URO 〜宇宙記録機関〜   作:外道男

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牛飼

はいどうも新人さん。

新世界管理係の牛飼っす。

気軽にうっしーとでも呼んでください。

顔がボコボコなのは心配無用っす。

良くある事っすからね。自分が係長にしばかれるの。

 

「良くある事じゃ困るんだよー?」

 

はい、すんません。

ああ係長、例の‘穴埋め’の書類作ってますんで。

 

「ういうい。……オッケー!確認しました。それじゃ休んで良いよ、って言う所なんだけどさ、フライングしてるからまだ駄目でーす」

 

うえっ!?マジっすか。

 

「マジっすよー、あはは。私ちょっと準備するから、新人くんにウチの係の業務内容を説明してあげてよ。うっしー、説明得意そうな顔してるし」

 

どんな顔っすか……。

まあ、分かりました。

 

ええっと。じゃあ新人さん。

もうこの組織の仕事は聞いてるっすね?

宇宙全体の事象を観測して、壊れないように保存するのが一番の仕事っす。

 

そこから様々な業務に細分化するんすけど、自分らみたいな末端まで数えると正直幾つ部署があるか分かんないっす。

係長、ご存知っすか?

 

「多分、億は超えてるんじゃない?組織の広さイコール宇宙の広さって言われてるし」

 

うへえ、考えるだけで恐ろしいっすね…。

ああ、それでウチの部署の説明でしたね。

 

新世界。

この宇宙には、そう呼ばれる世界が在るっす。何の事かと言うと、凄く簡単に言えば“物語の世界”っす。

 

新人さん、転生採用でしたら何となく想像付くと思うんすけど、小説とか漫画とか、映画・ドラマ・アニメ。

そう言った物語が多くの人間に認知されるとですねえ……なんと、世界が新たに作られるっす!

こうした新世界も宇宙の事象(データ)の1つとして認められるらしいので、それを管理する部署が必要となったんす。つまりウチの部署っすね。

 

「そう言うわけで、仕事を覚えてもらうために早速やって貰おうかな?新人くん、はいコレ着けて。おっけーおっけーピッタリみたいだね」

 

ええと、今着けて貰った腕輪は社員証っす。

仕事をするには必ず必要な貴重品っすね。

 

「失くさないようにね〜。と言うか一度付けたら絶対外れない呪いのアイテムなんだけどね!あはは。てな訳で仕事をしてもらうんだけど、やっぱり先ずは“穴埋め”だよねー」

 

そうっすね。

新人さんが今からやるのはウチのメインの仕事と言っても過言じゃないっす。

 

新世界は宇宙にポコポコ湧き出てくるんでなるべく早く見つけてウチで管理する必要があるっす。

もし発見が遅れると“とある事象”によって世界の構成情報の欠損、‘穴’が空いてしまうっす。とある事象についてはまた別の機会に話すっす。

 

穴が空いたままだと新世界はいずれ壊れてしまうっす。

だから自分らはその世界に赴いて欠けた情報を修復しないといけないっす。

これが通称“穴埋め”っす。

 

「そう言う事で!タイミング良く穴埋め案件が舞い込んで来たので、新人くんには穴埋めに行ってもらうよん。……ん?もしかして緊張してるかい?」

 

いきなり仕事任されたらそりゃあ緊張するっすよ。

まあ、そんなに気負う事じゃないっすよ。

仕事といってもやる事は現地で1週間ほど滞在してもらうだけっすから。

 

「そうそう。世界の修復自体はねー、君が今着けてくれた腕輪(社員証)が勝手にやってくれるからさ」

 

自分らの仕事は最初にも言ったっすけど、事象を観測する事っす。

だから、新人さんは滞在期間中にその世界がどんな物語か、どんな状況かを纏めてくれるだけでいいっす。

 

「慣れてなくても問題は無し!上手く纏めきれなくても世界の修復さえ出来ちゃえば後から何回でも調査できるしねえ」

 

そう言う事なので気楽にやって来て下さい。

あ、そうだ、1週間って言うのは世界の修復に掛かる時間なので、少なくとも1週間は現地で暮らす事になるっす。

 

「君が現地で問題無く暮らせるように腕輪からのサポートも有るから心配しなくても良いよ!準備は良いかー?……よしよし良い返事だ!それじゃあ係長権限で、新人くんの新世界穴埋め業務への着任を承認します!行ってらっしゃ〜い!」

 

 

 

 

 

 

 

「そわそわ」

 

 

………ぐー。ぐー。ぐー。

 

 

「そわそわ」

 

 

………ぐー。ぐー。んがっ?

 

 

「そわそわ」

 

 

……あー、係長?

 

「ふわっ!?んんっ。何かなうっしー?」

 

そんなに気になるなら新人さんの様子を確認したらどうっすかね。こないだ技術部から任務先を見れるモニター貰ったって自慢してたっすよね。

 

「うっしーがそう言うなら、ちょっと見てみようかっ!うんうん!君も新人くんの事が気になるよね!ね!」

 

はあ。そうっすねー。気になるっすー。

 

「そうだろそうだろ!そんなにうっしーが気になるなら仕方がないね!モニター隣の部屋に置いてあるから持って来てー」

 

ういーす。(過保護っすねえ…)

 

 

 

 

 

 

はい、電源繋ぎましたよ。

これで向こうの様子が見れるんすね。

 

「そうともさ。さてさて、新人くんは何してるかなー?ポチッと。………あー、あはは、あれ?」

 

 

うーわー……。

新人さんにコレはキツいっすよ係長…。

 

「いやいやいやいや、知らなかったとも!?着任するまで向こうがどんな世界か分からないのうっしーも知ってるだろ!?」

 

知ってますけどね。

 

いやあ、初任務でいきなりゾンビパニック物とは恐れいったっす。

 

「帰ってきたら新人くんに謝ろっか」

 

そうっすねー。

あれだけ楽な仕事だってうそぶいてたんすから、ちゃんと謝った方が良いっすよ、係長。

 

 

「うっしーも謝るんだよ!」


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