火竜の息子   作:ヒラメもち

7 / 10
第7話 信念の刃

 

 

『アルティメット・マジシャンズ』

俺たちの研究会メンバー全員で構成された特殊部隊だ。

 

「は、はずかしいぃぃ!」

 

「し、シン君。落ち着いて?」

 

「別に悪くないと思うがな。」

 

「なんか強そうだしな!」

 

「まっ、名前負けしないようにしなきゃね。」

 

「皆さん、いつも通りですね……」

 

「緊張しすぎるよりは良いことでござるよ。」

 

俺はエーラで、みんなは浮遊魔法で空中から向かっている。

馬車じゃなくて、助かったぁ。

 

スイード王国に、多数の魔人が押し寄せている。ただし眼帯野郎に魔人にされ、しかし非協力的な者たちらしい。その報告を受けた俺たちは隣国の救援に向かっている。帝国を根城とする人工魔人の1体ごとの戦力確認もできるだろう。

 

「とりあえず、ぶっとばす!」

「そうね。たとえどんな理由があっても。他の国の、何の罪もない人たちを傷つけていい理由にはならないわよね。」

「よっしゃ! スピード上げるぞ!」

 

「マーク、無茶しないでね。」

「分かってる。ウォルフォード君達がいるから心配ないよ。」

「もし危なくなったら、ゲートで逃げるんだよ。」

 

「シシリーは街のみんなの治療を任せたよ。」

「はい!精一杯がんばります!」

「うん、頼むな。」

 

「むむぅ、いいないいなー」

「そうねぇ、羨ましいわねぇ。」

「私の魔法で魔人をぶっとばせるか、楽しみ。」

 

 

王都が見えてきた。

魔法が城壁へぶつけられているが、シン特製の防御魔法付与の魔道具で防がれていた。元一般人の彼ら彼女らは浮遊魔法を使えるわけではない。だから魔人たちは、一斉に城門へ向かい始めている。

 

すでに、王都内に入り込んでいる魔人もいるだろう。

 

「全員、散開!」

 

「「「おう!!」」」

「「「はい!」」」

 

 

『賢者の孫、シン=ウォルフォード。』

『そして私は、アールスハイド王国王太子、アウグスト=フォン=アールスハイドだ!』

 

風魔法の応用による、拡声。

賢者と導師の名は各国にまで響いていて、賢者の孫が早くも到着したことに人々は動揺を隠せない。さらに王太子直々に、直属の部隊による救援の到着を知らせられ、スイード王国王都のあちこちからは歓声が沸き上がる。

 

魔人たちの戦意を削ぎ、警告を告げた。

 

 

「やっぱり、マリアも城門に来たんだな。」

 

「手加減は苦手だからね。」

 

街中で暴れたら、俺たちの得意魔法ではいろいろ壊してしまう。

 

 

「どうだ? 引き返すか?」

 

拳と手のひらをぶつけると、火の粉が舞う。

 

魔力を高め、威圧。

敵の数は50人を超えている。城門前で敵の戦力が集中してくれているのだから、一番暴れられるところだ。反対側の門からすでに王都内に侵入されているとはいえ、シンたちが各個撃破してくれるだろう。

 

「……俺達は! 世界を統一する為に魔人になったんだ!」

「幸せそうにしてるやつを見ると、イライラするんだよ!」

「全員、俺たちと同じく不幸にしてやろう!」

 

大量の火球を、こちらに放ってきた。

 

「やったか!?」

「いや待て、炎が変に動いてっ!?」

 

「お互いに、信念をぶつけ合うしかないよな。」

「そうみたいね。」

 

炎に、俺たちは包まれた。しかしマリアは障壁魔法を展開して完璧に防御していたし、炎の滅竜魔導士にとって火は餌だ。敵の魔力を喰らい、さらにパワーアップできる。

 

「無傷だと!?」

「どんな魔法なんだ!」

 

「食ったら、力が湧いてきた!」

 

俺は勢いよく息を吸い込み、マリアは手のひらで風を乱回転させる。

 

「火竜の、咆哮!!」

「ソニック、ブレス!!」

 

炎のブレスと、竜巻が魔人たちをぶっとばす。

 

「ば、化け物……」

「悪魔だ……」

 

大地を抉った後が、残る。

 

「ずいぶんと、おもしろい皮肉ね。」

「悪魔じゃなくて、俺はドラゴンだ!」

 

「この威力だ。ま、魔力切れを起こしているはずだ!」

「そうだ、今のうちに……!」

 

「火竜槍!!」

 

「ひぃー!」

 

炎の槍を、地面に振り下ろす。

その衝撃波によって、魔人たちをぶっとばした。

 

マリアは反射的に空中へ、ちゃんと回避できたようだ。練習の成果だな。

 

「あ、あぶないでしょ!?」

 

「と、飛んでるぞ。」

「飛行少女に!」

「撃ち落とせ!」

「ぐへへ、よく見ると、かわい……ぶへっ!!」

 

風の弾丸によって、ぶっとんだ。

俺がぶん殴ろうとしたんだけどな。

 

「色目、使ってんじゃないわよ。」

「マリアは俺のものだぞ!」

「まっ、そういうことね。」

 

「ていうか、こっちはまだまだ暴れ足りないんだ!」

「ちょっとまさか!?」

 

両手に纏った炎を螺旋状に振るえば、刃と化す。

 

滅竜奥義

「紅蓮爆炎刃!!」

 

振り下ろした剣は、強力な爆圧を引き起こした。

 

 

「「「「こ、降参です~」」」」

 

 

戦意を、完全に失ったようだ。倒れ伏した魔人たちからは、禍々しい魔力が次第に消えていく。魔人化したカートよりも、はるかに手応えがなくてそもそも信念が足りなかった。

 

あくまで、眼帯野郎によって魔人化させられただけなのだろう。

 

「そっか!それならよかった!」

 

「あきれた……。相変わらず、むちゃくちゃな威力よね。」

 

パンッと、ハイタッチの音が響く。

 

 

「やった、やったぞ!!」

「危機は去ったんだ!」

「【火竜】、【戦乙女】……」

 

城門前で立っているのは、俺とマリアだけ。

防衛に当たっていた兵士たちが、勝鬨を上げる。

 

 

「俺たちは、王太子直属部隊アルティメットマジシャンズだ!!」

 

 

「アルティメットマジシャンズ!」

「アルティメットマジシャンズ!ばんざーい!」

「アルティメットマジシャンズ!アルティメットマジシャンズ!」

 

 

「みんなもやったみたいだな。」

「ふふっ。シンが悶える姿が、目に浮かぶわね。」

 

王都のあちこちから、声が響いてきた。

 

 

「それにしても、戦乙女はちょっと……」

「いいと思うけどな。」

「ずっと乙女でいなきゃいけないみたいじゃない?」

「マリアの母ちゃんも乙女ってやつだろ。」

「まあ、お母様たちみたいになればいいわよね。」

 

白いリボンでサイドポニーに結ばれた、マリアの赤い髪が風に揺れていた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。