『風見幽香』な私。   作:毎日健康黒酢生活

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血湧き肉躍る日々なんて要らない。

ねぇ、貴方達は『私』のヒミツを信じてくれる?

そんなお話。

 


棘のない薔薇

『星黎殿』の居住区の一角、城壁の壁面には蔦が丹念に這い繁って所々に色とりどりの薔薇が花咲かせている。その下を見てみれば几帳面に整地された庭園には丁度季節の花、椿や水仙、シクラメンにパンジーといった冬の物が色とりどりに咲き誇っていた。その色彩や生育のバランスはここ『ゆうかりんランド』を日頃から手入れしている庭師のこだわりや生真面目な性格が見て取れる。

 

風見幽香がフェコルーに庭の手入れを任せて早5世紀ほど、2世紀ほど前にも一度彼女がここを訪れた時よりもその区画は着実に広がっており、それでいて花たちは生き生きと葉を繁らせていた。花たちと会話するように、くるくるとあたりを踊るように、彼女はお気に入りの薔薇の模様が施された金色の如雨露を片手に水やりをしていた。

 

その様子を少し離れたところから見守る影が3つ。『祭礼の蛇』坂井悠二がゆっくりと目を閉じる。

 

『……あぁ、()()。』

 

夜にあふれる光の下、喜びの声を溢す。自身の大命の予感と共にこの日常を噛み締めて身の奥底で力を充溢させていく。

 

『流石、幽香だ。各々の植物の長所を生かしつつ、それでいて全体で見れば調和がとれている。』

 

「あら、誉め言葉は私じゃなくて長年ここのお手入れをしてきたフェコルーに言ってちょうだいな。」

 

幽香は控えていた侍従の1人、アルラウネから柔らかそうな真っ白のタオルを受け取りその身についていた泥や水気を拭っていく。

 

『この地が我に見せたかったものなのか?』

 

『祭礼の蛇』坂井悠二の首元にかけられた首飾り、炎髪灼眼(えんぱつしゃくがん)()()の神器“コキュートス”から、『天壌の劫火』アラストールが詰問する。

少年は思わず苦笑し、神として律儀に答えた。

 

『是とも否ともいえるな。なに、我の大命の行く末と我らの共通の紅世からの友人をお前に見せたくてな。』

 

『これが貴様らの愚行の行く末だと?』

 

アラストールの二言目でようやく幽香が彼の存在に気が付く。

 

「蛇さんの首元いいネックレスね、センスが無いわ。」

 

チクリと素直な悪口と共に一言。幽香はかつての因縁など露も感じさせぬほど快活に意地悪く笑う。

 

『久しいな。風見幽香よ。お前の悪癖は変わらずのようだな。お前がここにいるということは()()()()()の保険か?再び我との再戦を望むのか?』

 

もしもの時。それはつまるところ大命の致命的な、最悪の期に『炎髪灼眼(えんぱつしゃくがん)()()』を生贄とし、『神威召喚』を試み天罰神を顕現させた時。その対抗手段として紅世の神をして一敗一引き分けの戦績に落ち着かせた彼女が用心棒でこの城塞に呼ばれているのだとかの魔神は邪推するが、『祭礼の蛇』と『風見幽香』は的外れなその言葉にはじめは軽く笑い、次第に堪えきれなくなって声を出して笑いだす。

 

()()()()()気にしてるのはアナタだけよ。自惚れないで頂戴。アナタと私の格付けはもう済んだのよ。私はもうアナタに興味なんて無いわ。」

 

『我もそんな小賢しい真似は選ばぬ。もっとも、我が軍師ならばお前を顕現させるなどという愚行はさせぬよ。』

 

返答はどちらも明確な否定。その笑いに釣られるようにして2人の侍従もクスクスと笑い始める。

 

『……ならば、お前らの目的は何だ?』

 

「そうね。蛇さんの目的はいつもと変わらずのお人好しよ。私のは、、、自己満足かしら。」

 

煙に巻く幽香と祭礼の蛇の返答にアラストールは裏を読もうと思考に耽る。アラストールが手玉に取られている様子を見た坂井悠二は珍し気に“コキュートス”を見るばかりで祭礼の蛇はこれ以上の問答をする気が無いようで黙っている。幽香は少しばかり土の色が付いたタオルをウルリクムミへと返すと、3人に背を向けて自室に戻ろうとする。

 

しかし、去り際に一言、自らの侍従に言づける。

 

 

 

「アルラウネとウルリクムミ、大事な話があるからあとで私の部屋に来て頂戴。」

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

天蓋付きの大きくやわらかなベッド、華美ではないがきっちりとされた調度品、大きな鏡台、一見すると高級ホテルのスイートルームのように広く機能美にあふれた室内では3人分のポットと軽食がのせられた3段のケーキスタンドを机の上に、しばしば『太陽の畑』でも見られるようなアフタヌーンティーが開かれていた。

 

このお茶会は誰がやろうと言っているわけではないが毎月一度は必ず開かれている。

そもそも、幽香は世界中を絶え間なく季節の花を巡っており、この極東の拠点には月の半分もおらず、侍従の2人も基本的には『太陽の畑』の花たちの世話、無謀に挑んでくるフレイムヘイズや徒の撃退をする以外は特にやることが無いので人に紛れて過ごしている。

 

だが、常のお茶会と違うのはその雰囲気である。3人の間に流れる空気もピリピリとした緊張感を匂わせるものがあり、室内は薄い白桃色の炎がドーム状に形成されて、第三者が外部からの介入が全くできないようになっていた。

 

しかし、3人はいつもと変わらぬペースでお茶を飲み、談笑し、いつものお茶会と変わらない様子を演じながら()()()()()()()()()

 

侍従2人は主を気遣い。

 

主は己の心の内で葛藤し、機を探る。

 

そして、幽香が空になったティーカップをソーサーに置くと同時にポツリポツリと独白していく。

 

「アルラウネ、ウルリクムミ。貴方達を拾ったのは気紛れだったけど、この四、五百年を共に暮らして楽しかったわ。私と共にいてくれて()()()()()。」

 

主の口から初めての感謝の言葉が

 

「もう、貴方達が感じていた恩義に釣り合うナニカを私は受け取ったわ。」

 

しかし、その言葉は何処か終わりを孕んでいて

 

「そろそろ私なんかに構わず2人で生きる道に進んでもいいんじゃないかしら?」

 

それは贖罪の言葉に似ていた。

 

 

 

「今日で私達の関係を終わりにしましょう。」

 

 

 

 


 

 

 

「私、みんなに嘘をついていたの。」

 

 

 

「主として命令を一つ。」

 

 

 

「友人として『()()()』を一つ。」

 

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

総合評価5,000pt到達記念に投稿させていただきました。
完結まで残り6話です。
大筋は描き終わっているので推敲して月末までには上げて完結とさせていただきます。

13話目に風見幽香とフィレスを絡ませた理由は、フィレスが吉田に託した宝具『ヒラルダ』が和訳すると『風見』になるからっていう裏設定を明かします( ̄▽ ̄)

『私』は罪の告白をする。
終わりに向けて『私』の物語は加速していく。

今後も拙作をよろしくお願いします。

最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m

  • 英雄と敵の二重生活
  • 『風見幽香』な私。
  • 『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
  • 個性:斬島
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