『風見幽香』な私。   作:毎日健康黒酢生活

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友人を取り返しに行く。

それを阻む影が二つ。

そんなお話。

 


狭間へと、狭間から

赤絨毯が敷かれた階段を風見幽香は1人歩く。傍らにはいつも侍っていた侍従の姿はなく、楽しく語らっていた友人の姿もない。しかし、彼女は友人の本体を取り戻すために、自ら決めたことの為に、独りでも歩み続ける。

 

孤独に階段を登り切った先では冷たい夜風が彼女の髪を撫でる。

 

歩み出た先は、高所に設けられた、広い半円形のテラス。

 

見上げれば、すぐそこの空に満天の星空を塞いで黒い鏡面を縁取る『神門』が浮かんでいた。

 

その影が落ちるテラスの中ほどには三つの人影が並んでいた。

 

豪槍『神鉄如意』を担ぐ、『千変(せんぺん)』シュドナイ

 

錫杖『トライゴン』を携える、『(いただき)(くら)』ヘカテー

 

拘鎖『タルタロス』を飾る、『逆理(ぎゃくり)裁者(さいしゃ)』ベルペオル

 

友人の蛇を護る眷属『三柱臣(トリニティ)』がそれぞれ大命遂行時にしか持たない神器を片手に盟主の登場を待っていた。

 

「おや?風見殿の侍従は何処に?」

 

「あの子達には暇を出したわ。私達の主従ゴッコは終わりにしたの。あぁ、でも、あの二人はあなた達の大命に協力すると言ってたわ。ウルリクムミは戦場、アルラウネは自在式の補助に回りたいと言っていたからそのようにして頂戴。」

 

「……ご随意に。」

 

その言葉通りにすぐさまベルペオルは直方体の塊、フェコルーへと希望通りに風見幽香の元・侍従の配属先を伝える。

風見幽香と両者の関係は良好のようにも見えていたのに、この局面での関係の破綻にシュドナイが素直な疑問を訊ねる。

 

「2人に何か問題があったんで?」

 

「別に無いわ。あの子たちはよくやってくれた。だけど、……丁度、節目かなと思ったのよ。私達の関係が始まったこの場所で関係を終わらせることが一つのケジメよ。」

 

「そりゃあ、まぁ、後腐れが無いようならば俺たちは気にしませんがね。盟主殿も容れ物のミステスを気に入ってフレイムヘイズとの馴れ合いも許しているようですし、大命遂行時になって貴方達お二人は呑気なもんですね。」

 

「そのために貴方達がいるんでしょう?」

 

少しの不満が混じった皮肉を言うシュドナイに、幽香も軽口で挑発混じりの笑みを返す。

一見、一触即発のようなじゃれ合いをよそに、徒たちが静かに熱気を隠している空間にコツリコツリと2()()()の足音が小気味良く周囲に響き渡る。

 

開けっ放しの大扉の先からゆっくりと『祭礼の蛇』坂井悠二が『炎髪灼眼(えんぱつしゃくがん)()()』シャナを連れ立って歩いてくる。『三柱臣(トリニティ)』と風見幽香が道を譲り、盟主としての面が強く表れた少年がシャナの手を引いて半円形のテラスの先、謁見のために設けられたらしい、細く短く張り出した突端部へと進む。

 

やがて、盟主は眼下に見える闇の底、紅世の徒の大軍勢へと向けて喜悦の弁舌を始める。

 

それを受けた徒たちは軒昂の意気を咆哮に変え、心中の狂熱をそのままにどこまでも盟主を称え、叫び続ける。

歓声の中、最初に盟主が、三柱臣(トリニティ)、教授とドミノ、サブラク、ロフォカレ、最後に幽香がゆっくりと宙に浮きあがり、黒い『神門』へと吸い込まれるように消えていった。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

『両界の狭間』

 

『神門』をくぐったその先、そこにはあまりにも常軌を逸したものが在った。

目線の先の霞んでも見える場所でさえも大地。全てが大地という、天のない世界がそこには広がっていた。

足元には、大地が在る。

頭上にも、大地が在る。

左右にも、大地が在る。

前方にも、大地が在る。

『両界の狭間』に無理やりに作られた彼方に眠る神の本体へと続く道。曲がりくねり、内にも外にも大地で構成された道。『(いただき)(くら)』ヘカテーが『星辰楼』にて観測し、教授が座標を割り出し、盟主たる神がその権能を以てして作り上げた、『大命』へと至る細く、小さく、脆い道。それがこの『詣道(けいどう)』だった。

 

道に見えるこれはあくまで仮初の物であり、神が権能を使い無理やりに『道』として実態を作り出したあまりにか細い神体へと繋がる細い糸だ。

一度、方向を見失い巫女が指し示す『旗標』から逸れてしまったらこの『無』の大地に呑み込まれてしまうだろう。

 

そんな世界をゆっくりと確実に歩んで神体へと近づく一行だった。

 

巫女は一同を先導し、教授はせわしなく周囲を観測して回り、将軍や傭兵は黙ってその後を付いていき、中ほどに盟主と軍師、幽香が雑談交じりに散歩のように歩き、最後尾ではロフォカレがリュートを爪弾きながら高らかに歌い、フラフラと付いていた。

 

何処までも生命の気が無い世界を歩く。

 

 

 

そんな一同に突如、白色の極光と青色の弾幕群が襲い掛かる。

 

 

 

全くの予期しない攻撃だったが、歴戦の猛者であるシュドナイが豪槍を振るい青色の弾幕群を薙ぎ払い、傭兵が地面に潜り迎撃の準備をし、風見幽香が鸚緑の極光を白色の極光にぶつけて相殺する。

辺りを凄まじい衝撃と粉塵が駆け抜ける。

 

舞い上がった粉塵の煙が晴れた先には金髪金眼の幼さが見える少女が2人鏡合わせに現れた。

少女たちは一行を一瞥もせずに()()()()()を注視し、声をかける。

 

 

 

「やっほー、()()。久しぶり♪」

「本当に()()?日傘は変えちゃったの?」

 

 

 

あまりにもこの場に不釣り合いな突如として現れた、天使のような少女とエプロンの前掛けが前方で2枚重なる特徴的な青いメイド服の少女の2人組が気さくに『風見幽香』に話し掛ける。

対する、幽香も一行を顎で道の先に促し、一人で残ることを一行に伝える。

 

「私のお客さんみたいね。蛇さんには悪いけれど、先に行ってて。」

 

『あぁ、()()()。我が玉体を取り戻したら迎えに来る。』

 

『祭礼の蛇』は信頼を持ってそれに答え、一行は先へと進んでいく。

 

残されたのは3名。

 

各々が顔に笑顔を張り付け、微笑み合う。

 

片方は怪訝な表情を隠す笑みを、もう片方は懐かしい顔に偶然会ったかのような気さくな笑みを浮かべて。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

12話でも述べましたが、この世界に『幻想郷』はありません。
この2人組は一体誰なんだ?(白目)

明日も更新させていただきます。
次話のタイトル
『すばらしい君に静かな瞑りを ~ Puckish Angels~』

今後も拙作をよろしくお願いします。

最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m

  • 英雄と敵の二重生活
  • 『風見幽香』な私。
  • 『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
  • 個性:斬島
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