黒い体に蛍光色を走らせた巨体が腕と思われる部位を空中めがけて上げる、その黒い何かは自分の前に佇む形で立っている暗い少年めがけて腕を振り下ろす。
━━━━━━ンゴシャアッ!!!
壮絶な破壊音が交差点のど真ん中に響く。
猛攻に晒されたコンクリートの地面がクレーターを型作り砂嵐を巻き起こしている。
「…………」
黒い何かは自分の標的を広大な範囲に展開された砂嵐の中探す、キョロキョロと目を上下左右に走らせる様はまるで動物のよう。
刹那、何かの後ろから飄々とした、昼行灯な人物像を想起させる声を聞く。
「よおガストレア。てめえステージ1、2でこのパワーってことは大方パワーに富んだ動物、モデル・ゴリラってとこか?」
標的の少年はガストレアと呼ばれた生物の猛攻を耐え、自分の巻き起こした砂嵐と格闘している間に、その短時間に後ろに回っていたのだ。
「んで、ゴリラにはバナナってとこか。くれてやるよ俺のとびっきりのバナナ。産直だぜ」
言うと、少年は懐から取り出した三日月型の黒い刀身を持ったナイフを構え、眼前にやりガストレアを睨みつける。
戦いに巻き込まれた傍観者達は皆車の中、はたまた店の中から息を飲み少年を見守っている。
「…………」
ガストレアは相変わらず動かず、何も言わない、振るい立てられた感情からか肩が上下しているのを除いて、何も動かない。
「━━━━」
少年が何か言ったのを皮切りにガストレアは両腕を大きく開き胸をドラムの要領でバンバン叩く。威嚇の意だ。
少年もまたナイフを掲げ、走り出す。お互いに暫定最大威力の攻撃手段を選択するため、決着は一瞬でつくはずと思われたが。
刹那、パシュンと気の抜けるような音がしたかと思ったらゴリラ型のガストレアは背中にあたる部分から凄い勢いで体液を噴出させる。それでも負けじと突撃する為の姿勢を整えようとするが。
ババババババババと凄まじい銃撃音が郊外に鳴り響く。とガストレアは全身から多量の体液を漏らしながら地面に倒れ伏す。少年は一応、死を確認するためにガストレアの頭を足蹴にする。が、反応は全くない。
ガストレアの死を見届けた少年は音の出処、自分の前を見る。
「おにぃ、討夜さん。遅いから心配したら案の定…交戦でしたか。」
黒い髪を肩まで伸ばした薄幸で線の細い、それこそ撫でたら折れそうな脆弱少女が大きな灼眼をパチパチとさせている。
「…あぁ、スーパーの帰りにちょうど、な。でも内心助かったところもあるな。今月厳しかったからよ、民警とイニシエーターにとって平和ってのは必ずしも良いとは言えねえわな。」
彼らは人の悲劇、不幸でもって成立している。
開始因子(イニシエーター)と加速因子(プロモーター)だ。