『風見幽香』な私。   作:毎日健康黒酢生活

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執事とかつての主人。

関係が終わって何を想うか。

そんなお話。
 



其の義は忠となり、主人は友となり…

私達の主人(彼女)は優しい人だ。

 

世間で知られるような過激な側面も確かにあるが、基本的には世界中の季節の花々を巡る、人畜無害な様相を見せることが多い。

 

初めは『義理』から始まった主従関係だった。

 

年月を経るほど、彼女の本質を知るに従い、『義』はやがて『忠』へと変化していった。

 

しかし、そんな関係もあの日、突然に終わりをつげられた。

 

新たな我らの()(よう)へ変わるために。

 

『彼女』の『()()()』のために、我と彼女はこの戦争を利用する。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

『星黎殿』の一隅、休憩所(けん)集会所たる酒保(しゅほ)がある。

今そこでは、久方ぶりに弔いの宴が開かれていた。

 

久方ぶり、というのは、およそ4.500年前に中世の一大勢力『とむらいの鐘』の敗残兵を収容した際にも、このような大人数での宴が開かれていたため。弔い、というのは、『星黎殿』の絶対守護者『嵐蹄(らんてい)』フェコルー 、『淼渺吏(びょうびょうり)』デカラビアをはじめとする紅世の徒たちのことである。

 

誰からともなく始まったその宴は自然と徒が集まり『大命宣布』の時にも並ぶ数の徒たちが所狭しと杯を酌み交わし、ある者は大声で先日のフレイムヘイズとの戦いの功績を誇らしげに語り、ある者は死に逝った者たちとの思い出を語り、ある者はこれから起こりうる世界の変化に身を任せて酔いに興じていた。

 

そんな通り道すらない喧噪で、ひどく不自然に孤立して、明らかに一歩引かれている卓があった。

そのテーブルには錚々たる面子がゆっくりと酒を酌み交わしていた。

 

暗い色のスーツに身を包む『千変(せんぺん)』シュドナイ

 

燕尾服を着た壮年の紳士『巌凱(がんがい)』ウルリクムミ

 

物憂げにショットグラスを見つめる『血染花(けっせんか)』風見幽香

 

徒たちは薄暗い照明の下、各々が好き放題に色とりどりの炎を灯し、年代や様式もバラバラの椅子やテーブルで一つの許容の下に弾けて溢れていた。

即ち、『そのテーブルに座る面子の機嫌を損なわない限りは』である。

 

当の幽香はチェイサーの水を飲み干し、ペースを変えることなくアルコール度数の高い琥珀色の蒸留酒を口に運ぶ。

そして、おもむろに卓上にあったキャンディーをボリボリと噛み砕く。

 

「…いい葡萄ね。…樽もいい。安物のキャンディーがコニャックによく合う。」

 

「飴玉を口にする風見幽香。とんだお宝映像を見せてもらった。」

 

『そう揶揄うなあぁぁー、千変(せんぺん)殿。

 こう見えて彼女は大の甘党故にいぃぃー!』

 

軽口を叩くシュドナイに若干頬に赤みを差したウルリクムミがフォローを入れるがペシャリと幽香にその頭をはたかれる。

両者の間に流れる空気は軽く、つい此間に主従関係を解消したなどという問題は無かったかのようにすら見える。

思わずといった様子でシュドナイも疑問を口にしてしまう。

 

「しかし、オタクらの関係は解消したと聞いていたんですがね?」

 

「あら?その通りよ?」

 

『然り!!!

 我らと『風見幽香』との主従関係は今や白紙いぃぃ。』

 

「まぁ、本人たちがそれでいいならこっちもいいんですがね。全く、盟主殿と言い振り回すだけ振り回して、振り回されるこっちの身にもなってくれ。」

 

呆れ気味にシュドナイは無色の酒をショットグラスで口に運んで鬱屈を酒で飲みこむ。

その様子にすっかり上気しているウルリクムミがジョッキで麦酒を呷りながら笑う。

 

「そうそう、ウルリクムミ。『()()()』の方はどう?」

 

『問題無しぃぃ!!!

 アルラウネが自在法の入手に努めており、後は時を待つのみぃぃー!!!』

 

「なら良かった。『()()()』はついででいいから、『命令』だけはちゃんと守りなさい。」

 

『御意!!!』

 

「……『()()()』??」

 

計略などを用いずにただ其処に在るだけで世をかき乱していた『風見幽香』らしくない企みの気配に、訝し気にシュドナイが問い詰める。

しかし、幽香は少し微笑むのみで言葉を返さない。

酒気が回りすっかり機嫌のよくなったウルリクムミが代わりに答える。

 

『ご安心を千変(せんぺん)殿。

 何もそちらの『大命』の支障にはなりませぬ。』

 

「えぇ。安心して頂戴。ウルリクムミとアルラウネの『壮挙』の予行演習をするだけよ。」

 

「……『壮挙』ですか。随分と懐かしい言葉だ。お前らもソカルも魅せられた中世の動乱が昨日のことのように思い出せるぜ。」

 

シュドナイの懐古の言葉にウルリクムミがかつての同僚たちの最期を思い出し、涙と共に大声で泣きわめく。

 

『うおぉぉー!!!

 ソカルぅぅぅー!

 陰険悪辣の嫌な奴だったが、その仇を討てずじまいな我を許せぇぇー!!!』

 

「うおっ!急に泣き出すなよ。ソカルの仇『極光の射手』は俺が大戦で討ったから仇は俺がとってるぞ。」

 

壮年の紳士の背中をゆっくりと撫でて慰める中年の前に薄桃色のドレスを纏った妖艶な女性が現れる。

そして、幽香に向けて不思議そうにこの状況を確認する。

 

「この痴態は何故?」

 

「ただの呑んだくれよ。煩くなってきたから部屋に運んで頂戴な。」

 

「承知。それと……、螺旋(らせん)風琴(ふうきん)の協力もあり、『()()()』の方は間に合うかと。」

 

「そう、ありがとう。」

 

短く、それだけのやり取りをしたのちに、酔っ払いのウルリクムミを机から引きはがし、「千変(せんぺん)殿、失礼します。」と挨拶をしたアルラウネはウルリクムミを連れ立って酒保(しゅほ)を後にする。

すっかり、静かになったテーブルでは機を窺っていたシュドナイがようやく話を切り出す。

 

「……『詣道(けいどう)』では何があったんですかい?」

 

そう、つい今朝まで『風見幽香』が寝たきりで意識を失っていたことに対して心配の情と、将として不測の事態に備えての情報収集の気持ちを半々くらいに質問を切り出す。

 

「それになんですかい?さっきのは?秘密の企みなんてアナタらしくもない。俺たちにぐらい話してくれよ。これでも現世での最大の徒の集団だ。助力くらいはできるはずでさぁ?ババアも盟主もそれを望んでいる。」

 

らしくもなく、捲くし立てるように言葉を並べていくシュドナイに幽香は少し困った様子を見せながらもポツリポツリと1つ1つ疑問に丁寧に答えていく。

 

「『詣道(けいどう)』では懐かしい私を知っている知己に会ったのよ。あの子たちは何処にでもいるし、どこにもいない存在だけど、ポッと涌いてきて貴方達の『大命』を潰すマネはしないから安心して。」

 

「『()()()』については()()()の問題だから私が解決するわ。助けは要らない。」

 

()があの子たちに最後にした命令だけ教えてあげるわ。」

 

 

 

()()()。この戦いを生き残れ。」

 

 

 

それっきり、幽香はもう話すことは無いと言外に席を立ち、シュドナイを残して酒保(しゅほ)を後にした。残されたシュドナイは煙に巻かれたことへの憤りを、ショットグラスを呷り、その酒精とともに飲み込んだ。

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

最終話に向けて、整理、確認、前日譚。
そんなお話でした。

今月中に完結予定でしたが納得のいく描写が出来ていないのでもうしばらくお待ちください。

今後も拙作をよろしくお願いします。

最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m

  • 英雄と敵の二重生活
  • 『風見幽香』な私。
  • 『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
  • 個性:斬島
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