____声が聞こえる
「____お__」
「___は__やく」
「__________おき、ろ」
「おーい…起きろ〜、朝だぞ明(あきら)」
意識が覚醒した
「…おはよ…兄ちゃん」
「あぁ、おはよう。顔洗ってからリビングにおいで?入学式なんだから急ぐんだよ」
実の兄ながら非常に整った顔をしていると常々思う
その遺伝子を受け継いだので自分の容姿がこの世界でも見劣りしないほど良いものであるのはわかっている
「…ん」
そう、目の前に居るのが私の兄「四宮 冬弥(とうや)」
いや俺の兄だ
俺は「四宮 明」
今日で中学1年生になる
そして、「転生者」だ。
だが、俺の場合は車に轢かれそうな猫を守ってトラックに轢かれたとか、神様がやって来て「ごめんね、殺しちゃった☆次の人生行ってらっしゃい!」とかではなかった
単純に目が覚めたら少年になっていただけだった。
病室にやって来た兄が言うことには母と父と車に乗っていた俺は事故にあい、母と父は死亡。俺は運良く生き残ったらしい
俺は事故のショックで記憶を失ったことになっている。なんという可哀想な子供だろうか
目が覚めたら異世界。とか何処のテンプレノベルだ?
元は女だったが、男っぽい性格だとよく言われていたし、性別に対しての興味もないのでそこについてはなんの問題もない
「!やば!入学式から遅刻はない!」
急いで顔を洗ってリビングに行くと香ばしいトーストが用意してあった
「いただきますっ!」
「はい、どうぞ。明、僕は今日仕事で遅くなるから帰ったら冷蔵庫の中のご飯食べてから寝ててね」
「ん、わかっは、きほつけへね」
「…もう…口に入れたまま喋らない」
呆れ笑いで新聞を読んでいる兄が焼けばただのフレンチトーストですらイタリアン料理かと勘違いする程である
これが才能か…と世間の現実を知ったところで水で喉を潤した
父と母が居なくても寂しい思いはしたことが無いし、不便なことも無い
俺の為に働きながら面倒見てくれて家事までしてくれる兄には頭が上がらない
全ては兄のお陰で、感謝しているし尊敬している
「兄貴…いつも、さんきゅ。行ってきます」
柄にもなく気恥ずかしいことを口にして逃げるように扉から飛び出した
いざ、入学式!ってね
___________________
「…あーあ、「兄ちゃん」は卒業かぁ。「兄貴」でも明が可愛いのには変わりないんだけどね」
閉まったドアの前で頬を緩ませて綺麗に笑う冬弥は体の向きを変えてリビングに戻った
右手にある父と母の遺影に笑いかける
「明は、貴方達が居なくても立派に育っているよ」
そして、こちらを見つめる写真立てを勢いよく倒した
____バリン!
「…………ありがとう母さん、父さん。」
「簡単に死んでくれて」