『アルティメット・マジシャンズ』
俺たちの研究会メンバー全員で構成された特殊部隊だ。
「は、はずかしいぃぃ!」
「し、シン君。落ち着いて?」
「別に悪くないと思うがな。」
「なんか強そうだしな!」
「まっ、名前負けしないようにしなきゃね。」
「皆さん、いつも通りですね……」
「緊張しすぎるよりは良いことでござるよ。」
俺はエーラで、みんなは浮遊魔法で空中から向かっている。
馬車じゃなくて、助かったぁ。
スイード王国に、多数の魔人が押し寄せている。ただし眼帯野郎に魔人にされ、しかし非協力的な者たちらしい。その報告を受けた俺たちは隣国の救援に向かっている。帝国を根城とする人工魔人の1体ごとの戦力確認もできるだろう。
「とりあえず、ぶっとばす!」
「そうね。たとえどんな理由があっても。他の国の、何の罪もない人たちを傷つけていい理由にはならないわよね。」
「よっしゃ! スピード上げるぞ!」
「マーク、無茶しないでね。」
「分かってる。ウォルフォード君達がいるから心配ないよ。」
「もし危なくなったら、ゲートで逃げるんだよ。」
「シシリーは街のみんなの治療を任せたよ。」
「はい!精一杯がんばります!」
「うん、頼むな。」
「むむぅ、いいないいなー」
「そうねぇ、羨ましいわねぇ。」
「私の魔法で魔人をぶっとばせるか、楽しみ。」
王都が見えてきた。
魔法が城壁へぶつけられているが、シン特製の防御魔法付与の魔道具で防がれていた。元一般人の彼ら彼女らは浮遊魔法を使えるわけではない。だから魔人たちは、一斉に城門へ向かい始めている。
すでに、王都内に入り込んでいる魔人もいるだろう。
「全員、散開!」
「「「おう!!」」」
「「「はい!」」」
『賢者の孫、シン=ウォルフォード。』
『そして私は、アールスハイド王国王太子、アウグスト=フォン=アールスハイドだ!』
風魔法の応用による、拡声。
賢者と導師の名は各国にまで響いていて、賢者の孫が早くも到着したことに人々は動揺を隠せない。さらに王太子直々に、直属の部隊による救援の到着を知らせられ、スイード王国王都のあちこちからは歓声が沸き上がる。
魔人たちの戦意を削ぎ、警告を告げた。
「やっぱり、マリアも城門に来たんだな。」
「手加減は苦手だからね。」
街中で暴れたら、俺たちの得意魔法ではいろいろ壊してしまう。
「どうだ? 引き返すか?」
拳と手のひらをぶつけると、火の粉が舞う。
魔力を高め、威圧。
敵の数は50人を超えている。城門前で敵の戦力が集中してくれているのだから、一番暴れられるところだ。反対側の門からすでに王都内に侵入されているとはいえ、シンたちが各個撃破してくれるだろう。
「……俺達は! 世界を統一する為に魔人になったんだ!」
「幸せそうにしてるやつを見ると、イライラするんだよ!」
「全員、俺たちと同じく不幸にしてやろう!」
大量の火球を、こちらに放ってきた。
「やったか!?」
「いや待て、炎が変に動いてっ!?」
「お互いに、信念をぶつけ合うしかないよな。」
「そうみたいね。」
炎に、俺たちは包まれた。しかしマリアは障壁魔法を展開して完璧に防御していたし、炎の滅竜魔導士にとって火は餌だ。敵の魔力を喰らい、さらにパワーアップできる。
「無傷だと!?」
「どんな魔法なんだ!」
「食ったら、力が湧いてきた!」
俺は勢いよく息を吸い込み、マリアは手のひらで風を乱回転させる。
「火竜の、咆哮!!」
「ソニック、ブレス!!」
炎のブレスと、竜巻が魔人たちをぶっとばす。
「ば、化け物……」
「悪魔だ……」
大地を抉った後が、残る。
「ずいぶんと、おもしろい皮肉ね。」
「悪魔じゃなくて、俺はドラゴンだ!」
「この威力だ。ま、魔力切れを起こしているはずだ!」
「そうだ、今のうちに……!」
「火竜槍!!」
「ひぃー!」
炎の槍を、地面に振り下ろす。
その衝撃波によって、魔人たちをぶっとばした。
マリアは反射的に空中へ、ちゃんと回避できたようだ。練習の成果だな。
「あ、あぶないでしょ!?」
「と、飛んでるぞ。」
「飛行少女に!」
「撃ち落とせ!」
「ぐへへ、よく見ると、かわい……ぶへっ!!」
風の弾丸によって、ぶっとんだ。
俺がぶん殴ろうとしたんだけどな。
「色目、使ってんじゃないわよ。」
「マリアは俺のものだぞ!」
「まっ、そういうことね。」
「ていうか、こっちはまだまだ暴れ足りないんだ!」
「ちょっとまさか!?」
両手に纏った炎を螺旋状に振るえば、刃と化す。
滅竜奥義
「紅蓮爆炎刃!!」
振り下ろした剣は、強力な爆圧を引き起こした。
「「「「こ、降参です~」」」」
戦意を、完全に失ったようだ。倒れ伏した魔人たちからは、禍々しい魔力が次第に消えていく。魔人化したカートよりも、はるかに手応えがなくてそもそも信念が足りなかった。
あくまで、眼帯野郎によって魔人化させられただけなのだろう。
「そっか!それならよかった!」
「あきれた……。相変わらず、むちゃくちゃな威力よね。」
パンッと、ハイタッチの音が響く。
「やった、やったぞ!!」
「危機は去ったんだ!」
「【火竜】、【戦乙女】……」
城門前で立っているのは、俺とマリアだけ。
防衛に当たっていた兵士たちが、勝鬨を上げる。
「俺たちは、王太子直属部隊アルティメットマジシャンズだ!!」
「アルティメットマジシャンズ!」
「アルティメットマジシャンズ!ばんざーい!」
「アルティメットマジシャンズ!アルティメットマジシャンズ!」
「みんなもやったみたいだな。」
「ふふっ。シンが悶える姿が、目に浮かぶわね。」
王都のあちこちから、声が響いてきた。
「それにしても、戦乙女はちょっと……」
「いいと思うけどな。」
「ずっと乙女でいなきゃいけないみたいじゃない?」
「マリアの母ちゃんも乙女ってやつだろ。」
「まあ、お母様たちみたいになればいいわよね。」
白いリボンでサイドポニーに結ばれた、マリアの赤い髪が風に揺れていた。