ブラック・ナイフ(黒い刀身)   作:茄子林檎柘榴

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第一夜二節

「それで、本分の方の収穫はあったんですか?」

憂という名の薄幸少女が下から向日に向けて疑問を投げかける。

 

「ああ!鶏胸肉と卵!貴重なタンパク源を格安で手に入れたぞ!肉は冷凍すれば実質消費期限ないしこれでしばらく調味料かけご飯生活とはお別れだぜ!今夜は豪勢に親子丼でも決め込むか?」

 

向日は腰をかがめ一回りも二回りも小さい憂に視線を合わせ結論を伝える。中身のパンパンに詰まりタマゴのパックと長ネギが顔を出しているレジ袋という勝利の証を掲げながら。

 

傍観者達は唐突な事態の収束とその当事者らののほほんとした雰囲気に唖然としている様子。

刹那、向日の携帯電話からガストレアを批判し糾弾する内容のヒップホップが流れてくる。向日は携帯電話の通話アイコンをドラッグし通話要請を受け取る。

 

「あーもしもし?社長か?ちょうどいいや今さっきデカブツ仕留めたとこなんだけどよ…なに?今すぐ事務所に帰ってこいだ?あーわーったよ話は…あとでいいな」

 

向日は報告しかけて社長と呼ばれる人間に遮られる。

どうやら事務所側で何かあったらしく向日にコールがかけられたのだ。

 

「てことで帰るぞ憂。そのマシンガン重いだろ持ってやるよ、ほら。」

 

向日は携帯電話を再びポケットにしまうと。憂の肩から銃の入ったギターケースを半ば強引に奪い取ると早歩きで東の方向に向かって行った。先程から相変わらず唖然としている傍観者達を置いて。

 

 

 

━━━━━七里民警事務所

 

「で、なんなんだ七美社長、重要な話って。」

向日はサンダルに履き替えながら疑問を投げかける。

 

「東京エリアの有数の大権力者様からメールづてで収集命令よ。今すぐ私とあなたと憂ちゃんで38区のガストレア対策本部まで行くのよ。ほら部屋着になんか着替えてないで。」

七美社長、と呼ばれた中学生くらいの白いカチューシャと白い肌が特徴的な少女はその権利者が自分達に収集をかけてきたので今すぐ向かうぞという旨を半ば怒り口調で書きなぐるように向日に伝える。

 

「は?マジかよめんどくせえな俺ぜったい行かなきゃダメなの?モニター越しじゃダメなのでせうか?電話でいったように俺も憂とゴリラ型のガストレアと戦って疲れてんだけど。ねえ疲れたよ。」

 

「ダメに決まってるでしょーが!統治者のあの口ぶりからして即時仕事入るわよ。どの道動くのならついでに話聞いてから現場に行った方が効率的よ。それにこの任務で功績を出せばたんまりお金入ってもやしの入っていない牛肉の本物すき焼きが食べられるはずよ!もう少し頑張ってねフレーフレー討夜。」

 

七美は机の上の筒型のペンケースにボールペンに混じって入っていた小さな旗をパタパタ言わせながら向日の仕事への熱意を煽て促す。

 

「しゃーねーな。アイツの命令無視して序列剥奪とかなったらそれこそ困るしな。」

 

向日は頭をポリポリ掻くと1つ大きなため息をして。先程脱いで選択籠に投げ捨てたよそ行きの綺麗なジャージと着古され色のかなり淡泊になったデニムパンツに袖を通す。


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