お目汚し失礼します。
此処は人間が存在してはならない、非現実の世界ーミラーワールド。
ありとあらゆるものが反転し、生物と呼べるものは一つも存在しない無音の空間。しかし、そんな場所で戦う者たちがいる。
山奥にある廃墟。ここに足を踏み入れる三人の影があった。
「こんな所に隠れてやがったか。よし、一気に片付けるぞ」
若者らしい服装に身を包んだ三人。
その内のリーダー格らしい男が廃墟を見やると後の二人に呼び掛ける。
彼の名は芝浦淳。かつてあった歴史でライダーバトルに参加していた男である。
彼らはポケットからライダーの力の源、カードデッキを取り出し目の前に掲げる。すると何処からともなく装着ベルト・Vバックルが自動的に腰に取り付けられる。
それぞれのポーズを取ると三人は同時に叫んだ。
「「「変身!」」」
デッキをベルトに装着するとたちまち光に包まれ、三人は仮面ライダーに変身していた。
頑丈な甲羅と鋏が自慢の仮面ライダーシザース。
そこかしこに虎の意匠を凝らし白銀に輝く斧を構えた仮面ライダータイガ。
そして、芝浦淳が変身した強靭な鎧を身に纏い、頭部と左肩に鋭い一本角が伸びる戦士、仮面ライダーガイ。
三人は廃墟の前に佇むとデッキからカードを引き抜き、それぞれのバイザーに読み込ませ効果を発動させた。
『『『ADVENT』』』
黄金の蟹、ボルキャンサー。
獰猛な白虎、デストワイルダー。
そして、鋼鉄の装甲を持つ犀、メタルゲラス。
召喚された三体の契約モンスターは廃墟に向かって跳躍し、中にいるであろう住人ーではなく近くの茂みや木陰を漁りだした。
すると隠れていた無数の野良モンスターが炙り出される。
「へっ!出てきやがったぜ!」
シザースが鋏を構えて嬉々として叫ぶ。
ガイ達は大量のモンスター達と交戦を始める。
モンスターの種類はイモリ型モンスターのゲルニュートとヤゴ型モンスターシアゴースト。
一体一体はさほど苦では無いものの、その数により一筋縄では行かない。
ガイはカードデッキから一枚取り出し、モンスター達を組み敷きながら華麗に左肩のバイザーにカードを投げ入れる。
『STRIKE VENT』
すると、空からメタルゲラスの頭部を模した突貫武器、メタルホーンが右手に装着される。
その自慢の鋭い角でモンスター達を次々と捌いていく。
シザースとタイガも同じくそれぞれの近接武器を召喚し、戦いを有利に進めていた。
シザースは巨大な鋏、シザースピンチを用いてモンスター達を切り裂いていき、タイガは両手に備えたかぎ爪、デストクローで敵の身体を抉っていく。
しかし、モンスター達も黙ってはいない。一人に対して複数で襲いかかる連携を見せ、相手を翻弄していく。そして、タイガがその猛攻に怯んだ隙にゲルニュート達は背中の十字手裏剣を、シアゴースト達は口から数多の毒針を発射し、タイガに攻撃を集中させる。
容赦無い攻撃にタイガは反応できず、彼の周りを細かい粉塵が舞っていった。
モンスター達が攻撃を止め、自分達が仕留めたであろう獲物に目を向ける。しかし、煙が晴れると無傷のタイガの前に人影があった。
「悪いな。近くに俺がいるぜ」
タイガの前に立ちふさがっていたのは他でも無いガイであった。
その装甲には傷一つ無く、一切動じる事無く仁王立ちのままメタルホーンを構える。
すると、それを合図に彼の相棒であるメタルゲラスがモンスター達の横から突進し、一気に薙ぎ払っていった。
「今だ、戸塚!」
ガイに呼ばれるとタイガはすかさず一枚のカードを装填する。
『FREEZE VENT』
メタルゲラスによって一箇所に固められたモンスター達がタイガのカードの効果によってその動きを止める。
「悪い芝浦、助かった」
タイガが礼を言うと、ガイは横目を向け無言でグーサインを掲げた。
そして、動けぬモンスター達に向かって今度は親指を下げ、宣言した。
「てことで、お前ら全員死ねよ。行くぞお前ら!」
「「おう!!」」
一気に畳み掛け最後の切り札を使用する。
『『『FINALVENT』』』
デストワイルダーが一体の不動のモンスターを引きずっていき、動けない他のモンスター達にぶつけながら進んでいく。激突するモンスター達は次々と砕け散っていき、最後に待ち構えていたタイガが両手の爪でデストワイルダーが引きずってきたモンスターを持ち上げ、冷気を流して仕留めるークリスタルブレイクが決まった。
シザースの背後にボルキャンサーが現れ、頭上に投げ飛ばしてもらうと、その勢いで身体を丸め降下し、モンスターの群れに向かって回転技ーシザースアタックをお見舞いする。
ガイはその場で跳躍すると後ろから駆けつけてきたメタルゲラスの頭部に垂直に着地。まるで巨大な角を表すように突進する必殺技ーヘビープレッシャーを炸裂させ、残りのモンスター達を一掃した。
「よっしゃ、これで(モンスター達を)片付けたな。お前ら行くぞ」
戦いを終え、変身を解いた彼らは廃墟に目もくれずくるりと方向を変え歩を踏み出す。
芝浦は廃墟の方を向くとポツリと呟いた。
「あんまり長居し過ぎんなよ。いつも助けてやれる訳じゃねえんだから」
そう言ってその場を去っていく。
そんな彼らを静かに見つめる者達がいたのを芝浦は気付かなかった。
・・・
芝浦達は近くにあった休憩所に腰を下ろしていた。
こうしてあらゆる場所を転々としながら、モンスター達を退治していくのが彼らの日課であった。
「でも、いいのかよ。最後の一人にならねぇと此処から出られないんだぜ?」
シザースに変身するスカジャンを着た若者、石橋は芝浦に疑問を投げかけた。
最後の一人にならなければミラーワールドから出られない。しかし、今自分達がやっている事はそれに反する行為である。その質問に対し、芝浦は何でも無いように答えた。
「あぁ?だってよ、こっちの方が楽しいじゃねえか」
嘘偽りの無い真っ直ぐな目で話す。
「最後の一人になるまで殺し合わなきゃならねぇんなら、そのルール自体をぶっ壊す。他のライダー倒すより、この戦いを仕組んだやつぶっ飛ばす。そっちの方が断然面白くねぇか?」
余りにも漠然とした事を何の躊躇いも無く芝浦は語る。しかし、その言葉を二人を否定しなかった。
「それにな、よく思い出すんだよ。あの言葉を」
「あの言葉?」
石橋が復唱する中、芝浦は続ける。
「あぁ。俺も記憶を失ってるが、この言葉だけは覚えてる。"戦いはゲームじゃない"ってな。誰が言ったかは知らねーが、今はそれに従ってみようと思ってな」
そう言って芝浦は懐かしさを感じ口元を緩ませた。そんな芝浦を見て石橋は答えた。
「へー、ま。俺達もアンタに助けられた恩があるからな。何処までも付きやってやるよ。なぁ?」
先程芝浦に助けられたタイガの変身者である坊主頭の青年、戸塚も石橋に同調した。
・・・
目覚めた時、芝浦淳は他の者達と共にこのミラーワールドに閉じ込められていた。
謎の女性、サラによってライダーバトルの開戦が告げられ、現れたモンスターと変身して戦いを始めた一部のライダー達の混乱によって芝浦は直ぐ様その場を離れて建物の陰に身を潜めていた。
「はぁ…はぁ…、何だよあれ…」
そんな芝浦の背後に何かが近づいてくる。気配を感じた芝浦が振り返ると、其処には一体のモンスターが佇んでいた。
「…メタルゲラス」
芝浦は何故か脳裏によぎった名前を呟いていた。
するとその言葉に答えるようにメタルゲラスは芝浦の足元に跪いた。
その頭に手を触れると、ポケットの中に違和感を感じ、中に入っていたものを取り出した。
それはライダーに変身する為の道具であり、この世界で生き延びる為の命綱、カードデッキであった。
目の前のモンスターと同じ犀のシルエットが象られたデッキを見つめ続けると、不思議と懐かしさを感じた。
芝浦は自分に懐くモンスターに向かって不意に話しかけた。
「お前…俺と一緒に戦ってくれるか?」
すると、メタルゲラスは立ち上がり咆哮を一声上げた。
その反応に満足した芝浦は、にやりと笑うとメタルゲラスを背にデッキを目の前で掲げた。自然とその使い方は分かっていた。
何処からとも無くベルトが現れると、自動的に腰に巻かれ、芝浦は拳を胸の前に構えると力強く叫んだ。
「変身!」
芝浦の体は光に包まれ、彼は再び仮面ライダーガイとして戦う事となったのだった。
・・・
そんな事を思い出していると、近くにまたモンスターが現れ芝浦達を襲撃してくる。
このミラーワールドに彼らライダーを除いて生物はいない。故にモンスター達の格好の餌でもあり、ライダー達はモンスター達にも常にその命を狙われているのだ。
芝浦達は再び変身して迎え撃った。
イカのモンスター、ウィスクラーケンとバクラーケンと戦闘する中シザースがガイに話し掛ける。
「懐かしいな。こいつらを見ると、あの時を思い出すぜ」
・・・
この世界に連れてこられたばかりの頃、状況が飲み込めない石橋はライダーになれずにモンスターに襲われそうになっていた。しかし、そんな石橋をモンスターから助ける者がいた。
「大丈夫かよ?」
右手に構えた巨大な角でモンスターを吹っ飛ばし、石橋に駆け寄るガイ。
石橋もまた、芝浦に命を救われたのだ。
・・・
シザースピンチで触手を切り裂き、デストクローで身体を引き裂き、メタルホーンで貫いてトドメを刺す。
迅速な対応で一瞬にしてモンスターを倒した。そのチームワークを実感したガイは二人に向き合うと改めて宣言した。
「お前ら…俺たちでこのライダーバトルをぶっ潰す!」
「ああ!」「やってやろうぜ!」
三つのストライクベントを合わせると自分達の決意を誓った。
・・・
5日目…残り2日
野良モンスターや他のライダーを探しながらライダーバトルを破綻させる方法を模索する芝浦達。車を走らせ、無人の大通りに出た時、何者かの急襲を受ける。
「何だ!?」
車を降りると水色のボディに身を包むライダー、アビスが立っていた。
「最後の一人になる為にも、まずはお前達から始末する!」
二対の鋸、アビスセイバーで芝浦達に襲い掛かる。
「よく俺たちの前で戦おうと思ったな」
しかし、彼らは動じる事なくデッキを構えて戦闘態勢に入る。
「「「変身!」」」
ライダーの姿に変えると見事な連携で逆にアビスを追い詰めていく。両手の武器を大きく振るうもそれぞれシザースの鋏とタイガの斧に止められ、ガラ空きになった胴体をガイの角が突き、遠くまで吹っ飛ばす。
拉致の開かないアビスが遂に奥の手を使う。自身を象徴する鮫のレリーフが大きく描かれたカードをデッキから取り出し、左手についた鮫型のバイザーで読み取る。
それに気付いたガイがすかさずデッキから一枚引き抜き、間髪入れず左肩に挿入する。
『FINAL VENT』
『CONFINE VENT』
何も起こらない。焦るアビスの隙を逃さず三人が同時に武器を振るう。余りのダメージにアビスの変身は解除され、中年の男性に戻る。
「残念だったな。俺のカードはどんな効果も無効にするんだ」
自慢げに自身の左肩を指差す。しかし、そう言うと三人は構えていた武器を下ろし男性に近づく。
「だが、俺らは他のライダーを倒すつもりは無い。この戦いを仕組んだ奴をぶっ潰すために戦っている。アンタも一緒に来ないか」
そう言うとガイは手を差し出した。
意外な状況に男性は言葉を飲むが、ガイ達の後ろを見ると突然目を見開き、恐怖で顔を歪ませる。
危険を察した三人が振り返ると、そこには巨大な紫の大蛇、ベノスネーカーが向かってきていた。三人を薙ぎ払うと怯える男性を一瞬で頭から飲み込んだ。
突然の事態に息を飲む三人の前から悠々と歩いてくる存在が現れた。
「どうした…?戦いを続けろよ…」
先程現れたモンスターの主にして、最も危険なライダー、王蛇が立っていた。
彼の存在は当然認知しており、度々遭遇しては下手に干渉せず撤退を繰り返していた。しかし、今回はそうは行かなかった。
反対方向から重火器を武装した緑のライダー、ゾルダがその手にマグナバイザーを構えていたからだ。
いつからか王蛇に手を貸すようになったこの男の存在によって、ガイ達は王蛇との交戦を余儀なくされた。
『SWORD VENT』
王蛇がベノサーベルを召喚し舐め回すようにガイ達の方を向くと、怒号を上げ襲い掛かる。
覚悟を決めたガイ達は武器を構えて王蛇を迎え撃つ。
先程のアビスと違い、王蛇はまるで猛獣の如く荒々しさで暴れ回る。その動きは予測不能であり、三人掛りなのにも関わらず防戦一方であった。さらに、少しでも隙を見つけ反撃を狙ってもゾルダの援護がそれを許さない。
ガイが狙撃され怯んだ隙に逆に王蛇に標的にされ、その切っ先に猛毒の塗られた武器を何度も何度も叩き付けられる。
余りの攻撃の連続で地面に転がされたガイを王蛇は逃がさない。
ベノバイザーを取り出し、カードを一枚取り入れる。
『FINAL VENT』
最早死刑宣告に等しい電子音が鳴り響き、再びベノスネーカーが現れると王蛇はガイに向かって駆け出した。ガイの目の前で跳躍するとベノスネーカーの眼前で宙返りをし、放たれる毒液の奔流に乗って必殺キックーベノクラッシュを発動する。
満身創痍のガイは咄嗟に反応できず、呆然と立ち尽くしてしまっていた。その間にも紫の毒牙はガイに迫っている。
「危ない!」
王蛇の射線上にいたガイをタイガが庇う。
ガイが受けるはずであった怒涛の連続蹴りを諸に食らったタイガは、毒液に塗れながら数メートル先に吹っ飛ばされる。
「戸塚!」
致命傷を負い呻くタイガが戸塚に戻る。
「お前…何で」
ガイが駆け寄ると、戸塚は息絶え絶えに立ち上がると、笑みを浮かべグーサインを掲げた。
思わずガイが絶句する中、戸塚は粒子となって消滅していった。
「…ぁあああ!!」
仲間を喪った衝撃に一瞬我を忘れたガイはよろよろと立ち上がると、王蛇に一矢報いる為に殴り掛かる。しかし、当然王蛇に躱され逆にあっさりと組み敷かれる。
「お前もさっさと…消えろ」
王蛇がベノサーベルを振り上げた矢先…
『ADVENT』
無数のガゼル型モンスターが辺り一面に現れ、王蛇を妨害する。
遠くにいるゾルダにも襲い掛かり、射撃も一切物ともしない。
「今です!手塚さん!」
そんな中ガイとシザースの前に三人の影が立ち塞がる。
「木村!二人を連れていけ!」
「分かった!しっかり掴まってろよ」
『CLEAR VENT』
その内の一人がカードを装填した後二人に駆け寄った。肩に触れた瞬間ガイ達は透明になり、助けに来た本人に連れられて撤退した。
ガイ達の安否を確認すると、残る二人もモンスターを使って王蛇を撹乱させ姿を消した。
「逃げるなぁぁぁぁ!!戦えぇぇぇぇぇ!!!」
獲物を見失った王蛇は込み上げる怒りを手当たり次第周りの物で発散した。
・・・
芝浦達は、前にモンスター達を一掃した廃墟の中にいた。
そこで活動しているのが、今しがた王蛇の手から芝浦達を助け出した手塚海之こと仮面ライダーライア率いるライダー達三人だ。
「無事で良かった」
手塚がそう呟くが、対する芝浦は疑心暗鬼に陥っていた。
「あんたら、何で助けた…?」
「まぁ、この前この辺りのモンスターを倒してくれた恩があるからな。それにあんた達とは協力したいと思っていたんだ」
芝浦の方を向きながら手塚は続けて語る。
「俺達も他のライダーと戦うつもりはない。何とかして、戦わずにこのミラーワールドから出られる方法を探している。お前達も手を貸してくれないか?」
「…あんた達のメンバーってこれだけか?」
芝浦の問いに、先程彼らをここに連れて来た仮面ライダーベルデの変身者、木村が答えた。
「いや、まだいるさ。そろそろ"あいつら"も来るはず何だが…」
木村は窓から外を見下ろし、当の本人達を探す。
「それにさっきの浅倉威から身を守る為にも仲間は多い方が良いですし…」
もう一人のライダー、インペラーに変身する石田が話を引き継いだ。
「浅倉…威…」
先程の出来事を思い出し、芝浦の目に憎悪が灯る。
「悪いが…俺はお前達とは組まない」
そう言って立ち上がると廃墟を出ようとする。そんな芝浦を石橋が慌てて止める。
「おい、何でだよ芝浦!」
「石橋。お前は此処に残れ」
芝浦は振り向くと石橋にそう告げた。
「ライダーバトルを潰すのは俺一人で十分だ」
有無を言わさず、出口に向かって歩き出す。すると、手塚がおもむろにコインを弾き手の平で受け止める。その結果を見て芝浦の背中に語りかけた。
「芝浦淳…と言ったか。お前に危機が見える。無茶をするな」
芝浦が振り返る。しばらく沈黙した後、口を開いた。
「占いか…?人の心配してる場合じゃないだろ」
立ち去る芝浦を石橋は不安げに見送った。
・・・
人気のない薄暗いトンネルを芝浦は独りで歩いていた。当てがある訳ではない。しかし、戸塚を失った責任を感じる芝浦にはこれ以上誰かを巻き込む訳には行かなかった。
その時、ミラーワールド特有の金切り音が響き渡りトンネル内にあるミラーが歪んだ。
現れたのはこのライダーバトルを仕組んだ張本人、サラであった。目的の相手が不意に現れた事で芝浦は思わず動揺してしまう。
「あんた…」
「ルールの変更を伝えます。戦いを早めて下さい」
しかし、そんな芝浦に気にすることなくサラは淡々と内容を告げる。その反応に芝浦の心は徐々に憤っていく。
「悪いがこのライダーバトルはやめさせてもらう。このゲームは俺が終わらせる」
「時間がありません。早く最後の一人を決めてください」
しかし、やはり聞く耳を持たないサラ。まるで事務的、いや最早なり振り構ってられないといった具合なのだが、対する芝浦の方も悠長にしている場合では無い。
「だったら力付くで止めるまでだ」
芝浦はサラの映るミラーに向かってデッキを掲げた。ベルトが装着され、拳を強く握ると変身ポーズを取った。
「変身!」
ガイに姿を変えると直ぐにメタルホーンを取り出し、サラに向かおうとする。
そんなガイの首に何かが巻き付く。
「!?」
思わず振り向くと、その視線の先には天井に張り付いた巨大蜘蛛ーディスパイダーが糸を伸ばして待ち構えていた。
地面に降りるとさらに腕、足に糸を巻き付けジリジリとガイを引き寄せ始める。突然の出来事にガイも対処出来ずにいた。
「ぐ…離せよ…」
ディスパイダーの糸に手繰り寄せられるガイ。獲物を引き寄せる為ディスパイダーが前足を持ち上げようとした矢先、
「芝浦ッ!」
間一髪でシザースがガイの糸を切り裂き助け出す。
しかし、その鋭い爪まではどうする事も出来なかった。
ガイと入れ替わるようにシザースがディスパイダーに掴み取られる。
「ぐああああああ!!!」
「石橋ッ…!!」
下半身から喰われ始めるシザース。途中でその強靭な顎によってデッキが砕かれ、生身の身体に戻ってしまう。
「芝浦…!」
もはや常人には耐えられないであろう痛みを堪えながら石橋は言葉を伝えた。
「お前だけは…絶対に生き延びろ…ッ!」
そう言い遺し異質な捕食音と共に石橋はディスパイダーの口内に消えていった。
その光景を目の当たりにしたガイはその場で崩れ折れる。直ぐにディスパイダーはガイを標的に戻すも本人は最早それどころでは無かった。
戦意喪失したガイに再びディスパイダーが迫る中、颯爽と彼を助け出す者がいた。
「大丈夫か!」
燃えるような赤い体に龍の意匠があるライダーがガイの間を割って入りディスパイダーの射程範囲から引き離した。
直ぐに方向を変えしつこくガイを狙うディスパイダーだが、今度は横から飛び込んできた漆黒の影によって一閃され、ひっくり返りながら後退する。
呆然とするガイを横目に赤いライダーはカードを引き抜くと左腕に付属する召喚機に装填した。
『FINAL VENT』
すると何処からか赤い龍が現れ、独特の構えを取るライダーの周りをぐるぐると旋回し始める。そして、空高く跳躍すると龍もその後を追い、大空を舞うと空中で蹴りの姿勢になったライダーに向かって強烈な火球を発射する。炎の奔流に乗って目にも止まらぬ速さでディスパイダーに向かってキックを放ち、たちまちのうちにディスパイダーは粉々に砕け散っていった。これが必中必殺のドラゴンライダーキックである。
倒されたモンスターから発された爆炎から立ち上がったライダーは直ぐにガイの元に駆け寄る。
「おい、立てるか?」
「あんたら…もしかして手塚って奴らの仲間か…?」
ようやく気持ちの整理が付いたガイは変身解除すると、助けに来たライダーに問い掛けた。すると、相手もそれに答えて変身を解き自己紹介を始めた。
「あぁ、俺は城戸真司。仮面ライダー龍騎だ。んでこいつが…」
「仮面ライダーナイト。秋山蓮だ」
そう言って漆黒のマントを羽織った騎士の風貌をしたライダーが芝浦の目の前で着地すると黒いコートを着た男に姿を変えた。芝浦は直ぐに先程モンスターを急襲したあの影の正体なのだと分かった。
助けに現れた二人のライダーを一瞥する芝浦に向かって真司は話しかける。
「あんたが芝浦淳で間違い無いんだな?」
「あぁ…」
そう言うとまだ燃え続ける残炎を見つめる。
「悪い、俺がもっと早くに来ていれば…」
「何でアンタが謝んだよ」
「だって…仲間が居なくなるのってすげぇ辛いと思うし、きっと俺だって普通じゃ居られなくなると思うからさ。あ、でも俺達があんたの仲間になる。みんなで一緒に、この馬鹿げた戦いを止めるんだ!」
熱心にそう語る真司に対して、芝浦は何処か感じることがあった。まるで前も何処かで聞いた事があるような…そんな感覚に陥っていた。
ー戦いはゲームなんかじゃない
気付けばフッと笑みを零していた。
「ん?何だよ…俺何か可笑しな事言ったか?」
「いや…あんた人が良いんだなぁって。馬鹿そうだけど」
「おい!誰が馬鹿だよ!蓮も何か言ってくれよ」
「確かに、馬鹿なのは俺も同感だ」
「そうそう…っておい!!」
いつの間にか真司への弄り合いに発展していた場の雰囲気に、芝浦は張り詰めていた気持ちが落ち着いていったのを感じた。一息つけると真司に向かって一言呟いた。
「ありがとな。助けてくれて」
その言葉を聞いた真司は優しく笑顔を浮かべた。
手塚達のいる廃墟に向かって歩を進めようとした矢先、突然真司が頭を抑えて呻いた。
「うっ…」
「どうした?」
「あっ、気にすんな。ちょっと頭痛がな…」
明るく返すものの、その表情は何処か深刻そうであった。
「頼むから出てくるな…」
そう呟く真司を芝浦は訝しむように見つめた。
タイムリミットは後1日…。戦いの決着は刻々と迫っていた。
争いを望まず、戦いを止めようとする彼らは何処まで足掻く事ができるのだろうかーー。