『風見幽香』な私。   作:毎日健康黒酢生活

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妖花は咲き。

夜天の要塞に花開く。

そんなお話。



花咲く城郭

夜天に星空が煌めかんばかりに咲く『星黎殿』では、ここ最近新たな客人を迎えて普段とは違った喧噪を醸し出している。

『とむらいの鐘』の敗残兵を収容した区画では、ある者は猛り、ある者は嘆き悲しみ、ある者は現実を受け止めきれずに放心していた。皆、今は亡き主『棺の織手』アシズとの夢想に狂奔していた思い出をしまい込み、抱えている。

 

逸る者には『仮装舞踏会』の『巡回士(ヴァンデラー)』、いわゆる戦闘員が交流と称しその悪血を抜いていた。その場では無名だった象ほどの巨体を持つ三本角の甲虫の徒が大活躍して、見事に場を収め『将軍』の目に留まったとか……。

 

それはともかくとして、敗軍の将たる『とむらいの鐘』最後の『九垓天秤』ウルリクムミとその副官アルラウネはというと……。

 

城郭の広場で二人っきりの特訓(デート)をしていた。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

『うおぉぉぉー!!!

 何たる恥曝しだぁぁぁ!

 この我があぁぁぁ!

 人化の術すらまともにできなんだとわあぁぁ!』

 

「お静かに。擬態は繊細な自在法です。」

 

『分かっておるわあぁぁぁー!』

 

山のように大きな門の姿をした白い染料で描かれた双頭の鳥鉄が描かれた巨人は、胸元で咲く妖花に向かって自身の不出来の苛立ちを口にする。

そう、ウルリクムミは人化の自在法に苦戦していた。

そもそもの事の発端は、新たな身元引受人となっている風見幽香がなんとなしに宴の終わりに言った一言が原因である。

 

「巨人さん、アナタ大きすぎて邪魔よ。人型くらいの大きさになりなさい。」

 

命の恩人のこの発言である。

当の本人は忘れて、『星黎殿』の庭いじりをしているというのに、義に篤い彼は真摯に受け止め苦手な細かい自在法を習得しようとしていた。そこに目を付けた自在師たる妖花アルラウネが二人きりになり自在法の手ほどきをしていた。

 

人化の自在法は術者によって向き不向きのある自在法ではある。自分の本質からやや離れた姿を維持するのは基本的に難しく、無理にその不自然を通せば、それ相応の存在の力を消費してしまう。ウルリクムミの本質は鉄の巨人であり、得意とする自在法『ネサの鉄槌』は鉄の竜巻を操るという繊細とはかけ離れた大味な自在法な為、本質から遠く離れた人の形を真似るのに悪戦苦闘している。

 

そもそもがこの時代、中世の徒の間では人化の自在法はまだまだ認知されておらず、人間好きな極一部の徒を除いて大多数が本性をそのまま表現した姿で顕現していた。

龍種のような姿、天使や悪魔のような姿、爬虫類とも魚類とも取れる姿、不定形で粘着質な流体の姿など千差万別、各々が思い思いの姿を象っている。

その中では比較的人型に近かったアルラウネは容易に人型になれたが、顕現したありのままの姿が山と見間違えるほどの巨体であるウルリクムミが、普段の大出力の自在法と勝手が違う繊細な人化の自在法に手間取るのはある種当たり前だと言える。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

閑話休題

 

妖花は期せずしてお目当ての二人っきりの特訓(デート)に臨んでいる。

彼女としては彼のそのおおらかさに、不器用さに感謝していた。

不器用な彼が人化の自在法を習得するのにはあと数か月ほどは必要だろう。

 

そしてそもそもの原因の『彼女』はというと、()()()()をしていた。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

「このお城、()()()()()。」

 

蛇さんの部下、もといベルペオルさんたちの住んでいるこのお城は要塞のようで、防衛機能と居住空間しか無くてどこまでも機能的な遊びの一切ない実戦的で合理的であるが故の()()()()()()()()が夜天に広がるのみであった。

このお城の設計者たちの職人魂が見ているだけでも感じ取れる。

 

しかし、このお城には決定的に足りないものがある。

 

そう、花だ。

 

手始めに一番偉いだろうベルペオルさんに許可を貰って、このお城の雰囲気に合わせて城壁に絡むようにクライミングローズを植えてみた。その下には四季折々の花が咲くように工夫してヒヤシンス、ハイビスカス、サフラン、アネモネなど様々にお互いがケンカをしないように私だからこそわかる絶妙なバランスで彼女たちを配置した。

 

幸い、このガーデニングの期間を利用して急遽私が預かることになった2人が人に紛れる特訓をするということなので時間は目一杯ある。徐々に徐々に庭園の区画を広げていって時間の許す限り庭いじりに精を出す。

 

一定の秩序を以て魔法のように動く体とは別に思考は()について考え始める。

 

これまではこの『風見幽香』の身体、通称マイボディは私の意思を汲み取りつつも、私のイメージや意味記憶に残されていた加虐嗜好(ドS)で人の神経を逆撫でするのが好きで群れることは全くせず孤高で唯一花にのみ笑顔を見せるような『風見幽香』の立ち振る舞いに変換されて行動をしてきた。時には全く私の意思とは逆に『風見幽香』ならば()()()()()()()()()()()()()を無理やりにしてきたこともある。

 

これは幾千年もマイボディと過ごしてきたから自ずと琴線も分かる。どんな行動が私の意思を汲み取ってくれて、どんな行動をされると意識とは別に勝手に動き出すのか。前者は主に他愛もない雑談や、お花の世話などが挙げられる。後者は主に挑発的な態度を取られたときや、花を無碍に扱った輩の制裁などが挙げられる。

 

このお城に来る前から多少の語調の変化はあるものの概ね私の伝えたい意思を言葉に出来ている。これも幾千年もの間のうちに出来たマイボディと私の絆だと思う。この変化はこのお城に来てからより顕著になっている。

ただ、あまりにも無様な様相を晒そうとするとブレーキがかかったかのようにストップが入る。

 

うん……待てよ?

 

今まであまりにも自然に考えすぎていたが前提条件がそもそもおかしいぞ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そもそもが人間の身体は脳からの電気信号によって体を動かす。その電気信号こそが『意思』と呼ばれるものでそこに意識外の他者からの介入の余地はないはずだ。

もっとも、『妖怪』であるマイボディに人間と同じような身体構造があるのかは甚だ疑問ではあるが。

 

そうだ。

 

考えてみると可笑しい。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()

 

私の記憶では妖怪というものは、他の妖怪を喰らって妖力を奪ったり、人々からの恐怖を信仰のようにして畏れとして力にしていた。

幾ら妖怪と言えど突発的にこれほどまでに強大な妖力を持った存在が何の過程も経ずに出現するのだろうか。

生物や妖怪も紆余曲折を経てその存在を定型していくものである。

 

私の意識が覚醒するまでマイボディをマイボディたらしめたのは誰だ?

 

私はずっと勘違いをしていたのかもしれない。

 

私は『私』だけじゃ……。

 

だとしたら、私は……。

 

 

 

「あの!!!」

 

 

 

グルグルとした思考を押しとどめるように大きな声によって考え事から意識が離れる。

声の元へと視線を投げるとそこには悪魔のような翼を生やした冴えない中年がおずおずとした様子でこちらを窺っていた。

 

「なによ?」

 

思考が中断されたことにより思わず不機嫌な声がもれてしまう。

冴えない中年はそれでも退くことなく、言葉を続ける。

 

「私は先の宴でもご紹介に与りました『嵐蹄(らんてい)』フェコルーと申します。この星黎殿の守護を任されているものです。要塞の管理なども兼任しているので、この度の『血染花』殿の美化作業で私めも何かお手伝いできることは無いでしょうか?」

 

恐る恐る言葉をつなげる彼、フェコルーの言葉からは善意しか感じない。

 

しかし、これは幸いだ。

 

花たちも協力してくれていたが一人での作業に限界を感じていたところだ。

ゆくゆくは何区画かに分かれた砦の内、一つ位は花で埋められればなと計画していたのだ。

妖怪という睡眠を必要としない一日働かせても大丈夫な人手が一つ増えるだけで大分現実的な計画になるだろう。

手始めに私が拾った2人が特訓をしている周辺の砦を花で一杯にしよう。

 

考え事を止めて楽しい計画を考え始める。

あぁ、その前に彼に一つだけ言っておこう。

 

 

 

「あら?私、お花に関しては厳しいわよ?」

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

数か月後、風見幽香は薄桃色のドレスを纏った妖艶な女性と黒い燕尾服に身を包みひげを蓄えた熟年の執事姿の紳士を引き連れ、星黎殿を去ろうとしていた。

 

その見送りに三柱臣(トリニティ)やフェコルーが姿を現す。

 

いつものようにベルペオルが言葉を切り出す。

 

「風見殿に城一面に花を添えて頂ければと思っていたのに、まったくもってままならぬものです。して、お次はどちらにまいられるので?」

 

あからさまに落胆の言葉を並べるベルペオルに風見幽香がそっと蠱惑的な笑みを持って答える。

 

「そうね。極東に拠点を置こうと考えているわ。ここでお花の世話をして思ったのよ。季節折々の花を訪ねるのもいいけれど、自分で思うように花を植えて会話していくのも楽しいものだってね。」

 

「わざわざ、極東ですか?」

 

「近く、大きな動きがあるわ。そのついでに蛇さんのことも探してあげるわ。(そろそろ、博麗結界ができるので幻想郷に行かなきゃいけません。そこで蛇さんの封印についても調べてきます!)」

 

それだけ言い残すと風見幽香はふわりと空へ浮かび夜天に向かい日傘を伸ばして鸚緑の極光を夜天に向かって放つ。

極光が過ぎ去った先では夜天が円形に崩れそこからは明るい陽射しがさんさんと夜の城郭に降り注ぐ。

そして、その日の光へと向かって風見幽香が飛んでいくのに追従して侍従の2人も付き従っていく。

 

夜天と陽射の狭間で突然、3人が止まったかと思うと薄桃色の球体が見送りに来ていた4人に向かって飛んできて4人が受け取ったのを確認した後、今度こそ風見幽香一行は飛び去って行った。

薄桃色の球体を受け止めたフェコルーが伺いを立てるように三柱臣(トリニティ)へと質問する。

 

「大きな動きとは何でしょうね?それと、この球体も。」

 

「そうさね。私にもさっぱりだよ。大きな力を持つ方たちの思考はさっぱり読めん。まったくもってままならぬものだねぇ。」

 

皮肉交じりに返事をするベルペオルの言葉が終わると同時に薄桃色の球体から音声が流れだす。

 

『あぁ、言い忘れてたわ。()()()()()。お城の子たちの世話は任せたわよ。次にここに来たときは()()()()()()()。』

 

それだけ伝え終えると薄桃色の球体はポンッと軽い音を立てて弾け飛び、妖花を連想させる薄桃色のアマリリスの花弁が周囲へとふわふわと弾ける。

その様子にベルペオルが堪えきれなくなり笑い声をもらす。

 

「くっくっく。期待してるだとさ。これはとんだ重責だねぇ?」

 

「多大なる責務、全うしてみせます。」

 

揶揄うようなベルペオルの言葉に、先ほどまでとは打って変わり整然とした態度でフェコルーは1人の庭師として答える。

 

 

 

この日より、星黎殿ではどんなに凶暴な巡回士(ヴァンデラー)でも決して暴れることの無い区画が出来た。

 

 

 

一面の花々を、守護者たる中年が世話をしているその区画を。

 

 

 

仮装舞踏会(バル・マスケ)では畏怖と敬意を持って。

 

 

 

()()が立てた看板に従いこう呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

『ゆうかりんランド』と。

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

久しぶりの投稿になって申し訳ございません。
GW中の時間を使って描いていた拙作なのですが、メインと同じくらいのご評価をいただいて感謝しかございません。

不器用な巨人さん。
巨人さんが大好きな妖花。
『彼女』は何に気づいたのでしょう。

今後も拙作をよろしくお願いします。


最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m

  • 英雄と敵の二重生活
  • 『風見幽香』な私。
  • 『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
  • 個性:斬島
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