『風見幽香』な私。   作:毎日健康黒酢生活

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強き者。

過去の汚名を雪ぐ。

そんなお話。
 


神話の再戦

神威召喚

 

それは紅世における『神』の降臨を要請する儀式。

代償を支払い神威を召喚された『神』は通常より強大な、己の権能に沿った力を振るうことができる。

中世ヨーロッパ。

ブロッケン山に築かれた要塞。

そこでその奇蹟の御業は執り行われた。

『天罰神』が最愛の人を犠牲にして顕現する。

その瞬間、世界はその存在を受け止めるために軋みをあげた。

 

ここに『天破壌砕』が成った。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

我の顕現と共に世界が揺らぐ。

最愛の人(マティルダ)の祈りにより、その存在を紅世よりも己が権能を強大に感じる。

怨敵である『棺の織手』アシズは討滅し、己が号砲が虚しく戦場に響くのみとなった。

しかして、その強大な力は行き場を失い己が内に激しい感情と共に荒れ狂う。

 

だが、その力をかき消すように鸚緑の極光が弾ける。

 

最愛の人(マティルダ)の祝詞により強化された我が身には傷1つ付かない。

 

だが、()()()()()()()()()()()()()()()

 

発生源へと目を向けると。

 

あの時と変わらずに獰猛なその顔に笑みを携えて我を睨み付けていた。

 

『風見幽香よ。久しいな。』

 

「えぇ、たとえこの世界に渡り来たとしても()()()のことは忘れたことが無いわ。」

 

要塞1つを容易く踏み砕く我が大きさに対比するかのようにあの日から変わらずに人型のまま矮小な姿を取る彼女に訊ねる。

 

『我らが再び争うことに何の意味がある。』

 

「意味?そんなもの無いわ。アンタがあの時、特赦なんて中途半端なマネをしてくれたせいで()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それが気にくわない。」

 

『そなたの(さが)は変わらぬようだな。』

 

「ねぇ?アンタも今燻ってるんでしょ?

 その力を、嘆きを、絶望を。

 激しく渦巻く感情をどこかにぶつけないとやり切れない。

 この期に及んで賢しらに振る舞うのなんてやめなさいよ。

 ()()()()()()

 好きなように。好きなだけ。

 気が赴くままに振るいなさいよ。

 私がソレを捻り潰してあげるわ。

 いいじゃない、あの時の再戦よ。」

 

『………。』

 

「それとも何かしら?

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()()?」

 

その言葉に我は『棺の織手』を討滅した紅蓮の炎弾を幾度も放つ。

()()()()()()()

我が最愛の人(マティルダ)を侮辱した。

怒りに任せ、その力を、神の権能たる『断罪』を繰り出す。

しかし、その先には依然としてあの女が日傘を盾にし、屹立していた。

 

「言ったじゃない。この日傘は『世界で唯一枯れない花』よ。」

 

しかし、以前とは違い、その日傘に一筋の傷が走っていた。

我が権能が強化されたとはいえ明らかにおかしい。

あの女は嘗て数十年切り結んでも傷1つ付かなかったのに。

そして、ありえない()()()()()にたどり着く。

 

『…!』

 

「あら、もう気づいたの?

 そうよ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 人を喰らう?

 なぜそんなことをしなければいけないの。

 ただでさえ殺した有象無象が付き纏ってうるさいのに。

 私は『私』だけでいい。

 アナタが強化されてるから?

 私が弱体化しているから?

 だから、なによ。

 

 ()()()()()()()()

 

 私の力が多少減ったところで。

 

 アナタが多少強化された程度で。

 

 『私』が負けるとでも思うの?」

 

挑発的な笑みを浮かべながら、その顔を歓喜に染め、畳んだ日傘を上下に動かし挑発してくる。

その好戦的な表情や強気な態度が失ったばかりの最愛の人(マティルダ)に重なる。

 

 

 

 

()()()()()()()()。」

 

 

 

 

その言葉と共にその姿が7つに分かれ、それぞれが鸚緑の極光を解き放つ。

その力の奔流を更なる力で抑え込むため我が腕を振るう。

大気が爆ぜる。

煙が晴れたときには7つの姿はそれぞれ散開しており、大小様々な存在の力の弾幕と共に、花を模した弾幕が我を包むようにして展開される。

人型ならまだしも、顕現した我には避けようのない弾幕を受ける。

その一つ一つが僅かにだが、確実に我の体表の炎を削っていく。

このままではじわじわとだが詰みに持っていかれてしまう。

その全てを打ち払うように体から熱波を放出する。

山野を巻き込みながら灼熱の炎は弾幕をかき消す。

 

しかし、その際に出来た小さな隙を縫うようにしてその身を我が灼熱で焦がしながら、7人の『風見幽香』が目の前に現れその傘に先に鸚緑色の存在の力が溜まる。

 

今までの物と比べてもその一つ一つが強大で濃い密度の物だった。

 

7人の『風見幽香』がフッと微笑み、7つの口で揃えるようにその自在法を発する。

 

 

 

 

魔砲「ファイナルスパーク」

 

 

 

 

がっあああああ!』

 

 

全身が鸚緑に染められる。

 

紅蓮の魔神の巨大な総身が削れていく。

 

己の存在が無くなっていくのを感じる。

 

そんな中、頭に浮かんだのは最愛の人(マティルダ)の姿。

 

―――そうだ。

 

最愛の人(マティルダ)の為に我は生きねば。

 

一面に散らばる灼熱の炎の紙吹雪。

 

舞咲く花弁のように見える無数の火の粉の中に隠れるようにして、紅蓮の炎がゆっくりと下に、下に降りていく。

 

尾羽打ち枯らす様に。

 

空に浮かぶ『天道宮』へ。

 

その内にある、宝具『カイナ』へと。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

その光景を見ていた徒が。

 

フレイムヘイズが。

 

その場にいた全員が紅蓮の魔神が鸚緑の極光に包まれ立ち消えて逝くのを見る。

 

しばしの静寂の後、誰がともなく言葉を溢す。

 

「おお」

 

言葉ではなく、ただ感嘆の声だけを漏らして、一人。

 

「は、ははっ。」

 

でなければ、おずおずとした笑みがあり。

 

隣にいる者と顔を見合わせ。

 

徒の声にならぬ歓声が弾ける。

 

 

『『『……―――ッッッ!!!』』』

 

 

彼らは今。

 

神話の誕生の瞬間に立ち会ったのだ。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

全ての力を使い果たし、7つの身体は1つに戻り、その身体は力を失い重力に従い落ちていく。

 

それすら気にかけず彼女は笑う。

 

「あぁ!最ッ高の気分よ!」

 

その美しい顔には『亀裂』が走っており存在の定型すら危うい。

 

だが、気にもせず()()()()に酔う。

 

―――勝者は『私』だ。

 

思うが儘に自分が狩り取った獲物を貪る。

 

灼熱の炎の紙吹雪が彼女の下に集い、紅蓮の花が咲くようにして彼女を包み込む。

 

そして、花開くように傷1つ無い『風見幽香』が現れる。

 

「空気が旨い」

 

「身体が軽い」

 

「素晴らしい!これが、勝利の味というものかッ!」

 

並び立つ者は無く。

 

挑むということは無く。

 

ただ、生まれながらにして強者だった。

 

しかし、初めて挑戦し打ち勝った。

 

全てを噛み締め、空を舞う。

 

その充足感と共に。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

作者がゆうかりんファンになったのはとある東方projectの二次創作が原因なのですが、その作者様が評価や意見などは要らないというので、こうやってぼやかしてお伝えさせていただきます。
今でも時折見返すのですが鳥肌が止まりません。
その作品は至高の作品だと作者は考えています。
皆さんがあの作品に出会ってれば嬉しいものです。

完全捏造ストーリー。
しかして、物語の大筋は変わらず。
得たものは『彼女』の勝利。

今朝日刊ランキングを見たら8位と10位の同時ランクインをしておりました。
ダブルランクイン、24時間UA100オーバーという作者史上初めての快挙。
これもみなさんのご声援のお陰です。
色々と甘いところが多い作者ですがこれからも応援いただけると嬉しいです。
今後も拙作をよろしくお願いします。

最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m

  • 英雄と敵の二重生活
  • 『風見幽香』な私。
  • 『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
  • 個性:斬島

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