IS<インフィニット・ストラトス>―Deus Ex Machina   作:ネコッテ

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第122話  潜入 ルクーゼンブルク公国

 ルクーゼンブルク公国。トワイライト国際空港。

 入国審査を終えた私とセシリアは、玄関ロビーを出てタクシー乗り場のロータリーを訪れた。

 この時期のルクーゼンブルクは冷える。私はピーコートのボアで首回りを温めながらタクシーを探した。利用者はまばらで観光客の数は少ない。代わってデニムシャツとカーゴパンツにタクティカルベスト、胸に大鴉のワッペンという、観光客にも現地人にも見えない人間を多く見かけた。

 どこか物々しい雰囲気。それを肌で感じながら、私は近場のタクシーを拾った。

 

「すみません、王都までお願いできますか」

 

 「あいよ」と気さくな運転手のタクシーに乗り、私たちはトワイライト国際空港を出発した。

 

「なんだか物々しい方々がおられましたわね」

 

 小声で尋ねてきたセシリアに「あれはPMCです」と答える。

 正規軍はあんなラフな服装をしないから、間違いない。

 

「ここ、二、三日前ぐらいからですよ。見かけるようになったのは」

 

 と、言った運転士に、私は「そうなのですか?」と聞き返す。

 

「ええ、国王が崩御なされて、第一王女がこの国を治めるようになってから、なんだか物々しくなりましてね。一体王女は何を考えているのやら。いまやすっかり物騒な雰囲気が根付いて、観光客もからっきしでさぁ」

「それは大変ですわね」

「いえ、実はそうでもないんでさ。先代の国王陛下が珍しい石を売りさばいてくれたおかげで、失業してもすべて国が面倒をみてくれるんですよ。税なんてものとは無縁ですし、いやはや、いい国ですよここは、ははは」

 

 輸出で財源が潤っているから、税収が無くてもこの国の社会福祉は、相当に手厚いらしい。だから、観光客が減っても苦にならない。そう愉快そうに運転手は笑ったけど、等価となるものが、無限ではないことを、この国の人たちは知っているのだろうか。

 

「――さて、お客さん、そろそろ王都ですよ」

 

 どうやら話を聞いているうちに首都へ入ったらしい。

 私は車窓から街並みを眺めた。ガラスの向こう側には、ルネッサンス時代の街並みをそのまま保存したような風景が広がっていた。近代化から取り残されたような情緒が、そこにある。

 

「で、これからどこに行きましょうか」

 

 私は「では、王宮に」と答えた。それから10分ほど走ると、壁に囲まれた王宮が見えてきた。門前には近衛兵と思わしき人間がちらほら。肩には近衛騎士団(インペリアル・ナイト)の刺繍が誂えてある。

 門からすこしはなれた駐車場で、私は「ここで」と運転手に告げた。

 

「では、よい旅を」

 

 降りた私たちに手を振って、運転手は走り去っていった。

 よい旅を、か。あいにく私たちは観光しに来たわけじゃないんですけどね。

 

「で、アリス。そろそろ、この国に来た理由を教えてくださいな」

 

 駐車場を出て、王宮周辺を軽くぶらぶらと探索し始めた私に、セシリアが言った。

 

「リリスが言った『<マーケット>を提供する』という言葉をおぼえていますか」

「ええ、第二次冷戦に代わる、新しい消費の場でしょ」

「で、“消費の場”とは、戦場のことです。そして、この国では、いま戦争の火種が燻っています」

 

 私はスマホを操作して、世界情勢を扱ったウェブページを開く。

 

『ルクーゼンブルク、米に歩み寄り。ロシアとの関係、悪化の一途』

『一月三日、ルクーゼンブルクがEU加盟を示唆したことで、ロシアがこれに強い反発を見せている。また、ルクーゼンブルクも、これに強攻的な態度をみせており、同月7日にルクーゼンブクル第一王女が訪米する予定。地下資源を背景に、支援を取り付ける思惑があるとされる。内容次第では、両国間の険悪ムードが加速する可能性があり、国際社会は両国間に自制を呼びかける』

 

「これに<リリス>が関与している可能性がある。ここへ来たときPMCを見たでしょ。彼らの胸には大鴉のワッペンを張ってありました。彼らはアメリカのPMC<レイヴン・ソード>、<アウターヘブン>傘下のPMCです」

「では、お母様はこの国を<戦場(マーケット)>に?」

「はい」

 

 それにこの国では<時結晶>が採掘できる。<時結晶>はコアの製造に必要なレアメタルだ。当然<フィニット・ストラトス>にも必要になる。開発を阻止したいために一夏を狙ったなら、次に狙う場所はココだ。ここで<リリス>が暗躍していることは間違いない。

 

「おそらく、すでに王家の誰かと接触しているはずです。まずその人間に接触します(・・・・・・・・・・)

「もしや、これからこの国の中枢に潜入する気ですの……」。

 

 この国の政治は王族が担っている。王宮に入るということは、そういうことになるだろう。

 聞いたセシリアは視線をそらした。

 

「あ、あの、わたくし、ここで観光をしていてはダメかしら」

 

 いまにも“回れ右”しそうな彼女の肩をぐっと掴んで、にっこりと私。

 

「ダメです、ついてきたからには協力してもらいますから」

「わたくしは、シンシアじゃありませんのよ! スパイの真似事なんて無理ですわ!」

「ちょっと、セシリア、声が大きいですって」

 

 私は慌ててセシリアの口をふさぐも、会話を聞きつけたと思わしき男性がこちらに歩いてきた。

 腰にはサーベル。歩み寄ってきた人間は、よりにもよってここの近衛兵だった。

 

「おい、おまえたち、ここで何をしている」

 

 嫌疑のまなざしを向けられ、セシリアの肩が跳ねる。

 

「え、えっと、それは……か、観光、かしら?」

「観光だと? その割にはずいぶんと大きい荷物を持ち歩いているな」

 

 私たちは空港からここへ直行してきたから、キャリーケースを持ったままだった。

 確かに、荷物をもったまま観光というのは、いささか不自然か。

 

「あの、これはですわね……」

 

 近衛兵の強まる疑惑から逃げるように、視線を泳がせるセシリア。

 このままセシリアに任せても、しょっ引かれそうだったので、私は前に出た。

 

「観光は序の話でして、実はココで働かせてもらおうかと」

「働く?」

「はい。王家のお世話をする侍女を募集しておられるとかで。それを聞いて訪ねてきたんです。この荷物は、住み込みが条件だったので。よろしければ、案内してもらえませんか」

 

 近衛兵は「……ふむ」とうなった。疑いながらも納得したようすだ。

 

「わかった。すこし待っていろ」

 

 近衛兵は騎士の服装に不釣り合いな通信機を取り出す。

 どうやら、取り次いでくれるらしい。しばらくして、近衛兵はこちらに向き直った。

 

「確かに侍女を募集しているようだ。連れてこいとのことだ。ついてこい」

 

 と、近衛兵が踵を返して、歩き出す。なんとか、うまく誤魔化せたらしい。隣でほっと胸を撫で下ろすセシリアの背を叩いて、私は近衛兵の後ろをついていく。

 

「このまま不採用ってことで、帰れないかしら」

 

 そんな後ろ向きな発言するセシリアをつれて。

 

 

        ♣        ♢         ♠        ♡

 

 

 私たちが案内された場所は、メイドが住み込むための寮だった。その客室らしき場所で私たちは待機を命じられた。しばらく待っていると、メイドが入ってきた。波打った長い銀髪。長身で釣り上がった目尻。どこか厳しそうな印象の女性だ。掛けている逆三角の眼鏡がそれを強めている。

 

「ここのメイド長を任されている。フローレンスです。どうぞ、かけて」

 

 入室と共に立ちあがっていた私たちは席に着いた。

 

「あなたたちね、ここで働きたいという娘たちは。まずは名前を聞こうかしら」

 

 私たちは姿勢を正して、自己紹介をした。

 

「はい、レイシー・アデルです」

「え、えっと。わたくしは、セ、セシリー・ビスケットですわ」

 

 本名を名乗るわけもいかないので、あらかじめ用意していた偽名で答える。

 メイド長は険しい眼差しで、書類に目を通しながら面接を続けた。

 

「レイシーとセシリーね。それを証明できる身分証はあるかしら。――いえね、実は以前に、雇った女性が他国の諜報員だったことがあったのよ。ミステリアスで、どこか影のある女性だと思ってはいたのだけれど、オズワルド様がさぞお気に召されてね」

 

 オズワルド・ルクーゼンブルクは、確か第一王子だったか。

 

「部下の噂だと、体の関係まで――って、ほごん」ローレンスさんは赤くなった頬を手で隠し「つまり、そういうことなのよ」

 

 なるほど、過去に私と同じような人間がいたみたいですね。

 そういうことらしいので、私は、ある書簡を提示した。ローレンスさんは「なんですか?」と言って、封筒から書類を取り出す。そして内容を確認し、メガネを輝かせた。

 

「あらあら、ローゼンクロイツ家政婦学校からの推薦状じゃありませんか。もう、そんなものがあるなら先に出しなさい」

 

 想像以上に効果覿面で、逆にこちらが戸惑う。

 よほど信頼のある養成所なのだろうか。ローレンスさんのみならず、セシリアまで驚いている。

 

(アリス、よくローゼンクロイツの推薦状なんて手に入りましたわね)

(セシリアは知っているんですか)

(ええ、家政婦を雇うならココというぐらいネームバリューのある養成所ですわ。まだメイドという職業が奴隷のように低かったころ、その地位向上を行ったシュヴァイツァー・ローゼンクロイツが創立した学校だったかしら。とても歴史と権威がありますの)

(詳しいですね)

(チェルシーがここの卒業生でしたから。そんなところの推薦状なんか、どうやって)

(ローズマリーが持たせてくれたんです)

(なるほどですわ。ライオンハートも贔屓にしておりましたわね。コネかしら)

 

 だろうな、と思う。声に出してはいえないけど、金銭が絡んでいるのかもしれない。褒められた事じゃないけど、書類を読み込んでいるフローレンスさんの様子を見ると、推薦状の効力に助けられているみたいだし、いまだけは、目を瞑って感謝しよう。

 

「なるほど。あなたたちは私が思っていたより優秀な家政婦なようね」

「いえ、それほどでもありません」

「謙遜しなくていいわ。あの学園長が一筆認めるぐらいですもの。実は私もここの卒業生でしてね。いまでは非常勤で、講師として教鞭を振るうこともあるのよ、ふふふ」

 

 と、得意げにメガネをくいっと持ち上げる。

 自制心が強そうな女性に自慢をさせるなんて、確かにすごいネームバリューだ。

 

「さて、そうとわかれば、今日からでも働いてもらおうかしら。えー、そうね。あなたたちにはレディメイドになってもらえるかしら。実は、最近、胃潰瘍で一人やめてしまってね。人手が足りていないところだったのです」

 

 私は見えないようにセシリアの脚を軽く蹴った。

 

(セシリア、レディメイドってなんです?)

 

 私はサブカルのメイドしか知らない。レディメイドと云われてもピンとこなかった。

 

(主人に付き添って、身の回りの世話をするメイドですわ)

 

 なるほど。まさに私たちが知るメイドってことか。

 

「わかりました。で、私たちはどんな方のお世話を」

「あなた方には第七王女アイリス・トワイライト・ルクーゼンブルクさまに仕えてもらうわ」

 

 

         ♠        ♢        ♣        ♡

 

 

「第七王女アイリス・トワイライト・ルクーゼンブルクさまねぇ……」

 

 面接後、採用が決まった私たちは、寮で着替えをすまし、業務にあたるべく王宮の、別邸に続く廊下を歩いていた。

 

「なんでもかなりのお転婆らしいってことですけど」

 

 寮で出会った先輩メイドとあいさつしたとき、そんな話を聞かされた。

 相当に気ままらしく。手を焼いている侍女も多いらしい。

 

「鈴さんみたいな方なのかしら」

「言いだしたら聞かない性分で、手を焼いているって話でしたね」

 

 それで前任者もやめてしまったらしい。先輩が「新人なのに随分と大変な場所に回されたわね」と苦笑していたぐらいだから、相当なわがままな王女らしい。はたして私のような素人メイドに、そんな王女の給仕が務まるのだろうか。

 そう不安を感じながら、私たちは廊下をわたった。

 王宮は本邸と別邸の二つからなる(厳密にいうと近衛騎士の宿舎と、メイドの寮の4つ)。本邸には政治に関わる人間がくらし、別邸には関わらない、あるいは関心のない人間がくらしているそうだ。

 

「失礼します」

 

 王女の部屋につき、ノックをすると、奥から「入れ」と幼い声が返ってくる。

 部屋に入った私たちがまず目にしたものは、まぶしいばかりの煌びやかさな光景だ。純金と思わしき装飾の施された寝具や家具。高級そうなドレッサー。それと不釣り合いな書籍のやまやま。机に散らかった高級文具が、なんとなく持ち主の性格をあらわしている。

 声は備え付けのバスルームからしていた。王女はただいま入浴中らしい。さっそく仕事の予感がして、私たちはさっそく浴室に赴いた。バスルームに入ると、カーテン越しに少女のシルエットが見えた。受けた説明だと、第七王女はまだ14歳だということだ。

 

「今日から新たに王女陛下の回りのお世話をさせていただくことになりました、レイシーです」

「同じくセシリーですわ」

 

 仕切られていたカーテンが、ガラっと開く。

 浴槽から出てきた王女は幼い身体を大きく見せるように踏ん反り返った。

 

「うむ、そうか。おまえたちがわらわの新しい召使いか。――ほれ、なにをしておる。はよう体を拭かんか。わらわに風邪をひかせる気か」

「もうしわけありません。ただいま」

 

 私は慌てて準備してあったバスタオルを取って、王女の体を拭き始めた。セシリアも駆け足で着替えを取りに向かう。私がひとしきり体を拭き終わると、アイリス王女はすっと手を差し出した。

 

「喉が渇いた。飲み物を用意せい」

「はい、ただいま」

 

 置いてあったビンから水をコップに汲み、王女に差し出す。

 王女は顔をしかめた。

 

「違うわ。わらわが飲みたいのは水ではない。ミルクじゃ」

 

 けれど、この場には水しか置いていない。

 これはキッチンへ取りに行くしかなさそうか。

 

「ただいま、持ってまいります」

「急げ、死刑にするぞ」

 

 こんなところで死刑にされてはかなわない。とりあえず、私は王女にガウンだけ着せて、浴槽を飛び出す。すれ違ったセシリアに「ミルクを取りに行ってきます。着替えをお願いします」と頼み、私は王宮の厨房へ走った。

 

(こりゃ、王宮の内政を探っている暇なんてなさそうですね)

 

 これは作戦を練り直した方がいいか。そんなふうに考えながら厨房に入り、キッチンメイドに「王女がミルクを」と告げる。キッチンメイドは気の毒そうに笑って、ミルクを準備してくれた。

 そのミルクを持って、駆け足で王女の部屋に戻る途中、渡り廊下で、セシリアとすれ違った。

 

「どうしました、セシリア」

「王女はやっぱりソーダがよろしんですって……」

 

 どうやら、セシリアも王女の命令で走ってきたらしい。

 「ソーダ……」私は手持ちのミルクを見た。わざわざ走ったのに。

 

「ということなので、取ってまいりますわ。はぁ……。このセシリア・オルコットを駒使いにするとは、言いご身分ですわ、ほんと」

「そりゃ、王族の人間ですからね。いい身分には違いないですけど」

「とりあえず、わたくしはソーダを取りに行ってまいりますわ。アリスは急いで王女の着替えを。あの様子だと自分で着替えたりいたしませんわ」

「でしょうね」

 

 もともと使用人に自分の着替えをさせるのは、身分の違いを分からせるため。いわば権力の誇示。不遜なあの王女様が一人で着替えを終えてくれるとは思えない。きっと今も裸で待っているはずだ。

 「わかりました」と頷き、別邸の王女の部屋へ急ぐ。

 「ただいま、戻りました」と部屋に入ると、王女がやはり服を着ずに踏ん反りかえっていた。そして手には――――水の入ったコップ。その水でゴクゴクと喉を鳴らし、ぷは~と唸る。

 私は「…………」と無言になった。

 

「なんじゃ、遅いぞ、メイド。もうミルクはよい。それより、はようわらわを着替えさせよ。風邪をひかせる気か。死刑にするぞ」

 

 悪びれた様子もなく言ってのけるアイリス王女。

 このあと、セシリアも同じように無言になったことは言うまでもないでしょう。

 

 

        ♣        ♢         ♠        ♡

 

 

「なんてプリンセスなのかしら」

 

 今日一日の仕事を終え、帰ってきたメイド寮。

 セシリアはベッドにドスンと腰を下ろして、そう愚痴った。

 今日は、とにも、かくにも、あれしろこれしろと命令されっぱなしの一日だった。それに応えることがメイドの仕事であるから仕方ないことなのだけど、こちらのいうことに耳を貸してもらえないことが大変だった。「王女さま、お勉強の時間です」と言っても「興が乗らん」と一蹴され、「ご就寝の時間です」と言っても「まだ眠うない」と読書にふける。口答えしようものなら「死刑にするぞ」だ。

 いい意味でも、悪い意味でも、他人の指図は受けない。己の道を行く、そんな我が強い王女だった。身分さがあるから、私たち使用人に対して気が大きくなっているところもあるだろう。セシリアのようなタイプは苦手とする相手かもしれない。

 

「アリスもそう思いませんこと?」

「そうですね」

「まったく、何かにつけて死刑、死刑と。子供の戯言だとはいえ、公的な人間が使っていい言葉じゃありませんわ! はぁ~、ベッドも堅いですし!」

 

 支給品としては上等だけど、常日頃から高級品を使っているセシリアにしてみれば、このベッドも三流品にまで落ちるのだろう。不平たらたらだ。鬱憤がたまっていることも関係しているのかもしれない。

 

「いつまでこんな生活を続ければいいのかしら」

「まだ一日目ですよ」

「その一日でよ~くわかりましたわ、セシリア・オルコットは仕える側ではなく仕えられる側の人間だということが。メイドという職業はわたくしの性に合いませんわ。明日にもここを離れたい気分です」

「それは私も同じです。私もこんなところでメイドをしている暇はない……」

 

 言葉に感傷的な色が滲んでいたのだろうか。対面のベッドにいたセシリアが私のそばに寄り添って「そうでしたわね……」とそう慰めてくれる。「では、一刻も早く手がかりを手に入れて、ここを出ましょう」

「そうですね」と私。でも、先へ進むには“手がかり”が必要だ。

 

 今日は一日中王女に振り回され、ほとんど調査できなかった。ほとんど、というのは。すくなくても第七王女は<リリス>と繋がっていない。それだけはわかったからだ。

 

「では、明日はわたくしが何とかあなたが探れるように時間を作ってみますわ」

「助かります。確か明日は新しい家庭教師がくるんでしたね」

 

 私はメモをひらいて明日のスケジュールをチェックする。王女が就寝したあと、行われた使用人たちのミーティングによれば、明日、新しい家庭教師が来るそうだ。なんでも、王女が直接スカウトしたらしく、住み込みらしい。その出迎えと準備が早朝からある。

 

「『午前、午後ともに自室でご勉学』ということですし。部屋にずっといてくれたら、わたくしだけでもなんとかなるかもしれませんわ。うまく時間を作ってみます。その間に本邸を探ってみてくださいな」

 

 基本的に国営を担う人間は本邸に住んでいる。その本邸に紛れ込めれば、何か手がかりを見つけられるかもしれない。

 

「わかりました。そうと決まれば今日はもう休みましょう」

「そうですわね」

 

 私たちは寝床の準備に掛かった。メイドの朝は早いのだ。明日も朝の4時半に起床しなければいけない。

 

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