目が覚めたら男になっていて個性のある日本にいた   作:Re.

2 / 2
友達100人できるかな

___名部中学校 【入学式】

 

と書かれた看板を潜り抜け体育館に向かう

 

今日は体育館でセレモニーを行ったあと、各自の教室に移動して軽い説明の後解散になる

 

「…ふぅ、長かった〜」

 

校長先生、PTA会長の長ったらしい式辞も終わり教室に移動する

 

俺は…1組か。

 

ガラッと扉を開けると数名がちらほらと席に座っていた

 

黒板を見ると名前と席が記されている

 

「うわ、ラッキー!窓側の1番後ろじゃん」

つい声に出すと窓際の1番前の男子が笑った

 

「まじかよ、羨ましー。変わりたいわ」

 

「まぁ1番前はつらいね」

 

「そうそう。寝てたら即バレ!あ、俺は中田類。よろしくー」

 

「俺は四宮明。よろしく中田」

 

軽い挨拶を交わし席に着く

 

左にはグラウンドが見える。いい眺めじゃん

 

窓を開けると心地よい風邪が吹いてきて、瞼が下りる

 

先生はどうせまだだろうし、軽く眠るか

 

うつ伏せになっていると大分教室が賑わい始めた

 

ほどよく明るい子がいるみたいだ

 

隣から聞こえた椅子を引く音につられてうつ伏せの頭を上げて右を見る

 

パチッと紫の瞳と目が合った

 

「…おはよ?」

 

「………っ!く、おはよう」

 

謎の挨拶に何かが目の前の少年のツボにハマったらしく笑いを堪えながらも挨拶してくれた

 

「笑いすぎな。改めまして、四宮明です。隣の席だし仲良くしてくれ」

 

「っ、ごめん。心操人使。…よろしく」

 

知ってる名前だ。確か雄英体育祭に出てきたキャラである

 

だが、今はただの人間。キャラ呼びは失礼なので心操と呼ばせてもらおう

 

先生が来て軽いガイダンスが始まる

 

あっさりと話は終わり、12時になったら各自解散でそれまではみんなで仲良くなるのに使えよ〜

 

とあっさりと職員室に帰って行った先生の言葉通り

 

教室のあちらこちらで自己紹介が起きている

 

俺は窓際の端なので前の女の子と軽く話していたが、心操は周りや隣の人から集中攻撃を受けていた

 

「心操人使、よろしく」

 

拙い挨拶が聞こえてきて、つい笑ったら前の女の子は不思議そうにしていた

 

たどたどしく返事をしていた心操はある質問で固まった

 

「なぁ、お前の個性なに?俺は炎!」

 

黙り込む彼を不思議に思ったのか、もう一度詰め寄った

 

「…洗脳。問いかけに返事をした人を操れる」

 

ついつい女の子を蔑ろにして右を見た

 

有能で使い勝手のいい個性だ。不意打ちには死ぬほど強い

 

個性の価値は計り知れない

 

「…え、やばっ!」

 

「洗脳とか、まじで敵向きの個性じゃん」

 

「うわ、やりたい放題だろ」

 

口々と出る言葉に明は軽くため息をついた

 

やっぱりただの中学生にはその考えしかでないか

 

「…俺は、ヒーロー志望だから…そんなことしない」

 

暗い表情ながらもしっかりとそう宣言した彼に口角が上がった

 

 

____うん、コイツのこと好きだわ。気に入った

 

「いいね、なれるよヒーロー。…心操みたいなのがなるべきものだと思うよ英雄は」

 

横から口を挟んだ俺を見て心操を取り囲んでいた男子達は目を見開いた

 

「いや、でもさヒーロー向きの個性じゃなくない?」

 

「聞くけど、ヒーロー向きの個性ってなんなの?強い個性?戦闘向けの強化系?敵には強い個性持ちなんていくらでもいる。でも、そいつらがなんでヒーローじゃなくて敵って呼ばれるんだと思う?」

 

_____人を傷つけるからだよ

 

 

「ヒーローになるために必要なのは力だ。でも大事なのはそれじゃないんじゃない?多分それはオールマイトが1番持ってるものだと思うよ。『人を救いたいっていう心』だろ」

 

「だからなれるよヒーロー。心操は持ってるから」

 

職業としてのヒーローじゃなくてホントの英雄に

 

 

「うわ、くさくてかっこいいセリフはいてんなよ、四宮!」

 

ちょうどいいタイミングで中田が茶化してくる

 

「うるせぇよ」

 

「あ!もう12時だぜ!はい、各自解散!」

 

静まりかえっていた教室は中田の声で賑やかさを取り戻し男子達はそそくさと荷物を用意して教室を後にした

 

「四宮、俺って気が利くと思わない?褒めてくれてもいいぜ?」

 

「…席は変わんねぇから」

 

「さすがにそれは諦めてるって!」

 

どうでもいい会話をしかけてくる中田は無視して、貰ったプリントを荷物に詰め込む

 

「…なぁ」

 

肩に手を置いた心操に返事するように首から上を横に向ける

 

「ほんとに…なれると思うか。「洗脳」で」

 

手に真新しいカバンを持って去り際に背中をバシッと叩く

 

「!?」

 

「…なれるじゃなくて、なるんじゃないの?また明日」

 

 

後ろから聞こえてくる「なるさ!…四宮また明日!」

 

初めて聞いた大きな声に手を振って廊下を歩く

 

 

 

「うん、良い友達が出来そうだって兄貴に言わなきゃね」

 

 

 

 

______________

 

黒板を見ると窓際から2つ目の席だった

 

隣の席は男で、うつ伏せになって寝ている

 

日光に照らされて髪は金色に見えたが色素が薄いだけで茶色っぽいのに気づいた

 

椅子を引いて何となく左を見ると目が合った

 

その翠に何となく視線が逸らせなくて

 

整った顔にモテるんだろうなとぼーっと考えた

 

そこから出る寝ぼけた挨拶につい笑ってしまった訳だが

 

 

個性の質問。「洗脳」という個性はこういう時に不便だ

 

聞かれたことを答えることがこんなに嫌なのは何故だろう

 

「敵向き」「怖い」知ってるよ。そんなの。

 

それでもヒーローになりたいんだよって言える勇気はないから

ただ下手くそな愛想笑いで話を終わらせれば今日も終わる

 

はずだったんだが

目を逸らした先に翠の目があって

ついつい口に出していた「俺はヒーロー志望…だから」

 

口から出てきた言葉に自分が一番驚いた

 

何よりも驚いたのは四宮が言った言葉だった

 

「ヒーローになれるよ」

 

初めて肯定された。

 

ここが俺のオリジン

 

これから3年間、腐れ縁とも言える仲間と一緒に雄英に行くことになるとは今の俺は知らなかった

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。