ……」

「ソフィアさんに聞いた。……ロキはデザインにもこだわりがある人。こうまで言われて黙っているの?」

 

 普段の簪らしからぬ、断言した口調。おまえはそれでいいのか?と、上から的な。

 ロキは肺が空になるような深いため息をついた。

 

「…………わかった……。ただし期待はするな」

 

 なんだかんだ言ってやってくれるらしい。実は気のいい男である。

 「ほら寄こせ」と言ったロキに、私はニコニコしながら装置を手渡した。――そのとき、

突如、室内を大きな揺れが襲った。

 地震かと思いきや、違う。何か強い衝撃波に揺さぶられるような、そんな振動だった。

 なにより、ロキの見ていた重力波計測機のパラメーターが激しく変動していた。

 

「来たか」

 

 何事かと警戒する私をさしおいて、ロキは天井を見上げていた。

 そう、まるでこれを予見したいたように。

 私に理解できたことは、新たな戦いの火口が切られたということだけだった。

 

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